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インボイスでは、通常税率と軽減税率が混在して記載される。これではいちいち仕分けが必要で、面倒だ。こうなったのは、軽減税率なんていうものが導入されたからだ。こんな馬鹿げた制度は導入しなければよかった、と野田元首相が後悔しているそうだ。
それというのも、軽減税率のかわりに、もっと賢明な方式があるからだ。
民主党政権の野田佳彦元首相に、いま抱くという「後悔の念」の理由を聞いた。
「消費税率を10%にすることは、2012年に、自民党、公明党と政権を持っていた民主党で決めました。税率の引き上げで負担が増える所得の低い方々への対応には、税金の控除と現金の給付を組み合わせた『給付付き税額控除』がいいと私は思っていました」
( → インボイス、野田元首相の心残り:朝日新聞 )
給付付き税額控除ならば、低所得者には実質的に税率が下がることになるので、軽減税率と同じ効果が生じる。しかも手間は圧倒的に少なくて済む。だから、この方式にするべきだった……という後悔だ。
この見解自体は、妥当だろう。
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だが、私の感想はこうだ。
「おまえが言うな」
そもそも、給付付き税額控除の方がいい、ということは、当時から判明していた。いろいろと議論もされてきた。本サイトでも詳しく説明したことがある。
(表:略)
この表と比較すれば、「一律に 1.3万円を還付する」という方式の方がはるかに優れているとわかる。
・ 効果はほぼ同等である。
・ 低所得者への軽減効果が大きい。
・ さまざまな手間が圧倒的に少なくて済む。
特に、最後の点が重要だ。あちこちで軽減税率を適用するための手間(値札の区別処理など)を、国全体で大規模に行なうことの手間を、なくすことができる。(一律還付ならば。)
このことを見ても、「一律還付」に比べて、「軽減税率」が、いかに愚劣な策であるか、よくわかるだろう。
( → 軽減税率の無駄: Open ブログ )
ここでは、民主党が(自らが反対してきた)「軽減税率」をつぶすべきだったのだ。なのに、自民・公明との妥協のために、軽減税率の導入を飲んだ。こうして民主党自身が軽減税率を容認した。
このとき、「馬鹿げたことはやめろ。軽減税率なんて愚の骨頂だ」と批判したのは、本サイトぐらいだろう。
本項の冒頭で野田元首相が語っている後悔は、それ自体は妥当だ。しかし、後悔先に立たず。今になって後悔するよりも、首相であった当時に正しい策を取るべきだった。そのことは、本サイトに記載してあったのだから、本サイトを読むべきだったのだ。
[ 付記 ]
本項では、次の方式を述べた。
「給付付き税額控除」
これは、制度そのものは単純にするが、同時に、一律給付金を払う、というものだ。
この方式は、先に次の項目で述べた方式に似ている。
→ 年収の壁(106万円) .2: Open ブログ
ここでは、次の方式を提案した。
なお、別案もある。制度は現状のままにして、別途、「一律給付金」を給付することだ。たとえば、「1人あたり年額 20万円を給付する」なら、年収 100万円の人は、負担額が 27万円から7万円に減少するので、実質的な負担率が 27%から7%に低下する。これは頭のいい方法だ。(困ったときの Openブログ。うまい案を出す。)
低所得者には、社会封建量の負担が過大になっている。これを是正するべきだ。
ただし、そのために税率を可変的に変動させると、制度が複雑になってしまって、大変だ。そこで、制度そのものは現状のまま簡素にしておいて、同時に、一律給付金を払えばいい。そうすれば、実質的には「可変的な税率」を導入して、低所得者には低税率にする効果が生じる。
そこで述べた方法も、本項で述べた方法も、原理は同じである。また、そのための手法も同じである。「一律給付金」という手法だ。(これこそが最も賢明な方式なのである。)
[ 付記2 ]
「給付付き税額控除」
という用語は、同じことを別の用語で言い換えただけである。
ただ、発想の仕方が、徴税する側(財務省)の立場になっている。そのせいで、給付と税額控除で分けて考えている。実質納税と実質給付とで言葉を区別する。そういう面倒な用語になっている。無駄手間だ。
原理的には、「簡素な税率と一律給付金」というものがあるだけだ。(制度的な段階制の可変税率を導入しない、というのがポイントだ。)……こう理解するのが正しい。
そのために必要なのは、数学の「一次関数」という概念だけだ。これは中学1年生の初歩数学である。これさえ理解すれば、簡単に説明できる。
なのに、その知識がないのが、日本の政治家や官僚だ。そのせいで、「給付付き税額控除」という馬鹿げた用語を使っている。頭が悪すぎる。一次関数語ればで済む話なのに。(一次関数の定数が、一律給付金に相当する。)
※ 低所得者では税率(税額)がマイナスになる、というのがポイントだ。そのことが一次関数で簡単に説明できる。なのに、値がマイナスのときとプラスのときとで、いちいち言葉を分けて説明するのが、「給付付き税額控除」という用語だ。
[ 付記3 ]
「一律給付」という方式が容易に実現できるのは、マイナンバーが導入されたからである。このとき、国からの給付金を受け取る口座が導入された。おかげで、「一律給付」をしやすくなった。
野田首相の時代には、マイナンバーがなかったから、「一律給付」をしやすいという状況はなかった。それが、ためらう理由だったのかもしれない。