2023年11月21日

◆ 賃上げ税制の効果

 賃上げを促す税制(賃上げをした企業の法人税を減税する税制)の効果はあったか? まさしく賃上げは実現したか?

 ──

 このような税制によって賃上げを促せば、企業は減税を狙って賃上げをするだろう……というのが、政府の狙いだった。
 これは、「エサをばらまけば魚は食いつくだろう」というバラマキ政策の発想だ。自民党の政治家はこれを当然視したし、政府の官僚も特に反対はしないまま、この制度は実施された。
 しかし、この制度がおかしいことは、すぐにわかる。これは次のことを意味するからだ。
 「 100円を支払ったら、20円を差し上げます。だから、20円をもらうために、100円を支払ってください」
 これを受けて、人々は 20円をもらおうとするだろうか? まさか。「 20円の得をするために、100円の損をする」というふうにしたがる人はいない。そんな阿呆はいない。
 ところが、政府は「人々はそういう阿呆ばかりだ」と信じて、そういうバラマキ政策を実施した。しかし、それに従う阿呆はいないので、こんなゴミみたいなエサに食いつく魚はいないわけだ。

 ──

 以上のことからして、この制度が失敗するのは、目に見えている。で、結果はどうだったか? それについての報告が出た。
 自民党の税制調査会(宮沢洋一会長)は16日、岸田文雄首相が力を入れる「賃上げ促進税制」について、勉強会を党本部で開いた。制度の検証を受け、賃上げの動機につながったとは言いがたいとの意見が出た。
 現行の制度は、大企業の場合、継続雇用者の給与総額が前年度比で3%以上増えれば、給与増加額の15%を法人税額から控除できる。4%以上なら25%控除できる上乗せ要件もある。中小企業は雇用者全体の給与総額を1.5%以上増やせば15%分を、2.5%以上なら30%分を控除できる。22年度は全体で21万件適用され、5千億円の減収となる見通し。
 この日、財務省が自民税調に示した資料「賃上げ促進税制の検証」によると、22年度にこの税制を使った大企業のうち、……(以下略)
 分布状況も調査したが、基本要件や上乗せ要件の前後では一部を除いて、賃上げの動機になったとみられるような大きな変化はなかった。
( → 賃上げ税制「効果あったと言いにくい」 自民税調が検証、制度改正へ:朝日新聞デジタル

 「基本要件や上乗せ要件の前後では一部を除いて、賃上げの動機になったとみられるような大きな変化はなかった」
 というのが重要だ。要するに、賃上げという現象自体は見られたのだが、それはどっちみち賃上げするはずの会社が賃上げしたというだけのことで、制度の前後では賃上げ率の向上という政策効果は見られなかったわけだ。つまり、制度の効果はなかった。予想通りである。それが統計データで判明した、というわけだ。
 ま、「効果がない」というのは、当たり前のことだ。それがわからないまま、「バラマキをすれば相手は食いつくだろう」と思った自民党が、馬鹿だっただけだが。



 [ 付記 ]
 記事では賃上げ率がかなり高めに出ているように見えるが、これはトリックがある。記事にもあるように、調査対象は「継続雇用者」だけである。そこでは「新規雇用者」と「退職者」の給料がカウントされていない。すると、どうなるか? こうだ。
 「退職者の賃金が削られて、新卒者の給料に置き換わる、という分が考慮されていない」
 これを換言すると、他の労働者については、こうなる。
 「一般労働者の賃金については、定昇による賃上げの分が含まれる」
 つまり、「賃上げ」といっても、年功序列による「定昇」という自動的な賃上げの分も含まれるので、「ベースアップ」「賃金総額の上昇」という意味の実質賃上げは、統計データよりも低くなるのだ。
 たとえば、定昇が3%なら、ベアが2%で、定昇が3%であるだけで、「賃上げは5%」というふうにカウントされてしまう。実際には2%のベースアップでも、政府の統計では「賃上げが5%なので、優良企業と見なして、法人税を引き下げます」というふうになる。
 インチキですね。

 ──

 なお、「定昇だって賃上げだろ」と思うかもしれないが、差にあらず。「定昇」というのは、ただの「年功序列」であり、「賃金の後払い」であるにすぎない。「若いときには低賃金にして、その払うべき賃金を、年を取るまで払わないで後払いにする」というだけのことだ。「年を取ったら給料をいっぱいもらえる」というよりは、「若いときには給料を搾取されている」というだけのことだ。
 朝三暮四の猿は、「朝に四つ、暮に三つ」と言われて、喜ぶ。
 愚かな人間は、「朝に三つ、暮に四つ」と言われると、喜ぶ。「暮には朝よりも一つ増えた」と思うからだ。「もらえる総数は同じだ」ということに気づかないで、「増えた」と喜ぶ。猿よりも愚かなのが人間だ。


朝三暮四


 《 加筆 》

 ※ 以上のことからして、「賃上げ税制」というのは、「賃上げを促進するための制度」ではなく、「賃上げを名分にして企業に減税をする制度」となっている。つまり、労働者のための制度ではなく、(労働者のためという名分で実質的には)企業のための制度となっている。一種のペテンだ。「労働者のために税金をばらまきます」と見せかけて、実際には「企業のために税金をばらまきます」という制度だ。税金泥棒と言ってもいい。ひどいものだ。

 ※ では、かわりにどうすればいいのか? それは、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。次項で示す。(翌日分)




 お口直し。


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posted by 管理人 at 22:45 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 《 加筆 》 を書き足しました。
Posted by 管理人 at 2023年11月22日 07:59
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