中国の禁輸/温暖化で死滅/技能実習生
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中国の禁輸
トリチウム水の放出のあとで、中国がホタテの輸入を禁止したせいで、ホタテの行き場がなくなった。だから日本国内で消費を増やしてくれ、と農相が訴えた。
ホタテを1人5粒食べて――。宮下一郎農林水産相は29日の会見で、こう呼びかけた。東京電力福島第一原発の処理水放出で、中国と香港が日本の水産物の輸入規制を強化。
日本国内から中国と香港に年17万9千トン(2022年)のホタテを輸出していた。貝殻付きのホタテ1枚は200〜250グラムという。この重さで計算すると、国民1人あたり年5〜7粒食べれば、行き場を失った輸出分の多くを消化できるという理屈だ。日本国内の消費量は年22万トンで、これも含めると年十数粒になる。
( → 「ホタテを1人年5粒食べて」 農水相が国民に異例の呼びかけ:朝日新聞 )

国民はともかく、米軍が協力してくれるそうだ。
東京電力第1原発の処理水放出を理由とした中国による日本産水産物の全面禁輸を受け、米軍が日本の水産業者と長期契約し、ホタテなどを買い取ると明らかにした。
購入した水産物は、米軍基地内の売店や飲食店で米兵向けに販売するほか、米艦乗員の食事に使用する。エマニュエル氏は、日米で連携して「中国の経済的威圧に対抗していく」と述べた。
( → 米軍が日本産ホタテ購入へ長期契約、「中国の経済的威圧に対抗」と米大使 | ロイター )
この背景には、処理水の安全性が確認された、ということがある。
国際原子力機関IAEAから、ALPS処理水の海洋放出について、国際安全基準に合致していること等を結論付ける「包括報告書」が本年7月4日に公表されました。
( → IAEAがALPS処理水海洋放出の安全性を確認|ALPS処理水(METI/経済産業省) )
さらに、私の見解を言おう。
トリチウム水というのは、ただのベータ線(電子線)を含むだけだ。そのベータ線は、空気が 5mm もあれば遮ることができる程度に、透過力が弱い。下記の通り。
トリチウムは、「放射性物質」の一種です。ただ、トリチウムが放出する放射線の種類は、「アルファ(α)線」「ベータ(β)線」「ガンマ(γ)線」といった放射線のうち、β線のみです。このβ線は、薄い金属板などでさえぎることができます。さらに、トリチウムが放出するβ線はエネルギーが弱いため、空気中を約5mmしか進むことができず、紙1枚あればさえぎることが可能です。![]()
( → 「トリチウム」とはいったい何?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 )
要するに、トリチウムによる放射線なんて、まったく無視していいレベルだ。
それに比べれば、宇宙から降りかかる宇宙線による放射線の方が、桁違いに多い。宇宙からはものすごい量のガンマ線が降りかかってくる。そっちを気にした方がいい。(特に、飛行機に乗った際には、ガンマ線の量は無視しきれないほど多い。)
それに比べれば、トリチウム水のベータ線の量は無視できる程度に小さい。こんなものを気にするのは馬鹿げている。杞憂に近い。
とすれば、中国の禁輸に対しては、日本は断固として措置を取るべきだ。日本政府は、中国に何度も抗議しているが、いくら抗議しても、何の効果もない。蛙の面にションベンだ。
ならば、日本としてもしっかり対抗措置を取るべきだろう。何らかの輸入制限措置を取ることが好ましい。向こうが食品を禁輸したのだから、日本も対抗措置として中国からの食品を部分的に禁輸すればいいだろう。とりあえずは、「中国製の加工食品には一律で 30% の課徴金をかける」というふうにするといい。
当然、中国は対抗措置を取るだろうから、その場合には、さらに対抗措置を拡大して、最終的には輸出入を全面停止することをめざす、と公言しておけばいい。中国向けの半導体製品を全面禁輸することを最終目標とする、と公言しておけばいい。そうすれば、中国の対抗措置を予防できる。
温暖化で死滅
ところが、逆の話もある。日本が中国にホタテを輸出したくても、肝心の日本ではホタテを生産できなくなりつつあるそうだ。
というのも、温暖化のせいで、水温が上がって、青森県のホタテがどんどん死滅しているからだ。
11月下旬、青森県の陸奥湾に面する蓬田漁港。
「3割ほど死んでる。こんなことは初めてだ」
口が開いたり成長が止まったりして「へい死」した稚貝がいくつも見つかった。37年の漁師人生で最もひどい状況だ。
原因はホタテが苦手な高水温。稚貝は26度を超えると衰弱して死ぬこともある。今年は、猛暑や海洋熱波により、水温が上昇し始める時期が早く、陸奥湾では7月下旬に水深15メートルで23度を超え、その状態が2カ月余り続いたという。9月上旬には最高水温が平年より4度以上高い場所もあった。
県内の生産量の約半分を占める平内町漁業協同組合販売課長の小塚達典さん(42)によれば、稚貝の9割がへい死した地点もあるという。
( → 大量死するホタテ、育たないカブ… 沸騰する地球、各地で異常事態:朝日新聞 )
陸奥湾で駄目なら、その北にある室蘭のあたり(内浦湾)でホタテを生産すればいい……と思ったが、そこではすでにホタテ生産はなされていて、今さら追加するまでもない。
とすると、内浦湾のホタテ生産はそのまま継続されるので、陸奥湾の分が減っただけ、単純にホタテ生産が減ることになる。
「内浦湾よりももっと北ではどうか?」
と思ったが、どこもかしこも海岸線がまっすぐで、貝類の生産に適するような湾がない。
かろうじて札幌のそばの石狩湾で少しだけ生産されているが、無視できる量である。
石狩湾のホタテ養殖は、主に「稚貝(子供の貝)」で、大人の貝(成貝)については、ほとんど行われていません。
全国流通レベルの生産としては「石狩湾でホタテ成貝の養殖は行われていない」と言っても差し支えありません。
なぜかというと、石狩湾を含めた日本海全体が、形状的にも潮流的にも、ホタテの養殖に向かないからです。
日本海は潮流が速いせいか、稚貝を撒いても、4年後にはどっかに流されてしまい、定着しないそうです。
仕方ないので、稚貝の養殖だけやって、それをオホーツク海の漁協などに売ってるわけです。
( → 石狩湾でホタテの養殖は行われていますか? - Yahoo!知恵袋 )
というわけで、陸奥湾でホタテの生産ができない場合には、もはやホタテ生産は諦めた方がいいようだ。代替地もない。
では、どうする? 陸奥湾では、他の貝類を養殖すればいいだろう。
ざっと調べたところ、アワビやハマグリも有力な候補だが、牡蠣の方がよさそうだ。現時点では、牡蠣の養殖には寒すぎるように思えるが、温暖化が進めば、牡蠣の養殖も可能となるだろう。温暖化を逆手にとって、うまく商売にできるわけだ。
技能実習生
では、それで済むかというと、そう簡単な話でもないようだ。
現代のホタテ産業は、技能実習生に頼り切っている。これでは、技能実習生の労働力を搾取することで商売をしている、と言えなくもない。
下記のような話題もある。
東日本大震災の津波被害を受け、居住用建築物の建設が禁じられた宮城県南三陸町の災害危険区域で、地元の水産加工会社が工場を造り、2階を寮として外国人技能実習生の女性約10人を生活させていた。災害から人命を守る法令の趣旨にそぐわないことから、町は改善を促す方針だ。
水産加工会社は2013年ごろから、フィリピン、ベトナムから来た計約10人の技能実習生を災害危険区域内の工場で働かせ、寮に住まわせていた。工場はほぼ港に面しており、海抜は約1メートル。1階がワカメの選別、ホタテのからむきをする加工場、2階が寮で、約10人は職住一体の生活を送ってきた。フィリピン人の一人は「東日本大震災で津波が来たのは知っている。でも『災害危険区域』とは知らなかった」と話す。
同社社長は取材に対し、フィリピン人は帰国したが新たにベトナム人5人を受け入れたとし「災害危険区域という認識はなかった。現在は技能実習生10人の寮だが、行政から正式な指導があれば従う」と答えた。
町幹部は「災害危険区域と知らせず住まわせているのは問題だ。改善を促したい」としている。
( → 災害危険区域に技能実習生の寮 工場「認識なかった」 [宮城県]:朝日新聞 )
さしずめ、タコ部屋だ。ひどいものだね。
ただ、技能実習生の制度を是正する方針がある。タコ部屋みたいな状況は是正されていくことになる。
だが、技能実習生がいなくなるにつれ、産業そのものが消滅しかねない。搾取することで成立する産業構造があるからだ。
東北の水産業の多くは、消滅してもやむを得ない事情にある。もっと高収益の体質に改革しないと、産業が生きながらえる価値がない。
特にひどいのは、「取り尽くし型の漁業」を続けることで、水産資源量が激減してしまったことだ。自分で自分の首を絞めているありさまだ。
→ 魚を獲り尽くしてしまう前にやるべきこと、TAC(漁獲可能量)国内編 - 魚が消えていく本当の理由
→ 持続可能な漁業の推進 |WWFジャパン
→ たくさん獲るのをやめたら、儲かって休みも増えた。佐渡のエビ漁に見えた希望 | Yahoo! JAPAN SDGs
※ 魚を獲り尽くすこともその一例だが、「自分で自分の首を絞めている」という愚行は、日本のあちこちで見られる。先日も、EV の分野で同等の愚行を指摘したばかり。
→ ガソリン減税は時代錯誤: Open ブログ
【 追記 】
トリチウム水の放出量では、日本よりも中国の方が 10倍も多い、という報告がある。
《 処理水のトリチウム量は「中国原発の1割」、中国の水産物輸入停止のWTO通知に政府反論書 》
日本政府は……反論書をWTOに提出した。
「中国の原子炉を含む世界中の原子力施設の方が、年間でより多くのトリチウムを排出している」と記載。福島第一原発から放出される年間のトリチウム量は、中国の秦山原発から放出されるトリチウム量の約 10分の1だと例示して強調した。
( → 読売新聞 )

上の事実を指摘した上で、該当地域の周辺については、農産物と水産物を全面輸入禁止にするといいだろう。さらには、「秦山原発は危険だ。稼働中止を求める」と大々的に宣伝して、「中国は危険だ」と中国及び世界に訴えて、中国への観光客を抑止するといいだろう。
「トリチウムは危険だと言っているのは中国自身だ」という理屈で。
※ 特に、上海は秦山に隣接しているので、「上海は危険だ。近づくな」と大々的に宣伝するといい。あえて風評被害を起こすわけだ。
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一般に、日本政府は外交において「専守防衛」に徹しすぎている。議論には「専守防衛」も憲法9条も影響しないのに、そんなことをするのは、馬鹿げている。それはただの「議論下手」であるにすぎない。むしろ、「攻撃こそ最大の防御」と理解するべきだ。だからこそ、上のような反論や報復措置で、対抗するべきなのだ。
※ 「人のフリ見てわがフリ直せ」という言葉があるが、中国はその逆だ。「自分のことを棚に上げて」という方針だ。呆れた話だ。だが、それを見ても、指摘しないで、自己弁護しかできないでいる日本は、もっと馬鹿だね。ジャイアンに殴られっぱなしの のび太みたいだ。意気地なし。







ホタテ料理の画像はどれも BingAI( Copilot )によるものだが、どれもおいしそうですね。