2023年12月07日

◆ Google のAI

 Google のAIを評価する。マイクロソフトの Copilot (旧 BingAI )と比べて、どうか?

 ──

 Google は新たに GEMINI という高性能な GPT を出すと発表した。
  → 電撃発表、グーグルが「全力開発」した生成AI「Gemini」の全貌…ChatGPT超えするか | Business Insider Japan

 しかし、サイトを見ても、「 Coming soon 」(近日公開)であって、まだ公開されていない。試すことはできない。

 試すことができるのは、現時点では Bard という GPT だけだ。これは容易に試すことができる。そこでさっそく、試してみた。

 ──

 質問文は、前出の事例 と同様で、下記だ。
 「 1グラムの冷水を蒸発させるために必要な灯油の量はどれだけか? 灯油の発熱量を考慮して計算せよ」
 回答は次の通り。
灯油の発熱量は、1グラムあたり約45,000ジュールです。水の蒸発熱は、1グラムあたり約2,260ジュールです。

したがって、1グラムの冷水を蒸発させるために必要な灯油の量は、

  (45,000ジュール / 2,260ジュール / グラム) / グラム = 20.14

となり、約20.14グラムとなります。

ただし、これはあくまでも理論上の計算値であり、実際は、灯油の燃焼効率や、水の温度、周囲の環境条件などによって、必要な灯油の量は変わってきます。

例えば、灯油の燃焼効率が100%であれば、理論上の計算値通り20.14グラムの灯油で1グラムの冷水を蒸発させることができます。しかし、実際の燃焼効率は100%にはならず、だいたい80%程度です。そのため、実際には20.14グラムの2倍の40.28グラムの灯油が必要になります。

また、水の温度が低ければ、蒸発熱が大きくなります。そのため、水の温度が低い場合は、より多くの灯油が必要になります。

周囲の環境条件も、必要な灯油の量に影響を与えます。例えば、風が強い場合は、灯油が燃えにくくなるため、より多くの灯油が必要になります。

したがって、1グラムの冷水を蒸発させるために必要な灯油の量は、具体的な状況によって変わってきます。

ここでは、灯油の燃焼効率を80%、水の温度を20℃、周囲の環境条件を無風と仮定して計算すると、必要な灯油の量は、

  (45,000ジュール / 2,260ジュール / グラム) / 0.8 = 25.06

となり、約25.06グラムとなります。

つまり、1グラムの冷水を蒸発させるために、灯油の燃焼効率が80%、水の温度が20℃、周囲の環境条件が無風の場合、約25.06グラムの灯油が必要になります。

 もう一つの質問はこうだ。
 「15℃の水1グラムを沸騰させるのに必要な灯油の量は何ミリリットルか? 水の比熱と、灯油の発熱量を考慮して、計算せよ」
 回答はこうだ。
15℃の水1グラムを沸騰させるには、水の温度を100℃まで上げる必要があります。そのためには、100℃ - 15℃ = 85℃の温度差を1グラムの水で吸収する必要があります。

水の比熱は、1グラムあたり1キロカロリー/℃です。1キロカロリーは4,184ジュールに等しいため、1グラムの水を1℃上昇させるには、4,184ジュールの熱が必要です。

したがって、15℃の水1グラムを沸騰させるには、

 85℃ * 4,184ジュール / グラム = 351,940ジュール

の熱が必要です。

灯油の発熱量は、1グラムあたり約45,000ジュールです。したがって、15℃の水1グラムを沸騰させるのに必要な灯油の量は、

  351,940ジュール / 45,000ジュール / グラム = 7.83

となり、約7.83グラムとなります。

1ミリリットルの灯油は約0.8グラムです。したがって、15℃の水1グラムを沸騰させるのに必要な灯油の量は、

  7.83グラム / 0.8グラム / ミリリットル = 9.81ミリリットル

となり、約9.81ミリリットルとなります。

したがって、15℃の水1グラムを沸騰させるのに必要な灯油の量は、約9.81ミリリットルとなります。


 二つの回答が耐えられた。いずれももっともらしい回答だ。だが、いずれも誤答である。理由は2点。

 (1) 「灯油の燃焼熱は、1グラムあたり約45,000ジュールです」という数値が誤り。ググればわかるが、灯油の発熱量はこうだ。
   8,250 kcal/L 〜 8,800 kcal/L
 これは、単位を  cal/g にしても同様である。

 (2) 「水の比熱は、1グラムあたり1キロカロリー/℃です。1キロカロリーは4,184ジュールに等しいため、1グラムの水を1℃上昇させるには、4,184ジュールの熱が必要です」という数値が誤り。ググればわかるが、水の比熱はこうだ。
   4217[j/kg ℃]
 この単位を見れば、分母は kg である。なのに、AIの回答では、1グラムあたりの数値になっている。数値で 1000倍の差がある。つまり、AIは単位における kg と g の違いを理解できていない。

 ──

 以上をまとめれば、こうなる。
 「 AIは、既存の数字をこねくり回して、もっともらしい文章を作り上げることはできる。しかし、記号の意味をまったく理解できていない。「1kg は 1g の 1000倍だ」という基礎知識がない。基礎知識なしに、文字をひねくり回しているだけだ」

 このことは、特に、1番目の事例で顕著だ。AIは割り算をしているのだが、その際、割り算の順序を間違えている。「 A ÷ B 」という計算をするべきところで、「 B ÷ A 」という計算をしている。自分が何をしているか、まったくわかっていない。単にもっともらしい数式をこねあげているだけだ。

 現時点のAIの特徴は、「意味もわからずにした先だけで勝手にペラペラとしゃべる口先野郎」という感じだ。頭では何も考えずに口先だけでしゃべっているのである。話の信頼性は皆無だと言っていいだろう。
 
 ※ 出典を出してくれるのであれば、出典を探すための水先案内人ぐらいの役割はある。

 ※ 理系の思考をなしにして、文系の情報だけを求めるのであれば、事情は異なる。この場合には、けっこう有益になりそうだ。
 


 [ 付記 ]
 Google の GEMINI は、このような難点をかなり解決しているらしい。数学的な論理力に強いらしい。
 ただし、現物はまだ見ていない(公開されていない)ので、どうなるかは不明である。



 【 関連項目 】

 前回は、Copilot の能力を検証した。
  → AIを使いこなすには: Open ブログ
 




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posted by 管理人 at 21:58 | Comment(1) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
A/BとB/Aとの間違いは文系頭の人はよくやります。AIでなにが難しいかがよくわかりました。知識はあるが論理がない。でも論理とは何かが次の問題です。またそれをAIにどう組み込んでいくのか今の課題なんでしょう。
Posted by ひまなので at 2023年12月08日 11:47
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