2023年06月11日

◆ 年収の壁(106万円) .1

 年収の壁がある。年収 106万円を超えると収入減になる。だからパート労働者が 勤務日数を増やしたがらない。どう解決するべきか?

 ──
 
 年収 106万円を越えると、社会保険料の負担が発生するので、手取り所得はかえって減ってしまう。それではイヤだ、という理屈で、パート労働力の女性たちが、勤務日数を増やそうとしない。「それ以上働くのはイヤなので、あとは休みます」というわけだ。これでは労働力が無駄になる。国全体の経済力も落ちてしまう。まずい。では、どうすればいいか? 
 この問題を解消するために、政府は「補助金を出す」という方針を打ち出した。
 パートの主婦らが社会保険料を負担しないですむように働く時間を抑える「年収の壁」問題の解消に向け、政府は雇用保険料を財源とした新たな補助金をつくる検討に入った。パートらの年収が「壁」を越えても手取りが減らないよう賃上げなどをした企業に助成する。
 「年収の壁」は、配偶者らに扶養される人の年収が106万円(勤め先の従業員が100人以下の場合などは130万円)を超えると、扶養から外れて社会保険料などを負担しなければならず、かえって手取りが減る問題だ。これを避けるため、壁の手前で働く時間を抑える人も少なくない。
 政府は対策として、近く取りまとめる「こども未来戦略方針」の中で、従業員の年収が「106万円の壁」を越えても手取りが減らないよう、労働時間の延長や賃上げをした企業に対し、必要な費用を補助する方針を盛り込む。
 政府はこうした補助金を、非正社員の正社員化や賃上げなどに取り組む企業に支給する「キャリアアップ助成金」を拡充する形で新設する方向だ。
 この助成金は、財源の保険料を企業が全額負担する「雇用保険二事業」として行われている。経済界に対しては、パートらの「働き控え」を減らすことで人手不足対策につながると説明し、理解を求める考えだ。
( → 雇用保険料を財源 「年収の壁」解消に助成案 政府、新たな補助金検討:朝日新聞

 何でもかんでも「補助金を出そう」というのが、政府の発想だ。しかし、補助金を出すには、金がかかる。金がもったいない。今回は、労働者でなく企業が金を払うようだが、それにしても金がもったいない。
 というか、そもそも、パート労働者を安価に使っている企業だけが悪いのに、その分の負担を全企業が出すというのは、筋が通らない。これでは、まともな経営をしている企業が、実質増税によって、損をしてしまう。その分、競争力が低下してしまう。
 「悪しき企業が得をして、善なる企業が損をする」
 というのが、「全員で一律負担」という方針だ。これでは、政府が自分の縄張りを増やして威張り出す、というぐらいの効果しかない。馬鹿げている。というか、筋が悪い。
 困った。どうする?

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「パート労働者を雇用する企業には、補助金を出すのでなく、逆に、課税する。106万円〜125万円のパート労働者で、社会保険料の負担が増えてしまうので、この範囲内では、社会保険料の負担を、労使折半でなく、全額を会社負担にする

 これはうまい方法だ。いくつかの効果が同時に達成される。
  ・社会保険料は、会社負担になるので、労働者の負担増はない。
  ・ 会社側は、全額を会社負担にするのが困るので、125万円以上の年収を促す。
   (それならば全額会社負担を免れるからだ。)
  ・ 結果的に、106万円〜125万円のパート労働者が消える。
   (106万円以下か、125万円以上になる。)
  ・ かくて、労働者も損しないし、会社も損しない。政府も目的達成だ。
   (三方よしだ。)


 というわけで、補助金の負担もなしに、会社の負担もなしに、すべてが解決する。金を1円も出さずに、問題が解決する。これぞ、うまい方法だ。

 ──

 なお、別途、労働者向けに広報をしておくといいだろう。
 「106万円を越えて、厚生年金に加入すると、手取り収入は減りますが、将来の年金が大幅に増えるので、かえって得をしますよ。目先では損をするけれど、将来的には何倍にもなって返ってくるので、すごくお得ですよ」
 と。

 これ、計算すれば、すぐにわかるんだけどね。計算してわかることを、理解できないというのは、朝三暮四の猿みたいだ。それを教えないマスコミや労働者も、どうかと思うが。



 [ 付記 ]
 実は、別案もある。106万円で一挙に手取りが減るのを避けるために、控除額を段階的になだらかに変動させる……という手法だ。「可変的な控除」という手法だ。
 そんなのは面倒臭くて困難だ……と思う人もいるだろう。だが、この手法は、実はすでに実現済みだ。所得税の配偶者控除では、所得が 103万円〜140万円のときに、控除額が段階的に変化する。つまり、「可変的な控除」という手法は、すでに導入済みである。
 だから、その手法を流用することもできるのだ。



 【 関連動画 】




posted by 管理人 at 22:06 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 政府はこの件で、補助金を出す方針を固めたようだ。

> 1人当たり最大50万円の助成を検討している。

 とのことだ。
 → https://digital.asahi.com/articles/DA3S15714442.html

 ──

 これほどにも莫大な金を出して、血税を浪費する。巨額の無駄遣い。馬鹿丸出しだ。

 本項で提案した方式を使えば、1円もかけずに、同じメリットがあるのに。いや、所得増加の効果もあるので、同じメリット以上の効果があるのに。

 政府は1人50万円も余分に出して、かえって効果の少ない方式を取る。愚の骨頂。
 
Posted by 管理人 at 2023年08月11日 19:42
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