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京都は観光都市としては世界でもトップレベルの人気がある。先に述べたとおり。
京都と言えば、世界的な旅行地として名高い。米国の旅行専門誌「トラベル+レジャー」が発表した「ワールド・ベスト・アワード」の人気観光地ランキングでは、世界1位となった。(2014年)
同誌の 2021年のランキングでは、世界5位である。
( → 京都に原爆が落ちなかったのは……: Open ブログ )
一方、京都は観光客が多すぎて混雑しており、バスにも乗れないほどだ……という問題がある。これも前に問題提起したとおり。
→ 京都ランドを作れ: Open ブログ
このときは、解決策として、次の案を示した。
「京都の近郊の広大な空き地に、広大なアミューズメントパークを作る。名前は 《 京都ランド 》(仮称)とする。ここに、金閣寺や銀閣寺のような観光資源のレプリカを、大量に建設する。ここに来れば、京都の各地をいちいち見て回る必要もなく、短時間でたくさんの寺社をめぐることができる」
場所は、巨椋池または近郊の農地がいい、と示した。
→ 京都の巨椋池を復活させよ: Open ブログ
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さて。以上の話とは別に、新たな情報が出た。朝日新聞の記事だ。
京都は国内外からの観光客でにぎわっている。ただ、京都観光の残念度として上位に挙がるのが「混雑」だ。それならば、混雑する時間帯や場所を避ける「ずらし旅」はどうだろう――。京都市は早朝から楽しめるグルメや名所を紹介するなど、朝観光の魅力発信に本腰を入れ始めた。
早朝座禅会は、お寺と市や市観光協会がタイアップして開いている。大阪府内の会社員橋口莉奈さん(30)は「時間も空間も独り占めできて、最高の贅沢が味わえる」と満足げだ。混雑とは無縁な朝観光の魅力にとりつかれ、午前6時に開門する清水寺なども訪れた。
3泊4日で京都を観光中に参加した30代姉妹は「朝に観光できる場所があると、限られた時間を有効活用できる」と口をそろえた。
( → 京都観光、朝にずらそう 混雑避けて「時間・空間、独り占め」 市が名所など紹介:朝日新聞 )
なるほど。寺院は夜には暗くて見物できないが、朝なら明るいので見物できる。朝の時間帯に観光客を受け入れれば、観光客を受け入れる場所の供給量が増えるので、過剰な需要を吸収できる。うまい案だ。感心した。
ただし、これですべて解決というわけには行かない。これによる供給増加は、せいぜい1〜2割程度だろう。現状の大幅な需要超過の状況を、劇的に改善する効果は見込めない。もっと劇的に改善する方法はないか? ……困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。新たに、うまい案を出そう。こうだ。
「京都の町の全体を、観光都市化する。京都という町自体を、京都ランドにしてしまう」
これを換言すれば、こうだ。
「現状の京都は、住むための場所となっている。多くの住民がいて、普通の生活をしている。住んでいる家も、たいていは、近代的な建物である。その意味では、通常の都市と変わらない。
そこで、これらの住居地区や商業地区のうち、観光地になるのにふさわしい地域を指定して、街並みを京都っぽくするといい。花見小路の町家 のように。
こうした地域では、商店も拡充するといい。ただの宿泊施設でなく、食事提供や商品販売をするといい。ちょうど東京の、原宿や、アメ横や、新大久保のように。これらの商業地の商店街には、食事提供や商品販売を求めて、多くの来客がある。町も発展する。だから、それを真似て、京都にも同様の商業地を設定すればいいのだ。そうすれば、町も発展するし、観光客の受け入れもできるし、混雑も解消する。一石三鳥だ」
以上が、私の提案だ。
ひるがえって、現状はどうかというと、食事提供や商品販売の店が少なすぎる。鴨川納涼床 のような設備はあるが、これは数が限られている。
京の夏といえば「鴨川納涼床(ゆか)」。二条大橋から五条大橋までの鴨川西岸約2キロにわたり、約90軒の飲食店が仮設の高床式の席を並べる。
予約不要の店も増えた。
昨年からは行列ができるようになった。
( → 京の夏の風物詩「鴨川納涼床」 味わい多様化、朝営業やジェラートも:朝日新聞 )
予約が必要だったり、行列ができたりで、受け入れ能力は十分ではない。ここだけでは足りないのだ。
だから、もっと京都全体で、多くの観光客を受け入れるための設備が必要だ。そのためには、都市計画ふうに、地域全体の再開発も必要となるだろう。また、地元住民を、中心の商業地から郊外への移転を促進するような方策も必要だろう。
このような形で、京都という町全体を、観光都市化することができる。
今の京都の中心部は、人が住むには適していない。観光客が多すぎて、バスに乗れないこともあるほどだ。そこで、東京の中心部がビジネス街に転じてしまったように、京都の中心部も(住宅地から)観光地に転じてしまうのがいい。そこでは、歩くだけでも楽しいという和風の建築を並べるべきだ。
別に、金閣寺や銀閣寺や清水寺のような建物が重要なのではない。昔っぽい和風の建築が並ぶだけでも、そこは散策するのにふさわしい観光地になるのだ。花見小路の町家 のように。あるいは、金沢や白川郷のような感じで。
こういうふうに京都の街並みを改造するべきだ、というのが、私の提案だ。
[ 付記 ]
なお、現状の京都は、やたらと民泊が増えていて、個人住宅に外国人を勝手に宿泊させている。ほとんど無秩序状態だ。こういうのは、あまり好ましくない、と思える。
→ 京都の「民泊トラブル激増」に苦しむ市民の怒り マンション共有部分にゴミが散乱することも
素人が住宅地で旅館ごっこなんかをするよりは、きちんとした正規の業者が、京都に進出して、きちんとした商売を始めるべきなのだ。
老舗の和菓子屋や豆腐店やそば屋なども、街並みの中にうまく配置すれば、多くの客でにぎわうようになるだろう。それは無秩序な開発とは違う。きちんとした整合的な開発方針があれば、きちんとした再開発が可能となるのだ。
それは、東京によくある「近代的な超高層ビルを建てる再開発」ではなく、「歴史的な和風の木造建築を建てる再開発」となる。再開発の方向性がまったく異なる。そういう独自の再開発が望まれるのだ。
- ※ 古い住宅をぶっ壊して、新しい高層ビルを建てるのではなく、新しい民間住宅をぶっ壊して、古風な木造店舗を建てるわけだ。再開発の方向性が、常識とは正反対である。
※ 京都は狭い道が多いので、ついでに道の拡幅もするといいだろう。
※ 京都の住宅街が散策するには適さないこと(近代的な建物が多くて、しかも道幅は狭いこと)は、ストリートビューを見ればわかる。そもそも、ストリートビューが入れない狭い道も多い。
[ 余談 ]
この計画に名前を付けるとしたら、「京都 ガロン計画」と呼びたい。だが、それはちょっとまずいかな。
「ガロン」というのは地球を惑星改造しようとした地球外ロボット。過去記事でも言及したことがある。
→ 地球緑化計画: Open ブログ
→ 堤防工事の機械化: Open ブログ
[ 補足 ]
京都が混雑して問題だ、という話は、上記の朝日記事でもこう記してある。
京都市が……日本人観光客を対象とした満足度調査では「混雑」が「残念だった」ことの1、2位に挙がる。地元市民からも「観光客が多すぎて市バスに乗れない」といった苦情が入る。
( → 京都観光、朝にずらそう 混雑避けて「時間・空間、独り占め」 市が名所など紹介:朝日新聞 )
これは何年も前からずっと言われていることだけどね。いつまでたっても解決されないままだ。朝観光によって、少しは混雑が緩和されるだろうが、抜本的な改善には程遠い。
【 追記 】
次の記事がある。伝統的な京町家が、増えるどころか減っている、という話。
1日2.2軒のペースで京町家が消失
京町家は1950年以前に伝統軸組構法で建てられた木造建築を指す。多くが狭い路地に面した2階建て。間口が狭くて奥行きが長いため、「ウナギの寝床」と呼ばれている。
内部は土間の通り庭に沿って部屋が続き、奥に庭を設けている。規模の大きな商家だと、表の店舗と裏の住宅を坪庭で結ぶ構造が多い。外観は格子戸や出格子、土壁などを備えるのが特徴。江戸時代末の戦火で京都の大半が焼失したため、現存する京町家の多くは明治時代以降に建築された。
しかし、庵町家ステイの宿泊施設のように再利用される京町家は少なく、老朽化で解体される京町家が相次いでいるのが実情だ。市が2016年度、京町家の残存状況を市全域で調べたところ、7年前に比べて5,602軒が失われていることが分かった。
調査対象は2008、2009年度の前回調査で残存が確認された4万7,735軒。うち、現存していたのは4万146軒で、滅失5,602軒、調査不能など1,987軒。滅失率は11.7%に及び、1日当たり2.2軒のペースで京町家が消えている勘定になる。
現存する京町家のうち、空き家は14.5%。前回調査の空き家率が10.5%だったことから、空き家化が急速に進みつつある実態も浮かび上がった。
京町家は建物が古く、維持管理が大変。リノベーションするにしても、その特殊な形状から間取りの変更が難しく、費用も高くつく。所有者の多くが高齢化しているだけに、持て余しているとみられる。
市の有識者会議が保存条例の制定を答申
こうした現状に危機感を抱いた市の有識者会議は5月、保存に向けた条例の制定を門川大作市長に答申した。市内の京町家すべてを対象に、取り壊し前の届け出を努力義務とする内容だ。
( → 1日2.2軒も「京町家」が消失、このまま京都の街並みは失われるのか |ビジネス+IT )
京町家は、うなぎの寝床のように細長い長屋が奥までつながっている。どうしてこうなったのかというと、地区一帯に道路がないからだ。あたり一帯がすべて住宅地となっていて、奥の方まで通るための道路がない。下図のように。
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そこで、奥の方の家に達するためには、通路を設置する必要がある。その通路の横には、うなぎの寝床のような長屋があることになる。
この問題を解決するには、道路のない住宅街を再開発して、道路を設置する必要がある。そのためには、個人の建て替えでは不十分であり、行政レベルの再開発が必要となる。
そういう再開発が、京都には望まれているのだ。
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※ 現状は、こうだ。
この細い道は、ただの通路のように見えるが、れっきとした道であり、名前も付いている。「東中筋通」と。
都市計画ふうの再開発をして、道のない地区に道を作れ、という趣旨。
京都の遊びどころはもともとお金持ちの人のものでした。そこへ一般観光客が押し寄せることに問題があります。観光公害を望まないのであれば、本来の形に戻すのが良いと思います。1泊20万円以上の旅館、3時間で20万円以上のお茶屋、一人5万円位の料亭などばかりにすればよいと思います。金閣寺なんかは拝観料1万円取ればよいでしょう。そして観光税50%を京都市が徴収すれば現在の大赤字が解消するはずです。
京都は観光以外にも大学やITや情報企業の都市です。知識人も多いです。そんな人たちが逃げ出さないような施策も必要です。つまり観光用の家並みと居住用の所とを明確に区別するべきです。
内装も和モダンスタイリッシュばかりで味気なく(映えはするけど速攻で飽きる)、料理の内容(和食)も本来の京料理から乖離したものばかり。
そもそも京都は静かに寺巡りするような地味な観光地だし(祭りの殆どは鎮魂を元にした楚々としたもので、今の祇園祭はガヤガヤしすぎ)、この10数年のインバウンドで京都の魅力はどんどん消失していってます。しかも、外国人のリピーターは少なく(ドナルド・キーンやアンドレ・マルローみたいな和文化が心底好きな外国人は稀)、「京都は寺院しかない」と言い放つ外国人も多いです。
この8年で6千軒あまりの京町家が消失し、文化財クラスの建物もどんどん解体していってます。インバウンドに尻尾を振って壊滅していく京都は、どんどん魅力が薄れてます。
そもそもインバウンド政策なんて3流国がやるものです。
私の大好きだった五花街も魅力が薄れてきてるし、飲食店や高級マンションは絶望的にセンスのない東京資本ばかり。
東山魁夷の描いた「年暮る」の世界がほんの少し残ってましたが壊滅ですね。
https://note.com/prof_nemuro/n/n65e1d50d1542
完全に観光公害で、文化・学術都市の空気が感じにくくなっている(場所によってはヴェネツィア並みの酷さではないか)。安倍・菅政権が目先の金欲しさで「観光立国」を推進した結果。