2023年06月13日

◆ 水着撮影中止と児童労働

 水着の撮影会が中止になったことが、ネットで話題になっている。その本質を考える。

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 埼玉県の公園で水着の撮影会が予定されていた。
 これに共産党が抗議した。「性的な目的で公共施設を使うのはけしからん。未成年もいるぞ」と。これを受けて、公園の側は開催日の直前に、撮影会を中止させた。
 一方、この撮影会に続く別の撮影会も、次々と中止を強いられた。いわば、とばっちりだ。巻き添えだ。そのせいで、仕事を失ったモデルが「仕事を奪わないで」と声を上げた。「セクシーな水着撮影といっても、それを仕事にしている女性もいるのだし、これは違法でもないのだからね。先の撮影会と違って、未成年でもありません」と。
 ここまでが、最初にネットで話題になった。
  → 県営公園での過激な「水着撮影会」の貸出中止を埼玉県に求める - 日本共産党埼玉県議会議員団
  → 出版社主催のプール水着撮影会、共産党の圧力で禁止に、仕事を奪われたモデル業の女性などから苦言相次ぐ - Togetter

 その後、共産党に批判が大量に寄せると、共産党は知らんぷりをした。
 「中止を決めたのは共産党じゃなくて、公園の管理者です。責任は公園の管理者にあります」
 と。(すっとぼけとは、このことだ。)

 その後、公園側を弁護する意見が出た。「中止を決めたのは、性的な撮影をしてはいけないという公園管理規則に違反していたからです。公園側が勝手に方針を決めたのではなくて、もともとある規則に、主催者が違反したからです」と。
 これを聞いたネット世論は、「そうか。それじゃ仕方ないね。規則に違反した主催者が悪いね」というふうになった。

 ところがその後、さらに真相が暴露された。
 「公園が新しい規則を決めたのは、共産党が申し入れをした直後である。中止を決めた直前に、規則を変更して、いきなり中止を決めた」
 と。いわば、後出しジャンケンだ。「法律や規則の遡及的適用はしない」という原則に反する。過去の時点で合法的に決まった契約を、あとで勝手に決めた規則で違反だと決めつけるのでは、理屈も何もあったものではない。これは明白な違法行為だ。(裁判をすれば公園側が負ける。)
  → 「開催2日前にいきなり電話で言われ…」共産党の申し入れで「水着撮影会」が中止に 騒動の裏側に迫る(抜粋) | デイリー新潮
 
 こうして真相が暴露されると、さすがに埼玉県の側も分が悪いと判断したようだ。公園側が違法行為をしていたのだから、どうしようもない。そこで県知事が介入して、頭を下げて、中止をやめると方針転換した。かくて、問題は解決を見た。
  → 埼玉県・大野知事「水着撮影会への県施設プールの貸出中止要請したけど、それを撤回する」 - Togetter

 ──

 ところが、である。そのあとで、話が振り出しに戻った。成年の撮影会は許容されるようになったが、そもそも最初にあったのは、未成年を含む撮影会だ。これは許されるべきではないだろう。実際、卑猥なポーズの撮影があった。しかも、中学生がモデルになっている。これでは児童の性的虐待だ。
  → https://x.gd/jZpgX
  → https://x.gd/AMJYX
  → http://www.maruhorror.com/archives/36017363.html
  → https://twitter.com/ShinjukuSokai/status/1614544822236512258
  → https://ameblo.jp/dreamidol/entry-12326594979.html
 こうした状況を見て、「児童労働は一切、禁止するべきだ」という論調が出た。

 ところが一方で、次の事例が出た。
  ・ 子供のタレントやモデルがいる。
  ・ 女子中学生のプロレスラーがいる。( → 出典
  ・ 演劇の子役がいる。
  ・ 将棋の藤井名人は、中学生でプロ棋士になった。
  ・ 中学生の新聞配達はなされている。

 これらも児童労働に当たるように思える。では、これらはどうなのか? これらも一律に禁止するべきなのか? 
 なるほど、ただのモデルやプロレスラーならば、禁止してもいいだろう。しかし、演劇の子役や、将棋の天才や、貧乏中学生の新聞配達まで、一律に禁止していいものだろうか? 貧乏中学生の新聞配達を禁止すると、貧乏中学生が高校に進学する機会を奪うことになりそうだが、それが公正なのだろうか? 

 こうして、線引きが難しい問題が出現した。どこでどう線引きをしたらいいのか、わからない。かといって、一律に容認したり、一律に禁止するのも、弊害が多い。いったい、どうしたらいいのか? 困った。

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「その点は、法律がちゃんと考えてあるはずなので、法律を調べればいい」

 そこで法律を調べると、ちゃんと解決策がわかる。

 まず、法律上では、労働基準法の第56条で児童労働は禁止されている。15歳になったあとの年度末(3月31日)まで、労働は禁止となる。これが原則だ。
 ただし、例外もある。その例外が大事だ。
※労働基準法の定めでは、以下の要件を満たせば満13歳以上の児童を就労させることを例外的に認めています(労働基準法第56条第2項)。

1)非工業的事業であること
2)児童の健康及び福祉に有害ではないこと
3)労働の内容が軽易なものであること
4)所轄の労働基準監督署の許可を得ていること
5)修学時間外に限った労働であること
また、
6)映画の製作又は演劇の事業については、満十三才に満たない児童についても、同様とする

  ̄ ̄
【例外的に許されるアルバイト】
現時点では新聞配達、牛乳配達、芸能関係の子役やキッズモデルの仕事などが可能
( → 中学生ができるバイトは?法律上の決まりを解説│#タウンワークマガジン

 こうして例外の範囲がわかったが、ここで、重要なことがある。例外を認められるには、条件があるのだ。
労働基準監督署の許可を得るという項目があります。許可を得るため申請を行う場合は、以下4つの書類の準備が必要で、申請は雇用する会社が行います。

1.年齢を証明する証明書、戸籍証明書など
2.修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書
3.親権者もしくは後見人の同意書
4.「児童許可申請書」

 では、中学生がエロいポーズで水着モデルになることは、どうか? どうせ子供を金儲けの種にしようとする親がいるわけだから、親の許可はすでに得ているだろう。(そもそもこれは親の犯罪だから、主犯は親だ。)
 となると、問題は、「学校長の証明書」だ。「中学生がエロいポーズで水着モデルになる」ということに、学校長が許可をしているわけだ。
 となると、問題は、以下のように整理される。
 「水着のエロ撮影をすることを、学校長が許可したのが問題だが、学校長はいかにして許可したのか?」 
 これについては、次の二通りが考えられる。

 (1) 学校長がまともに許可した。では、水着のエロ撮影をすることを、知って許可したのか? 知らずに許可したのか? どっちにしても、許可したのであれば、学校長に責任がある。(たぶん、知らずに許可だろうが、ならば無能すぎる。ここに最大の責任がある。仕事をサボっているのも同然だ。)

 (2) 学校長はだまされて許可した。つまり、会社が嘘をついて、学校長をだました。水着のエロ撮影をするのだが、そのことを隠して、許可を得た。あるいは、会社は学校長の許可を捏造して、虚偽の書類で申請した。……これらの場合には、会社側が違法行為をしていたことになる。犯罪だね。


 さらに、第3のケースとして、次のことも考えられる。

 (3) 水着のエロ撮影をすることを、労基署が意図的に許可した。芸能界からの袖の下をもらった政治家が、労基署に圧力をかけたので、未成年の性的な活動を、意図的に認めた。


 ──

 上に (1)(2)(3) のケースを想定したが、いずれの場合にも、大きな責任者がいる。ここを指弾するのが、問題の本質だろう。
 そして、そのように問題の本質を理解すれば、線引きも容易になるはずだ。
  ・ 演劇の子役
  ・ 中学生のプロ棋士
  ・ 中学生の新聞配達

 これらは、学校長の許可を得るのが容易なので、いずれもあっさり許可される。

 線引きが微妙なのは、
  ・ 中学生の女子プロレスラー
  ・ 中学生のモデルやタレント

 だ。これらについては、「認めてもいい」と思う人も多いだろう。だが、私としては、「認めるべきではない」と思う。これらはただの労働と大差ないからだ。別に、藤井名人のような特別な才能があるからやるわけではない。また、やったからといって、将来に特に役立つわけでもない。(プロ棋士とは全然違う。)
 オリンピックに出るような特別な才能のある人を、全国で1人か2人だけ認める、というのなら、まだわかる。しかし、普通の人よりはちょっとマシだというぐらいの凡庸なレベルで、モデルやタレントをやらせるのは、ほとんど児童虐待だ。それは親の金儲けに利用されるだけ、というのが真相だろう。こんなことは一律に禁止した方がいい。……それが私の判定だ。



 【 関連項目 】

 15歳以下の児童アイドルについては、「これは違法労働だ」と主張した過去記事がある。ヘリウムガス事故で意識を失った女子中学生の事例を受けて。
  → アイドル事故は違法労働: Open ブログ
  → 児童アイドルは違法労働: Open ブログ
  → 児童アイドルは違法労働 2: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:58 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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