肝心な話はすでに終えたが、オマケとなる細かな話を足しておく。 (読まなくてもいい。)
──
(1) エキストラ試合の選定
エキストラ試合を行う学校は、どう選ばれるか?
抽選で決めることにして、49校のどの学校も平等に同じ確率で選ぶ、という方式もある。もちろん、それでもいいのだが、ここはちょっと工夫するといい。私としては、次の方式を推奨する。
「前期に分類される学校数を、16校でなく 17校とする。そのうちの2校を抽選で選んで、エキストラ試合にする」
さて。エキストラ試合をする学校は、試合数が1回多い。その分、負担が増えて、ちょっと不利である。
この場合、前期に分類されるグループだけに、その負担がかかるので、このグループだけが不利であるように見える。だが、実は、そんなことはない。
なるほど、エキストラ試合をやることで、その学校は不利になる。一方、その分、エキストラ試合をやらない学校(前期の別学校)は、かえって有利になる。前期の学校の全体を見れば、不利と有利が相殺する。前期の学校の全体が、中期や後期の学校に比べて、有利または不利になることはない。だから、エキストラ試合を、前期のグループだけに割り当てても、それで地域間の格差が生じるわけではないのだ。(グループ内格差が生じるだけだ。)
エキストラ試合があると、前期の学校にはグループ内格差が生じて、中期と後期の学校にはグループ内格差が生じない。そういう違いは起こる。しかし、前期・中期・後期のそれぞれのグループの間で、有利または不利は生じないのである。
だから、エキストラ試合を前期だけに割り当てても、特に問題はないのだ。
(2) エキストラ試合の利点
エキストラ試合をするチームは、1試合多く試合をするので、負担がかかる。その点では不利である。(上記)
一方で、別の利点がある。次のことだ。
「エキストラ試合に出場する2校のみが、開会式に全員が参加できる」
このことは、逆に言えば、こうなる。
「エキストラ試合に出場しない 47校は、1名(主将またはマネージャー)だけが開会式に出場して、他の選手は開会式には出場しない。他の選手は自宅で開会式のテレビを見るだけだ」
つまり、エキストラ試合に出場する2校のみ、全選手が開会式に出場できる。そういうメリットがあるのだ。これは、有利・不利のメリットではなく、名誉のメリットだ。
※ 開会式には皇族が出席することもある。(年によって異なる。)……その意味でも、全員出席の利点はある。
※ ちなみに、現状では全校の全選手が開会式に出場する。開会式以後、ずっと宿泊することになるので、その分、宿泊費は膨大になる。(無駄ですね。)

(3) 変則トーナメント
もともとの案では、三つのグループに分けたあとで、変則トーナメントをする予定だった。(2グループの勝ち残りが対戦して、その勝者が、残る1グループの勝ち残りと対戦する。)
一方、前項の方式では、変則トーナメントをしない。この違いを、どう解釈するか?
実を言うと、どっちでも同じことなのだ。その説明をしよう。
追加選抜では、前期4校が2校になり、中期4校が2校になるが、後期4校はそのまま残る。
その翌日に、準々決勝の1日目で、後期4校の2試合がある。この2試合は、準々決勝の1日目ということになっているが、追加選抜の一部と見なすこともできる。(後期4校が2校になるからだ。)
これを追加選抜の一部と見なした場合には、残った後期2校は、以後で変則トーナメントをするのも同然となる。
だから、普通のトーナメントをするのも、変則トーナメントをするのも、実際には区別しなくていいのだ。(同じことだからだ。)
細かく言おう。
準決勝では、後期2校と前期・中期2校、合計4校が残る。このうち、4校を抽選で組み合わせてもいいのだが、後期だけでまとめて対戦させると、後期だけで2校が1校になる。この1校が、前期・中期の勝者と戦う。すると、「後期だけが試合数の少ない変則トーナメント」と見なすことができる。
結局、準々決勝以後は、普通の8校のトーナメントと見なすか、変則トーナメントと見なすかは、解釈の違いがあるだけだ。実質的には、どっちにしても差はない。
(4) 後期が有利
準々決勝以後は、変則トーナメントであるとも言えるし、そうでないとも言える。どちらにも解釈できる。
ただし、どっちの解釈を取るにしても、後期だけが1試合だけ試合数が少ないことになる。その意味で、後期だけが有利になるとは言える。
では、後期だけが有利になるのは、不公平だろうか? それを考えよう。
第1に、ある程度の不公平が生じるのは、もともとやむを得ない。48〜49校という出場数が、2の累乗(32 や 64)になっていないのだから、どこかで不公平が生じるのは仕方ないのだ。
第2に、どうせ不公平が生じるのであれば、不公平の程度を最小限にすることが望ましい。その場合、「後期を優遇する」というのは、最も妥当だ。なぜなら、後期は遠グループに属するからだ。遠くから来るチームは、旅程の距離が長いので、不利さを負っている。その不利さを補償するという点で、かわりの有利さを与えたとしても、それなりに合理性がある。(ハンディキャップのようなものだ。競馬で、不利な状況にある馬には、負担重量を減らすようなものだ。)
※ 距離の点では、遠くからやってくる学校は不利であり、近くから来る学校は有利である。双方の損得を考えれば、遠くの学校だけが優遇されるのは、それなりに合理的だ。(どっちみち、どれかを選ばなくてはならないのだから。)
※ そもそも、準々決勝までに残るという点で有利だとしても、あまり意味はない。各校の目的は、準々決勝出場ではなく、優勝なのだ。準々決勝に残るために有利だとしても、優勝するために有利だとは言えない。最終目的のためには有利だとは言えないのだ。
※ 「でも記録上は準々決勝に残ったと記されるので、記録上では有利になるのでは?」という疑問も生じるだろう。そこで、記録上は「準決勝進出」でなく、「ベスト6進出」を評価することにすればいい。これならば公平だ。

(5) 航空機の利用
交通機関の話をしよう。
遠・中・近のグループ分けをするときに、交通機関として、航空機の利用を認めるべきか? それとも、鉄道の利用だけに限るべきか?
北海道と沖縄ならば、航空機の利用を認めるのが当然だ。では、他の県の学校はどうか? たとえば、東京や福岡なら、航空機を利用することで、1時間で大阪にたどりつける。だったら、航空機の利用を認めても良さそうだ。そうすれば、東京や福岡の学校は、近グループに分類することもできるだろう。では、そうするか?
結論を言おう。航空機の利用は認めない。鉄道の利用だけを認める。なぜなら、夏の航空機のチケットは、品薄で、入手難だからだ。入手しようとしても、入手は難しい。
「だったらあらかじめ予約しておけばいいだろ」
と思うかもしれないが、予約は不可能だ。なぜなら、いつどこでチケットが必要になるか、予想が立たないからだ。
・ 敗退して帰郷するのがいつになるか、わからない。
・ 帰郷後に大阪を再訪する学校がどれになるか、わからない。
こういうわけで、日程も経路も不明である。だから、チケットの予約のしようがない。予約できないのだから、購入することもできない。特に、中距離のグループではそうだ。
ただし、遠距離のグループの往路だけは、航空機を予約することもできる。ここだけは、日程も行路も確定している。……とはいえ、夏の航空機のチケット代は高額だ。とすると、たぶん主催者がケチって、高額の支払いを嫌がる。ゆえに、この分も、航空機にするのは無理だろう。
というわけで、北海道と沖縄を除く学校は、航空機を利用できない。それが結論だ。
※ 新幹線の切符は取れるか? お盆の時期を外せば、新幹線の切符は取れるだろう。また、上りでなく下りならば、お盆の後半でも切符を取れそうだ。
(6) 帰郷の旅費の負担
先に述べたように、前期と中期の出場校は、いったん帰郷する。そのことで、宿泊費を大幅に減らすことができる。
しかしながら、宿泊費は減っても、帰郷のための旅費が余分にかかる。その分、コスト増になるが、それでもいいのか?
その問題は、計算すればわかる。
・ 宿泊費は1日1万円。
・ 交通費は往復で2〜3万円。(中距離)
したがって、宿泊日数が2〜3日以上になれば、いったん帰郷した方が安上がりなのだ。そして、中距離のグループは、前期に属するので、待機期間が長期に及ぶ。従って、どう考えても、いったん帰郷した方が安上がりだ。(仮に帰郷しなければ、大阪で1週間以上も無駄に連泊することになる。それでは高額の宿泊料がかかる。)
なお、近距離のグループだと、もっと簡単だ。近距離ならば、交通費はとても安く済む。だから、宿泊しないで帰郷した方が、ずっと安上がりで済む。(宿泊すれば数万円がかかるが、帰郷すれば数千円で済む。)
以上のことからして、「往復の交通費を勘案しても、宿泊しないで帰郷した方が大幅に安上がりになる」と言えるのだ。
※ 前項の最後の「別案」ならば、一時帰郷をするのは前期の「近」グループだけになる。その場合には、もともと宿泊しないで済むので、話は簡単だ。

(7) 応援団の費用
選手でなく応援団の費用はどうか? 彼らが宿泊するのにも、多額の費用がかかりそうだが。
(A)基本
基本的には、前期・中期・後期のどれかのなかで、短期間で決着が付く。だから、基本的には、宿泊数は少なくて済む。だから、おおまかな傾向としては、費用は少なめで済む。
(B)午前中
前項の方式ならば、午前中の試合で済むことも多い。
早朝の試合ならば、前日に来て、宿泊する必要がある。(宿泊しておけば、早朝の試合を見ることもできる。特に、全イニングを見なくても、途中のイニングから見るだけでもいい。)
試合のあとは、昼前に試合が終了する。そこで敗退したなら、そのまま応援団も帰郷すればいい。まだ時間が早いので、すぐに帰郷できる。一泊する必要もない。その分、費用を節約できる。
(C)勝ち残り
チームが勝ち残ったら? その場合は、休養日が多いので、宿泊日数も増えて、応援団の費用もかさみそうだ。しかし、そうなる学校は少数だけだから、構うまい。また、応援団は、別に、いなくてもいい。いつでも好きなときに帰っていい。まあ、好きなようにすればいい。(他人の知ったこっちゃない。)
※ そもそも応援団は、連泊はしないだろう。試合前日に来て、一泊するだけだ。
(8) 北海道で開催?
「甲子園で試合をするのは暑すぎる。北海道で試合をやれ」
という提案もある。これにはどう答えるか?
実は、他のスポーツは北海道でやっている。たとえば、インターハイがそうだ。他のスポーツは北海道でやっているのだから、野球も北海道でやってもよさそうだ。
だが、そう思えても、実際にはそれは無理だ。その理由を示す。
(A) 高校サッカーは、客が来ないから、北海道の小さな球場でも足りる。だが、高校野球は客が5万人も来るので、入れる球場は甲子園ぐらいしかない。北海道の球場では、キャパが足りないのだ。(特に北広島。)
※ 札幌ドームは、4万人以上のキャパがあるが、球場の使用料が馬鹿高いので、論外となる。
(B) 甲子園は、「夏季は(他に使い道がないので)使用料は無料」という特別な無料サービスをしている。高校野球は有料で満員なので、甲子園球場はさぞ儲けているだろうと思うだろうが、実は甲子園球場はちっとも儲けていないのだ。(高野連が儲けるだけだ。)
驚くべきなのは、高野連が甲子園球場の使用料を払っていないことだ。もちろん、グラウンド整備などに要する費用は負担しているものの、15日間にわたる大会で最もカネがかかると思われる球場使用料が無料なのである。
( → 高校野球は甲子園球場を「無料」で使っている 放映権収入もナシ、驚きの「ビジネスモデル」 | スポーツ | 東洋経済オンライン )
甲子園球場は儲けていないが、高野連は大儲けしていることになる。ならば、人件費もいっぱい はずんでいるだろうと思えるが、さにあらず。
甲子園大会の運営に直接かかわる高野連理事は無給だし、大会期間中に選手たちを陰でサポートするスタッフは高野連OBが務めていて、こちらもボランティアだ。さらに、本連載の第1回で述べたように、審判委員にも報酬は支払われていない。
こうして高野連には(出費なしに)莫大な収入が入る。特に、外野席とアルプススタンドを有料化したあとでは、多くの収入が入る。
高野連はこんなにガメツイ。とすれば、北海道の球場にわざわざ移転するわけがない。「球場の使用料を払いたくない」「たとえ球場の使用料が無料になったとしても、有料観客の多い甲子園を離れたくない」と思う。だから、北海道で試合をするわけがないのだ。経済原理からいって、甲子園を離れるわけには行かないのだ。

もう一つ、別の問題もある。北海道開催だと、応援団が北海道まで出向きにくいのだ。
・ 九州や四国の人が北海道まで行くのは困難だ。
・ 新幹線がないので、大量の観客を運べない。
夏の北海道に行く航空便は、もともと不足気味だ。そこへ、毎日5万人もの野球ファンが押しよせるとしたら、その野球ファンをさばくだけの飛行機がない。現状では新幹線と在来線と長距離バスを併用して、かろうじて5万人を甲子園に運んでいる。なのにそれを、航空機だけで代行できるわけがないのだ。
仮に北海道で開催するとしたら、「ファンも応援団もいない(ガラガラの)高校野球大会」とならざるを得ない。それはナンセンスだ。
(9) 夜間試合の電気代
現状では、夜間試合が行われない。なぜか?
「電気代の支払いに金がかかるからだ」
というのが理由だろう。(前項で示したとおり。)
この推定については疑問が生じるだろう。
「電気代なんて、せいぜい数十万円ぐらいだろう。大会全体でも、1000万円にはなるまい。そのくらいの金を払えないのか?」
これについては「イエス」となる。なぜなら、その金を払うのは、ボロ儲けしている高野連ではなく、無料サービスしている甲子園球場だからだ。
まず初めに「無料サービス」という原則がある。ここで、夜間試合を開催すれば、甲子園球場が赤字になってしまう。昼間ならば電気代がかからないから、無料サービスしてもいいが、夜間ならば電気代がかかるから、無料サービスでは赤字になる。それは困る。だから、夜間試合を認めるわけには行かないのだ。
これを解決するには、うまい工夫がある。こうだ。
「夜間試合の電気代は、多額の入場料でボロ儲けしている高野連が負担する」
これで問題は解決する。かくて、電気代の問題がなくなるので、夜間試合を実施できる。
※ 夜間試合の入場料は、(涼しいので)昼間よりも高めに設定できる。だから高野連は、電気代を払っても、大幅にボロ儲けできそうだ。(例。電気代の負担は 1000万円。夜間試合の収入増は 10億円。)
