2023年12月15日

◆ 日大理事会の無責任体制

 日大理事会がアメフト部について「廃部」を決定した。これは理事会の「無責任」体制を意味する。

 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2023-12-16 です。)


 前項で示したとおり、日大理事会がアメフト部について「廃部」を決定した。しかも、廃部のあとで、新たに作り直すという。これについて私は下記のように批判した。


ミルコ・クロコップ


 ──

 さて。その後、朝日新聞に解説記事が出た。(2023-12-16)
 一部転載して紹介しよう。
 関東学生アメフト連盟によると、廃部決定を受け、同部は連盟から退会することになる。
( → 日大アメフト部「いったん廃部して再建検討」 現役部員らに受け皿も:朝日新聞

 関東学連によると、関東学連を退会すると、再入会が必要となる。準加盟から始まり、3部、2部と昇格していかなければいけない。
( → 日大アメフト部、処遇3案 解散か、格下げか、廃部か きょう理事会:朝日新聞

 いったん廃部にすると、ゼロからのスタートとなり、あまりにも厳しい処分となる。新入生は、一部リーグで活躍することは不可能となる。「準加盟 → 3部 → 2部 → 1部」と昇格するには、それだけで4年がかかるからだ。早くても1部になれるのは4年目だが、現実にはそれは不可能だろう。(最初の年は弱体化していて優勝も困難だからだ。)
 実質的に、来春入学予定者はアメフト部員として活躍する機会がなくなる。何の責任もない来春の入学予定者にまで超厳しい処分が下される。道理が通らない。

 日大の4年生部員は「誰も幸せにならない結果。学生のことを少しでも考えてくれていたら、部だけでも存続させ、フェニックスの名前は残したと思う。自分を含め、違法薬物に関わっていない部員からすれば、とらなくてもいい連帯責任をとらされたと感じる。怒りを通り越してがっかりしている」と話した。
 日大アメフト部OBは「関係のない学生たちの今後の人生を考える視点が抜け落ちている」と言う。「100人以上の部員がいて、寮生は20〜30人ほどしかいない。チームメートの違法薬物の使用に気づくことも難しかったであろう自宅生たちは、被害者だ。指導者との面談や薬物検査を受けて潔白だった選手だけを部員として認めるなどして、なんとか部として活動をさせてあげてほしいという思いだ」と打ち明けた。
( → 日大アメフト部「いったん廃部して再建検討」 現役部員らに受け皿も:朝日新聞

 ごもっとも。今回の決定は、
 「厳しい処分にすれば世間の批判を免れるだろう」
 という理事会の保身主義が窺えるだけだ。

 関係者によると、理事会出席者のうち11人が廃部を支持し、反対の9人を上回った。
( → 日大アメフト部「いったん廃部して再建検討」 現役部員らに受け皿も:朝日新聞

 廃部は学生から競技を通じた成長の機会を奪うだけでなく、無実の者に連帯責任を負わせることにもつながる。11月下旬、報道で廃部方針が広まると批判が相次いだ。それでも、理事会で廃部の意見が多数を占めたのは犯罪に対する学生の希薄な意識を重くみたからだ。
 薬物事件で麻薬取締法違反罪に問われた部員は、今月1日の初公判で部員10人程度が大麻を使用していたと証言した。日大関係者は「違法薬物をやっているだけではなく、知っている者も含めれば関与している部員は多数いる」とし、部内で歯止めが利かなかった罪の意識の低さを嘆いた。

 それでも一連の問題を招いた最大の原因は、組織の統治や内部統制が機能不全に陥った大学側にある。
 部の寮で大麻が見つかった際、副学長の警察への報告は12日後だった。第三者委は「隠蔽体質を疑わせ、信用を失墜させた最大の原因」と結論付け、大学は文部科学省に提出した改善計画の中で「ウチのことはウチで収める」組織風土や、ムラ意識に基づく秘密主義が要因だったと指摘した。
( → <解説>欠けた順法精神、廃部決定招く 日大アメフト部:朝日新聞

 廃部の方針に賛成 11人で、反対9人。僅差である。一人が賛成から反対に回れば、10対10で同数となり、この方針は決まらなかった。たった一人の差で左右されるような票数で、大学全体の方針を決める。かくて、莫大な数の学生(しかも何の責任もない学生)の人生から、大切な機会を奪い取る。
 これは泥棒のような犯罪よりも、ずっとひどい。泥棒ならば、せいぜい数十万円の金を奪うだけだが、今回は大学は、学生から人生を左右する数千万円規模の損失をもたらすのだ。それも、罪のある学生でなく、罪のない学生から。
 その理由は何か? 「学生には連帯責任を取らせる」という方針だ。「一部の学生には罪がある。それに気づかなかった他の学生にも連帯責任を取らせる」という方針だ。
 なるほど、それはそれで、一理ある。しかし、それならばまず、大学の理事会にもその方針を取らせるべきだ。つまり、今回の事件を招いた最大の責任は、理事会にあるのだから、理事会の全員が連帯責任を負って、理事会の理事も全員が辞任するべきだ。それこそ「連帯責任」というものだろう。
 副学長の警察への報告は12日後だった。第三者委は「隠蔽体質を疑わせ、信用を失墜させた最大の原因」と結論付け(た)

 と記事にもあるが、副学長の失態こそ、今回の事件が大きくなった根本原因だ。学生の不祥事よりも、大学側の不祥事の方が大きい。副学長こそ最大の悪だ。
 ならば、副学長に最大の処分を下すべきだ。さらに、「連帯責任」の名目で、理事の全員を解任するべきだ。
 ところが理事会は、自分たちの責任についてはほおかむりして、学生にばかり「連帯責任」を負わせようとする。自分たち理事の責任を隠蔽するために、ろくに責任のない学生たちに連帯責任を負わせようとする。
 その自分勝手ぶりには、呆れるばかりだ。



 [ 付記 ]
 では、どうすればよかったか? そのヒントは、次項にある。
  → 権限委譲を実現するには?: Open ブログ

 方針を決定するには、誰か「責任を取れる人」が全面的に決断を下せばいい。その人が全責任を負って決断すればいい。
 今回は、林真理子理事長がその人にふさわしい。彼女が一人で方針を決めるべきだ。その前には、多くの意見を聞くべきだ。なお、彼女が決められなければ、他の誰かに権限委譲して、その人に任せてもいい。
 とにかく、責任を負える人が、一人で決めるべきだ。

 一方、現状では、20人で票決をしている。その 20人は、誰も責任を負わない。自分では責任を負わないで、単に「世間から批判されないためには、処分を厳しくすればいいだろう」と思い込んで、自分の代わりに学生を処分しようとする。
 「共同責任は無責任」
 というのを、地で行っている。呆れるばかりだ。
 自分の票に責任を持てないような人物は、票決をするべきではないのだ。

 なお、今回の決定で「廃部」を決めた人は、あとで学生から「機会損失」などの賠償金を払うように訴訟を起こされて、敗訴したら、賠償金を自分で払え。きみたちの責任で、学生たちの人生をつぶして、その損害賠償をするハメになったら、その賠償金を自分たちで払え。それが、責任を負うということだ。
 その責任を負う気がないのならば、「廃部」という決定を軽々しく決めるな。あまりにも無責任すぎる。

posted by 管理人 at 23:10 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ