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前回は、名古屋地裁の判決だった。このときは、マスコミの誤報があった。先に指摘した通り。
→ 同性婚の違憲判決は誤報: Open ブログ
今回は、福岡地裁の判決だ。記事は下記にある。
→ 同性婚訴訟の判決(要旨):朝日新聞
全体としては、同性愛者の権利に配慮するべきだ、という趣旨だ。それを放置することは違憲状態にある、とも判断している。
ただし、次の箇所が重要だ。
同性愛者らの重大な不利益を解消する制度のあり方については、様々な考慮をする必要がある。諸外国で採用されている登録パートナーシップ制度は婚姻制度の代替となり得るもので、このような制度を設けるか否かについて立法府の議論に委ねることが相当である。
全体の趣旨としては、次のようになる。
・ 何もしないで放置するのは、違憲状態だ。
・ 同性婚を認めるべきだ、とまでは言えない。
・ 他の代替措置(登録パートナーシップ制度など)でも可。
今回の朝日新聞記事は、このことをきちんと伝えているので、誤報ではない。
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さて。すぐ上の趣旨(3点)は、名古屋地裁の趣旨と同様である。その意味で、名古屋地裁も福岡地裁も、同趣旨の判決を下したと言える。
ところが朝日新聞は、名古屋地裁の報道を誤解して誤報したままなので、両者は別の趣旨だと報じている。

出典:朝日新聞
「同性婚を認めない民法・戸籍法は憲法に違反するか」
という題目を立てて、「合憲/違憲/違憲状態」というふうに比較している。しかし、現実には、裁判所が下したのは、「何もしないで放置していることは違憲・違憲状態だ」ということであって、「民法・戸籍法は違憲だ」と言っているわけではない。民法・戸籍法については、「合憲だ」と述べていることがほとんどだ。ただし、民法・戸籍法とは別に、同性婚の代替手段が用意されていない無為無策が違憲・違憲状態なのだ。
・ 民法、戸籍法が違憲であるか?
・ 代替措置がないことが違憲であるか?
この両者は、まったく別のことだ。簡単に言えば、「代替措置があればいい」と裁判所は言っている。その意味で、現行の民法・戸籍法が違憲であるとまでは言えない。代替措置(同性家族制度)があるかどうかは、民法・戸籍法が違憲であることとは関係がないからだ。
マスコミはいまだに、何が論点となっているかを、理解できないのだ。「同性婚を何としても導入しなくてはならない」と思い込んでいるせいで、「代替措置でもいい」と判決した裁判所の判決を、まともに読めないのだ。まったく、読解力の低さに呆れるしかない。ChatGPT に比べると、はるかに低い読解力しかない。
【 関連項目 】
代替措置とは何か? その件は、先の項目の最後で説明した。
→ 同性婚の違憲判決は誤報: Open ブログ (末尾の箇所)