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これは、オスとメスとで、事情が異なる。別々に論じよう。
オスの場合
オスの場合は、精管と尿管が共通となっている。そのおかげで、精管(尿道)は一日に何度も尿によって洗浄される。尿で洗われるたびに清潔になる。
仮に、共通でなければ、射精のあとで残った精液が、何日間も精管に残ることがあるだろう。場合によっては、乾燥して、固形化して、硬くなって、次回の射精時に精管を傷つけるかもしれない。それはまずい。
だから、精管と尿管が共通となっていることは、どうしても必要なのだ。そうなっていない個体集団は、滅びてしまうだろう。
※ 尿は、ばっちいように見えるが、実は清潔なのだ。尿は(排出前には)無菌状態だし、汚染されていないからだ。
※ 書いたあとで気づいたが、同種の意見はネットにもあった。
→ https://x.gd/p6mDe
メスの場合
メスの場合は、事情が異なる。そもそも、卵巣や子宮につながる膣と、尿道とは、別々であって、共通ではない。だから、男性と同様の事情にはない。「排泄器が共通している」とまでは言えない。
ただし、出口の部分だけは共通している。それは、どうしてか?
このことを、二足歩行で説明する人もいる。
→ https://x.gd/Bq9RN
しかし、メスの生殖器と排泄器が(部分的に)共通であることは、二足動物の人間に限らず、四足歩行の哺乳類にも成立する。さらには、爬虫類や鳥類にも共通するし、両生類にも共通するし、魚類にも共通する。(大雑把に言えば、脊椎動物全般に共通する。)
特に、単孔類以前の下等な動物には、「総排出腔」というものがある。
総排出腔、または総排泄腔とは、ほとんどの軟骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、およびごく一部の哺乳類に見られる、直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官のことである。
総排出腔をもつ動物では、消化管(腸管)の末端である糞管(肛門管)、泌尿器からの輸尿管、生殖器からの生殖輸管(卵管・精管)のすべてが、共通の室(腔部)である総排出腔に開口する。
( → 総排出腔 - Wikipedia )
では、それはどうしてか? 次のように推定できる。
「原始的な行類の段階で、水中で泳ぐ魚は、前に進むときに、餌を取り込む口が先頭部にあり、排泄物を出す総排出腔が後方部にあった。そこで、開口する部分は、数が少なければ少ないほどいいので、必然的に、前後とも1箇所で兼用されるようになった」
こうして、尻の部分の開口部は1箇所だけとなった。
※ なお、一部の魚は空気呼吸ができるが、そのときは、口から空気呼吸することになるので、開口部はやはり一つだった。
→ 空気呼吸ができる魚たち
結局、人のメスでは生殖器と排泄器が共通であるのは、人間に固有の理由があるからではなく、はるか昔、人間のご先祖様が魚であったころに、そういう仕組みになっていたからなのである。昔のご先祖様は、水中を泳いで、前から後ろに進んでいた。その名残なのだ。
※ 仮にそうなっていなければ、出したウンチやオシッコが顔に当たるので、泳ぎにくいこと、このうえない。
[ 付記 ]
実は、正確に言うと、冒頭の質問はそれ自体が間違っている。
生殖器と排泄器は、共通にはなっていないのだ。そのことは、下図を見ればわかる。(メスの場合)
閉じた状態では、口は一つだけに見えるが、開いた状態では、口は三つある。尿道口と膣口と肛門だ。
オスの場合には、口は二つある。尿道口と肛門だ。
一方、単孔類以下の爬虫類・鳥類・両生類・魚類では、総排出腔が一つあるだけだ。尿道口と膣口と肛門は、1箇所にまとまっている。下記の図を参照。
→ 常識を超える口の機能|南森町たむら歯科ブログ
というわけで、実は、生殖器と排泄器は、共通にはなっていないのだ。単に近くにあるだけだ。(メスの場合には)