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スタッドレス廃止?
オールシーズンタイヤを推奨する、という話がある。
《 「スタッドレス売れるのは日本だけ」、住友ゴムがタイヤ種類集約で省資源化図る 》
住友ゴム工業は、省資源化を目的として、現在「サマー」や「スタッドレス」など性能別に販売しているタイヤを、将来的に全天候に対応する「オールシーズン」タイヤにカテゴリーを集約していく方針を打ち出した。
日本と欧米では、オールシーズンタイヤに対する認知度や普及率が大きく異なる。例えば、北米地域ではオールシーズンタイヤの普及率が「6〜7割程度」(同氏)に対して、日本のそれは数%程度とみられ、「少なすぎる」(同氏)と嘆いた。
村岡氏は続けて、「日本は毎年冬季にスタッドレスタイヤへ履き替えるユーザーが多いが、スタッドレスタイヤが売れている地域は世界的に見て日本だけ」
( → 日経クロステック(xTECH) )
日本と欧米の差を指摘しているが、そもそも欧米では雪はほとんど降らないし、路面が凍結することもほとんどない。まともに雪が降るような地域なら、スノータイヤを使うだろう。彼我を比べるのはナンセンスだ。人は人、自分は自分。
オールシーズンタイヤの性能
問題は性能だ。オールシーズンタイヤの性能は、スタッドレスタイヤと同程度なのか? それを検証したテストがある。JAF のテストの結果は、下記だ。
圧雪路とは雪が踏み固められた状態の路面で比較的しっかりとグリップします。一方、氷盤路はつるつるのスケートリンクのように凍結した試験用の路面のことです。実際の路上ではアイスバーンに近い状態です。
圧雪路での試験結果は、スタッドレスタイヤが17.3m、オールシーズンタイヤが22.7m、ノーマルタイヤが29.9mでした。オールシーズンタイヤはノーマルタイヤより短い距離で停止できたものの、スタッドレスタイヤに比べて5m以上も制動距離が延びました。
氷盤路での試験結果は、スタッドレスタイヤが78.5m、オールシーズンタイヤが101.1m、ノーマルタイヤが105.4mでした。 オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤに比べて20m以上も制動距離が延びて、むしろノーマルタイヤに近い数値となっています。
1〜2o程度の積雪ならば雪道の走行も可能とされているオールシーズンタイヤですが、これらのテスト結果から、雪道走行ではスタッドレスタイヤのような気持ちでの運転は危険であることが分かります。
オールシーズンタイヤを過信することなく、積極的にスタッドレスタイヤやチェーンなどの滑り止め対策の装備を活用することを心がけてください。
( → 「オールシーズンタイヤ」って、どんなタイヤですか? | JAF クルマ何でも質問箱 )
オールシーズンタイヤは全然ダメだ、とわかる。スタッドレスのかわりにはならない。こいつはノーマルタイヤの一種だと思った方がいい。
スタッドレス
では、スタッドレスタイヤならば十分か?
朝日新聞の声欄に、こうある。
スタッドレスタイヤに交換した。気がめいる。冬の運転で一番怖いのは早朝のアイスバーンで、どんなに細心の注意を払って最新のタイヤで走っていても、ブレーキが利かないほど滑ることがある。昨年は先行車の数センチ手前でやっと車が止まって、全身から冷や汗が出た。
( → 2023年11月23日 佐藤晃子 )
オールシーズンタイヤよりはマシだが、スタッドレスもまだまだ不十分だ、とわかる。
困った。どうする?
ABS と 4WD
そこで出るのが ABS(アンチロックブレーキシステム)だ。ABS をスタッドレスタイヤと組み合わせることで、現状では最大の効果を発揮することができそうだ。これで十分だと言えるほどではないのだが、可能な範囲内ではベストだと言えるだろう。
ただし、これで話が終わってしまっては、つまらない。
「そんなことは知っているよ。いちいち偉そうに書くな」
と文句を言う読者もいるだろう。
そこで、オマケの知識を加えておこう。こうだ。
「ABS を使うなら、EV または e-POWER と組み合わせるといい」
これはどういうことかというと、こうだ。
「EV または e-POWER では、モーターで緻密な制御ができるので、ABS を緻密に制御できる」
このことは、次の記事に記してある。
ブレーキで止まろうとすると、ABSが介入して液圧、つまりブレーキを抑える力を緩めてしまうので制動力が伸びてしまう傾向となるのが一般的だ。しかしワンペダルでアクセルオフをするとモーターの回生力により、いわゆるエンジンブレーキ的な制動力がかかる。この制動力の強さはモーターの制御で自在にコントロールできるのでABSよりもはるかに緻密に制御できるため、氷上でも減速Gを感じるほどの減速感が得られる。
日産の公表では、制動距離がブレーキでABSを作動させた状態よりも40%も改善されるという。
( → 【日産 ノート 氷上試乗】ワンペダルが雪国で好評な理由に納得した…中谷明彦 | レスポンス(Response.jp) )
さらに、4WD モデルでは、後輪でもモーター制御ができるので、いっそう緻密な制御ができるそうだ。というわけで、
「 EV または e-POWER の ABS を使うのがいい。特に 4WD だと、もっといい」
というのが、結論となる。これをスタッドレスと組み合わせるのが最強だ。一方、オールシーズンは全然ダメだ。
※ 朝日新聞の投書をした人は、本項の記事に従えば、安全度が高まって、安心できるだろう。
