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このような山間の谷間には人が居住するべきではない……というのが、私の立場だ。これまで何度も主張してきた。
→ 川沿いの危険地は居住制限せよ: Open ブログ
→ 豪雨の被害を減らすには: Open ブログ
ところが、このたび浜松市で土砂崩れが起こったが、その被災者は、わざわざここに移住してきた新参者だった。
伝来の居住者ならば、もともとの家があるので、現地から引っ越しにくいという事情はわかる。しかし、外部からの新参者ならば、わざわざ危険な土地に居を構える必要はなかったはずだ。これでは 死ぬために移住したのも同然だ。
この移住者は、「地域おこし協力隊」という形で、自治体が招いたものだった。とすれば、自治体としては、「危険な場所には住まないように」とガイドラインを示すべきだった。なのに、あえて危険だと指定された土地に居住させた。これでは、自治体が殺したのも同然だろう。
以上が、私の指摘だ。以下では、詳しい情報を示す。
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報道は下記だ。
土砂崩れが起きた浜松市北区の現場では9日、ペットボトルと花束が置かれていた。全壊した住宅で水野真彰さん(35)が遺体で見つかった。
水野さんは2020年4月、中山間地の地域おこしを担う市の「山里いきいき応援隊」のメンバーになり、青年団の活動にも加わるようになった。
( → 台風が前線刺激、広く被害 豪雨1週間、不明者捜索続く:朝日新聞 )
亡くなった水野真彰さんは引佐町地区で2年間、地域おこし協力隊の活動に取り組んだあと、去年4月にいまの住宅に転居したということです。
( → 住宅が倒壊し亡くなった水野さんを悼む声|NHK 静岡県のニュース )
浜松市北区引佐町渋川の土砂崩れ現場で、遺体で見つかった水野真彰さん(35)。
水野さんの父親、妹とともに訪れた母親は息子の住んでいた民家の方をみて、つぶやいた。「渋川に移って三年、本当にここでやっていけるというところで…」
( → 帰宅もう少し遅かったら 浜松・土砂崩れ、犠牲の水野さん:中日新聞しずおかWeb )
市によると、水野さんは昨年3月まで2年間、地域おこし協力隊員として引佐地区で暮らし、農作業支援などを行った。任期後も、地区でコメ作りや狩猟などに汗を流したという。
( → 浜松土砂崩れ、地域おこし隊員で移住の35歳男性が死亡…市長「住民に愛されていた」 : 読売新聞 )
浜松市の「地域おこし協力隊」とは?
総務省の「地域おこし協力隊」制度等を活用した中山間地域の支援事業です。浜松市では、隊員の名称を「浜松山里いきいき応援隊」として、平成25年度から実施をしています。
人口減少や高齢化等の進行が著しい中山間地域に、都市部等の人材を積極的に誘致、居住させ、地域協力活動の実践を通じて中山間地域への定住、定着を図りながら、当該地域の維持、活性化を図ることを目的としています。
報償費
合計268,000円(月額)
( → 浜松山里いきいき応援隊とは/浜松市 )
268,000円(月額)を支給して、外部から招いておきながら、わざわざ危険な土地に住まわせて、殺してしまったわけだ。
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ここが危険な土地であることは、NHK が報道している。
水野さんの自宅周辺は土砂災害警戒区域に指定されていて、中野市長は「土砂災害のおそれがあることは一般論として地域には伝えていたが、水野さん個人にアプローチできていたかは分からない」と説明しました。
( → 静岡 浜松 大雨の土砂崩れで住宅倒壊 遺体は住人の男性と確認 | NHK | 気象 )
土砂崩れをシミュレーションした図がある。
出典:|NHK 静岡
地図は下記。
図と地図からわかるように、家屋は谷間にあった。土砂崩れの流れが谷沿いに下ってきたら、それに家屋が呑み込まれるのは自明だった。
※ 熱海の土砂崩れの場合と同様だ。
→ 静岡の土砂崩れ・続報: Open ブログ
→ 土石流と火砕流: Open ブログ
→ 土砂崩れはどう起こったか?: Open ブログ
だから、こんなところに居住してはいけないのだ。それも、昔から住んでいたのでなく、新たに居住するのであれば、なおさらだ。
愚かな自治体が、大金を払って若者を招き寄せたあげく、殺してしまった……というのが、今回の被害の真相だ。天災というより、人災に近い。
[ 付記 ]
この人はなぜ、わざわざこんな危険な場所に住んだのか? 理由は推察が付く。こうだ。
「危険だとわかっていたので、家賃が格安だった。ほとんどタダ同然の低価格で、古い家屋を賃貸した」
やはり自治体がきちんと規制するべきだったね。