日本が繁栄した時代があった。高度成長期からバブル崩壊に至る時期だ。20世紀の 60年代〜80年代である。なぜ繁栄したか?
──
日本は 60年代〜80年代には繁栄した。バブル崩壊の 1990年までその繁栄は続いた。では、それはなぜか?
これについては、前に言及した。「デミングのおかげだ」と。
デミングが日本企業に「品質改善」を教えた。日本企業はそれに従った。品質改善。QC。カイゼン。……そういう方向に努力した。だから、日本企業は、世界のなかで優秀さを獲得したのだ。(「日本人は」でなく、「日本企業は」だ。)
( → 日本経済が没落したわけは?: Open ブログ )
デミングの教えとは、「品質管理」(QC)だった。
→ 品質管理とデミング: Open ブログ
ではなぜ、かつての日本は「品質管理」で繁栄できたのに、今の日本では同じことができないのか? 日本企業は「品質管理」をやめてしまったのか?
──
その答えを言おう。こうだ。
「日本企業は、品質管理をやめたのではない。品質管理をした結果に報いることをやめたのだ。だから労働者は、馬鹿馬鹿しくなって、品質管理に熱を上げることもなくなった。こうして日本企業の最大の美点はなくなった。その一方で、中国や米国では、日本企業を通じて、品質管理の手法を導入したので、日本企業以上に優秀になった」
わかりやすく言おう。
昔の企業は、労働者が「カイゼン」をしたときに、その結果に報いていた。カイゼンの結果で企業の業績が向上すれば、その結果として労働者の給料を上げていた。
今の企業はどうか? 労働者が「カイゼン」をしても、その結果に報いない。利益を上げて設けるのは企業ばかりであり、労働者は賃下げを受けるだけだ。今年だって、企業は円安で空前の利益を上げているのに、労働者は物価上昇で実質賃金が低下している。こういう状況で、労働分配率は低下する一方だ。
このように著しい「労働分配率の低下」は、日本だけに見られる現象である。そのことは厚労省のデータからもわかる。
出典出典:厚労省リンク 、PDF
こういう「労働分配率の低下」が日本経済の最大問題だ、ということは、本サイトでは前にも解説した。
→ 日本の生産性低迷の理由: Open ブログ
→ 裁量労働制をなぜ推進する?: Open ブログ
( → 労働分配率の低下こそ: Open ブログ )
企業はどんどん金儲けをするのに、その利益は企業が独り占めして、労働者には回さない。こうなったら、馬鹿馬鹿しくなって、労働者はカイゼンをする気にはなれないだろう。カイゼンをしても、それで得をするのは企業ばかりであって、自分にはその金は回らないからだ。資本家の金儲けのためにせっせと奉仕したがる自虐的なマゾ精神の狂人は別として、まともな人間が身を削ってカイゼンをするわけがないのだ。
それどころか、もっとひどい。カイゼンをして、業務の効率が上がれば、必要な人員は減るので、下手をすれば自分がクビになるのだ。
「あなたの提案したカイゼンのおかげで、必要な人数は 10人から9人に減りました。余分な人員を一人解雇することにしました。だから、あなたを解雇します」
というふうになりかねない。自分で自分の首を切りたいような阿呆はいない。だから、誰もカイゼンをしたがらなくなる。
こうしてわかっただろう。かつての日本企業は、カイゼンした労働者に報いてきたが、今の日本企業は、カイゼンした労働者に報いない。今の日本企業がやっているのは、賃下げだけだ。朝から晩まで、賃下げばかり。それしか考えていない。
こんな企業は、つぶれて当然なのだ。それが、日本企業が衰退した理由だ。
かつての日本企業は、労働者に報いてきたから、労働者も企業もともに繁栄した。今の日本企業は、労働者の金を奪って自分ばかりが利益を独り占めしようとしてきたから、労働者も企業もともに没落した。……それが、日本企業の現状だ。
欲張りな強欲婆さんは、最終的には損するのである。舌切り雀のように。あるいは、金の斧・銀の斧のように。



