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朝日新聞が報じている。
《 万博建設費また増額、2350億円に 当初の1.9倍 》
日本国際博覧会協会(万博協会)は20日、これまで1850億円としていた会場建設費について、最大2350億円に増える見込みであることを国、大阪府・市、経済界の3者に伝えた。当初の1250億円から約1.9倍となり、国民負担がさらに増す。
石毛氏は「支出が最少になるように努めるが、500億円の増加を認めていただきたい」と述べた。
協会の説明では、物価上昇が増額の主な要因。資材価格(443億円)と労務単価(84億円)が上がった結果、計527億円増えた。
( → 朝日新聞 2023-10-20 )
これで反対論が盛り上がるのは当然なので、私としてはいちいち指摘しない。それとは別の話をしよう。
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現在の物価上昇にともなって、さまざまな行政経費の値上げが予想される。というか、必要である。福祉でも、教育でも、一般経費でも、物価値上げにともなう歳出増が必要である。前項でも述べたが、再掲しよう。
必要な経費を増すべきだ。
・ 病院や介護施設
・ 大学などの学術機関
・ 小中学校などの教育機関(給食を含む)
・ 科学博物館などの文化施設
これらの部門では、物価上昇のせいで、青息吐息になっている。たとえば、下記。
→ 特養6割赤字、コロナ前の倍 物価高が直撃 昨年度:朝日新聞
→ 特別養護老人ホーム6割強が赤字 22年度、物価高・光熱費上昇が影響 - 日本経済新聞
→ 学校給食が崩壊の危機?円安・物価高で業界の「2割超が赤字」の過酷な実態とは
→ 科学博物館が寄付金募集: Open ブログ
( → 立憲がインフレ手当: Open ブログ )
つまり、経費の増額は、万博だけではないのだ。万博の経費が 1.9倍にまで上がって、それを「当然だ」として経費増を認めるのであれば、他の行政経費についても同様に認める必要がある。
ちなみに、防衛費については、早くも「経費増が必要だ」という声が上がっている。
2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円とした政府の防衛力整備計画を巡り、円安や資材高などの影響で装備品の単価が跳ね上がり、既に計画額より8000億円以上超過する恐れがあることが、本紙の試算で分かった。
ステルス戦闘機「F35A」(は)……計画策定時に見積もった単価100億円に対し、23、24年度の単価平均は134億円に上昇。
( → 防衛費43兆円、さらに8000億円以上も超過の恐れ 防衛省幹部も「これはかなりまずい」:東京新聞 TOKYO Web )
他に、イージスシステム搭載艦は、4000億円が 6005億円に上がるそうだ。
まあ、あれやこれやと値上げするのは、円安もあるから、仕方ないとは言える。「円安を止めろ」という本質論を脇にのけておけば、値上げを受け入れること自体は仕方ない。(どうしようもない。)
問題は、そのあとだ。値上げがあるのなら、値上げに対応する支出をきちんと予算に計上するべきだ。万博や防衛費のように、「値上げに対応して支出増があります」ときちんと計上するべきだ。
ところが、岸田内閣はそうしない。この期に及んでも、値上げがあることを勘定に入れない。それでいて、「税収増を還元するので減税します」と言っている。
岸田文雄首相は20日、自民、公明両党に対し、税収増の還元策として所得税減税も検討するよう指示した。
( → 岸田首相、所得税減税検討を与党に指示−経済対策で税収増を還元 - Bloomberg )
「税収増を還元する」というが、物価上昇で税収が上がったのなら、同時に支出増もあるはずだ。なのに、そのことをすっかり失念している。収入と支出がともに1割増える状況で、収入が増えるのだけを見て、支出が増えるのを見ていない。そのせいで「収入が1割増えた。大儲けだ。この増えた1割を好き勝手に使ってしまおう」と思っている。
私のいつもの比喩で言うなら、右手で1個増えて、左手で1個減ったときに、右手だけを見て、「1個増えた」と喜ぶようなものだ。馬鹿丸出し。あまりにも馬鹿すぎるので、呆れてしまう。
これが日本という一国の首相だ。そこらの小学生にでも首相をやらせる方が。ずっとマシだ。「増税メガネ」というよりは、「増税 目がねえ」だ。
もうすぐ予算を計上する時期になるが、そのとき、どうするつもりなんだろう。「経費増が必要です」と気づいて、あわてふためくのか? それとも、必要な経費をあらゆる箇所で削って、国民生活が滅茶苦茶になるのか?
ガザのパレスチナ人が、イスラエルの空爆で病院の患者も追い出されて困っているそうだが、日本でも増税メガネに経費を削られて、病院や介護施設や学校などから、弱者が追い出されるハメになりそうだ。ガザの難民のように。
その一方で、「減税するので、自民党に票を下さい」と宣伝しているわけだ。厚かましいにも ほどがある。
【 関連項目 】
→ 万博建築はダンボールで: Open ブログ(2023年08月08日)
お金がないから万博をやめる(縮小する)といっても世界の笑いものになることはありません。余った予算をウクライナやガザに出した方がインパクトははるかに大きいと思います。マスコミではウクライナにいろいろ支援していると報道していますが、BBCの統計では日本の支援金額はごくわずかで、グラフに出てきていません。
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1970年の万博( Expo'70 )では、各国のパビリオンが壮大な展示をしていた。
このころはまだディズニーランドもなくて、万博は初めてかつ最大の未来的なショーだった。日本全体が熱狂していた。
ネットのない時代には、万博がネットのかわりになったのである。
しかし今やネットがある。こういう時代には、万博の意義そのものが失われた、と言ってもいい。
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http://openblog.seesaa.net/article/499991531.html