2023年12月14日

◆ 女性自衛官への性暴力

 女性自衛官への性暴力が話題になったが、裁判で判決が出た。有罪だが、執行猶予(実質無罪)。これを論評する。

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 NHK の記事がある。
 2021年8月、北海道にある陸上自衛隊の演習場で、隊員だった五ノ井里奈さん(24)を押し倒し、服の上から体を触ったなどとして、いずれも元上司で、陸上自衛隊・郡山駐屯地の部隊に所属していた元3等陸曹、渋谷修太郎被告(31)と関根亮斗被告(29)、木目沢佑輔被告(29)の3人が強制わいせつの罪に問われました。
 3人はいずれも、五ノ井さんに格闘技の技をかけて押し倒すなどしたことは認めましたが、わいせつ目的ではなかったなどとして無罪を主張していました。
 12日の判決で福島地方裁判所の三浦隆昭裁判長は、「五ノ井さんの証言は、宴会に同席したほかの上司らの証言と一致していて信用できる。同席した上司らの証言も、被告らが被害者に覆いかぶさるなどの核心部分が五ノ井さんの証言と一致していて、3人の行為がそれぞれ強制わいせつ罪に該当することは明らかだ」と指摘しました。
 そのうえで、「自衛隊施設の一室で被害者以外は男性の隊員十数人が集まった宴会の場で、先輩である3人に技をかけられるという、被害者にとって断りづらい雰囲気のなかで性行為のまねごとをしたものだ。被害者の人格を無視し、宴会を盛り上げるものとして扱うに等しいもので、卑劣で悪質だ。被害者は今もなお当時の光景がフラッシュバックし、生きていることのつらさを感じるなどと悲痛な心情を述べており、大きな精神的苦痛を負った」などとして3人全員に懲役2年、執行猶予4年を言い渡しました。
 この事件は、いったん不起訴にされましたが、五ノ井さんが実名で性被害を訴えたあと、検察審査会が「不起訴は不当だ」とする議決を行い、再捜査した検察が判断を見直して3人を在宅起訴したほか、防衛省が自衛隊内のハラスメントの実態を調べる特別防衛監察に乗り出す異例の事態となりました。
( → 陸自元隊員3人 有罪判決 五ノ井さん性暴力訴えた事件 福島地裁 | NHK | 防衛省・自衛隊

 「懲役2年、執行猶予4年」という判決だ。一応、有罪判決が出たことで、原告は一応満足しているようだ。検察の方針は「不起訴」であったが、それに比べればずっとマシだ、ということであるようだ。
 「最初のころからずっと訴えてきた事実が裁判所でも認められて、有罪判決が出たことは日本社会にとってもいい判決。もともと私は刑の重さというよりも、彼たちがしっかり事実を認めて反省してほしいとの思いでずっと闘ってきたので……」
( → 「日本社会にとっていい判決。前例を作れた」五ノ井里奈さんコメント 被告3人に有罪判決 元陸上自衛官強制わいせつ事件 福島地裁 | TBS NEWS DIG (1ページ)

 だが、原告本人は満足しているとしても、私としてはこの判決を是認できない。なぜなら、「執行猶予」というのは、実質的には無罪と同様で、何ら処罰されないからだ。「量刑不当」と言える。あまりにも甘すぎるのだ。

 ──

 ちなみに、交通事故でなら、こんな大甘な判決は出ない。交通事故で「執行猶予」が付くのは、次の二条件が満たされた場合だ。
  ・ 犯人は十分に反省の意を示している。
  ・ 被害者との示談が済んでいる。(賠償金を十分に払っている。)

 この2条件が満たされた場合には、交通事故で「執行猶予」が付くことが多い。いっぽう、この2条件が満たされなければ、執行猶予は付かないことが多い。(ま、当り前だ。)

 ところが、今回の性被害では、違う。その2条件はいずれも満たされていないのに、執行猶予が付いている。
  ・ 犯人は反省の意をまったく示さない。(無罪を主張する。)
  ・ 被害者との示談を済ませていない。(賠償金を払っていない。)

 こういう状況だ。こんな状況では、当然、執行猶予を付けるべきではない。なのに、裁判所は執行猶予を付けている。あまりにも甘すぎる。大甘だ。頭がイカレているとしか思えない。

 ──

 一般に、性被害というものは、女性の心をひどく傷つける。今回も、女性自衛官は心をひどく傷つけられた。


 本人は何度も自殺しそうなほどの思いに駆られた。それほどにもひどく心を傷つけられた。医学的には、PTSD(心理的後遺症) ふうだ。こうなれば、下手をすれば、実際に自殺していたかもしれない。それほどにもひどく傷つけられたのだ。

 裁判官はいったいどういう思いで、「執行猶予」(実質無罪)という甘い判決を下したのか? 裁判官は、自分の娘が性的被害を受けて、自殺したとしても、「はいそうですか。ならば執行猶予(実質無罪)にします」という判決を下せるのか? 裁判官にとって、自分の娘の命は、そんなにも軽いものなのか? ただの万引きの初犯と同様の刑罰(執行猶予)で済ませてしまえるのか? 
 このような甘い判決を下す裁判官は、およそ「法的な正義」を備えているとは言えない。


テミス像
テミス像(AI)


 彼らはあまりにも「男性優先主義」に染まっていて、女性の人権を無視している。
 その点は、検察も同様だ。これほどひどい犯罪を見て、ろくに捜査もしないで(証言も取らないで)、あっさりと「不起訴」を決め込む。そのあげく、検察審議会で「不起訴不当」という処分を受けて、「不起訴」の方針をひっくり返される。まったく、みっともない。恥を知れ。
 ちなみに、ただの痴漢には、やたらと厳しい対処を下すのが、日本の警察や検察だ。こちらは、(犯人を甘やかす)執行猶予とは逆で、(犯人でもない人を有罪扱いする)冤罪にしてしまう。本格的な性的被害に対しては大甘にするくせに、ありもしない架空の痴漢については犯罪をでっち上げる(冤罪をする)。呆れた話だ。

 ではなぜ、検察は、こういう馬鹿げたことをするのか? その理由を推察すれば、こうだ。
 「痴漢で冤罪をするのは、やたらと事件を処理して、事件の点数稼ぎをするためである。自衛官事件で不起訴にするのは、自衛隊という政府に恩を売るためである。体制べったりに染まって、政府の歓心を買うためである」

 こう理解すれば、すべては氷解する。
 そして、その意味は、こうだ。 
 「日本政府は、それ自身が、性的暴行をするような性犯罪者の集団なのである。少なくとも検察は、そう思っている。だから、性犯罪者の集団に媚びることを目的として、性犯罪者を不起訴にした」

 これで物事の本質が明らかになった。つまり、日本政府は、性的暴行をするような性犯罪者の集団なのである。そのことを検察が認定しているのだ。
 今回の事件の本質は、そういうことだ。



 [ 付記1 ]
 では、どうすればいいのか? その件については、下記を参照。
  → 執行猶予を廃止せよ: Open ブログ

  ※ 執行猶予という法的制度を廃止すればいい。「罪の免除」(実質無罪)という制度を廃止する。懲役刑が出たら、必ず服役させる。……ただし、服役期間は、期間の全部でなくてもいい。たとえば、「懲役2年」なら、2年間の満期でなく、その一部だけの服役だけでもいい。(現状では、2年間全部を服役するか、まったく服役しない執行猶予になるか、二者択一である。そういう現行制度を改めるべきだ。)

 [ 付記2 ]
 ついでだが、京アニの犯人と比較するといい。
  ・ 今回の犯人は反省しないが、京アニの犯人は反省した。
  ・ 今回の犯人は遊び半分の犯行だが、京アニの犯人は深い怨恨があった。

 この二点からして、今回の犯人の方が大幅に悪質だと言える。特に、後者は重要だ。仮に両者がともに殺人をするとしたら、「遊び半分で気軽に殺人をした人」と「自分が傷つけられたと感じで深く苦しんだあとで復讐のために殺人をした人」では、前者の方がずっと罪深い。前者は楽しんで殺人をしており、後者は自分がひどく傷ついたあとで苦しみながら殺人をする。後者の方が情状酌量の余地がある。前者はほとんど悪魔のような人でなしだから許しがたい。

 今回の犯人は「遊び半分」で女性自衛官を性的暴行した。「遊び半分だから許される」という言い分だが、とんでもない。「遊び半分で傷つけた」からこそ、絶対に許されないのだ。本人は気楽な気分だから許されると思っているのだろうが、気楽な気分で凶悪な犯行をするからこそ人でなしなのだ。許せん。

 ちなみに、京アニの犯人は、やや精神異常だった。今では薬を飲んでいるので、頭が正常になっているようだが、当時は薬を飲んでいなくて、異常妄想にとりつかれた状態だった。その意味でも、情状酌量の余地がある。
 
 以上のことからして、今回の犯人が執行猶予になるのであれば、それよりもずっと悪質性の薄い京アニの犯人もまた執行猶予になるべきだ。逆に言えば、京アニの犯人が執行猶予にならないのであれば、それよりもずっと悪質性の高い今回の犯人は執行猶予になってはならない。……それが公平な法的正義というものだ。
 テミス像ならば、それを理解してくれるはずだ。


テミス像
テミス像(AI)




    ※ 以下は読まなくてもいい。


 [ 補足 ]
 細かな話を付け足しておこう。
 「検察も同様だ。これほどひどい犯罪を見て、ろくに捜査もしないで(証言も取らないで)、あっさりと「不起訴」を決め込む」
 と文中で記述した。
 これについては疑問を感じる人もいるだろう。
 「検察が不起訴を決め込んだのは、仕方ない。目撃者が証言してくれなかったからだ。その時点では、本人は名前を公開していなかったので、目撃者は証言する勇気が出なかった。誰もがびくついており、証言しようとしなかった。その後、本人が名前を公開したので、その勇気を見習って、目撃者も証言する勇気を出した。ただし、それは、検察が不起訴を決めたあとだ。検察が不起訴を決めた時点では、本人は名前を公開しなかったし、目撃者は証言しなかった。証言が得られないのでは、不起訴にするのも仕方ない」
 こう思うのも一理ある。

 だが、それは妥当ではない。なぜか? この件では、検察は証言を引き出すことが可能だからだ。
 現場に誰がいたかはわかっている。所属部隊の隊員だ。だから、彼らを証人として引っ張り出せばいい。(これは拒否できない。仮に出廷拒否すれば、逮捕されかねない。 → 出典
 その後、出廷した証人に、こう質問する。
 「あなたは現場に居合わせましたね? イエス/ノー?」
 「あなたは性暴力の行為を目撃しましたね? イエス/ノー?」
 こうして「イエス/ノー」で質問すれば、もはや偽証はできない。偽証すれば、偽証罪で逮捕されるからだ。「目撃したことを証言したくない」と思っても、「目撃しました」と正直に証言するしかないのだ。「証言したくない」と思って、証言を辞退しようとしても、証言を辞退することはできないのだ。証言する義務が生じるからだ。……こうして検察官は裁判の場において証人の証言を得ることができる。
 「目撃したのですね。ならば、その目撃内容を述べてください」
 というふうに。こうして複数の証言を得るので、犯人を有罪にすることは可能だ。(実際、今回は複数の証言を得たので、有罪にできた。)

 ともあれ、検察はうまく工夫すれば、証人の証言を得ることができる。その努力もしないで、「証言してくれる証人が見つからなかったので、不起訴にします」なんて、検察の怠慢だというしかない。
 証人を裁判所に呼び出すなんて、私が教えるまでもなく、検察の初歩だろう。その努力もしないで、あっさりと「不起訴」を決めたのは、検察が意図的に起訴をサボっていたということになる。
 なぜサボったか? その理由は、本文に記したとおり。つまり、政府や自衛隊におもねったからだ。それというのも、政府や自衛隊は性犯罪者の集団だ、と検察が認識したからだ。そういう現実があったからだ。
 
 ※ 検察がそうなるのも、まあ、あながち仕方あるまい。安倍という悪の親分が政府を牛耳っていたのが、日本だったからだ。
 ※ 安倍・元首相が銃撃されたのは、2022年7月だ。検察が不起訴を決めたのは、2022年5月だ。この時点では、安倍・元首相は存命していたので、政府は悪の支配下にあったと言える。安倍派が弱体化したのは、元首相が銃撃された時点だ。
 ※ なお、安倍派が崩壊したのは、安倍派幹部がいっせいに辞任した、本日(2023-12-15)のことだ。それまでは、政府は悪の支配下にあったのだ。検察が悪の勢力に配慮したのも、仕方ない。今となっては、安倍派の幹部を検察が追及することも可能となったが、安倍・元首相が存命である限りは、そんなことは不可能だっただろう。
  → 検察は安倍派に恨み骨髄!「パー券裏金」の実態“丸裸”で派閥は壊滅へまっしぐら
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posted by 管理人 at 23:48 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 補足 ] を加筆しました。
 細かな話なので、読まなくてもいい。
Posted by 管理人 at 2023年12月15日 08:55
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