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他人の番号と紐付けたそうだ。まともに作業していれば、こんな馬鹿げたことが起こるはずがないのに、どうして起こったのか?
障害者に交付する手帳でのミスが二つの県で相次ぎ見つかった。いずれも職員1人が多数のデータを手作業でひもづけていた。全国で調査が進むが、国のマニュアルも示されていなかった中、様々なヒューマンエラーが想定され、誤登録が膨らむとの見方も出ている。
作業は主に県職員1人が担当。住民基本台帳のシステムを使い、カナ氏名と生年月日だけを確認してひもづけた結果、同姓同名の別人が登録された。
( → マイナ、障害者手帳ミス次々 担当1人、手作業――別人ひもづけ:朝日新聞 )
マイナンバーに別人の情報が誤登録されている問題で、行政からのお金が実際に別人の口座に振り込まれる事案が初めて判明した。ひもづけのミスは75歳以上が入る後期高齢者医療制度で発生。
80代の女性について同姓同名で生年月日も同じ別人のマイナンバーをひもづけた。
介護施設などに入る際、転居しても転居前の自治体で対応する特例の対象者のひもづけは手作業が入る。女性も該当し、ミスにつながったとみられる。
( → マイナを誤登録、別人口座に送金 埼玉で判明:朝日新聞 )
「手作業」「ヒューマンエラー」という言葉で解説して、ここが問題であるというふうに報道している。だが、そうではあるまい。原因は別のところにある。
それは、姓名と誕生日だけで同一人物であることを確認していることだ。この場合、ある程度の割合でエラーが起こるのは必然である。(月日で 365分の1。年で60分の1ぐらい。約2万分の1。人口 10万人なら、5人ぐらいのエラーは起こって当然だ。)
つまり、今回のミスは「たまたま起こったヒューマン・エラー」なんかではなくて、「起こるべくして起こった必然的なエラー」であるわけだ。
ではどうして、それ以上のチェックをしなかったのか? そこが問題だ。
当然だが、住所についても同一性を確認するべきだった。これが原則だ。
ただし、上記の2例のうちの1例では、転居があったので、旧住所と新住所の食い違いがあって、うまく同一性を確認できなかったらしい。確認できないまま、「えいやっ」とばかり、勝手に紐付けてしまったらしい。あまりにも、ずさんである。この ずさんさが、問題の根源だと言えるだろう。
では、どうすればよかったか? 確認方法は3通りある。
(1) マイナンバーのマイナ・ポータルでは、メールアドレスを登録してあることもある。その場合には、メールアドレスに連絡して、確認すればいい。
(2) メールアドレスが登録されていない場合には、住所で確認すればいい。住所変更届に、旧住所と新住所が記載されているから、それを照合して、同一性を確認すればいい。
(3) 上の (1)(2) がどちらもできない場合には、確認書を郵送して同一性を確認すればいい。
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上のような形で同一性を確認すれば、二つのアカウント情報の紐付けでエラーが起こることはない。今回は、その必要な手続きを省略してしまったから、エラーが起こった。起こるべくして起こったエラーだと言える。ミスは、作業した人の手元で起こったのではなく、そういうシステム設計をしたシステム設計者の概念設計の段階で起こった。末端のミスのせいだ、と見なしてはならない。(それは責任転嫁だ。責任のなすりつけ。)
[ 付記 ]
そもそも、原理的に言えば、こういう「紐付けのエラー」をなくすためにこそ、マイナンバーがある。マイナンバーが同一であることで、同一人物であることを確認するわけだ。
とすれば、「他の情報とマイナンバーを紐付けする」という方針そのものが狂っている、と言える。そういう紐付けは、もともとやってはいけないのだ。
かわりに、どうするか? マイナンバーと住民票情報だけを紐付ければいい。
住民票情報 ━━ マイナンバー
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行政情報
(障害者手帳、
後期高齢者医療制度)
この照合は、すべてデジタル化できるので、もともとヒューマン・エラーの入り込む余地がない。
例:
(1) 行政情報(障害者手帳、後期高齢者医療制度)を得たら、住民票情報と照合して、住所・氏名・生年月日が一致した場合のみ、同一人物と認めて、マイナンバーを自動的に登録する。こうして、行政情報にマイナンバーを自動的に付けることができる。
(2) 住所・氏名・生年月日が一致しない場合には、行政情報に基づいて、本人宛に照合の文書を送付する。照合先は、行政情報に記載されている情報。(宛先不明で返送されてきた場合のみ、例外処理が必要となる。)
上の (1)(2) とは違って、今回は次の方法が取られた。
(0) マイナンバーの台帳の中で、たまたま姓名と生年月日が一致する他人のデータを見つけ出して、その他人を本人だと決めつけて、同一人物と見なした。
これは、滅茶苦茶すぎる。あまりにも馬鹿げている。エラーが起こるのは必然だ。こんな方式を採用した制度設計者は、頭おかしいとしか思えないね。
※ 上記の茶色文字の図式で言うと、右上と下とを短絡している。
この根拠がよくわからないのですが、人口10万人の自治体で、偶然にも10万人全員の姓と名が同じならば5人ぐらいのエラーは起こるっていう試算ですね。
案外、数は少ないかも。
とはいえ、現実にはかなりの数が出てるので、絶対数としては、けっこうな数になっているようだ。