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マイナンバーの口座登録が問題になっている。本来は本人名義で口座登録するべきなのだが、家族名義(親の名義)の口座が口座登録されていることがある。これでは、本人に給付される金が、親の口座に入ってしまう。それはまずい。……という趣旨だ。
まずは報道を見よう。
政府からの給付金を受け取るための預貯金口座を、マイナンバーとひもづける公金受取口座の登録制度で、本人でない家族名義の口座が多数登録されていることが分かった。 公金受取口座は本人名義と定められており、制度の普及を急いだため、確認作業など運用面でのほころびが出た形だ。
同じ口座を、家族内で公金受取口座として登録している例が見つかった。
親が子どもの手続きをする際に、自分名義の口座を登録した例が多いとみられる。
( → マイナ公金受取登録に家族口座多数 給付金等、本人に渡らない可能性:朝日新聞 )
親が子供の口座を管理するのが問題だという。そのどこが問題なのか? 記事にはこうある。
子ども向けの給付金などが本人に渡らない可能性がある。
では、子ども向けの給付金とは?
「子育て世帯生活支援特別給付金」についてご紹介します。
“低所得の子育て世帯”に支給する給付金のこと
( → 【子ども一人につき一律5万円!】子どもの給付金の種類と対象者、申請方法とは? | こそだてまっぷ )
これは低所得者限定だが、地域によっては、もっと広く支給することもある。
低所得以外の子育て世帯にも給付金が支給されます!
低所得者向けの給付金が数多く実施されていますが、自治体の中には、所得制限を撤廃し、すべての子育て世帯に給付金を支給するところもあります。
( → 【号外】低所得以外の子育て世帯にも給付金が支給されます! | 助成金ブログ )
というわけで、かなり広範囲の人々に対して、給付金が交付されることがあるようだ。そして、その交付の対象は、子供本人であることになっている。そして、政府が交付する金が、子供本人に渡らないで、親に渡ることがあるので、問題だ……とされている。
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しかし、私の見解を言うなら、政府の方針そのものが間違っている。ここでは、
「正常は異常だ。異常は正常だ」
という状況だ。ちょうどシェークスピアの戯曲の台詞の、
「きれいはきたない。きたないはきれい」
のように。
つまり、こうだ。
「給付金を子供本人に渡すという政府の方針そのものが間違っている。給付金は子供本人でなく、親に渡すべきだ」
その理由は、こうだ。
「給付金は、子供が好き勝手に使える小遣いではない。子供がゲーセンで遊ぶための金として5万円を渡すのではない。子供にとって必要不可欠な学費や食費や生活費のために渡す金だ。その金は、子供本人でなく親に渡すのでなければ無意味だ」
こんなことは当り前だ。たとえば、コロナ不況のときに、国民全員への一律給付金 10万円というのがあった。このとき、子供の分は親に支給した。子供本人に支給したのではない。
他も同様だ。たとえば、児童手当がそうだ。これも、子供本人でなく親に支給する。また、支給制限は、子供本人の所得でなく、親の所得で決まる。大学授業料の無償化も、子供本人の所得でなく親の所得で決まる。それ以外にも、さまざまな給付金があるが、いずれも本人でなく親に支給する。
さすがに大学生になると、大学の一般奨学金は、親でなく本人に支給して、本人が長期にわたって返済するようだが、これは話が別だろう。(そもそも一般奨学金は、給付金でなく、借金だ。給付するタイプの特別奨学金は、親の所得で決まる。)
ともあれ、以上のように、国からの給付は、親の所得によって給付がきまる。また、一律給付金は親の口座に入る。……未成年者に関する限りは、そうなるのが当然なのだ。それこそが正しい方策なのだ。
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とすれば、「給付金を子供の口座に入れる」というマイナンバーの口座登録制度は、それ自体が根本的に方向違いだと言える。ここで、
「正常は異常だ。異常は正常だ」
「正しいは間違い。間違いは正しい」
というふうになっているのだ。
では、正しくは、どうするべきか? 私としては、こう提案する。
「マイナンバーの子供の口座登録は、原則、親の口座とする。その後、子供が大きくなって、自分の口座を持てるようになったら、自分の口座を登録することもできるようにする。その時期は、12〜17歳とする。遅くとも 17歳までに、自分の口座を登録すればいい」
「一方、政府が子供に給付金を出すときは、給付先の口座は、親の口座とする。17歳以下の子供に、児童手当や一律給付金を出すときには、子供本人の口座でなく、親の口座に振り込む」
つまり、政府の方針をほぼ 180度、全面転換するわけだ。こうしてこそ、
「正常は異常だ。異常は正常だ」
「正しいは間違い。間違いは正しい」
という馬鹿げた状況を是正できる。
※ 現状では、政府の支給した金が、ゲーセンなどに無駄遣いされてしまって、ひどいことになる。そのあげく、給食費も払えないような子供が続出するかも。
[ 付記 ]
実は、こういう問題を根源的に解消する方法がある。それは「ID口座」というものだ。その概要は下記。
もっとうまい利用法がある。それは、この ID番号に口座番号を付して、「 ID口座」にすることだ。
ID口座は、通常の銀行の口座振り込みに似ているが、次の点で異なる。
・ あらゆる納付や給付を一元管理する。
・ 支出先は政府や地方自治体に限られる。
( → ID番号と ID口座: Open ブログ )
ID口座とは、次のようなものだ。
(1) 基本的には、納税のための口座である。この口座から金を引き出せるのは、政府と自治体に限られる。
(2) 先に給付金が入金されていれば、その給付金による残高から、納税が実行される。
(3) 利用する本人は、(銀行で)納税のために口座振り込みの手続きをする必要はない。単に ID口座に入金するだけでいい。
( → マイナンバーと口座の ひもづけ: Open ブログ )
このような口座ならば、本人がゲーセン代などに引き出すことはできない。一方で、給食費や修学旅行費などに支出することはできる。(学校の側が徴収する。)
【 関連動画 】
【 追記 】
そもそも、赤ん坊や幼児にまで銀行口座を作らせるという制度設計そのものが、根源的に狂っている、と言えるだろう。「頭おかしい」というありさまだ。
それでも、このような制度ができたのは、次の理由だろう。
「子供の口座は、子供本人が管理するのでなく、親が管理をする。口座の金を、親が好き勝手に引き出して使える」
しかし、このような方針は、違法性が高い。ほとんど盗みも同然だ。「親は子供の金を盗んでもいい」と言っているのも同然だ。少なくとも、私有財産権を侵害するものであり、憲法違反の恐れがある。
こういう違法性の高い法律を政府が堂々と導入する、という点で、法治国家としては滅茶苦茶である、と言えるだろう。
話の出発点からして、根源的に狂っているわけだ。「給付金は子供でなく親に支給する」という原理に立って、根本から制度を構築し直すべきだ。
それは承知していますが、その妻は未成年ではないので、話が別です。妻の金を夫が取るのと、子供の金を親が取るのとは、全然違う。
> 施設に収容されている中学生くらいの被虐待者
DV の親に給付金を出すのは、また別の話。たとえ本人の口座にしたって、その口座を親が握っていれば、何の効果もない。対処策は、別に必要だ。
今回の話とは関係ない。
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いずれにしても、江戸の敵を長崎で取る、みたいな筋違い。批判に対する対処策が、見当違いだ。あさっての方向を向きすぎている。