トヨタのような営利企業に、国の金を千億円もプレゼントする。そんな無駄遣いをする政府部門(経産省)は、有害無益なので、解体した方がいい。
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前項で示したように、政府はトヨタに 1178億円もプレゼントする。これはあまりにもひどい無駄遣いだ。前項の最後で批判したとおり。
まったく、政府は何をやっているんだ? 国民の金をオモチャにして遊んでいるのか?
こんな無駄遣いをする政府部門(経産省)は、有害無益なので、解体した方がいい。それが結論だ。その理由は以下の通り。
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そもそも、政府は(血税として国民から得た)金を使うときには、公的な政府事業のために使うべきだ。たとえば、教育とか、福祉とか、文化とか、行政事務とか。……これらは政府に課された分野だ。
一方、前項の補助金は違う。これは、政府の事業ではない。その事業を他人に丸投げしている。なかんずく、(広範に与えるのでなく)「特定の一企業に集中的に金を与える」のは、問題がある。これは、丸投げどころか、癒着だ。相手と示し合わせてやる泥棒に近い。合法的な泥棒だね。税金泥棒だ。ひどいものだ。
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それでも経産省は言い張るかもしれない。
「これは一国経済の産業政策なのだ。富国強兵のようなものだ。国全体の産業発展のためには、政府が補助金を出すのは好ましい」
しかし、そういう産業政策が有効だったのは、民間企業が発達していなかった明治初期ぐらいのものだ。そのころならば、民間に資本が蓄積していなかったので、八幡製鉄所や富岡製糸場のような国営企業を設立することは有益だった。
官営模範工場は、明治政府が殖産興業の政策のため、率先して新しい産業を興すべく創設した工場である。八幡製鉄所、造幣局、富岡製糸場は日本三大官営工場とも称される。
富岡製糸場
( → 官営模範工場 - Wikipedia )
だが、今は明治初期ではない。今さら政府が殖産興業の政策を取る必要はないのだ。民間に十分に資金があるからだ。仮にやるべきだとしても、せいぜい「低利融資」をすれば十分なのであって、「血税を 1178億円も与える」というのは、無駄遣いも甚だしい。
このように巨額の金を無駄遣いをするのは、経理的に言えば「赤字」である。つまり、経産省の産業政策部門は、企業経営の発想で考えれば、(国という組織で)純然たる赤字部門だ。こういう赤字部門は、廃止するべきだろう。それが経営にとっては最善だ。
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こういう発想を取れば、政府がやるべきことは、逆のことだとわかる。つまり、税を無駄遣いするのではなく、税金を徴収することだ。
たとえば、トヨタに補助金を出すのでなく、トヨタから税金を徴収する。特に、ガソリン車から徴収するといい。
現状では、日本は世界でも珍しく、ガソリン車に、増税するどころか減税している。欧米では、炭素税に似た税で、近年ではガソリン車に大幅増税しているのだが、日本政府は逆に、ガソリン車・ディーゼル車に減税している。(エコカー減税みたいな名前で、低燃費車を優遇するという形で、実質的にほとんどのガソリン車に大幅減税をしている。事例 → トヨタ シエンタ | エコカー減税 )
こういうふうに減税をするのは、方向性が逆だ。そこで、減税をやめて、欧米並みにガソリン車には増税するといい。そのことで、政府の税収を増やすことができる。赤字を出すダメ部門だった経産省が、黒字を出す優良部門に生まれ変わる。
しかも、このことで、「ガソリン車を減らす圧力」が加わるから、EV の普及率が大幅に上がる。先進国でも最低クラスの EV 普及率だった状況が、劇的に改善する。日本の EV 普及率を大幅に上げて、日本の EV 産業を発達させるという、喫緊の課題となる産業政策が実現される。……しかも、そのために、政府の支出は1円も必要ない。支出どころか、逆に、増税による収入が大幅に増える。
こういうふうに、「支出を増やすどころか収入を増やして、同時に、一国の産業政策を正しい方向に推進する」というのが、うまい方策というものだ。
逆に、「支出ばかりを増やして、一国の産業政策を間違った方向に推進する」というのが、現状の日本政府だ。せっせとガソリン車優遇政策に金を出すことで、日本の EV 普及を阻害している。愚の骨頂。
こういう経産省は、さっさと解体するべきだろう。
( ※ それで浮いた金で、日本の学術予算を増やすといいだろう。……ちなみに、「科学技術庁を振興しろ」と言いたいところだが、科学技術庁は、今では文科省に吸収されたので、独立した省庁としては存在しない。)
【 追記 】
新たな記事が出た。MRJ(SJ)の失敗のあとで、新規に別の旅客機(第2の MRJ を開発しよう、という方針がある。
議論は戦後唯一の国産旅客機「YS11」までさかのぼる。1960〜70年代に182機をつくって撤退した。
経産省は、03年に再び国産機のプロジェクトを立ち上げる。方向性を決める会議で「失敗」の原因とされたのが、販売力不足と無責任体質だった。「一番のネックは技術的な問題ではなく、どのくらい売れるか、販売体制がどうなっているかという点」。会議録には、型式証明でつまずいたSJ開発の実態とかけ離れた発言が残る。
ある識者は「旅客機の開発はもはや、一つの民間企業がリスクを背負えるプロジェクトではなくなりつつある」と指摘する。
巨額の公金を投入したSJが失敗してもなお、政府はまた「次」の開発に乗り出そうとしている。経産省幹部は「航空機産業に日本が加わらないという選択肢はない」と話す。ただ、同省が有識者会合で配布した65ページの資料は「今後の成長の方向性」や「目指すべき方向性」など未来志向の言葉が並び、SJの失敗に言及したのは2ページだけ。
( → (けいざい+)夢破れた国産ジェット:中 YS11の反省、生かしたはずが :朝日新聞 )
私の考えでは、MRJ の失敗の理由は「技術的な低さ」だ。まったく低レベルの技術力だった。そのせいで、まともに空を飛ぶこともできないまま、開発中止となった。ところが、経産省や三菱重工は、最初から「一番のネックは技術的な問題ではなく」などと言っていた。(上記)
つまり、「自分たちは技術力が高い」と勝手に自惚れていた。低い技術力に加えて、自惚れと過信があった。前に述べたとおり。
→ MRJ の失敗の検証: Open ブログ
なのに、今回、新たに経産省は「旅客機の再開発」という方針を立てた。MRJ の失敗を反省することなく、同じ失敗を繰り返そう、というわけだ。
1兆円もの損失を出す大失敗をしても、反省すらすることなく、同じ失敗をまた繰り返そうとする経産省。日本の病巣とも言うべき、悪しき存在だ。癌細胞のようなものなので、経産省を丸ごと摘出した方がいいね。
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なお、代案を出すなら、次の二つだ。
・ 英国の BAE と提携して、旅客機を日英で共同開発する。
・ ホンダジェット(米国)を援助して、日米で共同開発する。
いずれにしても、日本の単独開発ではない。それだけに、実現性が高い。特に、ホンダジェットを小型から中型に発展させていく経路が、私のお薦めだ。
※ ホンダジェットは、すでに少しずつ新機種を出して、機体を拡大中だ。
→ Honda | 新型小型ビジネスジェット機の製品化を決定
この調子ならば、将来的には、中型機の開発も可能だろう。
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《 加筆 》
日本が単独で航空機を開発するのは、思い上がりに近い。理由は二つ。
(1) 日本はもはや世界第2の経済大国ではない。少子化で若者人口は半減している。国の経済力は往時の半分しかない、と思うべきだ。GDP では中国のはるか後塵を拝している。ドイツにも工業力で負けつつある。欧州でさえ、全体でエアバス社1社しかないのに、日本が単独で伍することができるはずがない。
(2) 日本の国土面積はとても小さい。ゆえに航空機の需要がとても小さい。米国や中国や欧州のように、広大な面積があって、域内の航空旅客の需要が多大にあるなら話は別だが、日本のように狭い国土に、人口が密集している国では、航空機の需要がとても小さいのだ。もともと需要の小さいところで、開発しようというのが、間違いの元だ。日本は新幹線を頑張っていればいいのであって、航空機の開発に注力する必要はないのだ。どうしても航空機に注力したいのであれば、新幹線をすべて廃止してしまえ。(「新幹線がないから、かわりに航空機を」というのならば、まだわかる。)
科学研究費の問題はその配分を決める大学教授たちがだめなことです。その理由を手短に言うと、日本の大学教授は助手、すなわち労働者として優秀な人が成りあがっています。欧米では最初からリーダー(独立研究者)として採用されています。政治家や官僚もそうなのですが、やはり一国の将来はリーダーでなければ考えられないのです。やはりゴーンさんでなければ日産は立て直せなかったのです。学歴などはどうでも良いのですが、学力は絶対に必要なのです。