2023年06月18日

◆ 児童手当を廃止せよ(!)

 「児童手当」は、少子化対策の効果がないので、廃止するべきだ。かわりに、もっと効果のある対策を取るべきだ。それは「結婚手当」だ。

 ──




 政府は少子化対策として、児童手当を増額する方針を決めた。
  ・ 第三子の児童手当を、月1〜1.5万円から月3万円に増額
  ・ 高校生への児童手当を、月1万円、新たに支給
  ・ 所得制限の廃止

  → 児童手当、2024年度からこう変わる 高校生も支給、所得制限は撤廃、第3子以降は増額 | 東京すくすく | 子育て世代がつながる ― 東京新聞

 このうち、「第三子の児童手当の増額」は、妥当だと言える。

 一方、高校生への児童手当の支給は、あまり意味がない。理由は二つ。
  ・ 高校生の親は、中高年なので、もともと所得が高い。
  ・ すでに高校授業料の無償化で、公的補助が多額にある。

 これらは前に述べたとおりだ。
  → 高校生の児童手当: Open ブログ

 また、「所得制限の廃止」は、賛否両論があるが、「扶養控除の廃止」の同時実施と合わせると、差し引きしてかなり相殺されるので、全体としては「若干の得」になる程度であるようだ。(高所得者の場合)……大きな差が生じるわけではないので、あまり考慮しなくてもよさそうだ。
 ※ 詳しい話は、上記項目の 【 追記 】 を参照。
 ※ なお、所得制限に引っかかるような高所得者の比率は、もともと高くない。特に、若手では高所得者の比率が少なめだ。その分、影響を受ける人は少なくなる。だから、あまりうるさいことを言わなくてもいいだろう。

 ──

 それよりも、もっと重要なことがある。こうだ。
 「児童手当で月1万円程度を出しても、それで少子化が解消する効果はほとんど皆無である。これぽっちの金で、子供を産むか否かを決める夫婦は、ほとんどいないはずだ。
  ・ 『1万円もらえるから子供を産もう』
  ・ 『1万円もらえないから子供を産まない』

 などと思う夫婦はほとんどいないだろう。1万円っぽっちの金は、子供を産むか否かの心理を左右しない」

 一般的に言えば、(子供嫌いでなければ)「1人目の子供を産む」という方針は、児童手当の金額に関係なく、成立する。1万円をもらってももらわなくても、「1人目の子供を産む」という方針をもつ夫婦が多い。ここでは、児童手当の効果は皆無に近い。
 2人目の子供だと、児童手当の効果はいくらかあるかもしれない。「1人目の子供はどうしてもほしかったけれど、すでに1人目の子供がいる。2人目を産むかどうか、迷っている。ただ、児童手当を月1万円もらえるなら、2人目を産もう」と思う夫婦も、いくらかはありそうだ。ただし、たいていは、児童手当の額に関係なく、「1人だけにするか、2人目も産むか」を、独立的に考えるだろう。1万円ぐらいの差は、ほとんど影響しないだろう。(よほどの貧困家庭でなければ、年に 12万円ぐらいの捻出は可能だ。それっぽっちの額は、人生決定にはほとんど影響しない。)

 以上のような理由で、「月1万円程度の児童手当は、夫婦が子供を産むかどうかに、ほとんど影響しない」と言える。額があまりにも小さいので、それっぽっちの額を払っても、夫婦の行動を左右しないのだ。つまり、少子化対策の効果はない。


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 では、かわりにどうすればいいか? 私が前に述べたのは、こうだった。
 「少子化対策に影響があるのは、結婚率を上げることだ。そのためには、20代の貧困層となる非正規労働者の賃金を上げるべきだ。ここで年収で数十万円(月に数万円)の収入増があれば、結婚率を上昇させるので、少子化対策の効果が上がる。しかも、政府の出費はゼロで済む。これぞ名案だ」
 → 異次元の少子化対策の真意: Open ブログ
 → 少子化対策は金ではない: Open ブログ

 ここでは、結婚率を上げるために、民間の賃金の増額を促している。
 一方、それとは別に、政府が金を出すことの対処策もありそうだ。では、どんな? 

 ──

 これに関してちょっと参考になる話がある。次の記事だ。
  → この条件だと仮定してお前ら結婚する??

 「6年間も付き合っていて肉体関係もある男女だが、結婚にはあまり乗り気ではない。どうしようか?」
 と迷って相談している。自分でも決めかねているようだ。
 ここでは、迷っている状況なので、政府が何らかのひと押しをすれば、その方向に行動を踏み切らせることができそうだ。

 そこで、新たに次の提案をしよう。
 「結婚した男女に、結婚手当を出す。男女ともそれぞれ月1万円を出す。夫婦で月2万円だ。年に 24万円だ。これを毎年もらえるので、結婚をする動機になる。お金をもらえるのなら結婚しよう、と思う独身者が増える」


 たとえば、上の記事の相談者は、『結婚しようかな、どうしようかな」と迷っている状況だが、「政府から毎年 24万円をもらえますよ」と言われたら、「それじゃ結婚しなきゃ損だ。さっさと結婚しよう」と思うようになるだろう。この場合は、月2万円の支給でも、十分に大きな効果があるのだ。

 ──

 さらに追加して、次の措置を加えるといい。
 「結婚手当をもらえるのは、20代の男女に限る。30歳になった時点で、打ち切り」

 たとえば、25歳で結婚すると、30歳までの5年間、もらえる。
 また、29歳で結婚すると、30歳までの1年間、もらえる。
   ※ 現実には、月単位の計算で、もう少し短くなる。

 こういうふうになると、若くして結婚すればするほど、お得である。25歳で結婚した人は、29歳で結婚した人に比べて、5倍も多くもらえるのだ。……このことから、早婚化を促すことができて、その分、「早婚による出生率の向上」が見込める。このことはとても大事だ。
 ※ 現状の少子化は、晩婚化による要因が大きいからだ。30歳以上で初婚だと、子供をたくさん産むのは難しい。

 さらに、別の利点もある。「 30歳までの支給」に制限すると、支給する期間が短縮される。児童手当ならば、子供が0歳から15歳(または 18歳)まで、15年間(または 18年間)の支給となる。だが、「 30歳までの支給」ならば、平均初婚年齢が 27歳だとして、3年間の支給だけで済む。とすれば、期間が5分の1である分、支給額を5倍にすることもできるのだ。次のように。
 「 30歳までに結婚した男女に、毎月5万円を支給する。夫婦で月 10万円だ」
 たとえば、27歳から 30歳までの3年間に限られるが、毎月 10万円をもらえるわけだ。あるいは、25歳から 30歳までの5年間に限られるが、毎月 10万円をもらえるわけだ。……こうなると、べらぼうに有利なので、結婚したがる人が激増するだろう。
 ※ それだと予算がパンクしてしまうので、現実には、ここまで高額にすることは無理だろうが。それでも、かなりの高額を支給することが可能だ。……児童手当の廃止を前提とすれば。

 ──

 ともあれ、以上のように、「児童手当を廃止して、結婚手当を出す。特に、20代の男女に限って、高額の結婚手当を出す」というふうにすれば、結婚率が大幅に上昇するだろう。そのことで、少子化の問題は一挙に解決するだろう。……国が払う金は特に増えるわけでもないのに。



 [ 補足 ]
 「児童手当」という発想は、「子供を産ませよう」という目的を設定した後で、「子供を産むという成果に対して、成果主義で金を払う」という方針だ。
 しかし、企業でもそうだが、成果主義はあまり効果が上がらないのが普通だ。それよりは、労働意欲を高めようとする方針の方が、最終的には好結果をもたらすことが多い。目先の金で釣ろうという、さもしい方針は、たいてい、うまく行かないのである。人は小額の金で釣られるほど愚かではないからだ。
 少子化対策のときも同様だ。「産んだ子供の数に比例して児童手当を出す」という成果主義よりは、「結婚することを促す」という遠回りの方法(子供を産むための環境[結婚]をもたらすという方法)の方が、最終的には良い結果をもたらすことが多いものだ。



  ※ 以下は、細かな話です。


 [ 付記1 ]
 次の心配もあるだろう。
 「児童手当が廃止になったら、育児費用が不足するので、子供を産んで育てようとする意欲が減りそうだ。実際にかかる育児費用を、どうしてくれるんだ?」
 その点は、心配ない。国が払う金は、児童手当の場合も、結婚手当の場合も、どちらもほぼ同額だ。ただし、払う時期が違う。
  ・ 児童手当 …… 15年間にわたって、少しずつ払う
  ・ 結婚手当 …… 結婚した直後に、数年間だけ払う

 どっちにしても、もらえる総額は(平均額で見る限りは)同じである。特に損得はないのだ。若い時期に集中的にもらえる、というだけのことだ。その金を貯金しておけばいい。貯金した金で、のちの育児費用を払えばいい。
 ※ 現実には、それよりずっと多くの額の昇給があるはずだから、育児費用の心配はいらない。

 [ 付記2 ]
 次の心配もあるだろう。
 「すでに子供がいる家庭はどうするんだ? 今は児童手当をもらっているが、それが廃止になったら、もらえる金が減る。一方、結婚手当は(今さら)もらえない。丸損だ! どうしてくれるんだ?」
 その点は、心配ない。「法の遡及適用はしない」という方針に従えばいい。つまり、「すでに子供がいる家庭は現状通り」として、児童手当をもらい続けることができる。
 「児童手当を廃止して、結婚手当てを支給する」
 という方針を適用するのは、これから新規に結婚する男女だけだ。また、その方針を取るかどうかは、選択制にしてもいい。
  ・ 児童手当のかわりに結婚手当をもらう
  ・ 従来の制度にしたがって児童手当をもらう

 そのいずれでも、好きな方を(片方だけ)選択できるようにすればいい。(両方の併用は不可。)
 制度設計としては、結婚手当をもらう方がお得であるようにするべきだ。たとえば、結婚手当として、月6万円を夫婦に支給する。(男女各3万円)
 
 ※ なお、結婚手当を選択したとしても、第三子に対する児童手当だけは、追加でもらえるようにするといい。

 [ 付記3 ]
 高校生の児童手当の場合には、「所得制限に引っかかる高所得者が多い」という難点があった。それというのも、親が中高年であるので、高所得になりがちだからだ。
 一方、結婚手当の場合には、親が 20代であるので、高所得にはなりにくい。その分、所得制限には引っかかりにくい。だから、少子化対策の効果が出やすい。……そういうメリットもある。

 [ 付記4 ]
 同性婚はどうか? 同性婚をいくら優遇しても、そこで子供が産まれることはない。ゆえに、同性婚をしても、結婚手当はもらえない。
 「そんなのは同性愛者に対する差別だ」
 と思うかもしれないが、そもそも結婚優遇というのは「独身者に対する差別」なのだから、同性愛者が独身者に対して差別する権利(自分だけが有利になる権利)など、あるはずがないのだ。この件は、前にも述べたとおり。
  → 結婚とは何か?(← 同性婚): Open ブログ
  → 同性婚を否定するべき根拠: Open ブログ
  → 同性婚と近親婚: Open ブログ

 [ 付記5 ]
 「30歳までもらえるのか。だったら 18歳で結婚するのが、一番お得だな。高卒後にすぐに結婚するのがベストだな」
 と思うかもしれない。しかし、さにあらず。10代の若年者は、結婚手当ての対象外だ。20代に限られる。
 また、20代といっても、大学在学中の結婚は推奨されない。最低年齢は 23歳にすることが望ましい。
 だから、結婚手当ての支給年齢は、23〜29歳だ。期間は7年間である。そういうふうに制度設計するべきだ。

 ドラマの「奥様は 18歳」なんて、推奨されません。





 ※ とはいえ生涯にわたって、結婚手当をもらえないわけではない。18歳の妻はその後、23〜29歳の時期に満額をもらえる。晩婚の人に比べれば、圧倒的に有利だ。
 
posted by 管理人 at 21:33 | Comment(7) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
結婚手当だけが目的の偽装結婚(書類上だけの夫婦で実態は赤の他人同士)は増えそうな気がします。どーせ結婚する相手も居ないし予定も無いしという男女が婚姻届をだせば、あら不思議、年間120万円10年1200万円丸儲け。30歳になったら書類上離婚。戸籍に×がつくけど実利が魅力的。
Posted by けろ at 2023年06月19日 12:20
 1200万円丸儲けとはなりません。
 本項の設定では、月額3万円で最長7年であり、
  3×12×7= 252
 で、252万円です。

 他の相手と(愛のある)結婚しても、100万円ぐらいはもらえそうなので、「好きな相手と結婚できなくなる補償金」が 152万円だと、割が合わないのでは?

 他の誰かと結婚したくなったとき、今の相手が別れてくれないかも。「離婚して欲しければ、慰謝料 300万円を払え」というふうに言われる。差し引きして、148万円の損だ。
 偽装で結婚するのはいいとしても、離婚の慰謝料を払わされる危険も考えましょう。


 なお、「詐欺をすることに同意した配偶者」と結婚した場合には、配偶者に自分の全財産を奪われる危険があります。配偶者間の泥棒は罪に問われないからです。「妻に全財産を奪われた!」と警察に訴えても、門前払いされます。
 → 刑法244条1項
> 「配偶者、直系血族又は同居の親族」との間で窃盗などの罪又はその未遂罪を犯した者については、刑を免除する

 国から 252万円をもらっても、それを含めた全財産は、詐欺師である妻に奪われる運命にあります。


 結局は、下手な考え、休むに似たり。ズルをしようとすると、かえって大損する。

 ──

 ただし、そんな男女も、一緒に暮らすと、情が湧いて、エッチして、いつのまにか子供ができてしまうかも。そうなれば、お金をもらう権利が立派に生じる。
 もともとその気はなくても、結果的には収まるところに収まってしまう。……こういうの、ことわざで何かありそうだが、何というのだったかな? 「はからずしも」かな。
Posted by 管理人 at 2023年06月19日 14:13
 婚姻届を出して夫婦になった場合、妻は強姦されても、夫を訴えることはできない。訴えたとしても、夫は無罪になる。下記に判例がある。以下、転載。

 ──

夫婦は互いに性交を求める権利を有しかつこれに応ずる義務があるから,夫が妻に対し暴行,脅迫を用いて性交に及んだとしても,暴行,脅迫罪が成立するは格別,性交自体は処罰の対象とならないため強姦罪の成立する余地はないのである。
https://www.moj.go.jp/content/001130514.pdf

※ ただし夫婦関係がすでに破綻して、DV夫から逃げている妻の場合は、話は別。
Posted by 管理人 at 2023年06月19日 15:24
管理人さんの意見に賛成です。
さらに追加するなら、30代、40代に独身税を付けるべきです。これを結婚手当の財源にすればよです。
50代以降は少子化対策には役立ちませんし、早くに子供ができた人は子育ても終わっているので、嫌な相手だったら、このタイミングで離婚すればいいでしょう。
Posted by まさ at 2023年06月19日 17:27
管理人さんの意見に賛成です。
まずは、結婚しないことには始まりませんからね。

ただ、もらえる総額(252万円)のわりに、
インパクトが弱く感じます。

月額3万円だと、なんといいますか、金額が少なく感じます。

それよりは、結婚して子供を作れば、
「奨学金を免除する」というのはどうでしょうか?

免除対象は奥さんの奨学金のみでもよいかもしれません。

奨学金をもらえるような優秀な奥さんの子供であれば、
きっとまともに納税してくれると思います。
Posted by odbpp at 2023年06月19日 20:45
 月額3万円は、夫婦の各人なので、二人合わせて、6万円です。現行の第一子は月額1万円なので、6倍になります。十分にインパクトがあるでしょう。
 保育士の手取りは月収13万円ぐらいなので、6万円ももらえると、インパクトがあるでしょう。

> 「奨学金を免除する」

 奨学金をもらっていない人は0円なので、効果がありません。もらっている人の割合は、約50% なので、国民の半分が対象外です。

> 奨学金をもらえるような優秀な奥さん

 現在の奨学金制度は、Fラン大学でももらえるシステムなので、優秀とは言えません。

 ──

 なお、奨学金の総額は、4年間で 250万円前後です。本項の提案だと、1人252万円なので、額は同程度です。奨学金免除だと、もらえる対象者は、半分になります。

 なお、本項の方法だと、(もらえる期間が変わるので)早婚ほど得をすることになりますが、奨学金の一括免除だと、早婚ほど得をすることがないので、少子化解決の効果が減じます。
Posted by 管理人 at 2023年06月19日 22:03
 訂正。

> もらっている人の割合は、約50% なので、国民の半分が対象外です。

 と、すぐ上のコメントで書きましたが、これは間違いでした。正しくは、

「もらっている人の割合は、約50% なので、大学進学者の半分が対象外です」

 です。ここでは、大学進学者の率がおよそ 50% なので、奨学金の受給者は 50%×50% にあたる 25% だけとなります。奨学金免除の対象となるのもそれだけです。残りの 75%は奨学金免除の対象となりません。奨学金免除という少子化対策では、国民の 75% が対象外となります。
Posted by 管理人 at 2023年06月20日 09:01
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