2023年12月20日

◆ 東芝とハウステンボス

 東芝とハウステンボスは、ともに外部のファンドに買収された。その てんまつ。

 ──

 東芝


 東芝は米国の原発会社である WH 社を買収してから売却した。54億ドルで買った会社を1ドルで売った。その会社が 78億ドルで転売された。
 「54億ドルで買った会社を1ドルで売り、買った側はその会社を78億ドルで売る」……こんなバカな話があっていいものでしょうか。
 東芝は2006年に原子力発電を手掛けるウェスティングハウス(WH)というアメリカの大手企業を買収しました、買値は54億ドルでしたので、当時のレートで6,000億円ほどでした。
 2011年に起きた東日本大地震の影響もあり、WH社は2017年に破綻しました、東芝は保有していたWH株をアメリカの投資会社に売りましたが、その売価は1ドルでした。
 その後WHは、カナダのファンドの元で原子力関連サービスに注力し、企業価値を高めました。
 そして昨年10月、カナダのウラン生産会社カメコがWH社を買いました。その時点の買値は78億ドル(当時のレートで1.16兆円)です。
 つまり、東芝は6,000億円で買ったWH社を11年後に1ドルで売り、1ドルで買った側の投資会社はWHを再生して5年後に1.16兆円で売ったことになります。
( → 54億ドルで買った会社を1ドルで売り、78億ドルで転売される

 あまりにもひどい経営判断なので、しばしば取り上げられる。次の関連記事もある。
  → 東芝はどこでしくじったのか 上場廃止と「物言う株主」排除が意味すること:過去を検証

 ここで私の判断を言えば、こうだ。
 「WH社を高値で買ったことよりも、安く売ったことの方が問題だ。買ったときは、競合相手もいたし、特別な経営失敗というほどではない。相場よりも高く買ったので、高値づかみをしたという面はあるが、それでも大幅な高値づかみというぐらいで済んだ。だが、売ったことは、途方もない愚かさだった。そもそも急いで売る必要はなかった。また、タダ同然で売るのでは、売ることの意味がない。こうしたことから、最悪の経営判断だったと言える。何もしないでいた方が、ずっとマシだった。なのに、愚かな独断のせいで、とんでもない損失を招いた」

 経営者の愚かな経営判断が、あまりにも巨額の損失をもたらしたことになる。
 このあと、東芝は外部のファンドに買収されることになった。これを「残念だ」と見なす人も多いが、「最悪の経営者による最悪の状況を脱した」と見なせば、少なくとも現状よりは改善したと見なせるだろう。
 現在の東芝の経営陣には、自浄能力はまったくない。阿呆な経営者が内輪で経営しているだけだ。こういう傾向は、日本企業に広く見られるが、中でも東芝は最悪の部類なので、外部の経営者に交替することは、好もしいことだ。

 ※ 外部のファンドならば成功するという保証はないが、現状が最悪に近いことは事実だ。それよりはたぶんマシだろう。
 ※ 外部のファンドが日本企業を買収したが、あまり成功したとは言えなかった(どちらかと言えば失敗した)という事例があったはずだが、いま検索しても、うまく見つからない。(だから示せない。)
 ※ 東芝を買収したファンドは、外資系のファンドではなく、国内ファンドである。国内の多数企業の連合体だ。詳細はググればわかる。

 ハウステンボス


 ハウステンボスは、外資系のファンドが買収して見事に成功したようだ。その詳細を報じる朝日新聞記事がある。現在、連載中。
 その木村をCMOとして送り込んだのが、昨年9月にハウステンボスを買収した投資ファンドPAGだ。
 PAGは過去にUSJへ出資していたことがあり、森岡らともつながりがあった。そして、今度はハウステンボスの再生に、森岡の「刀」に協力を求めた。
 再生に自信を見せるPAGが、刀のほかに用意したもう一つの武器が「夢と魔法の王国」出身者の力だ。
 今年10月、東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの経営戦略本部副本部長、高村耕太郎(50)がハウステンボス社長に就任した。高村が感じた課題も「わかりやすくアピールしてくる施設がない」と木村と一致する。一方、「従業員のモチベーションが高く、良い意味のサプライズがあった」と期待も寄せる。
 PAGの買収によってハウステンボスは、TDRとUSJという国内2大パークの知恵が入った。
( → (けいざい+)ハウステンボス「刀」と「魔法」:下 2大パークの知恵、新たな風景へ:朝日新聞




 USJ と TDL から知恵の参謀を招いて、ハウステンボスを(ソフト的に)テーマパークに改造した。こうして、観客の大幅増に成功した。経営の成功と言える。
 新たな経営をしたのは、外国人ではなくて、すべて日本人だが、このような改革を推進したのは、香港系の外資ファンドだった。外資ファンドの経営力で、日本人を使って、日本企業を改革した。

 その教訓は何か? 「日本人が愚かだ」ということではない。「日本式経営が駄目だ」ということだ。
 単なる社内の社員のなかで、ぬるま湯のなかで「社内闘争」をくぐり抜けてきたような人物が経営をしても、「社内の派閥競争で勝利した」というぐらいの意味でしかない。

 こういう馬鹿げた体制を維持するよりは、外部の資本によって、最適な人物を外部から招致して経営者に据える方式の方が、よほどまともなのである。






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 【 追記 】
 東芝はどうしてこういう馬鹿げた経営判断をしたのか? 実は、背後に暗躍した人物がいるそうだ。その人物が、日本政府を動かして、東芝に WH 購入を仕向けた。(まるで悪魔的な詐欺師のように。)
 《 東芝を“原発地獄”に引きずり込んだ首相の右腕官僚 》
 破綻への坂道を転がり落ちる東芝の背中を押した人物がいる。
 今井尚哉。
 これまで一枚岩だった安倍晋三首相と菅義偉官房長官との関係が揺れ始めた今、安倍が最も信頼を寄せる男と言われる。
 経済産業省出身で第一次安倍政権、第二次安倍政権とも首相秘書官。第二次安倍政権発足と同時に「アベノミクスの司令塔」を務めてきたが、今やその影響力は経済政策にとどまらず、外交から解散のタイミングに至るまで、安倍があらゆることを相談する存在だ。元経団連会長の今井敬と元経産事務次官の今井善衛を叔父に持つサラブレッドでもある。
 今井は、経産省でも指折りの原発推進派。第一次安倍政権、民主党政権、第二次安倍政権と政権が変わり、民主党政権時には東日本大震災と東京電力福島第一原発事故があったが、一貫して「原発推進」の政策を遂行してきた。当然、日本最大の原子炉メーカーである東芝との付き合いは長くて濃い。
 2006年に東芝が、のちに経営危機の元凶となる米原子炉大手ウエスチングハウス(WH)を買収したとき、経産省の原発推進派は強くこれを推奨した。その中心にいたのも今井とされる。
( → Business Insider Japan

 安倍政権を牛耳る 影の男、と言われる人物だ。政界では有名な人物。これが元凶だったわけだ。

posted by 管理人 at 22:20 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2023年12月21日 08:46
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