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前項の話の補足となる話を三つ。
一つ目は、前項から移転した。残る二つは、新規の記述。
[ 補足1 ]
バイオエネルギーには、前項で述べたことのほかにも、別の難点が三つある。
難点の一つは、
「バイオエネルギーで作成したオイルを、精製工場まで運ぶためには、多大なエネルギーを必要とする」
ということだ。つまり、運搬エネルギーが必要となる。このせいで、僻地でバイオエネルギー生産をすることは不可能となる。生産するエネルギーよりも、運搬エネルギーの方が多くなってしまって、エネルギー収支が赤字になるからだ。
一方、太陽光発電ならば、電線で電子を運ぶだけで済む。こちらは圧倒的に低コストなので、問題ない。
以上の点から、バイオエネルギーは、太陽光発電には勝ち目がないのだ。圧倒的に劣ると言える。こんなものを推進すればするほど、二酸化炭素の排出量はかえって増えてしまう。
[ 補足2 ]
別の難点もある。
「微細藻類の維持には、水が必要になるが、その水の供給が難しい」
ということだ。このことは、都市の研究室にいるひとにはわからないだろう。都市の研究室では、水はいくらでも入手できるからだ。
しかし都会から離れた僻地に行けば、水道などはないとわかる。水道のない土地で、自分で水道を敷設するというのは、あまりにもコストがかかりすぎる。さらには、貯水池を作って水源を確保するとなると、気の遠くなるほどの費用がかかる。
ひるがえって、普通の農業ならば、天水(つまり雨水)を使うので、この問題が一切ない。この意味で、普通の農業に比べて、微細藻類の維持にはコストが異常にかかりすぎるとわかる。
ただでさえ、オイルの収集と精製に莫大なコストがかかるのに、さらに、微細藻類の維持のための水源を確保するコストもかかるとなると、コスト面で圧倒的に不利だ。
[ 補足3 ]
さらに、もう一つの難点がある。
微細藻類では、培養タンクの洗浄という問題が発生するのだ。なぜなら、古くなって死んだ微細藻類は、その遺物がタンクの底部に沈殿するからだ。
この問題を解決するには、遺物がタンクの底部に溜まらないように撹拌して、さらには微生物による分解を促す必要がある。そのためには、ただのタンクでは済まず、大型の撹拌装置つきのエアーポンプ式という大規模な装置を必要とする。こんなふうに。
出典:藻類プラント 実証研究報告書
こんな大規模な装置を(大金をかけて)作って、それでできるのがわずかばかりのオイルだというのは、ほとんど冗談のようなものである。
実際、こういうことをやっているのが、ユーグレナの生産だが、そこでは、オイルを作るのに、コストが売価の 100倍にもなる。1リットルで 100円前後のオイルを作るために、100倍の1万円ものコストをかけているわけだ。冗談レベルである。それが現状のユーグレナだが、ユーグレナ以外の微細藻類でも同様だ。
※ 農業ならば、同じ面積の土地に、タネをまくだけでいい。それで十分な収量が得られる。(作物自体が、構造体を自分で作るから、低コスト。)
※ 面積あたりの収量は、微細藻類の方が多いが、太陽光の照射量は同じなので、いくら微細藻類の方が多いといっても、しょせんは太陽光による限度がある。
【 関連サイト 】
ユーグレナ以外の微細藻類における実証プラントの研究は、下記でなされている。
→ 微細藻培養技術事業化可能性調査共同事業体
商用化のためには(大幅なコストダウンのために)精製技術の確立が必要だ……と述べているが、それは、私が先に述べた結論と同様である。そして、その壁を突破できる見込みがないので、結局は、微細藻類の研究は先の見通しが開けないままであるようだ。