2023年09月20日

◆ バイオエネルギーの限界

 バイオエネルギーには限界がある。どれほど技術開発が進んでも、実用化は無理だ。絶対的不可能。

 ──

 前項 では、「微細藻類によるバイオエネルギーの生産」について、「エネルギー変換効率が低いので駄目だ」と判定した。その根拠として、次の一文を引用した。
  太陽光発電のエネルギー変換効率は10〜20%が目標とされているのに対し、 光合成微細藻類を利用した効率の目標が1〜2%というのは、低すぎると感じる向きもあるかと思います。 しかし、エネルギー変換効率が1〜2%でも、経済性の確保は不可能ではありません。
 たとえば、トウモロコシ光合成のエネルギー変換効率は植物全体で約1%、穀粒は0.3%程度と見積もられます。
( → 太陽光エネルギー経済性の確保

 ここでは「穀粒は0.3%」という数字を示して、太陽光発電の 20%よりも大幅に低い、と評定した。
 とはいえ、上の引用文そのものは、バイオエネルギーに肯定的である。「経済性の確保は不可能ではありません」というふうに判定している。では、それは間違いなのか? 

 私の見解を示そう。こうだ。
 「経済性の確保は不可能ではありません」ということは、それ自体では間違っているとは言えない。バイオエネルギーといっても、微細藻類によるものは精製にコストがかかるので実用化は程遠いが、トウモロコシやサトウキビなどによるバイオエタノールは、経済的にも成立しているようだ。税込のガソリン価格に対して、およそ半分以下のコストで生産できている。
  → https://x.gd/vkh50
 このあとさらに、ガソリンに炭素税などがかかるようになったとしたら、バイオエタノールは炭素税がかからない分、有利になる。
 以上のように、「経済的に成立する」ということであれば、バイオエタノールはすでに可能となっている。
 問題は、それ以外のところにある。

 ──

 バイオエタノールの問題は、「土地を奪う」ということだ。その点で、他の手法と競合する。限定された土地を奪い合うわけだ。
 特に、陸上の農作物を使う場合には、人間用の食料(家畜向けを含む)と競合する。トウモロコシやサトウキビをバイオエタノールに使えば、その分、人間の食べる食料が減ってしまう。今のところは、バイオエタノールはブラジルの自動車向けぐらいしか使っていないようだが、地球全体のエネルギーをバイオエタノールだけでまかなおうとしたら、食料生産のための土地がなくなってしまうので、人類は餓死してしまう。
 「病気は治りました、患者は死にました」
 みたいな感じで、
 「エネルギー問題は解決しました、人類は餓死で絶滅しました」
 みたいになる。それでは本末転倒だ。

 ──

 では、陸上の農地を使わずに、(未使用の)荒地や砂漠などの空地を使えばいいか? 特に、それらの土地で、微細藻類を使うバイオエネルギー生産をすればいいか? ……そういうアイデアもあるだろう。だが、それも駄目だ。
 なぜか? ここで、前項の「エネルギー変換効率」の問題が出てくる。バイオエネルギーは、エネルギー変換効率が低い。そのことは、「コストが高い」という経済的な面とは別に、量的な限界をもたらすからだ。

 量的な限界とは何か? 次のことだ。
 地球上には、(森林や農地などで必要な土地以外の)空地となっている場所がある。それらの場所で太陽光発電をすると、おおむね、人類の必要なエネルギーの 10倍ぐらいのエネルギーを取り出せる、という試算がある。
 一方、バイオエネルギーのエネルギー変換効率は、太陽光発電の 100分の1ぐらいだ。とすれば、同じ面積で(太陽光発電のかわりに)バイオエネルギー生産をすると、人類の必要なエネルギーの 10分の1ぐらいのエネルギーを取り出せる、というふうになる。
  ・ 太陽光発電 …… 必要量の 10倍
  ・ バイオエネ …… 必要量の 10分の1


 太陽光発電ならば、必要量の 10倍のエネルギーを取り出せる。ならば、土地の1割だけを太陽光発電に使って、残りは他の用途に使えばいい。これで何も問題ない。
 バイオエネルギーならば、必要量の 10分の1を取り出せる。ならば、残りの 10分の9は、他の方法でエネルギーを得るしかない。つまり、化石燃料や原子量発電に頼るハメになる。(風力発電は限界があるので頼れない。)……というわけで、バイオエネルギーは、全然頼りにならないわけだ。

 ──

 以上のことから、次のように判定できる。
 バイオエネルギー生産の実用化は、ありえない。ありえないというよりは、あってはならない。それは明らかに有害なのである。やればやるほど、炭酸ガス削減に反する。なぜならば、限られた土地を奪うことで、太陽光発電によるエネルギー生産を阻害するからだ。
 本来ならば、太陽光発電によって、100のエネルギーを取り出せるはずだった。そこでバイオエネルギー生産をすると、1のエネルギーしか取り出せない。そのせいで、減った分の 99については、化石燃料や原子力発電を使わざるを得なくなる。「原子力発電を使わない」という原則を取るとしたら、「減った分の 99については、化石燃料でまかなう」という方針を取らざるを得ない。つまり、バイオエネルギー生産をすればするほど、(太陽光発電を減らすことによって)炭酸ガス生産を増やしてしまうのだ。バイオエネルギー生産を1だけ増やすたびに、化石燃料によるエネルギー生産が 99も増えてしまうのだ。これでは完全な逆効果である。

 ──

 どうしてこういうことが起こるのか? それは、「地球の陸地面積は限られている」ということによる。同じように荒地や砂漠があるとしても、そこでは太陽光発電をするのが最も効率がいいのだ。その土地を奪ってバイオエネルギー生産をしても、ろくに意味がないし、むしろ有害なのである。

 ──

 経済学の分野では、「パレート最適」という概念がある。資源配分を行う際に、最適の配分の仕方はどういうものであるか、ということを計量する概念だ。経済学の分野では、「資源の最適配分」というのが、非常に重要な概念となる。お金であれ、人員であれ、原料であれ、機械設備であれ、手にしている資源を最大限に有効利用しないと、まともに黒字を出せない。それほどにも「資源配分」という発想は大切なのだ。

 ところが、エネルギー生産の研究者の頭には、「資源配分の最適化」という概念がまったくない。そのせいで、限られた資源である土地を、「無料で無限に入手できる」と勝手に想定して、「無料で無限に入手できる土地でバイオエネルギーを生産しよう」と考える。
 しかし、「無料で無限に入手できる土地」などは、存在しないのだ。土地の量は有限なのである。その土地はすでに太陽光発電に優先権がある。とすれば、バイオエネルギーの出番などは、どこにもないのだ。

 地球というものは有限である。そのことを理解できないのが、バイオエネルギーの研究者だ。こんな連中は、ただの妄想を研究しているだけなのだから、この世から一掃してしまうのが最善かもしれない。(不毛な研究をするのは、ただの金の無駄遣いだ、とも言える。不毛なバイオ研究というのは、何だかダジャレみたいだけどね。)



 【 関連動画 】

 サイエンスZero




posted by 管理人 at 22:17 | Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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