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Amazon の配達員は労働者と見なされるので労災保険の対象となる、という労基署の裁定が出た。
ネット通販「アマゾン」の配達を担うフリーランスの男性運転手が業務中に負ったけがが労働災害と認定された。
認定されたのは、アマゾンから委託されている運送会社と業務委託契約を結んで働く60代の男性。昨年9月に配達中に階段から転落し、腰の骨が折れる重傷を負ったという。
男性側はアマゾンのスマートフォンアプリを通じて管理されており、働き方の実態などから会社に雇用される「労働者」と同じだとして昨年、横須賀労働基準監督署に労災を申請。労基署は9月26日付で労災を認定した。
( → アマゾン配達員はフリーランスではない 配達網拡大でみえたほころび:朝日新聞 )
Amazon はこう弁解している。
アマゾンジャパンは「本件はアマゾンの委託先配送業者に対するものであり、アマゾンに対するものではない」とコメント。
( → 委託先 )
ギグワーカーと委託先配送業者との間の雇用関係があるだけだから、 Amazon という上位会社は関係ない、という立場だ。知らぬ顔の半兵衛。
しかし労基署はそれが実態に即していないと認定した。
男性は「荷物が増えて朝から晩まで長時間、指揮命令を受けて働いていた」と話す。
男性はアマゾンからは「孫請け」だが、同社が提供するスマートフォンのアプリで配達先や労働時間を管理されていることなどから労働者と認めるべきだと主張。契約は業務委託でも、会社に雇われているのと実態は変わらないとして、昨年12月、横須賀労働基準監督署に労災申請した。
( → (時時刻刻)配達員、アプリの管理下 アマゾン孫請け、荷物抱えて夜まで 労災認定:朝日新聞 )
この主張は妥当だ。確かに雇用関係は、
Amazon → 委託会社 → 配達員
という関係にあるので、 Amazon と配達員とには、直接の関係がない。しかしながら業務については、 Amazon から直接、指示と管理を受けている。(スマホのアプリで。配達時間や配達コースについて。)
このように調節の指示と管理を受けている場合には、雇用契約があると見なされるので、それを「間接的だから直接の関係はない」と言い張るのは、偽装だということになる。
こういう関係が偽装であるか否かについては、「偽装請負である」という形で、前に裁定が出たことがある。
→ 偽装請負 - Wikipedia
ともあれ、偽装請負については、決着が付いている。
一方、偽装フリーランスについては、決着が付いていない。偽装請負と同様のことが、 Amazon やウーバー・イーツでは続いている。違法状態が放置されているわけだ。
このことを朝日新聞も報じている。
■「偽装フリーランス」保護なお途上
フリーランスの中には、雇われて働く人と同じように会社の強い指揮命令を受けている人がいる。会社が労働関係法令の規制や社会保険料の負担を免れるために、契約形式を請負や業務委託にしているケースもある。
フリーランスではなく、会社に雇用される「労働者」として労働関係法令の対象になるかは働き方の実態で判断する考え方が確立している。具体的には、仕事を拒否する自由があるか▽指揮命令を受けているか▽勤務時間や場所が決まっているか、といった点が判断される。今回、アマゾン配達員に労災が認められたのも、この基準に基づく。
ただ、この基準が作られたのは1985年。ITが発達したことで、テレワークなど働き方は多様化している。保護の対象からこぼれ落ちている労働者が新たに出ている可能性もあり、労働組合や研究者からは判断基準を見直すべきだと指摘する声があがる。
しかし、政府内の議論は一向に進んでいない。フリーランス新法成立時の国会の付帯決議では「労働関係法令が適切に適用される方策を検討し、いわゆる偽装フリーランスの保護のため、適切に対応できるよう十分な体制整備を図ること」とされ、新たな対応が求められている。
( → (時時刻刻)配達員、アプリの管理下 アマゾン孫請け、荷物抱えて夜まで 労災認定:朝日新聞 )
偽装フリーランスというのは、一種の詐欺だ。インチキであると同時に、人をだます犯罪だ。こういうのは、私は大嫌いなので、しばしば「詐欺だ!」と糾弾する。
今回も、その趣旨で糾弾しようかと思ったのだが、すでに朝日新聞できちんと糾弾していた。そこで、私の糾弾というのではなく、朝日新聞の糾弾という形で、情報を紹介して整理する形で記述した。
※ 私の独自の指摘はないので、物足りないだろうが、ごめんなさい。


【 追記 】
おっと。私の独自の見解もある。書き忘れたが、こうだ。
Amazon は配達員を「雇用契約にはない」と言い張る。しかし、その言い分が成立するためには、配達員が業務上の管理下にはないこと(配達員には独自の業務上の裁量の権限があること)が必要になる。具体的には、こうだ。
・ Amazon ならば、配達に1〜2日の遅れの裁量がある。
・ ウーバー・イーツならば、配達に半日の遅れの裁量がある。
このようなことが認められているのならば、「配達員には独自の業務上の裁量の権限がある」と言えるので、「配達員が業務上の管理下にはない」と言える。
しかし現実には、そのような裁量はない。
・ Amazon ならば、配達に1〜2日の遅れがあれば、未配の苦情が来る。
・ ウーバー・イーツならば、配達に半日の遅れがあれば、食えなくなる。
こうなると、使い物にはならなくなる。だから、そのような裁量は与えられない。となれば、必然的に、会社の管理下にあることになる。ゆえに、業務委託ではなく労働者である(あるいはフリーランスを偽装している)ことになる。
現状のように、配達員が業務上の管理下にあるのならば、配達員は Amazon やウーバー・イーツの労働者として扱われるべきなのだ。「業務委託しているだけだから労働者ではない」という会社側の言い分は成立しないのだ。
このことをはっきりと政府が認定して、会社側の取る現行制度をはっきりと否定する(雇用契約を結ばせる)ことが必要だ。
同時に、失業保険や健康保険や厚生年金などの社会保険料の納入も義務づけるべきだ。現行ではその金を免除されているのは不適切だ。
※ 政府は、低所得者には多大な社会保険料を課するくせに、 Amazon やウーバー・イーツには社会保険料の納入を免除している。(企業負担分。)……これはあまりにも不正義だ。「とんでもない」と批判するべきだ。
(こうして本サイト独自の見解を追加した。実は、この追記分を書きたくて、本項を記述したのだった。肝心の話を書き忘れるとは、間抜けだった。)
《 加筆 》
そもそも、「アプリで指示するから直接の管理下にはない」なんていう言い分が通るのなら、ヤマトや佐川の配達員だって「機械で指示するから直接の管理下にはない」ということになって、彼らもまた労働者ではない扱いになりそうだ。
のみならず、自宅でリモートワーキングをする労働者もまた、みな業務委託の扱いになりそうだ。
しかし、そんなのは脱法的行為(というより違法行為)であろう。とんでもない主張だ。Amazon の主張は、時代錯誤的すぎる、と言える。自分では最先端の方式を使っているくせに、言い分だけは旧時代のままだ。「法律は旧時代のまま停滞しているので、自分たちには適用されない」と思っているのだろう。唯我独尊も甚だしい。
→ 偽装フリーランスの解決策
http://openblog.seesaa.net/article/500182120.html
→ 偽装フリーランスと社会保険
http://openblog.seesaa.net/article/500456530.html
これらについては、次項で説明している。