2023年12月06日

◆ オスプレイの墜落事故

 オスプレイの墜落事故があった。「オスプレイは危険だ」という説は正しいか?

  ※ 一部を修正しました。


 ──

 ※ 本記事は、一部を取り消しました。そのせいで、スッキリしない話(まとまりがつかない話)になってしまいましたが、ご容赦ください。





 この件については、前にも話題になったことがある。そのときは JSF という軍事ブロガーが「オスプレイの事故発生率は他のヘリコプターよりも低い」という統計データを出した。
  → MV-22オスプレイ、実質3年連続で重大事故ゼロを達成(JSF)

 これを受けて、世間では「オスプレイは危険ではない」という説が流布するようになった。話は決着したかのように見えた。

 しかし今回、オスプレイの墜落事故が起こった。こういうのを見ると、「オスプレイは安全ではない」という説も妥当であるように思えてくる。

 一方で、先日は別の旧式ヘリコプターが墜落したという事故もあった。
  → 宮古島沖陸自ヘリ航空事故 - Wikipedia
 こういう事故もあるのだから、「特にオスプレイだけが危険だということはない」という説も成立しそうだ。

 ではいったい、どう認識するべきか?
 むむむ。……





 私の判断を言おう。いきなり結論を言えば、こうだ。
 「オスプレイは複雑な構造を持つので、その分、故障しやすくて、危険度が高い。根源的に欠陥があるというわけではないのだが、安全度が低い機体である。運行停止をするべきだとまでは言わないが、なるべく導入しない方がいい」

 以下では順に述べる。


 (1) 故障率の統計

 JSF の統計データでは、オスプレイの故障率は低い。「だからオスプレイは安全だ」というのが彼の主張だが、これはペテンだ。
 オスプレイは配備したばかりの新品である。一方、他のヘリコプターは、配備して 50年もたつようなポンコツが多数ある。ポンコツを整備して、だましだまし使っているようなありさまだ。そんなポンコツと比較して、「故障率が低い」と立証しても、自慢にはならない。
 「最新型のクラウンは、50年前の製造で今なお使い続けているポンコツのセンチュリーよりも、故障率がずっと低いんです」
 と言っても、当たり前のことだ。このことからは、「クラウンはセンチュリーよりも故障率が低い」という結論は得られない。単に「最新の車は、新品である間は、ポンコツの車よりも故障率が低い」と言えるだけだ。最新の車だって、時間がたてば、経年劣化で故障が増えるかもしれない。それは何とも言えないのだ。
 とにかく、新品とポンコツを比較して、故障率の優劣を考える……というのは、統計のペテンだと言えるだろう。


 (2) 故障箇所

 故障箇所はどこか? 一般に、ヘリコプターの故障で一番多いのは、(ローターではなくて)エンジンである。
 宮古島沖のヘリコプターの墜落も、エンジンの故障が原因だったようだ。フライトレコーダーから判明した。
  → 陸自ヘリ墜落直前、エンジン出力が急低下…フライトレコーダーに機長ら対応の音声記録 : 読売新聞
 今回のオスプレイも、飛行中にエンジンから火が出たのが目撃されている。 
 目撃者:「落ちる時、火を噴いて、火を噴いたらもう直後に落ちましたね」 「(Q.空中で爆発したとか?)ちょうど火を噴いているところを見たもんで」 「何人も見てるんですよ」 「(Q.空中爆発した?)空中で火を噴いたのを見ました」
( → オスプレイ墜落 米軍1人死亡…目撃者「空中で火噴いた」 沖縄県「飛行停止求める」

 このことからして、エンジンの故障が原因だった、とわかる。
 なお、翼が原因ではないこと(一挙に失速・墜落したのではないこと)は、下記の図からわかる。


osupurei3.jpg
出典:朝日新聞



 (3) 故障の原因

 故障の原因は何か? 
 今回の故障の原因を特定しても意味がない。エンジンの故障というのは、統計的にはしばしば起こるものであって、避けがたいのだ。「絶対に故障しないエンジン」というものは存在しない。エンジンというものは統計的にはいつかどこかで故障が起こるものなのだ。
 とはいえ、故障の頻度は予想が付く。

 普通のヘリコプターは、レシプロエンジンを使う。これは枯れた技術なので、十分に整備していれば、故障の頻度は下げることが可能だ。たまに故障が起こるとしても、それは自動車のエンジンが故障するのと同様であるので、稀に起こることがあるとしても、仕方ない。世界中にはものすごく多数のヘリコプターがあるのだから、そのうちの何台かがエンジン故障で墜落しても、統計的には仕方ない。自動車の事故が統計的に避けがたいのと同様だ。稀に起こる少数の事故として甘受するしかない。(日ごろから十分に整備することで、自動車の故障よりは大幅に引き下げることが可能だ。)

 《 訂正 》
  間違えました。レシプロでなく、ターボシャフト・エンジンです。その点では、下記と同様です。上の文章は取り消します。

 オスプレイは、ターボシャフト・エンジンを使う。これはジェットエンジンの一種だ。高温・高回転の構造をもつので、必然的に故障率が高い。実際、飛行機のジェットエンジンはしばしば故障する。オスプレイは、高温・高回転の構造をもつという点ではジェット・エンジン並みに故障率が高くて、さらに(ローター用に)減速ギア構造のターボシャフトという構造もあわせもつので、さらに故障率が高い。
 結局、普通のヘリコプターに比べると、圧倒的に故障率は高いと言えるだろう。

 《 訂正 》
 したがって、普通のヘリコプターと同程度の危険度だ、と言える。


 (4) 故障時の安全対策

 ジェットエンジンは故障しやすい。では、故障したときには、どうすればいいか? 

 普通の飛行機ならば、ジェットエンジンが故障したときの対策はできている。
 「エンジンを、単発でなく双発にする。二つのエンジンの一方が故障しても、他の一方だけで、無事に飛行できるようにする」
 「万が一、二つのエンジンがともに停止しても、グライダーのように滑空することで、近くの平地(草地など)に無事着陸することができる」
 このように飛行機では安全対策ができている。

 オスプレイはどうか? Copilot に質問したところ、次の回答を得た。
 オスプレイは、左右の回転翼を動かす2基のエンジンを有しており、片方が停止してももう一方のエンジンから動力が伝達されて左右の回転翼を回し続けることができます。水平飛行中に片方のエンジンが停止しても、当て舵を殆んど当てることなく他の飛行機よりも簡単に飛び続けることができ、着陸もそのまま両方のエンジンを斜め上にしてやればスムーズに着陸できます。しかし、垂直飛行時に頭が左右に傾くということは致命的なものになってしまい、これを制御するパイロットには極めて高度な技量が要求されます。

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/7689758.html
https://trafficnews.jp/post/103986/2

 オスプレイも一応、安全対策はできているようだ。だが、現実的には、そううまく行くとは限らない。そのことが今回の事例からも窺える。
 エンジンが単に停止しただけなら、何とかなるのだろう。しかしエンジンが火を噴くというような状況では、片方のローターが暴走することもありそうだ。あるいは、制御しようとして制御しきれないまま、ヨタヨタしながら墜落したのかもしれない。……いずれにしても、飛行機よりはずっと安全度が低いようだ。


 (5) 結論

 ヘリコプターならば、「枯れた技術のレシプロエンジンを使う」という方式で、根源的に故障率を下げることができる。また、故障したときも、「オートローテーション」という滑空方式で不時着できる。
 オスプレイは、「高負荷のジェットエンジンを使う」という方式なので、根源的に故障率が高い。それでいて、故障したときには、「墜落を避ける」という機能が弱い。(飛行機に比べると、エンジンとローターが一体化している分、エンジンの故障がローターにつながりやすくて、墜落しやすい。)
 また、オスプレイは「オートローテーション」の機能が弱い。普通のヘリコプターに比べると、ローターは大幅に小さいのに、重量はきわめて重いからだ。それゆえ、オスプレイは「オートローテーションは使わない」というのが原則となっている。エンジン停止時には、小さな翼で滑空するのが原則だ。しかしその翼も、飛行機の翼よりもずっと小さな翼だ。だから滑空する能力も弱い。結局、オートローテーションも、滑空も、ともに不完全である。エンジン停止時の安全対策は、非常に弱いと言える。

 まとめて言えば、こうだ。
 ヘリコプターはヘリコプターなりに、故障対策ができている。飛行機は飛行機なりに、故障対策ができている。しかしオスプレイは、双方を混ぜたキメラ的な構造を持つ。そのせいで、どっちつかずになり、安全対策は不十分なものとなった。双方の長所をあわせもつという狙いで設計されたが、双方の短所をあわせもつという宿命も負った。結局、「一石二鳥」を狙ったあげく、「あぶはち取らず」の中途半端なものになってしまった。

 世界の航空機の主流は、飛行機とヘリコプターだ。このどちらかが圧倒的に多い。この中間となるようなオスプレイは、「ぬえ」的な存在であり、どっちつかずなのだ。だから、決して主流にはなり得ない。狭い用途で、ニッチ向けの機種となるしかない。当然、コストはバカ高くなり、コスパはきわめて悪い。
 このようなものを導入するのは、コスパの点で、まったく馬鹿げていると言えるだろう。(筋が悪い。)

 結論としては、こうなる。
 「オスプレイは複雑な構造を持つので、その分、故障しやすくて、危険度が高い。根源的に欠陥があるというわけではないのだが、安全度が低い機体である。運行停止をするべきだとまでは言わないが、なるべく導入しない方がいい」

 ※ かわりに、F-35 の導入を増やす方がいい。金額的にも同程度の金額なのだから、オスプレイよりは F-35 の方がずっといい。



 [ 付記 ]
 ただし、大型の機種であるオスプレイと違って、小型の機種であれば、比較的低コストで導入できる。だから、小型の機種であれば、問題は少ないと言えるだろう。
  → オスプレイに代わる小型機 V-280: Open ブログ

 特に、攻撃用のヘリコプターとしては、機動性が高いので、アパッチのような攻撃用ヘリよりは、コスパがよくなりそうだ。
 といっても、アパッチのような攻撃用ヘリというのは、もともとべらぼうに高価格で、もともとコスパがすごく悪いんだけどね。(その割には対戦車ミサイルなどであっさり撃墜される。)




 [ 付記 ]
 オスプレイというのは、そもそも日本の自衛隊ではまったく意味がない。理由は二つ。
 (1) オスプレイは、海兵隊のように、敵国への侵略用途である。敵領土にこっそり侵入するための兵器だ。しかし日本の自衛隊は、敵国への侵略をしない。専守防衛だ。したがって、オスプレイの用途はもともとない。
 (2) そこで苦し紛れに「離島防衛」という用途をひねり出した。しかし、米国と戦争をするのならともかく、中国・北朝鮮・ロシアと戦争をするのであれば、離島防衛などは何の意味もない。敵の本土から一挙に日本本土を襲えるからだ。離島をすっ飛ばして日本を襲えるのだから、敵が日本の離島を占領することもない。つまり、オスプレイが離島を守る意義はない。むしろ、逆だ。本土を守るべきオスプレイが、離島に繰り出したら、肝心の本土防衛がおろそかになる。敵軍の飛行機に爆撃されたときに、本土の上空がガラガラになってしまう。最悪だ。その意味で、離島防衛というのは、最悪の戦術なのである。やればやるほど、敗北するだけだ。

 以上の2点は、前にも別項でも述べたとおり。
  → オスプレイは軍事的に無意味: Open ブログ
  → 済州島という盲点: Open ブログ
 
 《 加筆 》
 現実には、敵は離島攻撃をすることがある。オスプレイをおびき出すための陽動戦術だ。
 離島に小部隊を繰り出して、離島を占領する。すると馬鹿な自衛隊はオスプレイなどの戦力を離島に差し向ける。その分、本土の防衛がおろそかになる。本土防衛が空っぽになる。そこで敵は、空っぽになった本土を叩く。離島を占領すると見せかけて、空っぽになった九州を占領する。
 離島も九州も、中国からの距離は大差ないのだ。どっちみち、航続距離の圏内だ。昔の飛行機に比べれば、航続距離は大幅に伸びているからだ。
 で、この陽動作戦にまんまと引っかかって、日本を敗北させよう……というお馬鹿な戦略が、「離島防衛」という方針だ。枝葉末節を守ろうとして、肝心の本体を失ってしまう、という馬鹿丸出し作戦。(昔の日本軍を思い起こさせる馬鹿さだ。常に枝葉末節にこだわる。オスプレイはその象徴。おびきだされる。そのあとは敵のいないところで 放置プレイ。)

posted by 管理人 at 23:48 | Comment(7) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いまどき業務用ならば普通のヘリでもターボシャフトですよ。レシプロのヘリなんて自家用でもなければ少数派でしょう。
Posted by とおりがかり at 2023年12月07日 02:10
 ご指摘ありがとうございました。
 それを踏まえて、記事の一部を取り消して、修正しました。
Posted by 管理人 at 2023年12月07日 08:27
 ニュース。

> アメリカ軍 全世界のオスプレイ飛行停止 “機体に問題あった可能性” | NHK

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231207/k10014280661000.html
Posted by 管理人 at 2023年12月07日 14:35
 オスプレイのエンジンは、エアフィルターに欠陥があり、それが、2015年のハワイの事故や2017年のオーストラリアの事故の原因だということになっていますね。結局、これについては改良はされたのかしら。今回の事故では、まずエンジンから火を噴いたということなので、やはりこれが最初のきっかけではないでしょうか。

(TOKYO EXPRESS誌の記事)
 オスプレイには、不整地着陸の際に砂塵を大量に巻き上げそれをエンジンが吸込み、内部が損傷するという問題がある。このためエンジンの改修が必要だが改修案が決まるのは2017年以降となり、全機に改修が行きわたるのは何時になるか未だ決まっていない。
 https://qr.paps.jp/200pp

(衆議院の質問主意書)
 オスプレイは機体の構造上、着陸時に強い下降気流を発生させるが、その際に地面等の砂塵等の粒子を大量に巻き上げるため、その粒子がエンジン・フィルターで完全に除去されずにエンジン内に吸い込まれて燃焼不良を起こし、失速・墜落するリスクを抱えていることが明らかになっている。
 https://qr.paps.jp/eEVxo

(2017時点のまとめ)
 オスプレイは高速で巡航するため、へり用の微粒子除去フィルターは使えない。一方で2つのローターと大きなディスク荷重のために濃い砂塵を生じ、エンジンの微粒子分離装置に大量の砂が入り装置が処理しきれなくなる。
 最近の試みは、微粒子分離装置を改善された吸入方式で置き換えるやり方だ。油で湿した木綿のフィルターを使い、巡航中はフィルターをバイパスする方式で、ベル・ボーイングが7千万ドルのシステムテスト・プロジェクトを2014年に落札した。このプロジェクトは2017年秋までに結果を出さねばならない。そのあと、いつからどうやってオスプレイにこの新システムを搭載するかの決定がなされる、と海軍航空システムコマンド は言っている。
 ハワイの事故の直接の原因だった砂塵吸い込みを防止するシステムが、早くても2017年秋までは出来ない(要求通りの砂塵防止性能があるかどうかはだれにもわからない)。
 ハワイのオスプレイ事故報告を受けた中谷防衛大臣は、エンジンに限っても少なくとも2017年までは「オスプレイに構造的な欠陥、問題があると」理解しなければならない(と述べた)。
 http://www.rimpeace.or.jp/jrp/sora/hawaiimv22mishap103.html
Posted by かわっこだっこ at 2023年12月07日 23:26
 ついでながら、本稿本文でも言及されている、「オスプレイは、片方のエンジンが故障しても、もう一方のエンジンで両方のローターが駆動できる。よって、ヘリのようなオートローテーションによる着陸モードがなくても、メカニズムがカバーして安全は保たれる」といううたい文句≠ノついても、2022年の事故では、そのメカニズムの欠陥によってそれ(両方のローターの駆動)ができなかったという指摘がされています。

(WEB東京民報の記事)
 米海兵隊は21日、2022年6月に米カリフォルニアで発生し5人が死亡した垂直離着陸機MV22オスプレイの墜落事故について、機体の不具合が原因だったとする報告書を公表しました。
 ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)と呼ばれる、エンジンとプロペラをつなぐクラッチが外れるオスプレイ特有の現象が原因。操縦や整備の人為的なミスを否定し、機体の欠陥を認めた形で、きわめて異例です。部品交換により、HCEの発生率を大幅に減少できるとしていますが、構造的な欠陥は放置したままです。
 https://qr.paps.jp/pjIJLj
Posted by かわっこだっこ at 2023年12月07日 23:45
 なるほど。情報ありがとうございました。
Posted by 管理人 at 2023年12月08日 00:00
 ニュース   ニッポン放送 NEWS ONLINE
 以下、引用。

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 世界最強の米陸軍が「オスプレイ」を採用しないのは理由があるはず 共産・小池書記局長が言及
 
 オスプレイをアメリカから買って導入している国は世界で日本だけ
 世界最強の軍隊であるアメリカ陸軍はオスプレイを採用していない

 アメリカ陸軍はオスプレイを採用していません。世界最強の軍隊であるアメリカ陸軍が採用しないということは、やはり何かあるのではないでしょうか。

  → https://news.1242.com/article/482836

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 「何かある」というのは、「欠陥がある」のではなく、「コスパがすごく悪い」ということだ。
 オスプレイが役立つのは、開戦初期にこっそり敵国に侵入する、という特定用途だけだ。きわめて限定的なニッチな用途だ。米国は海兵隊がそれを担う。
 いったん戦線が大規模に拡大したら、もはやオスプレイの出番はない。海兵隊でなく陸軍や海軍や空軍が働く。そこでは飛行機とヘリコプターが主役であり、オスプレイの出番はない。単にコストがかかるだけで、金の無駄だ。
 日本以外の国が購入しないのは当然で、コスパを考えるからだ。日本は兵力向上でなく、アメリカに金を貢ぐために金を出すので、目的がまったく異なる。
Posted by 管理人 at 2023年12月09日 22:34
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