前項に続いて、バイオエネルギーについて、オマケふうの話。
[ 余談 ]
(1) 農作物との比較
微細藻類と農作物を比較すると、次の差がある。
・ 微細藻類には、培養タンクが必要だが、農作物は、畑だけで足りる。
・ 微細藻類には、給水が必要だが、農作物は、雨水だけで足りる。
・ 微細藻類では、脱水と精製が必要だが、農作物は、収穫だけで足りる。
特に、最後の点が重要だ。微細藻類は、水分が多いので、その水分を除去すること(脱水)が必要だ。それが精製の一部だ。だが、そういうこともまた植物にやらせることができる。それが農作物の生産(農業)だ。
微細藻類は、増殖の速度が高いので、効率的にエネルギー生産ができると見込まれている。しかし、それを実現するためには、あれやこれやと補助的な注力が必要なのだ。培養タンクやら、給水設備やら。……それはいわば「ドーピング」と言える。
結局、微細藻類によるバイオエネルギー生産というのは、「ドーピングをすれば大量のオイルを生産できる」というようなものだ。しかし、ドーピングのためには、莫大なコストがかかる。これでは、とうてい割に合わない。……そのことが、どんどん明らかになりつつある。
なお、バイオエネルギーよりもはるかに低コストでできる農業生産でさえ、コスト的にはあまり有利ではない。たとえば、サラダオイルのキャノーラ油(菜種油)は、900グラムで 300円以上だ。(最近は特売で 250円ぐらいに下がったが、ひところは 400円以上が普通だった。)
この価格は高すぎる。ちなみに、ガソリンは1リッター110円程度だ。(ガソリン税抜きで。)
ガソリンの2〜3倍もの価格となるサラダオイルなんて、価格が高すぎる。
ま、ガソリンよりも価格が高くても、食用なら(背に腹は代えられないので)仕方なく買うしかないが、エネルギー生産にはこの価格は高すぎる。とうてい割に合わない。
(2) 不耕起栽培
農作物では、葉や茎は、植物を支える構造体となるので、培養タンクのかわりとなる。いわば「自己形成式の培養タンク」みたいなものだ。「超低コストの培養タンク」とも言える。だから、たとえオイルにはならないとしても、葉や茎は必要だ。
とはいえ、この方法だと、せっかく作った葉や茎や花が無駄になる。それは、もったいない。何とかならないか?
これを解決するのが、不耕起栽培だ。不耕起栽培では、せっかく作った葉や茎や花を、別の形で利用することはない。かわりに、堆積させて、腐葉土にすることで、土に返す。つまり、
「土から得たものを、土に返す」
というわけだ。しかも、その間に、空気中の炭素を取り込んでいる。(葉や茎や花は空気中の炭素を取り込むことで作られる。)
こうして、不耕起栽培によって、「炭素を減らす」という効果が出るわけだ。
この点については、別項でも解説した。
→ メタネーションの意義は .4: Open ブログ 「不耕起栽培」の章
その原理的な意味(炭素の取り込み)を、本項で説明した。
(3) 結論
結論としては、「バイオエネルギーはダメだ」というふうになる。
換言すれば、「バイオエネルギー以外の方法が良い」と言える。具体的には、太陽光パネルによる発電だ。どうせ研究するなら、太陽光パネルの効率アップや、設置面積の拡大を狙うべきだ。その方が利口だと言える。
こういうまともな方法があるのに、はるかに効率の低いバイオエネルギーによるエネルギー生産を狙うというのは、馬鹿げている。人には適材適所というものがあるように、物にも適材適所というものがある。エネルギー生産のためには、無機的な太陽光パネルを使うのが適材適所なのだ。
一方、農業生産は、(エネルギー生産ではなく)食料生産と炭素固定化をめざすべきだ。そのためになら、農業生産も役立つ。
では、微細藻類は? たぶん、出番は何もない。霞ヶ浦あたりで無駄に繁殖するぐらいしか能がないが、しかし、霞ヶ浦の微細藻類はすべて消滅させた方がいいのだ。(現状では富栄養湖化による水質汚濁がひどいので。)
→ 霞ヶ浦の水質汚濁: Open ブログ
《 加筆 》
霞ヶ浦で、ユーグレナ(などの微細藻類)を繁殖させれば、培養タンクがいらないので、コストゼロで大量のオイルを生産できそうだ。
とはいえ、いくらオイルを生産しても、それを回収して精製するには莫大なコストがかかるので、実用化は無理だろう。単に霞ヶ浦に、大量のオイルが蓄積されて、しかも取り出すこともできないまま、危険状態が放置されるだけ、となりそうだ。
何らかの理由で、その一部が打ち上げられて、乾燥して、オイルだけが残ったなら? そこから発火して、大火事になるかもしれない。そのくらいが関の山だろう。取り出して利用するなんて、無理。
「エントロピーを減少させるには、エネルギーが必要である」
という原則による。この原則の下で、ユーグレナの精製には、莫大なエネルギーが必要となる。取り出すエネルギー以上に、精製のエネルギーがかかる。
【 関連サイト 】
微細藻類のうちの一種であるユーグレナ(ミドリムシ)は、植物であると同時に動物でもある、とされている。
ただし最近の分類では、藻類はすべて「植物」の仲間ではなうそうだ。下記に指摘がある。
→ はてな匿名ダイアリー
ここには、こう記してある。
日本の教科書も2012年度版から「わかめや昆布は植物ではなく原生生物の仲間」という記載になっています
光合成をする葉緑素を持つという意味では、植物の仲間であるように見えるのだが、そういう認識は今では古すぎるようだ。
では、正しくは? Wikipedia の記載によると、こうある。
藻類とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称である。すなわち、真正細菌であるシアノバクテリア(藍藻)から、真核生物で単細胞生物であるもの(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)及び多細胞生物である海藻類(紅藻、褐藻、緑藻)など、進化的に全く異なるグループを含む。
かつては下等な植物として単系統を成すものとされてきたが、現在では多系統と考えられている。従って「藻類」という呼称は光合成を行うという共通点を持つだけの多様な分類群の総称であり、それ以上の意味を持たない。
かつては生物を「植物」と「動物」の2グループに大別していたが、研究の発展にともない、このような二分法は生物の真実の系統関係から大きく乖離していることが分かってきた。
生物を動物と植物の2つに分けていた2界説の時代には、光合成をするもの、運動しないものはすべて植物と見なされた。つまり種子植物、シダ植物、コケ植物、藻類、菌類全てが植物として扱われた。当初は種子植物を中心に分類が行われていた為、葉や根、花といった高等植物が備える器官を持たない植物は、すべて隠花植物(cryptogamic plants)としてまとめられた。その後、種子植物との組織の相同性からシダ植物とコケ植物が隠花植物より分離され、続いて従属栄養性である菌類が独立した。その残りが藻類である。
藻類と呼ばれる生物は単系統ではなく、系統の様々な部分で葉緑体を獲得した生物の便宜的な集団であることが明確になった。付随して、葉緑体を持つ藻類と、持たないいわゆる原生生物との線引きの曖昧さが露呈してきた。
( → 藻類 - Wikipedia )
藻類は葉緑素を持つが、葉緑素を持つに至った過程は多様である。それらはまとめて「藻類」と呼ばれるが、統一的な原理などはない。普通の植物とは別のものとしてグループ化されており、そこでは原生生物との類似性や近縁性も示されている。
さらに詳しい説明は、下記にある。読むといい。
→ 藻類は植物でない? | 日本植物生理学会
一部に、次の記述がある。
植物(藻類)として扱われていたラン藻類は、他の植物よりも大腸菌などに近縁です(そのため最近はシアノバクテリアと呼ばれています)。
不勉強なためとは思いますが環境を論じる人達にまっとうな科学者が少ないという個人的偏見を持っています。
分子は、生成したエネルギーの量。(オイル量や発電量)
分母は、面積あたりの太陽光のエネルギー量。(受光量)
太陽光エネルギーの変換効率と比較しているのだから、すぐにわかりそうなものだが。
「植物の光合成効率」は、全然別の量なので、本項には関係ない。
※ 「植物の光合成効率」で得られるものには、(実だけでなく)葉や茎などを含むので、その数値は、エネルギーの変換効率よりも、ずっと高くなる。
分子は太陽光パネルの場合は全て利用できるエネルギーですが、植物は利用しにくいエネルギーもあります。これは管理者さんが言っておられる通りで、それらすべてひっくるめるのはおかしいですね。