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五つの論点で考察する
Twitter 買収は失敗
Twitter を買収したことは、収支の点で言えば、大失敗だった。広告収入が激減しているからだ。
Twitter改め「X」の広告をAppleとIBMが停止したことをお伝えしていましたが、……他にもディズニー、ワーナー・ブラザース、パラマウントなども停止しているということです。
2022年から2023年にかけて、全世界の広告費が前年比54.4%減少する見込みだったものの、さらに減少が大きくなる可能性があるということです。
( → 【X】広告出稿を取りやめたのはApple、IBMだけでなくディズニー、ワーナー・ブラザース、パラマウントなども - ネタフル )
広告収入は3分の1ぐらいにまで激減してしまいそうだ。
《 加筆 》
後日、状況はさらに悪化している、と判明した。大手の広告主はみんな Twitter から退出しているそうだ。もはや残っているものの方が例外的になったようだ。それでもマスクは方針転換をしない。
ここ数週間で広告出稿をやめた広告主は200社を超える。 年末までに最大で7500万ドルの広告収入を失う危険にさらされている。
マスクは広告主のボイコットが長期化すれば、Xがつぶれる可能性があることを認める反面、Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろうと語った。
「私は決して迎合しない」とマスクは言った
( → 広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝? | The New York Times | 東洋経済オンライン )
失敗の原因
失敗の原因は、何か?
直接的な原因は、広告が減ったことだが、広告が減ったのはどうしてか? マスクが反ユダヤ的な発言をしたことも理由だが、それ以前からアップルなどの大口が続々と離れていた。その理由はいろいろとあるが、マスクの経営が原因だったことは間違いない。あれこれと余計な改革をしたが、その改革のすべてが裏目に出て、マイナスしかもたらさなかった。
そのなかでも最も悪かったのが、利益狙いで、各種の「値上げ」をしたことだ。「ツイッター・ブルー」を導入したり、各種の有料プランを導入したり、広告を増やしたり、あれやこれやと「金を取る」という方針を取った。そのせいで、逆にユーザー離れを招いた。こうなると、広告効果が減るので、広告主も離れることになった。
ではなぜ、マスクはあれこれと「値上げ」をしたのか? それは、 Twitter を買収するときに銀行から借りた金(高利の融資)を返済しようとしたからだ。借金の返済。それを目的として、「急いで金を返そう」と思って、「金を稼ごう」と思って、値上げをした。
しかしこれは投資の基本原則に反する。事業投資というのは、金を借りて、事業をして、事業を拡大するが目的だ。ここでは、金をどんどん借りて、事業をどんどん拡大する、というのが成功なのである。逆に、金を返そうというのは、事業の拡大よりも収益を狙うということであり、事業の成長が止まったことを意味する。これでは投資としては意味がない。
実は、 Twitter という会社は、「金を借りることで事業を急成長させる」ということの典型的な事例だった。
出典:BBT大学院
従業員数も売上げも、ものすごい急成長を遂げている。一方で、収益は「少額の赤字から少額の黒字へ」と転じつつあったが、全体としてみれば、「損得なしのトントン」ぐらいに近い。
このような経営状況は、「投資」としてみれば、きわめて健全である。事業が急成長するときには、利益を出すよりも、その利益を投資に回す方が利口だからだ。比喩的に言えば、「今日の 100円よりも、明日の 150円」である。投資に回せば、金がどんどん増えるのだから、今すぐ利益として得るよりは、投資に回す方が得なのだ。
Twitter という会社は、「ここ数年、黒字を出せなかった」というふうに批判されることも多いが、それは投資というものをまったく理解できていない判断だ。「ここ数年、黒字を出せなかった」というのは、「事業が不振だという証拠だから、失敗である」のではなく、「事業が急成長している証拠だから、成功である」と見なすのが正しい。
このようようなことは、会計学の基礎を理解していれば、すぐにわかることだ。経営者としては必須の知識だとも言える。
しかし、である。マスクはその「会計学の基礎」を理解できなかった。「投資にとって大切なのは事業の拡大だ」ということを理解できなかった。むしろ「借金の返済こそが大事だ」と思い込んだ。そこで、収益を拡大する方針を選んだ。
しかしそれは同時に、「事業の縮小」を招く方針だった。利益率を上げようとすればするほど、事業の拡大は阻害された。かくて、(値上げのあとで)ユーザーは離れ、広告主は離れた。……それは、会計学の基礎を理解している人にとっては、当たり前のことだ。しかし、マスクはそれを理解できなかった。
だから、 Twitter という会社はどんどん崩壊しつつあるのだ。
そして、そのすべての根源は、マスクが「会計学の基礎」を理解できなかったことによる。つまり、マスクは「経営者としては三流どころか四流だった」(有害なだけだった・存在自体が悪だった)ということになる。
マスクは、テスラなどの会社を作ったときには超優秀な投資家であったのだが、 Twitter に関しては超一流どころか四流だったことになる。
テスラとTwitter の差
マスクは、 Twitter では失敗したが、その前にテスラでは成功した。ではなぜ、 Twitter では失敗したのに、テスラでは成功したのか?
その理由を推察すれば、こうだ。
「マスクがそもそも巨万の資産を形成したのは、最初のころに、ペイパルへの投資で儲けたからだ。その金を元手にして、テスラやスペースX を設立した。この両社が、急成長を遂げて、巨万の富を形成することになった。
ここで、マスクは自動車や宇宙の分野については無知だった。そこで、これらの分野の細目については、自分では口出しをせず、専門家に任せた。だから、専門家が正しい道を選んで、会社は正しい道を進んだ。
一方、 Twitter では、会社の分野はマスクの得意なIT分野である。そこでマスクはあれこれと口出しした。そのせいで、専門家の意見を聞くことなく、すべてを独断専決で決めた。かくて、馬鹿な経営者が独裁体制で好き勝手をすることになり、迷走するに至った」
かくて、テスラと Twitter とでは、経営方針がおよそ正反対と言えるほどになった。だから、会社の成長性もまた、正反対になったのである。
マスクの独裁体制
マスクは、テスラやスペースX では部下の専門家に権限を委譲したのに、 Twitter では独裁者として独断専行をする。
かつて「 CEO を辞めます」と公約したくせに、肩書きだけを変えて、相も変わらず独裁者としてふるまっている。実質的には CEO も同然だ。新任の CEO は名ばかりも同然だ。公約は反故にされたも同然だ。ひどいね。マスクはまったく、とんでもない嘘つき野郎だ。(ペテン師だね。)
ではなぜ、彼はこれほどにも独裁的にふるまうのか? テスラやスペースX ではできたことが、どうして Twitter ではできないのか? マスクは急に大馬鹿野郎に転じてしまったのか? もしかして、年を取って耄碌したのか? (まだ 52歳なのに。)
私の考えを言おう。こうだ。
「マスクは Twitter という会社を、オモチャにして、遊んでいる。RPG のシムシティで都市を建設したり、稲作ゲームのサクナヒメを操作したり、あつまれどうぶつの森で遊んだり……というふうに。あるいは、人生ゲームという双六みたいなゲームで遊んだり……というふうに。こういうふうに、ゲームで遊ぶことがある。それと同様のことを、ゲームでなく現実の会社経営において、好き勝手して遊んでいる」
こういうふうに「現実の会社で遊ぶ」というのは、バーチャルをリアルにしてしまうようなものだから、通常は不可能である。しかしマスクは金にものを言わせて、それを実現してしまった。6兆円を投じて、 Twitter という会社を買収してしまった。
つまり、マスクは 6兆円を投じたゲームをしているのだ。普通のゲームなら 6000円前後でできるのだが、マスクは( 6000円の 10億倍にあたる)6兆円を投じたゲームをしているのだ。
ま、それで失敗したとしても、まだ大丈夫。マスクの全資産は 24兆円もあるからだ。
→ https://www.manegy.com/news/detail/7630/
なお、その後に円安が進んだので、円価格で換算すると、現在のマスクの総資産は 26.8兆円になっている。約 27兆円ですね。
というわけで、 Twitter がつぶれようがつぶれまいが、彼は好き勝手に Twitter という会社をオモチャにできるわけだ。だから彼は次々と愚行を繰り返して、 Twitter という会社の価値を毀損し続けているのだろう。これもゲームだと思えば、仕方ない。現実の会社経営をやっているとしたら、6兆円を紙屑にしてしまうというのは怖くてできないが、彼は会社経営をしているのではなく、ゲームをしているのだ。だから、どんなに馬鹿げたことでもやれるのだ。まともな意見には一切耳を貸さずに、自分の独断専行だけで次々と方針を決めて失敗する。……まともな人間にはそんなことはできないが、6兆円を使ったゲームごっこをしている人はあくまで好き勝手をやる。そういうことなのだろう。
以上が、私の認識だ。
X という名前にしたわけ
Twitter という名前は使いやすいが、X という名前は使いにくい。そもそも、アルファベットの一文字なので、その文字はどこにでもある。検索しても、X という文字は(英文記事の)ページ内にたくさんあるので、検索もしにくい。また、ググっても、最初に出てくるのは X Japan であり、旧ツイッターではない。まったくもって、不便なこと、このうえない。
ではなぜ、マスクはこんな不便な改名をしたのか? ユーザーの利便性を無視しているのは、どうしてか? その理由は、Wikipedia の記事を見るとわかる。
1999年、マスクはオンライン金融サービスと電子メール決済の会社であるX.comを共同設立した。X.comは連邦政府が保証する最初のオンライン銀行の1つであり、設立後数カ月で20万人以上の顧客が加入した。マスクは創業者でありながら、投資家から経験不足とみなされ、年末にはIntuit社のビル・ハリスCEOに交代した。
2000年、X.comは、オンライン銀行コンフィニティ社の送金サービス「PayPal」がX.comのサービスよりも人気があったため、競争を避けるためにコンフィニテイ社と合併した。その後、マスクは合併した会社のCEOとして復帰した。しかし、マスクはUnix系ソフトよりもMicrosoft系ソフトを好んでいたため、従業員の間に溝ができ、コンフィニティの創業者であるピーター・ティールが辞任することになった。2000年9月、技術的な問題が重なり、ビジネスモデルもまとまらないことから、取締役会はマスクを更迭し、ティールに交代させた。ティールの下、同社は送金サービスに注力し、2001年にPayPalと改名した。
2002年、ペイパルはeBayに15億ドルの株式で買収され、ペイパルの株式の11.72%を持つ筆頭株主であるマスクは1億7580万ドル (約200億円)を受け取っている。それから15年以上経った2017年、マスクはペイパルからX.comのドメインを個人的な思い入れから購入した。
( → イーロン・マスク - Wikipedia )
マスクは経営者として何度も失敗してきた。投資家として先を見通す能力は卓抜であったが、経営者として経営をする能力は弱かった。ジョブズやゲイツのような能力はなかった。その人生は挫折だらけだった。
だからこそ、投資家として大成功を収めたあとでは、懐旧の念に駆られて、初期にこだわった X という名称に取り憑かれているのである。いわば青春の思い出のように。そして、それを取り戻すことは、青春を取り戻すことであるように。若さを取り戻すことであるように。
年を食ってツイッターで大失敗したマスクは、自分の生き方を反省するかわりに、若いころの自分を思い出させてくれる名称を、今の時期に呼び戻しているのである。
人は老いれば老いるほど、若い時代の自分を取り戻したがるものだ。
[ 付記1 ]
では、マスクは、どうすればよかったのか? 正解を述べよう。
(1) Twitter については、自分で経営はしないで、投資家としての立場に徹するべきだ。経営は、他人に任せるべきだ。
(2) 経営の細目については、一切、口出しするべきではない。完全に権限を委譲して、すべての決定を部下に委ねるべきだ。自分は株主としての立場に徹するべきだ。
(3) 事業は当面の黒字化を求めずに、売上げの急上昇を狙うべきだ。従来通りに。
(4) 要するに、以上をまとめれば、従来の Twitterを継続するべきだった。経営者も、従業員も、すべてを従来通りにするべきだった。
(5) その上で、数年後には、拡大した Twitter が「成長」から「収益」に転じるのを確認したあとで、「高収益の企業」として株価が上昇したのを確認したあとで、全資産を売却するべきだ。借金の返済は、全株式の売却代金によってまかなうべきであり、事業の営業収益でまかなうべきではないのだ。事業で黒字を出そうとするより、値上がりした資産の売却益を出そうとするべきだ。
[ 付記2 ]
なお、 Twitter の買収資金は、全額を銀行融資で借りればよかった。借金の担保はテスラ株とスペースX の株だ。双方で 23兆円もあるのだから、それを担保に 6兆円を借りるのは容易だ。その後に返済は、「10年後までのいつかにまとめて返済」ということにして、ずっと借りっぱなしにしておけばいい。
現実には、そうしなかった。 Twitter の買収資金の大半を自己資金でまかなおうとした。そのために、テスラ株を大量に売却した。すると、テスラ株は暴落して、マスクの全資産は大幅に減少してしまった。売却で得た金以上に、莫大な資産減少を招いてしまった。愚の骨頂。
はっきり言って、マスクは金の勘定の仕方をまったく理解できていない。帳簿の見方もわかっていない。そばに忠告してくれる部下さえもいないようだ。独断専行。唯我独尊。投資と経営とをゴッチャにしている。
かくて、金の点では大損する。しかも、そのことをまともに理解できない。だからこそ、 Twitter の資産価値が暴落するような経営をやり続けているのだ。馬鹿丸出しというしかない。
ま、大金持ちの馬鹿遊び、ということかもね。
→ http://openblog.seesaa.net/article/495209031.html
→ http://openblog.seesaa.net/article/494908003.html
→ https://www.businessinsider.jp/post-279259