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あちこちで議論になっているが、朝日新聞でも特集版で論じている。
最近、話題になったのは、Kristina Kashtanova氏のコミック小説『Zarya of the Dawn』です。
18ページからなる作品で、著作権法で求められる著作物の登録が認められた後に、イラストは画像生成AI「Midjourney」を使って創作されたことが作家のSNSを通じて判明しました。
著作権局は、登録の申請書類にAIの使用を開示していなかったことを理由に申請は不正確と決定。適切な追加情報を提供できなければ、登録を取り消すと書簡を出します。
作家は、弁護士を通じて (1) Midjourneyは補助的ツールとして使ったにすぎず、作家が作品の全てを著作した、(2)それが認められないとしても、テキストは作家の著作で、作品全体は作家がテキストやイラストについてクリエイティブな選択、コーディネートやアレンジをした編集物(compilation)であり、著作権保護が及ぶので取り消すべきではない、と主張しました。
しかしながら当局は今年2月、「作品(著作物)のテキスト、その他の文言的・視覚的要素の選択、コーディネートやアレンジは保護される」ものの、「Midjourney技術によって生成された作品中のイラスト自体は、人間が著作者性を有する制作物(product of human authorship)ではない」ため著作権で保護されない、としてイラスト部分の著作権登録を取り消しました。
続けて、当局は著作権登録のガイドラインを発表し、登録申請する作品の中に「AIが生成したコンテンツ」が含まれる場合は、そのことを開示し、かつ人間である著作者の作品への貢献度を簡単に説明しなければならない、としました。
AIで生成されたコミック小説「Zarya Of The Dawn」=米国著作権局の文書より
( → AI作品の権利保護どこまで AIは人間?動物?カメラ?混乱するアメリカの著作権法:朝日新聞GLOBE+ )
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なかなか難しい問題だ。あっさり結論を下していいとも思えない。
そこで、とりあえず、私なりの判断を示そう。こうだ。
「1枚絵については、AI作品の著作権を認めない。しかし、1枚絵を複数でまとめて一体化した作品(ストーリーあり)については、そこにストーリー性があるので、そのストーリーの部分については著作権があると見なす」
そこから、次のようにも言える。
「そのようにして得られた作品のうち、7割ぐらいの量の1枚絵を、バラバラの順序で並べて転載したものは、ストーリー性がないので、その集合体については、著作権侵害を認めない。また、数枚の絵だけを抜き取って転載しても、そこにはストーリー性がないので、著作権侵害を認めない」
具体的に言えば、冒頭の画像だ。表紙および冒頭の4枚の画像を転載しているが、これではストーリー性がない。だから、この転載は、著作権侵害には当たらない。
一方、丸ごと転載すると、著作権侵害がある。
こうして、「1枚絵でなく集合体におけるストーリー性」に着目することで、著作権を認定することができる。
※ 「AI作品であることをクレジット表示する」ことの是非については、ここでは特に論じないで置く。
【 関連サイト 】
AIでブラックジャックの新作を作る……というプロジェクトを紹介した記事がある。
AI(人工知能)とクリエーターが協働し、漫画家・手塚治虫の「新作」を生み出すプロジェクトの新章が始まった。前回の作品発表から3年が経ち、今回は名作「ブラック・ジャック」に挑む。この間に大きく発展した生成AIなどの技術によって、創作方法はどう変わるのか。
手塚プロやAI研究者の栗原聡・慶応大教授らのチームは、「ブラック・ジャック」の200話以上の物語構造や絵をAIに学習させ、新たなエピソード制作に挑む。
対話型AI「GPT-4」は、より自然な文章で大量のシナリオを生み出すことを可能にした。テキストで条件を指定できる画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」で、物語の世界観に沿ったキャラクター画像の生成もできるようになった。
ただしAIにできないことはまだ多く、今回も「人間の創造的作業をサポートする」との位置づけは変わらない。
( → AI進化、より手塚治虫らしく 「ブラック・ジャック」新作に挑戦:朝日新聞 )