2023年09月01日

◆ リニアは MRJ 同様、失敗する

 リニア新幹線は失敗するだろう。MRJ の失敗の再現だ。

 ──

 MRJ は破綻した。もはや見込みがないとわかっても、方針変更せずに猪突猛進したからだ。リニア新幹線もまた、その二の舞になりそうだ。

 そもそもリニア新幹線は、ちゃんとしたメドはまったく立っていなかった。「たぶんうまく行くだろう」と勝手に楽観したあげく、先も見えないままゴーサインを出した。「結果はトンネルに聞いてくれ。オレは知らん」という感じだ。
 トンネル工事に10年もの期間がかかるのは、南アルプスの掘削が「前人未踏の領域」(ゼネコン幹部)と言われるほどの難工事だからだ。土被り(地表からトンネルまでの距離)が最大で1400mという前例のない環境で、土中に何が眠っているかも「掘ってみなければ分からない」(別のゼネコン幹部)。
( → リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由 開業遅れると全国のプロジェクトが大混乱? | 新幹線 | 東洋経

 先もわからないまま南アルプスにトンネルを掘っていった。すると案の定、問題にぶつかった。
 何が起こるか分からない状況を予兆するかのように、昨年12月、リニアの沿線自治体である長野県中川村にて山の斜面が崩壊、流入した土砂が県道を塞ぐ事故があった。その後の記者会見にてJR東海は「現場近くで行われていたリニアのトンネル工事での発破作業」が事故を招いた可能性があると認めた。発破に伴う振動で地盤が緩んだ可能性があるという。出足からトラブルに遭った格好だ。

 開通が遅れた最大の理由は、やはり土被りだった。土被りが深いほど、事前のボーリング調査でも地中の状態が正確に把握できないほか、堆積する土や岩の圧力(地圧)が増し、掘削機やトンネルの外周を固めるコンクリートを圧迫する。土被りが最大1000mにも達した飛騨トンネルでは、掘削中に地下水の噴出が相次いだほか、機械が地圧に押されて動かなくなってしまった。やむなく機械をその場で解体し、ダイナマイトで地盤を地道に爆破する手法へと変更した経緯がある。
 南アルプストンネルの工事では初めからダイナマイトによる爆破の手法を採るが、地下水が噴出したり、コンクリートが地圧に負けてヒビが入ったりするリスクは残る。

 最後の点が問題だ。たとえリニアのトンネルが完成したとしても、莫大な水圧が常にかかり続ける。それは人類史上、類を見ないほどの水圧だ。それが 30年もかかったら、どうなるか? そんなテストは、やったことがない。ダムならば何とかなるが、ダムのコンクリートは底部では何十メートルにもなる。それよりずっと薄いリニアのトンネルのコンクリート壁では、莫大な水圧に耐え切れそうにない。何度も地震に襲われたりするうちに、細かなヒビが入りそうだ。そして、ヒビが入ったコンクリートは、水が染みこんで、内部の鉄筋を腐食させる。鉄筋は錆びて大きく膨張して、構造体の全体をふくらませて、コンクリートをボロボロにする。……こういうふうにして、ボロボロになったコンクリート建築が、最近はあふれている。1970年代の公共事業で立てられた建築物は、築後 50年を経て、そういうふうに劣化しつつある。
 リニア用トンネルは、状況がもっと厳しい。1400メートルの高さの南アルプスの高い水圧を受け続けるのだから、50年と言わず 30年ぐらいで劣化しそうだ。しかし 30年で劣化してしまったのでは、償却もままならない。償却しないうちに、使用期限が来そうだ。
 「トンネルが劣化したので、使い物になりません。トンネルは閉鎖します。新しいトンネルを作って下さい」
 というふうに。これは非常にヤバい。
 困った。どうする?

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
 「南アルプスを横断する直線状のトンネルをやめて、東海道に近い山裾の方に迂回する、南回りのルートを取る。曲線状のルートだ。このことで、浅い地下のトンネルで済ませるようにする」



リニア新幹線 南回りルート


 詳しくは次項で。
  → リニア新幹線の南回りルート: Open ブログ (次項)
 これは、「地上の高架」という方式ではなく、「浅い地下トンネル」という方式だ。

 現状の方式では、(南アルプスの水の噴出などで)工事が難航しているので、いつ完成するかもわからない。
 一方、上の方式ならば、その問題がない。「高い水圧のかかる場所を避ける」という点からして、「コストが大幅に上昇する危険を避ける」という効果が生じるのだ。また、「建設後には、高い水圧がかからないので、長い寿命が担保される」という効果が生じる。
 なるほど、上の方式でも、シールドマシンを使う必要がある。だから、コストが激減するわけではない。(その点では、高架を使う方式ほど低コストではない。) それでも、「大深度地下と高架の中間」みたいな位置づけになるので、中間的な効果が生じる。地上の高架を使えない場所では、現実的な解決策となるだろう。

 JR東海としては、「直線にならないので、理想には程遠く、不満足だ」と思うだろうが、利用者の立場としては、「時間が 10分間ぐらい短くなるよりも、コストが半減することの方が、ずっと大切だ」と思うだろう。
 ま、JR東海としては、「あくまで当初のプランを初志貫徹したい」と思うところだろうが、現実には工事は難航している。当初のプラン通りには工事が進んでいない。当初の狙ったような安価な工事は不可能であり、コストはうなぎ登りに上昇しそうだ。
 こうなったらもはや「当初のプランは不可能だ」と見極めて、当初のプランを引っ込めるべきだろう。つまり、「撤退」だ。
 それができるかどうかで、会社の不沈は決まる。その点は、MRJ と同様だ。いや、もっとひどい。MRJ は会社を倒産させるほどではなかった。しかしリニアの失敗は JR東海 を倒産させかねない。JR東海の黒字額は、もともと大きくないからだ。(東海道新幹線でいくら利益を出していても、在来線の大赤字で黒字を食い潰されている。)
 第二次大戦のとき、旧日本軍は「負け戦だ」と悟っても、途中でやめることはできなかった。潔く撤退できなかった。だから東京は焼け野原となり、さらには原爆を2発も食らった。さっさとやめておけば、こんなひどい被害にはならなかったのに。
 リニア新幹線もまた同じ。南アルプスでひどい水圧にぶつかったのだから、この場所はもはや回避するべきだ。つまり、ひどい水圧のない場所を通るように、迂回するべきだ。それが私のお薦めだ。

 ※ 今さら中止したら、すでに掘ったトンネルの工事が無駄になる……という心配をする人も出そうだが、大丈夫だ。今はまだ工事は1割も進んでいない。あまりにも難工事なので、進捗がすごく遅れているのだ。不幸中の幸いだ。(今ならまだ間に合う。)
   → 中央アルプストンネル松川工区 工事進捗状況 - 飯田市

 


 [ 付記 ]
 そもそも JR東海 は、トンネル工事(土木工事)というものを、甘く見過ぎているんだよ。自分たちはろくに技術的知見もないまま、「たぶん大丈夫だろ」と思って、甘いコスト試算をした。
 「トンネルの上に 1400メートルもの土や水があっても、それがなくても、トンネル工事費は同じだろう。どうせ穴を掘るだけだし」
 と思って、従来と同様のコスト計算をした。しかし、その目論見が甘すぎることは、土木研究者ならば一目瞭然だろう。

 昔、黒部ダムの難工事というのが話題になったことがある。山脈に穴をあけたトンネル工事をして、ひどい難工事をなし遂げたが、犠牲も大きかった。延べ1千万人の人手をかけて、171名の死者を出した。
  → 世紀の大工事〜くろよん建設ヒストリー〜|くろよんヒストリー
 JR東海 は、その二の舞をやるつもりなのか? (安全技術的な進歩で、死者はそんなに出ないだろうが、逆に、金は何倍も無駄にしそうだ。)













 【 関連サイト 】

 関連情報がある。
  → リニア新幹線の南アルプスルートは安全か | 日経クロステック(xTECH)
 


 [ 余談 ]
 技術的困難という点では、燃料電池車に似ている。
 燃料電池車もまた、「近い将来に実用化できる」と信じて、トヨタとホンダは莫大な金を投資してきた。しかし現実には、燃料電池車は実用化できなかった。(かろうじてトヨタミライができたが、いまだに大量生産は実現できていない。月販24台 だ。)
 到達できそうな目標を信じて、無理に猪突猛進したが、結局は到達できないまま、すべては無駄となり、水の泡に……というのが、燃料電池車だ。あとに残ったのは、巨額の赤字だけ。
 JR東海 のリニアも、その二の舞か。MRJ にも似ているが。
 


 【 関連項目 】

 → リニア新幹線・米原ルート: Open ブログ (前項)
 
posted by 管理人 at 22:39 | Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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