【 意外な真実 あり 】
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この問題については、前にも論じた。
→ 年収の壁(106万円) .1 : Open ブログ
そこでは、こう解説した。
年収 106万円を越えると、社会保険料の負担が発生するので、手取り所得はかえって減ってしまう。それではイヤだ、という理屈で、パート労働力の女性たちが、勤務日数を増やそうとしない。「それ以上働くのはイヤなので、あとは休みます」というわけだ。これでは労働力が無駄になる。国全体の経済力も落ちてしまう。まずい。では、どうすればいいか?
この問題を解消するために、政府は「補助金を出す」という方針を打ち出した。
ここで記したことが正式に決まった。
→ 「年収の壁」対応策 106万円…企業に助成金 130万円…扶養継続措置:朝日新聞
→ 「年収の壁」問題、支援強化パッケージの対象は?効果はどこまで?:朝日新聞
→ 「年収の壁」対策どうなる 106万円 130万円…支援強化パッケージは | NHK
記事にも指摘されているが、いろいろと問題があるようだ。特に疑問となるのが、実効性が疑わしいということだ。
「2025年度までの暫定的な措置」
( → 「年収の壁」対応策 106万円…企業に助成金 130万円…扶養継続措置:朝日新聞 )
という点もそうだ。やるのは2025年度までだけ。「2026年以後は元の木阿弥になります」と言っているのも同然だ。こんな暫定的な措置では、2026年以後の効果が見込めない。意味のない政策だと言える。
また、「従業員1人最大50万円を支給」というのも額が過大で、メチャクチャすぎる。年収 106万円を越えたぐらいの低所得者に、どうしてそんなに多額の金を給付するのか? バランスを欠いていると言えるだろう。
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では、どうすればいいのか? 先に別項で示したのは、次の方法だった。
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「パート労働者を雇用する企業には、補助金を出すのでなく、逆に、課税する。106万円〜125万円のパート労働者で、社会保険料の負担が増えてしまうので、この範囲内では、社会保険料の負担を、労使折半でなく、全額を会社負担にする」
これで問題がうまく解決する、ということは、別項で示した通りだ。具体的には、106万円〜125万円の労働者では、会社負担が増えてしまうので、会社側がこの範囲になるのを嫌がる。そこで、パート労働者は労働時間を増やして働くようになり、結果的には 150〜200万円 ぐらいの年収の労働者が増える。そうなれば、もはや少額の負担金についてはあまり気にしなくなる……というわけだ。
ただし、この方法だと、名目上では「企業の負担が増える」という形になる。現実にはそうなることはほとんどないのだが、少なくとも名目上では、そうなることになる。となると、朝三暮四の猿みたいな企業は、「損する、損する」とわめきたてて、上記の方針に反発するだろう。
「現実には、106万円〜125万円の範囲を企業が避けるので、そうなることはありませんよ」
と説明しても、
「でも制度はそうなっているじゃないか。キーキー」
と企業はわめきたてる。猿のように。
そして、猿の意見に従う自民党もまた、その声に従うだろう。
かくて、どれほど名案があっても、猿には名案が理解できないのだ。
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そこで、「うまい案」とは別に、「物事の核心を示す」という新たな原理を示そう。これはかっこいい「真実の指摘」だ。
真実とは何か? 下記のグラフだ。(前にも何度か示した。)
出典:Twitter
このグラフを見れば一目瞭然だ。つまり、こうだ。
「低所得者の社会保険料が高すぎる」
「低所得者ほど社会保険料が高くなるという逆累進制になっている」
これこそが、核心的な真実だ。そのわけは、次の通り。
本来ならば、低所得者が社会保険料の負担をするとしても、そんな負担は問題にならないはずだ。なぜなら、低所得者は、社会保険料の負担もまた、少なくなるはずだからだ。
・ 低所得者は低負担
・ 高所得者は高負担
という累進制が、負担としては、あるべき姿だ。
仮に、そうなっていれば、106万円〜125万円のパート労働者で、社会保険料の負担が増えてしまうとしても、新たに負担となる額は少額なので、たいして問題にならないはずだ。
ところが、現実は違う。106万円を越えたとたんに、一挙に大幅に負担金が増えてしまう。次のグラフのように。
出典:NHK
このようなことが起こるのはなぜか?
人々はそれを「当たり前のこと」と思っているが、そうではない。ここでは、「社会保険料では累進制という原理が働いていない」ということがある。それどころか、累進制とは逆の「逆累進制」が働いている。つまり、「低所得者ほど負担率が高い」という制度だ。そのことは、上の引用グラフでも明らかだろう。
そして、このことゆえに、「106万円を越えたとたんに、一挙に大幅に負担金が増えてしまう」ということが起こるのだ。
このような制度があることを、人々は暗黙裏に受け入れている。「もともとそういう制度だから、それを受け入れるしかない」と思っている。愚かな奴隷のように、与えられた制度を受け入れることしかできない。
しかしまずはその与えられた制度を疑うべきだ。人々の信じる原理を疑うべきだ。そうすれば、「逆累進制という制度そのものをぶっ壊すべきだ」と理解できるだろう。
そして、その制度をぶっ壊しさえすれば、問題の解決ははるかに容易になるのである。
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グラフを再掲しよう。
出典:Twitter
この図では、低所得者から年収 1000万円ぐらいまで、「税 + 社会保険料」の負担率は、約 28% で一定である。ここでは累進制がまったく働いていない。あまりにもひどい、と言える。
さらには、社会保険料に至っては、ひどい逆進性がある。このひどい逆進性こそが、106万円の壁の本質なのだ。
この本質を見失ったまま、「企業に 50万円の助成金を出すことで対策とする」という政府の方針は、あまりにも見当違いの方針だと言うしかない。あっち向いてホイ、みたいに見当違いだ。
[ 付記 ]
この問題を解決するには、どうすればいいか? もちろん、普通に負担率を是正すればいい。
・ 低所得者の社会保険料率を大幅に引き下げる。
・ 中所得者の所得税を引き上げる。
・ 超高所得者の所得税を大幅に引き上げる。
このようにすると、低所得者の生活水準が向上するので、若手の非正規労働者は優遇される。非婚率が高い問題も、いくらか改善されるだろう。
※ なお、別案もある。制度は現状のままにして、別途、「一律給付金」を給付することだ。たとえば、「1人あたり年額 20万円を給付する」なら、年収 100万円の人は、負担額が 27万円から7万円に減少するので、実質的な負担率が 27%から7%に低下する。これは頭のいい方法だ。(困ったときの Openブログ。うまい案を出す。)
※ さらに、別案もある。(企業向けに)「 106万円以上に助成金を出す」かわりに、「 106万円未満に課徴金を課す」ことだ。(企業向けに)金を与えるかわりに、金を奪うことだ。これなら、国の負担はなく、むしろ歳入が増える。しかも、同様の効果がある。106万円の前後で、段差がなくなるからだ。「壁がなくなる」とも言える。……同じ効果を、国の負担なしで実現できる。これも頭のいい方法だ。(しかし、企業べったりの自民党はイヤがる。)
【 関連項目 】
(低所得の)非正規雇用と社会保険料……というテーマで、前に論じたこともある。そちらの項目も参照。かなり重要な話もある。
→ 少子化の対策 .2(企業責任): Open ブログ
→ 少子化の対策 .5(補足): Open ブログ
※ 参考:
→ 非正規社員の失業問題: Open ブログ
(誤)かわりに、「 106万円以上に課徴金を課す」ことだ。
(正)かわりに、「 106万円未満に課徴金を課す」ことだ。
1000万から1500万のグラフと給与所得者の額面1100万の自分の場合と当てはめると社会保険料が大幅に低いです。
2022年の源泉徴収票から比率を出すと、所得税7.5%住民税5.9%ですが、社会保険料は14%です。
子供2名扶養控除があるので所得税、住民税分控除があるのでグラフより私は低くなりますが、社会保険料は8.9%のグラフと大幅に異なります。
しかも給与所得者は労使折半ですがら、国民年金の方に対して、会社が同額払っているのですがら負担率は大幅に高いです。
社会保険料を実際は2倍払い、年収に社会保険料を足した額で計算すると実質24.6%になります。
出所の怪しいグラフをうかつに信じてはいけませんよ。
2年前にネットで大いに話題になったグラフです。もし間違いなら、その時点で批判されたはずなので、間違いではないでしょう。そもそも、こんな面倒なグラフを捏造するわけがない。本人のツイートを見ても、経済統計マニアなので、素人のミスとも思えない。
1100万円に、子供二人の扶養控除を適用すると、1000万年以下になるので、その場合は 10.9% になります。(グラフでは。)
また、社会保険料は、2023年4月に大幅値上げとなっているので、その分が影響した可能性もある。2022年も、値上げがあった。
→ 2022年4月から雇用保険料率が引き上げられます
https://www.all-smiles.jp/news/20220228/
これも。
https://www.ieyasu.co/media/unemployment-insurance-premium-rate-increase/
他にもあるかも。
https://x.gd/ekiQE
健保の値上げ
https://study.fp-univ.net/blog/167
> 社会保険料を実際は2倍払い
企業負担分は、企業が払っているのであって、労働者が払っているわけではありません。話の筋が違う。