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道をどんどん進んでいると、日向と陰との境界が地面を横切っていた。向こうの方は日向。手前は陰。その境界が少しずつ移動している。
こういうことはよくある。
ここで、その境界を見ると、境界の幅は、ほんの数メートルしかない。
としたら、雲もまたそうであるはずだ。つまり、凝集している雲と、何もない大空とは、ほんの数メートルの境界しかない、ということになる。なだらかに段階的に変化しているのではなく、ほんの数メートルの幅で領域が区別されているわけだ。
換言すれば、雲というものは、はっきりと画然として固まっている(凝集している)わけだ。
それはどうしてだろう? 万有引力みたいなものが働いて凝集しているわけではないのだが、なぜ雲は凝集しているのだろう?
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この疑問に対して思いついたことは、こうだ。
「それは氷が溶けるのと同様である。氷は固まっていて、表面から少しずつ溶けていく。表面が溶けても、中までは溶けないから、中の氷は残っている。雲も同様だ。雲の表面は少しずつ溶けていく(蒸発していく)のだが、雲の中の方はまだ残っているので、雲の全体も残っている」……(★)
この説明が正しいとしたら、次のことが成立するはずだ。
「空に浮かぶ雲は、固定的ではない。その表面が少しずつ溶けている。今ある雲は、まだ溶けていないだけだ。やがて時間がたつにつれ、雲はどんどん溶けていって、最終的には(空のなかで)すべて蒸発する」
そのことを確認するには、現実の雲を観察するといい。すると、次のことを見出した。
「雲の大きな固まり自体は、何の変化もないように見える。しかし小さな雲の末端には、淡い白さの尻尾のようなものがある。それは薄らいだ雲だ。その薄らいだ雲を見ていると、ほんの数分間の間に、どんどん薄らいでいって、消えてしまう。つまり、溶けてしまう」
こうして、上の (★) の推察が正しいことが、裏付けられた。
結論としては、こうなる。
「雲が凝集しているのは、その雲がまだ溶けていないからだ。やがていつかは、表面が少しずつ溶けて、最後にはすっかり蒸発してしまう(溶けてしまう)のだが、今はまだ残っている。だから、雲は凝集している(と見える)のである」
さらに理学的に説明すれば、こうなる。
「水は蒸発熱が大きい。だから、雲の表面が溶けた(蒸発した)ときに、あたりには大きな冷却効果が出る。また、空気は断熱効果が大きい。だから、太陽の照射による熱が、雲の内部にまで深く浸透しない。だから、雲の内部が一挙に蒸発することもない。こうして、雲の内部の細かな水滴は、長らく水滴状態のまま保たれる。つまり、なかなか蒸発しないでいられる」
こういう理由で、「その雲がまだ溶けていない」という状況が長く続く。
[ 付記 ]
オマケで、次の疑問に答える。
Q 雲が細長いのはどうしてか? なぜ球形ではなく、(サツマイモのように)細長い形を取るのか? また、横に伸びているのはどうしてか? 縦に伸びているのでもよさそうなのに、なぜ横に伸びるのか?
A 風に吹かれているせいだろう。初めは球体だったとしても、風に吹かれると、雲の表面が剥離するようにして、風に運ばれながら、風下に流れていく。一方、雲の中心部は風に運ばれにくいから、その場に残りがちだ。こうして、表面はどんどん風下方向に流れて、中心部は現在位置に止まろうとする。結果的に、雲は風の吹く方向に、横に伸びていく。
【 関連動画 】
ボブ・ディラン。「風に吹かれて」
【 追記 】
「水滴には分子間力が働くので、凝集する」
との指摘を、コメント欄で得た。
なるほど。こちらの方が主因であるようだ。
凝集力の素は万有引力やクーロン力ではなく、いわゆるVan der Walls力=分子間引力で、量子力学で説明されています。。また凝集の過程は統計力学でほぼ完全に説明されています。
最後の 【 追記 】 で言及しました。
定常的ではなくて常に生成と消失を繰り返しているものになりますね。