2023年08月05日

◆ 常温超伝導 LK-99 は誤認

 常温超伝導 LK-99 は誤認である、と判定していいだろう。(私見)

 ──

 常温超伝導 LK-99 は真偽不明、というのが、現在の状況であるようだ。少なくとも「超伝導である」と認定した実験結果は出ていない。
 ここで私は動画と論理だけで判定することにしよう。すると、すでに判明したことだけからも、「これは誤認である」と結論できる。
 以下、詳細を述べよう。

 反磁性の超伝導ではない


 前回項目では、反磁性について言及した。
  → 常温超伝導体 LK-99: Open ブログ

 ここでは「反磁性であるが超伝導ではない」(○×)という見解を紹介した上で、それを否定した。その結論からは、次の二通りの可能性が残る。
  ・ これは反磁性であり、超伝導でもある。(○○)
  ・ これは反磁性でなく、超伝導でもない。(××)

 そのいずれであるかは、何とも言えないままだった。

 反磁性でない


 本項では新たに、「これは反磁性ではない」と結論する。
 ふるまいが明らかに「反磁性」のふるまいとは別種である、というのが大きな要因だ。だが、これを説明するのは面倒なので、ここでは説明を省略しよう。
 もっと大事なのは、以下のことだ。

 磁性体である


 もっと大事なのは「この物体は磁性体である」と判定できることだ。理由は以下の通り。

 (1) 必要条件

 この物体の動画がある。





 この後半では、物体が振動しているのがわかる。
  ※ 振動については、下記にも言及がある。
 韓国超伝導低温学会が「LK-99」についてマイスナー効果(超伝導体が磁場を排除して磁石上の空中に浮揚する現象)が見られないとし、常温超伝導体と見るには不十分だという結論を出した
( → 「LK-99」の真偽論争で…常温超伝導体関連株が次々と急落=韓国 | Joongang Ilbo | 中央日報

 ここで、「振動がある」ということは、そこにエネルギー的な安定点があることを意味する。(安定点からズレると、元に戻ろうとする。)
 その場合には、何らかの力が、この物体に働いていることになる。
 そのような力は、ここでは磁力しかありえない。(磁石による磁場があるからだ。)
 磁力しかないところで、磁力の力が働いているのだから、この物体は磁性体以外ではありえないことになる。つまり、「磁性体であること」が、必要条件となる。

 ※ 仮に「反磁性」であれば、振動することはない。力が働いていないのだから、慣性の法則に従って、一定方向に流れていくだけだ。振動するということ自体が、そこに力が働いていることを意味する。

 (2) 十分条件

 磁性体であることが必要条件になるとして、十分条件はどうか? これが磁性体であるとして、振動を説明できるか?
 できる。
 床面の下に N極があるとしよう。磁性体は S極と N極をもつ。磁性体のS極は床下の N極に引き寄せられ、磁性体のN極は床下の N極と反発する。そのことで、この磁性体は直立するようになる。ただし最下部は、床面に接触している。
 この状態は安定的なので、そのまま静止状態になる。
 この状態で、何らかの力が働いて、揺り動かされれば、元の安定的な状態に戻ろうとする。そのせいで、振動するようになる。
 かくて、「この物体は磁性体である」ということで、振動を説明できる。つまり、十分条件を満たす。

 ──

 (1)(2) により、「この物体は磁性体である」ということで、必要十分条件を満たす。ゆえに、「この物体は磁性体である」と言っていい。
 磁性体であるものは、超伝導体ではない。ゆえに、LK-99 は超伝導体ではない。
 論証終わり。

  ※ 論理的に推論したのであって、名探偵の推理に近い。
    実験的に証明したとまでは言えない。
 




LK-99 figure illustration

 
 床面の下に磁石がある。
 その磁力を受けて、磁性体は直立しようとする。(右回転)
 磁性体の付属した灰色部分は、重量のせいで、下がろうとする。(左回転)
 双方の力がバランスしている状況で、灰色部分は浮遊しているように見える。

posted by 管理人 at 19:16 | Comment(7) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
出どころの話がとても奇妙に思えるのでコメントします。浮かせる程の巨視的な永久電流が生まれる超伝導体であれば、ゼロ抵抗が容易に観測されるはず。電気抵抗の温度依存性を観れば、超伝導であるか否はすぐに分かるのに、何故にそれをしないで議論?? また、試料の上に永久磁石を乗せる所謂「浮き磁石」を試せば、磁石をどう向きに乗せても反発することをもってシールディング反磁性が証明できるのに、、何故しないの?? まともな専門家がタッチしていないのですかね?
Posted by はぎわら_m at 2023年08月06日 05:00
> 浮かせる程の巨視的な永久電流が生まれる超伝導体であれば、ゼロ抵抗が容易に観測されるはず。

 超伝導体でないので、観測されません。

> 電気抵抗の温度依存性を観れば、超伝導であるか否はすぐに分かるのに、何故にそれをしないで議論??

 電気抵抗ゼロは観測されません。

> 試料の上に永久磁石を乗せる所謂「浮き磁石」を試せば、磁石をどう向きに乗せても反発することをもってシールディング反磁性が証明できるのに、、何故しないの?

 それも観測されません。

 ──

 結局、どれも観測されていないから、「観測した」と公表できないんです。
 観測されたのは、振動だけです。(それを本項で説明した。)
Posted by 管理人 at 2023年08月06日 05:33
 本項と同じような趣旨の論文が公表された。
  → https://arxiv.org/abs/2308.03110

 日付は8月8日なので、本項よりも3日も遅い。本項のパクリである可能性もある。

 上記論文では、浮遊状態を説明する図だけが欠けている。本項の最後の図と同等の図になるので、あえて掲載しなかった、と思える。ということは、やはり、本項の図を見たのだろう。
Posted by 管理人 at 2023年08月08日 16:13
 米国や日本の最新ニュースで報道されているが、米国のメリーランド大から公式にツイートが出て、LK-99 が否定された。
 ツイートは下記。
  https://twitter.com/condensed_the/status/1688747919866814464

原文:
 With a great deal of sadness, we now believe that the game is over. LK99 is NOT a superconductor, not even at room temperatures (or at very low temperatures). It is a very highly resistive poor quality material. Period. No point in fighting with the truth. Data have spoken.

翻訳:
非常に悲しいことだが、我々は今、このゲームは終わったと考えている。LK99は超伝導体ではない。室温(あるいは超低温)でも超伝導体ではない。非常に抵抗の高い、質の悪い材料なのだ。 もうおしまい。真実と争っても仕方がない。データが物語っている。
Posted by 管理人 at 2023年08月09日 14:10
 その少し前のツイートでは、抵抗率が計測されている。抵抗率はものすごく高くて、超伝導どころか絶縁体であると言えるそうだ。

 ただし、以上の話では、浮遊状態になることが説明されていないから、単なる「再現失敗」「実験失敗」とは区別が付かない。
 「不完全な浮遊状態」を説明しない限りは、反論としては失敗しているね。
Posted by 管理人 at 2023年08月09日 14:15
 国内で初の実験報告。結果は平凡で、特別なことは何も観測されず。

 → https://twitter.com/shinyashimizu_j/status/1690172676030238720
Posted by 管理人 at 2023年08月13日 10:35
 この物質(LK-99)を、作成して、コミケで販売した人がいる。1500円。すでに完売。
  → https://togetter.com/li/2204487
Posted by 管理人 at 2023年08月13日 17:00
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