2023年11月22日

◆ 賃上げよりも労働分配率

 ( 前項 の続き )
 賃上げを促すには、どうすればいいか? 実は、賃上げそのものをめざすより、別のものをめざすといい。それは労働分配率を上げることだ。

 ──

 前項で述べたように、政府の賃上げ税制は失敗している。
 では、かわりにどうすればいいか? それが問題となる。

 単純に前項の対案を考えるなら、こうなる。
 「継続雇用者だけでなく、従業員全体の平均賃金を上げることをめざせばいい。つまり、賃金総額を従業員数で割った値で、賃上げ率の増加を見ればいい」


 しかし、この方法は駄目だ。なぜなら、企業の拡大で新規雇用者を増やすと、平均賃金が下がってしまうからだ。業績の良い会社が雇用を増やせば増やすほど、平均賃金が下がることになって、かえって罰を受ける結果になる。それでは本末転倒だ。
 その点では、「継続雇用者の賃金上昇額を見る」という現状の方式の方がまともである。つまり、上の対案は、駄目なのだ。
 したがって、上の対案とは別の対案を示す必要がある。では、それは何か? それがわからないと困る。困った。どうする?

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「そもそも日本では労働分配率が低い。先に述べたとおり。
   → 労働分配率の低下こそ: Open ブログ
  そこで、労働分配率の高い企業を優遇して、労働分配率の低い企業を冷遇すればいい。そのためには、上がったか下がったかという変化(増分)を見るのではなく、現行の水準を見て、高いか低いかを見ればいい」


 これが新方針だ。この方針にしたがって、具体的には、次の制度を取ればいい。
 「賃上げ額でなく、賃金の支払い総額を対象に、減税する。その方法は、(税制上でのみ)賃金の損金算入率を上げる。現行では賃金の損金算入率が 100% だが、この値を 110%程度にする。このことで、課税対象となる営業利益の額と率が圧縮される。実質的に法人税の減免と同じ効果が生じる」



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出典:朝日新聞


 実例で示そう。
 上のグラフでは、労働分配率の推移を示している。そこで、例として、労働分配率が 50% の場合と 40%の場合を考えよう。モデル的には、売上高が 100億円で、利益が 10億円だとする。
 労働分配率が 50% の場合には、賃金が 50億円だが、損金として 55億円が認められるので、利益は5億円だと見なされて、この5億円だけに法人税がかかる。
 労働分配率が 40% の場合には、賃金が 40億円だが、損金として 44億円が認められるので、利益は6億円だと見なされて、この6億円だけに法人税がかかる。
 前者では5億円に法人税がかかり、後者では6億円に法人税がかかる。法人税率 が 30% だと仮定すると、前者では 1.5億円、後者では 1.8億円となり、後者の方が法人税が 0.3億円も多くなる。……つまり、労働分配率の低い企業ほど、多くの法人税を払うことになる。
 こうして「労働分配率の低い企業には罰金がかかる」という形にして、企業が労働分配率を上げるように促すわけだ。これが、すなわち、実質的には賃上げをもたらすことになる。「給料の高い会社ほど、法人税が減免される」という形で。
 かくて、問題は解決する。   Q.E.D.

 ──

 ただし、付随的に、次のことも併用する必要がある。(
 「法人税の減免(賃金の損金算入率を上げること)だけを実施すると、総額では法人税が減税になってしまう。そこで、法人税が減税になった分、別の形で法人税を上げる必要がある。結果的には、平均では損得なしにするようにする。つまり、平均よりも労働分配率の高い企業掛けが得をして、平均よりも労働分配率が低い企業は損をするようにする」

 そのための具体的な方策は、いろいろと考えられるので、ここでは特に指定しない。例としては、次のような案が考えられる。
  ・ 法人税を一律で引き上げる。
  ・ 賃金の損金算入に定率の減額を施す。
  ・ 労働者の雇用に対して人頭税を課する。

 このような方法はいろいろと考えられる。そのいずれでもいい。大切なのは、上ののことだけだ。

 ──

 ともあれ、こうすれば、うまく行くはずだ。
 制度の意味としては、こうなる。
  ・ 賃金の高い会社が減税。賃金の低い会社が増税。
  ・ 生産性の高い企業ほど優遇。生産性の低い企業ほど冷遇。

 結果的に、生産性の低い会社が退場する。かくて、日本全体の生産性が向上する。

 この原則は、実は、今の日本の制度とは逆だ。今の日本の制度では、生産性の低い企業ほど優遇される。その典型が、中小企業の法人税率だ。また、非正規労働者の社会保険料の企業負担の免除というのも、駄目な企業ほど優遇される結果になる。
 人間ならば、誰にも生存の権利があるので、低所得の人を優遇することは大切だ。しかし、それと同じ発想で、生産性の低い企業を優遇すると、結果的に、日本全体で生産性が低下してしまう。それよりはむしろ、生産性の低い企業を等させるべきなのだ。人には生存の権利があるが、企業には生存の権利はないからだ。企業なんてものは、いくらでもつぶして構わないのだ。

 ともあれ、その対策が上記だ。ここでは、賃上げを促進するだけでなく、賃上げしない企業に罰を科する。馬の前にニンジンをぶら下げるだけでなく、馬の尻を鞭でひっぱたく。それでこそ効果があるというものだ。

( ※ ただし、そういうふうにすると、企業は厭がる。企業は「ニンジンだけを与えてくれ。尻をひっぱたたかれるのはご免だ」と言う。それに対して、「はいはい。わかりました。おっしゃる通りにします」というのが、自民党だ。「そのかわり、政治献金をよろしく」と。……両方そろって、税金泥棒だな。)



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posted by 管理人 at 20:19 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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