2023年09月06日

◆ 地下トンネルの陥没と深度

 大深度地下トンネルの工事で陥没事故が起こる。これは深度が不足しているせいでは? もっと深くするべし。

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 大深度地下トンネルの工事で陥没事故が起こる。リニア新幹線の工事を待つまでもなく、東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事で発生した。
 当初の記事はこうだ。
 東京都調布市で工事中の東京外かく環状道路(外環道)のトンネル工事のルート上で起きた市道陥没で、東日本高速道路(NEXCO東日本)は4日、現場近くの地中に長さ約30メートル、幅約4メートル、高さ約3メートルの空洞が見つかったと発表した。トンネルを掘削するシールドマシンの振動で空洞が生じた可能性があるが、NEXCO東日本は「因果関係は現段階では不明」とし、調査を続ける方針。
( → 地下40m以深の大深度地下工事は本当に安全なのか? 「リニア中央新幹線」では50km以上が適用区間、調布陥没事故2年で考える |

 この時点では、原因は判明していなかったが、2年後に原因は解明された。
 東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事による影響で発生した、東京都調布市の陥没事故。
 大深度地下工事は安全と見られていたため、迅速な原因究明が求められた。大深度地下とは、地下40m以深、または、建築物の基礎杭の支持地盤上面から10m以深の地下を指す。東日本高速道路が設置した有識者会議によると、事故発生2か月後の2021年2月、トンネル工事と陥没の因果関係を認定している。

daisindo.jpg


 報告書によれば、騒音の苦情を受けて夜間は工事を中断していたところ、上から土砂が沈み込み、掘削機のカッターが詰まるトラブルが発生するようになった。そこで、土砂を取り除くため、土を柔らかくする薬剤が注入された。結果、周辺の地盤も緩み、掘削時にトンネル上部の土砂が過剰に取り込まれた。さらには、掘削しやすいように薬剤が工事中も使われたため、トンネル上部に空洞が生まれて陥没につながったとされている。
 いくつかの地震で地下鉄駅に被害が少なかった事例を基に、大深度地下工事は安全との認識が強かった。調布の陥没事故は、この認識が誤りだったことを世に知らしめた。
 大深度地下工事においては、「地下深い場所 = 安全」という思い込みが漠然と信じられてきた。
( → 調布陥没近くの地下に巨大空洞 トンネル掘削の振動原因か:東京新聞

 大深度工事ならば安全だ、という思い込みがあったが、それは正しくなかった。では、正しくはどうなのか? というより、どうすれば安全に工事できるのか? それがわからないと、まともに工事もできない。困った。どうする?

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 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「地下 50メートル程度の深度では、その上の構造に影響を与えてしまう。そこで、影響を与えないように、50メートルよりももっと深い深度を掘ればいい。そのことで、土が硬くなって、工事は難しくなるが、崩壊して工事不能になるよりはマシだ」

 これは一つのアイデアである。だが、このアイデアが実現可能であるか(あるいは妥当性があるか)は、不明である。
 そこで、裏付けを求めるために、調べてみようと思った。何を? 地質構造を、である。地質構造を調べれば、上のアイデアの妥当性がわかるはずだ。
 では、地質構造を調べるには、どうすればいいか? ネットで探ればいい。ググればい。

 そこでググると、次の記事が見つかった。
  → 産総研:ついに完成!東京都心部の3次元地質地盤図
 ここで示されているように、すでに地質構造のデータが提供されている。

 そのサイトは、下記だ。
  → 産総研:都市域の地質地盤図

 これを使って、「吉祥寺〜中野」あたりの断面図を取ると、こうなる。


danmen1.gif
クリックして拡大



 緑色の部分は表層であり、ピンクの部分は第2表層である。どちらも堆積物だ。その下に、より堅固な下層(かなり厚い)がある。
  → 産総研:都市域の地質地盤図(地層の解説もあり)

 この図からわかるように、表層の 70メートル(厚さ)の部分は、軟弱な堆積物である。そこは、軟弱なので工事はしやすいが、崩れやすく、崩壊事故が起こりやすい。
 一方、表層の 70メートルを超えて、深度 80メートル以上の深さになれば、より堅固な層になる。そこは、やや堅固なので工事はしにくいが、崩れにくく、崩壊事故が起こりにくい。
 以上のように解釈できるだろう。

 ──

 このことから、先のアイデアは成立する、とわかる。数値を修正して書き直せば、こうなる。
 「地下 50メートル程度の深度では、その上の構造に影響を与えてしまう。そこで、影響を与えないように、80メートルよりももっと深い深度を掘ればいい。そのことで、土が硬くなって、工事は難しくなるが、崩壊して工事不能になるよりはマシだ」

 先のアイデアでは「もっと深い深度を掘ればいい」と述べたが、具体的な深さはわからなかった。しかし、上の地質構造図を見れば、具体的な深さがわかる。つまり、「80メートル以上」だ。場所によるばらつきも考慮するなら、「100メートルぐらいの深度」が適切だと判断できる。
 このくらいの深度を取ることが、今後の大深度地下トンネルの工事では妥当だろう。
 先の記事にはこうあった。
 大深度地下工事は安全との認識が強かった。調布の陥没事故は、この認識が誤りだったことを世に知らしめた。

 何が間違っているかは、すでに判明した。そして、何が正しいかは、本記事によって推定できるだろう。真実は、ここにある。




 [ 付記 ]
 あとで思い直したのだが、住居のない山林の地域では、柔らかい表層の地層(深度 70メートル以内)を掘るのでもよさそうだ。その場合、上の地層が陥没したとしても、住居がないので、大きな被害は生じないからだ。あとで埋め戻すだけで足りそうだ。



 【 関連項目 】

 本項の大深度地下トンネルの工事が現実に当てはまるのは、次のような例だ。
  ・ 外環道
  ・ リニア新幹線

 それぞれ、別項で詳しく論じた。そちらも参照。
  → カテゴリ(自動車・交通)
posted by 管理人 at 23:26 | Comment(1) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新倉パーキングエリアからよつば公園と東林寺と桜坂公園と和光市駅を経由する和光出入口への高速道路を建設して和光出入口から大坂ふれあいの森とこやま公園と百段階段と牛房八雲神社と芝屋橋と稲荷山と清水山と武蔵御岳神社を経由する大泉分岐への高速道路を建設して外環自動車道の経由を変更すべきである。
Posted by ガーゴイル at 2023年12月11日 12:25
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