2023年08月25日

◆ 機械は感情を持つか?

 (前項 の続き)
 ロボットが発達すると、ロボットが人間のような心を持つものとしてふるまう。では「機械は感情を持つ」ようになると言えるのか?

 ──

 マンガ「 PLUTO 」では、ノース2号が感情を学ぼうとして努力していた。このことから一般的に考えて、「機械は感情を持つ」ということはあるのだろうか? そういうことが起こると言える日が来るのだろうか?
 以下では、私なりの考え方を示そう。

 ──

 たとえ機械であっても、その機械が人間と同様の原理で働くのならば、「機械は感情を持つ」と言えるだろう。では、「機械が人間と同様の原理で働く」と言えるのか? そこが問題だ。
 なぜか? Deep Learning では、人工知能はパーセプトロンを模した演算をなす。(パーセプトロンをシミュレーションする。) そのパーセプトロンと同じ作用をする機械が現実にあるのなら、その機械は脳と同様の働きをしていると言えるだろう。その機械は、パーセプトロンを通じて、「考える」こともできるし、「感情を持つ」こともできるだろう。
 ところが、その機械は、現実にあるのではない。仮想的にあるだけだ。つまり、その機械は、現実にある機械ではなく、CPU によってシミュレートされたものであるから、仮想世界における、仮想の機械なのだ。
 たとえば、「 Deep Learning の働きをしているパーセプトロンを見せてください」と言われても、「はいこれです」と見せることはできない。そのパーセプトロンは、CPU によって想定された、仮想的な機械であるにすぎないからだ。それは物質として存在するのではなく、0と1の演算によって示された記号列であるにすぎない。





 比喩的に言おう。「考える機械」( Deep Learning における機械)とは、いわば、「ゼルダの伝説」というゲームにおいて、そのゲームの世界のなかに存在する「機械」というものだ。それは、ゲームの世界(仮想世界)のなかでは「存在する」と言えるが、われわれのいる現実世界のなかに「存在する」とは言えない。その機械は、仮想世界のなかでは「考える機械・感情を持つ機械」だと言えるが、この現実世界のなかで「考える機械・感情を持つ機械」だとは言えない。なぜなら、その機械に、主人公(リンク)は指で触れることはできるが、われわれは自分の指で触れることはできないからだ。





 似た例で示そう。「考える機械」は、ラブプラスのヒロインのようなものだ。 小早川 凛子・高嶺 愛花・姉ヶ崎 寧々というヒロインは、ゲームの世界には存在して、感情を持つようにふるまう。それらのヒロインは、ゲームの中ではまさしく感情を持っている。しかし現実のこの世界においては、そのヒロインは存在していないし、ヒロインが現実に感情を持つこともない。

 それがつまり、「感情を持つ機械というものの」の意味だ。そこでは、「機械があるのに感情がない」という未完成さがあるのではない。「もともと機械がないから、感情を持つ機械も存在し得ない」という原理的な否定が成立してしまう。

 仮に、パーセプトロンが仮想世界でなく現実に世界において存在したならば、その機械は「感情を持つ機械」として成立しそうだ。とはいえ、パーセプトロンを物理的な素子として構築するということは、ほとんど人工的に脳を作るのに等しい。そのようなことができる日が来るとは思えない。(そもそも、やる意味がなさそうだ。マッド・サイエンティストでもなければ。)

 ──

 それで、結局、この機械(仮想世界のなかの機械)は、「考える」と言えるのか? 私の見解を言えば、こうだ。
 その機械は、仮想世界の中では「考える」と言えるが、現実世界の中で「考える」とは言えない。その両者は、見かけ上は一致している。仮想世界のなかで得た結論を、そっくりそのまま現実世界のなかに持ち込むことができる。たとえば、AI 将棋の結論を、そっくりそのまま現実世界のなかに持ち込むことができる。このことで、「機械が考えている」というのと同様の結果になる。
 しかしそれでも、実際に考えているのは、仮想世界のなかでのことなのだ。仮想世界のなかの結論を、現実世界に持ち込んでいるのは、仮想世界を覗き込んでいる人間なのだ。(いわばピーピング・トムのように覗き込んでいる。)
 このとき、仮想世界と現実世界とを区別するべきだ。仮想世界の中を覗き込んだ人が、現実世界のなかで同様にふるまうことはできるが、だからといって、覗いた人が「考えている」ということにはならない。それはカンニングも同様だからだ。
 
 仮想世界のなかで考えることと、現実世界のなかで考えることとは、たしかに別のことなのである。その両者を区別するべきだ、というのが、本項の結論となる。、

posted by 管理人 at 23:21 | Comment(0) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
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