2023年07月11日

◆ ネット時代の万博

 大阪の万博は進捗が不調だ。万博というものがそもそもネット時代には適していない。

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 大阪の万博は進捗が不調だ。各国のパビリオンがまったく建設されていないそうだ。
 2025年大阪・関西万博で、海外のパビリオンの建設準備が遅れている問題を巡り、万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が、パビリオンの建設を代行することを参加国・地域に提案したことがわかった。デザインは簡素化し、工期の短縮を目指す。
 参加国・地域が独自に建設する約50のパビリオンを巡っては、建築資材の高騰や人手不足で国内の建設業者との契約が進まず、大阪市に建築許可を申請したのは10日午前時点で「ゼロ」となっている。
 関係者によると、万博協会は7日に参加国・地域向けの説明会をオンラインで開催し、協会が代わりにパビリオンを建設することを提案。外観のデザイン案は簡素なものを複数示し、建設業者は責任を持って確保するとした。建設費は参加国側に負担を求める方向だ。
 海外パビリオンの建設準備の遅れは、政府も課題だと認識しており、参加国・地域に対して外交ルートを通じてデザインの簡素化や予算の増額を要請。6月下旬には、ゼネコン各社でつくる日本建設業連合会(東京)など建設関連団体に受注への協力を文書で求め、「建設が開幕までに間に合わない場合には、万博が成立しなくなることが危惧される」と指摘していた。
( → 申請ゼロの大阪万博「海外パビリオン」、万博協会が建設代行へ…参加国に提案 : 読売新聞

 建設開始が現時点でゼロだ。このままだと、万博が開催されても、そこには建物すらなくて、ただの空地しかない、というふうになりかねない。それではまずい。そこでとりあえずは政府が建物だけを確保するから、そこに簡易版で展示してくれ……というふうになるらしい。

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 しかし 1970年の万博( Expo'70 )では、各国のパビリオンが壮大な展示をしていた。そのことはサザエさんのマンガにも見て取れる。

sazae2023-07.gif

 1970年3月から9月までの開催期間中に、のべ6422万人が訪れた大阪万博。当時5歳だった記者も大人たちや自分自身の興奮をはっきりと覚えている。日本人全体のもつエネルギー量が、今とは比較にならないぐらい巨大だった、としか言いようが無い。
 この時期の「サザエさん」にも万博ネタはよく登場するが、長谷川町子さんがアイコンとして多用したのは、やはり1コマ目の太陽の塔だ。2コマ目にあるのは「オーストラリア館」と「七重の塔」だが、……(略)
( → (サザエさんをさがして)太陽の塔 岡本太郎の「ベラボー」体現:朝日新聞

 このころはまだディズニーランドもなくて、万博は初めてかつ最大の未来的なショーだった。日本全体が熱狂していた。そのことは、上の図や記事からも窺える。
 では、その再来が 2025年も起こるだろうか? 「起こるだろう」という期待ゆえに、万博の開催が決まったのだが。……

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 しかし現実には、1970年の万博( Expo'70 )の再来は起こらないだろう。なぜなら、あのころとは時代がまったく異なっているからだ。その最大の差は、インターネットの普及である。
 1970年には、外国はほとんど未知のものだった。テレビで情報を得ることはできたが、当時のカラーテレビは解像度も低くて、映画並みの迫真性には遠く及ばなかった。だから、世界各国の映像や物品を並べるだけでも、「疑似的な海外旅行」のようなことができたので、人々はそれなりに満足できた。ネットのない時代には、万博がネットのかわりになったのである。

 しかし今やネットがある。こういう時代には、万博の意義そのものが失われた、と言ってもいい。つまり、もともと開催する意義がないのだ。だったら、開催しないで、さっさと中止した方がいい、とも言える。中止すれば、金は一円もかけずに済む。五輪のように巨大な額の浪費を、今この時点でストップできる。それが最善の策だろう。

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 だが、最善の策は取れない。なぜか? この万博は、万博そのものが目的ではないからだ。万博の跡地(夢洲)に、カジノを建設することが目的だからだ。万博を開いて、開催の売上げで土地整備費を償却して、その跡地を格安でカジノ業者に払い下げる……という仕組みになっている。大阪府・大阪市とカジノ業者でつるんで、金を運用する……というわけだ。(その背景にいるのが維新だ。)
 維新としては、カジノを止めることはできないし、それゆえ、万博を止めることもできない。そのせいで、莫大な赤字が出るとしても、今さら止めることはできないのだ。

 そもそも、維新がカジノを導入するのは、何のためだったか? 大阪の財政基盤を強くするためだ。収支を改善するためだ。黒字を出すためだ。……そして、そのためには、数千億円の赤字を出す万博を開催するのもやむを得ない、という発想なのだろう。千億円の黒字を出すためには、五千億円の赤字を出しても仕方ない、というわけだ。
 これが維新の発想だ。そして、それは、成立するのかもしれない。なぜなら、千億円の黒字は大阪のものであり、五千億円の赤字は日本政府のものだからである。他人がどれほど損をしようと、自分さえ黒字ならばそれでいい。……それが大阪人の発想なのである。(泥棒というのはみんなそうだ。)


dorobou.png


 ※ すると大阪人は言いそうだ。「東京人だって、東京五輪で泥棒しただろ。オマエモナー」と。 まあ、たしかにそうだ。目くそ鼻くそ。……ふるさと納税を利用する国民も同罪。
 
 ※ 東京五輪の跡地で、選手村だったマンション HARUMI FLAG が格安販売される。当選者はボロ儲け。当選して転売するだけで、三千万円も儲かるらしい。……五輪で国民は大損しても、一部の人は大儲け。(大阪でやるよりすごい博打だな。カジノをやるよりすごい。)

posted by 管理人 at 23:17 | Comment(3) |  東京五輪・万博 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近どこかの国で見本市のようなものを開いたら、さながら中国企業のハイテク見本市だったそうです。AIロボットが大活躍しているそうです。
 もう万博もオリンピックも、ましてカジノもいりません。これらはいまだにGDP至上主義から抜けていない自民党年寄グループと土木建築業界+国交省、さらにお先棒担ぎのマスコミだけの世界です。50年しか持たないぼろ家に住み、歩道のない狭い道で交通事故を恐れ、満員電車で通勤している国民がする企画ではありません。
Posted by よく見ています at 2023年07月12日 16:39
>1970年の万博( Expo'70 )の再来は起こらないだろう。
>日本全体が熱狂していた。
に同意です。万博から札幌オリンピックにかけて、日本全体が躍動していたことを今でも覚えています。

そして、
>その最大の差は、インターネットの普及である。
についても、その通りだと思いますが、言うまでもなく、
>「疑似的な海外旅行」
ではなく、本当の海外旅行、海外赴任を経験している人が当時と比べて多数であることも重要です。

私の父の時代には、同じ社宅に住んでいた人が3人海外に赴任した程度でした。
しかし、今では、猫も杓子も私も海外旅行に行っています。
また、1970年の万博で一緒に月の石を見た友人は、その後アメリカに海外赴任し、
息子を連れてヒューストン宇宙センターに行った時のことを楽しく話していましたが、
こんな経験は多くの人が持っているでしょう。

そんな人たちが、
>そこに簡易版で展示
>世界各国の映像や物品
に対して、入場料7,500円(大人)を払うことはないことは分かっているので、
>万博入場券、住友電工25万枚購入
https://www.sankei.com/article/20230711-P2ZY4ALJ4BJCXKL7AS4FXMYD4A/
にて穴埋めの準備が始まりました。

もっとも、
>開催しないで、さっさと中止した方がいい
>維新がカジノを導入するのは、何のためだったか? 大阪の財政基盤を強くするためだ。
博打で財政基盤を立て直そうという考え方が間違いであり、
万博中止→カジノ棚上げ
となった方が大阪にとっては良いでしょう。

ただ矛盾するようですが、全く別の理由から大阪維新の会には選挙では勝って欲しいのですが、
来年になると万博実施に黄色信号が灯るでしょうから、衆議院選挙は今年の早めが好都合です。

以上、勝手な意見で失礼しました。
Posted by 元大阪府民 at 2023年07月12日 18:06
カジノですらオワコンですからね・・・
ラスベガスも、カジノよりCESの方が人気あるそうですし。
とにかく日本がやることは時代錯誤すぎますね。
国民も辛い現実を直視せず、現実逃避するのを一旦止めて(スマホとゲームとアニメと食べ歩き)、選挙に行くなり、ネットで声を挙げ続けたり、マスコミを突いたり、庶民でもやれることはいくらでもあると思います。
Posted by GWD at 2023年07月19日 17:02
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