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政府方針
健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに統一する、という政府方針が出た。これは、紙からデジタルに移行すると、行政事務が劇的に改善するので、その方向性を徹底する、というものだった。(デジタル政府化)
問題
しかし現実には、マイナカードの普及率は、70.0%にしか達していない。
→ マイナカード交付数の公表方法見直し…死亡や返納を除外、保有率は4ポイント減の70.0% : 読売新聞
この状況で、健康保険証を廃止すれば、国民の 30%が無保険者の状態になり、国民皆保険の制度が破綻してしまう。それでは困る。つまり、政府の方針は、現実的には不可能なものだ。そんなことをゴリ押ししようというのは、国民無視の暴挙という敷かない。世間からは圧倒的な不評を買った。(与党は選挙でも負けそうだ。)
資格確認書
そこで政府は、健康保険証の代わりに「資格確認書」を発行する、という代替案を出した。しかしこれは有効期間も短いし、発行の手間もかかるし健康保険証との二度手間にもなる。屋上屋を架して、かえって不便になるだけだ。「だったら最初から健康保険証の廃止をやめればいい」という声が出た。
それはそれでごもっともなのだが、そうすると、政府の方針が誤りだったということになるので、メンツ上、出した方針を引っ込めることができない。そのせいで、現在、迷走状態にある。
また、当面は「資格確認書」で当座しのぎをするにしても、将来的にはこれも廃止されるので、そうなったら困る、という声が出た。
介護施設
そうなったら困る、という声が出たのは、介護施設からだ。
介護施設では、現在、老人の健康保険証を預かって、老人が受診するたびに、健康保険証を取り出して使っている。
今後、マイナンバーカードが健康保険証の代わりになると、老人が受診するたびに、マイナンバーカードを取り出して使うことになる。その際、本人にかわって暗証番号を打ち込むことになる。しかし、本人でもない介護施設が、勝手に暗証番号を打ち込むというのは、マイナンバーカードの本来の使い方にそぐわない。下手をしたら犯罪にさえなりかねない。
※ 現状では犯罪にはならないようだ。だが、これは、本来は犯罪にするべきことなのだ。「他人が暗証番号を勝手に打つのは違法」とするべきであり、処罰するべきことだ。
要するに、現状の方針は、「犯罪(的)行為をすること」を前提として制度設計がなされているわけで、とんだ欠陥制度だ、と言える。
顔写真による認証?
暗証番号でなく顔写真で認証すればいい、という案もある。だが、現状では、「顔写真による本人確認ができないので、マイナンバーカードを発行できない」という事例が多数に上っている。特に、相手が寝たきり老人だと、そういうことが多い。
「自治体の役人が介護施設に出向いて、寝たきり老人の本人確認をする」という方針が春ごろに出た。だが、方針は出ても、それが実行されることにはなっていないようだ。方針が出たという報道のあとでは、それが実施されたという報道は出ていないようだ。
ともあれ、現実にはマイナンバーカードの普及率は 70% にしかなっていないのだから、「顔写真による認証」は、どっちみち不可能であるわけだ。(少なくとも 30% の人にとっては不可能だ。高齢者施設では、この比率は大幅に上昇する。たぶん、過半数だ。)
※ 介護施設にいる寝たきり老人だけではない。施設の外の自宅にも、痴呆老人、耄碌老人、無気力な人、病気の人、……という例は多くある。これらの人は、ナンバーカードを申請できない人となりがちだ。
強制交付
そこで、「マイナンバーカードの強制交付」という意見が出た。維新の橋下徹の意見だ。
「マイナカードは全国民に出生時に配布すべき」と自身の考えをつづった。
( → 橋下徹氏 マイナカードで私見「現在の申請主義を止めればいい…全国民に出生時に配布すべき」― スポニチ Sponichi Annex 芸能 )
この話の前には「現在の申請主義を止めればいいだけ。社会保険料は強制徴収なので、行政にも義務を課すべき」と述べている。要するに、社会保険料を強制徴収するように、マイナカードを強制交付せよ、というわけだ。
なるほど。これは一案である。だが、これはやりたくても、実現は不可能だ。なぜなら、本人の顔写真のデータがないからだ。
そもそも、マイナンバーカードの交付でネックとなっているのは、「顔写真による本人確認」である。ここを何とかすることで、交付率を上げることができる。
一方、顔写真の撮影は、本人がスマホで自撮りをすればいいのであって、特に面倒はない。そこは行政府が代替する必要はない。なのに、そんなところにまで政府が介入して、政府が強制的に顔写真のデータを取るわけにも行くまい。
つまり、
・ もともと顔写真のデータがない
・ 強制的に顔写真のデータを取るわけにも行かない
というふうになって、どっちもダメだ。
だから、結局、「政府による強制交付」という方針そのものがダメなのだ。要するに、橋下の方針は無理である。
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というわけで、あれもこれもダメだ。困った。どうする?
※ 次項 に続きます。