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製鉄とメタネーション
製鉄では炭酸ガスが排出されるので、それを削減しようという努力がなされている。前項で述べたとおり。
→ 製鉄の脱炭素化: Open ブログ
そこで、「炭素を使わなければいい」という発想から、「水素還元」という製鉄方法が研究されている。だが、これについては「駄目だ」と否定した。(前項で。)
一方、「炭素を使うが、できた炭酸ガスを水素で還元してしまえばいい」という発想がある。これをメタネーション(メタン化)という。
その熱化学方程式は下記だ。
CO2 + 2H2 → 4CH4 + 3H2O
これによって製鉄の脱炭素かを進めよう……という方針もある。
→ https://x.gd/6Rqw6 ( Google 検索)
そこで、この話題について考察してみよう。
前出項目1
メタネーションについては、(この言葉を使わないで)前に言及したことがある。「太陽光発電の電力でできた水素をどう利用するか」というテーマで、メタネーションと同じ発想を示した。
→ 脱炭素化の3大問題: Open ブログ
このあと、さらに次の項目で、新たなヒラメキを示した。
「メタネーションで作ったメタンを使って、火力発電所で発電所で発電すれば、炭酸ガスができる。その炭酸ガスをメタネーションでメタンに戻せば、また発電ができる。こうして永久機関のように無限循環ができる。これぞ名案!」
しかし、そんなうまい案は成立しない。そんなことをするくらいなら、最初から水素を燃焼して水素ガス発電をする方が効率がいい。わざわざメタネーションという手間をかければ、無駄手間をかける分、効率が悪化するので、ただの無駄である。……そういうふうに結論した。
→ 水素社会を推進するべきか? .2: Open ブログ
さらに、「どうせ(燃焼で)水素発電をするのなら、ただの水素発電よりも、熱電併給のコジェネにすれば、(ただの火力発電よりも)大幅に熱効率が向上する」というふうにも述べた。
前出項目2
別の項目では、「アンモニアで石炭混焼」という方式について言及した。
→ 石炭混焼の論理ペテン: Open ブログ
ここでは、アンモニア NH3 について言及したが、メタン CH4 でも事情は同じである。そのことは、前項でも説明したとおり。
つまり、最初から最後まで見ると、次の二段階があるだけだ。
100の電力を消費する → 30の電力を発生する
その途中では、水素を付けたり、はずしたりする。そのことで、無駄手間をかけるロスをもららす。と同時に、二段階の前半を隠蔽する。つまり、後半だけを見せつける。こうして、後半だけを見せることで、「水素で電力を発生させました」と見せかける。
実際には、100の電力を無駄にしながら 30の電力にしているだけなのだが、前半を隠すことで、(水素から)「 30の電力を発生させました」と見せかける。
結局、ゴマ化すための道具に、アンモニアを使うかメタンを使うか、という違いはあるのだが、論理のペテンで、(水素から)「 30の電力を発生させました」と見せかける。
かくて人々はだまされる。これがメタネーションの本質だ。(石炭混焼の本質と同じ。どちらも同種のペテン。)
※ ただしアンモニアを使うよりは、メタンを使う方が、効率は高い。そういう若干の違いはある。
保存(時間・空間のシフト)
結局、以上をまとめると、メタネーションというのは、まったくの無駄であるにすぎない。ただし、メリットが何もないかというと、そうでもない。「エネルギーを保存できる」というメリットがある。
保存とはどういうことか? 次の二点だ。
・ 昼間に余った電力のエネルギーを、夕方や夜に使える。
・ 熱帯で生じた電力のエネルギーを、温帯の地域で使える。
前者は、時間のシフトであり、後者は、空間のシフトである。このようにシフトすることで、需要の凸凹を ならす。そういう効果がある。
このようなシフトは、電力のままでは可能ではない。電力は蓄電ができないし、電力は遠距離送電もできないからだ。
だから、このようなシフトを可能にさせるという意味では、メタネーションの意義はある。
とはいえ、よく考えると、こういうシフトは、たいした意義を持たない。
・ 時間シフトならば、EV に充電することで可能だ。(蓄電)
・ 空間シフトならば、水素でも可能だ。(水素輸送)
時間シフトの点では「蓄電」に負けるし、空間シフトの点では「水素輸送」に負ける。つまり、メタネーションはどちらにも勝てないのだ。(効率の点で。)
その意味で、メタネーションは実用化の意義がない、とすら言える。
水素との比較 1
メタネーションの最大のメリットは「保存できること」だが、その点では水素も同様だ。水素もまた「保存できること」というメリットがある。
しかも、どうせ気体の形で保存するのであれば、メタンの形に転化するよりは、水素のまま使う方が効率的である。これには二つの意味がある。
第1に、水素をメタンに転化するときに、ロスが発生する。先に述べたように、水素をメタンにするのは、発熱反応なので、触媒を使うだけで、自動的に水素がメタンに転化されていくはずだ。その意味では、ロスは生じないはずだ。とはいえ、現実には、理想通りには行かない。いくら頑張っても、10〜20%のロスが発生してしまうそうだ。
水素の直接利用に比べ、メタン化の工程が加わる分、燃料の費用の増加と10 - 20%ほどのエネルギー損失が生じる。
( → メタネーション - Wikipedia )
こういうロスが発生する分、メタネーションは効率が低いことになる。(水素の直接利用に比べて。)
第2に、水素の場合には、「燃焼でなく燃料電池に使う」という形で、エネルギーの利用効率を上げることができる。メタネーションで生じるメタンは、ガスに混合することで都市ガスやプロパンガスの形で使いやすいという利点があるが、その利点ゆえに、普通の燃焼の形で使うことになる。一方、水素ならば、燃焼でなく燃料電池に使うことになるが、それゆえ、熱効率を上げることができる。(燃焼よりも燃料電池の方が熱効率が高いからだ。)
ただ、燃焼と燃料電池のどちらがいいかは、一長一短である。たしかに効率の点では、燃料電池の方がいいのだが、家庭用の燃料電池には、難点がある。
・ 初期投資費用が馬鹿高い。
・ 調理には使いにくい。
・ 副産物として大量に生じる湯の使い道がない。
これらの難点は、ガスによる燃焼方式にはないものだ。このような利便性の点で、水素による燃料電池の方式は大きく負ける。効率の点では勝てても、利便性の点では負ける。
ただし、解決策はなくもない。
・ 初期費用の点は、貯金や融資を使えば、何とかなる。
・ 調理の点では、IH調理器を使えば、何とかなる。
・ 大量の湯については、冬なら風呂に使えばいい。夏は下記。
夏にはどうするかというと、次の名案がある。
「夏には燃料電池を使わないで、休ませておく。かわりに、太陽光発電の電力を使う」
つまり、燃料電池と太陽電池を、冬と夏で交替で使う……という感じだ。春秋は両者をミックスして使えばいい。こういう使い方をすれば、デメリットを減らすことができる。
また、ガスを使いたいときには、ガスを使ってもいい。どうせガスの調理器は格安なのだから、特に費用の心配をしなくても済むのだ。
※ ガスの FF 暖房はすごく高価だが、そんなものは使わなければいい。今どき、ガスの FF 暖房を使う人は少ないだろう。関東以南であれば、エアコン暖房の方が安上がりだからだ。また、北国であれば、灯油暖房を使う。どっちにしろ、ガスの FF 暖房を使う人は少ない。ガスの FF 暖房が普及したのは、ガス代が今よりもずっと安かった、数十年も前のことだ。
※ FF でないガス暖房、というものもある。これは、初期費用が安い。また、火力がすごく強いので、エアコンの効かない雪の日に使うとか、厳寒の朝に短時間だけ使う、という使い方もある。これはこれで便利な使い方だ。
→ エアコン暖房とガス暖房: Open ブログ
※ ただし、今年はガス代が高くなったので、ガス代の高さに驚く。厳寒の朝にガス暖房を短時間使うだけでも、ガス代の請求額がかなり大幅にアップする。電気暖房の方がずっと安上がりだ。
とはいっても、厳寒の朝には、エアコンをいくら使っても、部屋が暖まらない。だからガス暖房を使うしかない。となると、使い分けるしかないね。
※ 温水については、「温水式の床暖房」を使う、という手もある。これは今後は普及しそうだ。
※ 次項に続きます。
それはたぶん、プロパン限定で、都市ガスは無関係。
例年思うのですが、冬に凍らせた大量の氷を断熱倉庫に保管し、夏に溶かして冷房に使うと言うのはどうでしょうか。山中湖あたりで氷を作って保管し、東京まで断熱滑り台で滑らせてタダで送ると言うのはどうでしょうか。
雪冷房とか雪氷熱利用というのは、それなりに存在しています。重量あたりの熱量が小さいので、遠くから運ぼうと思うと搬送エネルギーのほうが大きくなってしまいますので、地産地消が原則でしょう。
実験は、やってみていますが。
https://www.trims.co.jp/recyclenews/2006/08/post_259.html
まあ、このブログの画像でも見ていてください。(今は)
お二人とも山中湖から東京までタダで氷を運べるという私の主張を忘れておられます。
山中湖の標高は約1000m、東京までの距離概算は100kmです。ですから100mで1mの落差があります。これならかなりのスピードで氷を東京まで滑らせます。
とりあえず暑いので有名な甲府市まで運んでみたらどうでしょうか。ぜひやってほしいですね。
それが実現できるのは、川面の上だけでしょう。しかし、そんな川は存在しない。
山中湖から東京に来る途中には、丹沢の山があり、乗り越えるのは困難。
滑り台とエレベーターの建設費に 1兆円ぐらいがかかりそう。