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この問題については、先に次のように述べた。
「深部体温を冷やした上で、安静させる」
というのは、熱中症の対策としては正しい。マニュアルにも書いてある正しい措置だ。一方、
「深部体温を冷やした上で、炎天下で活動させる」
というのは、熱中症の対策としては最悪である。(体の)表面温度と深部温度が乖離してしまうので、体温調整機構が壊れてしまって、体が異常状態にな
( → クーリングタイムの失敗 .1: Open ブログ )
これで原理的なことは説明がつくのだが、もうちょっと具体的に(生理学的に)「足がつる」までの作用機序を考えたい。
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まずはネット上の説明を探ると、次の説明が見つかった。
人体は皮膚等の温度受容器が受けた刺激を脊髄や橋を経て視床下部の体温中枢(正中視索前核(MnPO))に伝え、ここからの指令により体温(核心温)を約37℃に維持しようとしています。
《 表面に血流が集まり熱を逃がす 》
体温が上昇しはじめると、まず、橋から視床下部の体温調節中枢に刺激が伝わると延髄網様体を刺激して交感神経系の調節によって皮膚を流れる血液が増えて体表面からの輻射を促します。
やがて汗腺からの発汗も促され、30〜35℃の皮膚表面では1mL当たり0.58kcalの蒸発熱を奪います。人体の比熱は約0.83なので、体重70kgがならば100mLの蒸発で体温が約1℃下がります。
( → 体温調節のメカニズム|熱中症が発生するメカニズムは?|熱中症を知る|職場における熱中症予防対策 )
このことから、次のように説明ができる。
「風呂上がりや運動後には、体がほてっている。ここで、体の表面に水をぶっかけたり、冷風を浴びたりすると、体表温度が下がる。そのことで血流の温度が下がるので、冷えた血流を受け入れて、深部体温が下がり、ほてっていた体が正常化していく」
これは普通によくある事例だ。この場合には、体は正常に適応できる。
一方、クールイングタイムは、その逆である。
「クーリングタイムのせいで、深部体温が下がっている。ここで、炎天下のフィールドに出て運動をすると、体表温度が急上昇する。そこで、本来ならば発汗によって体表温度を下げるべきなのだが、深部体温は低いままなので、体温の上昇を脳がうまく理解できないでいる。
・ 体表温度は上がったぞ。発汗するべきだな。
・ 深部体温は低いままだぞ。発汗は不要だな。
こういうふうに脳が迷ってしまう」
では、そのあとは、どうなるか? こうなりそうだ。
・ 体の表面からどんどん熱い血流が寄せてくる。
・ 本来ならば、深部体温が熱いので、血流を増すことで、深部体温の熱を深部から表面に逃がす。
・ しかし今回は、血流を増すと、深部体温はかえって熱くなってしまう。逆効果だ。
・ すると、脳はどうしたらいいのかわからなくなって、混乱状態に陥る。これはいわば、体温調節機能が壊れた状態だ。
・ とりあえず、脳は深部の血流を減らそうとする。
・ このとき、水分不足やミネラル不足や体温上昇とあいまって、血流不足が主因となって、足の神経作用が異常状態(暴走状態)となり、足がつる。
こうして「クーリングタイム(深部体温の低下)のせいで、足がつる」という現象が説明された。
※ 主因は「深部体温の低下」だが、それだけでない。「事後に、安静にしないで炎天下のフィールドに出る」という条件と組み合わさったことで、発症の条件を満たす、と言える。
※ 本項は医学的な説明ですが、明白に証明された話ではなく、あくまで推定です。「説明がつく」という話。現実に何らかの治療を推奨するものではありません。
[ 付記 ]
しいて私個人の推奨策を言うなら、こうだ。
・ 深部体温を冷やすのは、やめた方がいい。
・ むしろ、体表温度を下げるといい。冷風・冷水。
・ 水分補給はこまめにやるといい。塩分も。
・ 下着の交換も、ときどきやるといい。
※ 深部体温を冷やした方がいいのは、安静にする場合だ。一方、炎天下でスポーツをする場合には、深部体温を冷やすと逆効果だ。その違いに注意。