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政府は6日、「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」を開き、水素の利活用について定めた「水素基本戦略」を6年ぶりに改定した。2040年までの水素供給量を現在の6倍にあたる年1200万トンとする新たな目標を設けた。
( → 水素供給「2040年までに6倍」 政府、6年ぶりに基本戦略改定:朝日新聞 )
これは実現可能か? …… その問いに対しては、「実現不可能だ」という回答を読者は予想するだろうが、私は「可能だ」と答える。むしろ、「値が低すぎる」とさえ思う。
なぜか? 時期が問題だ。2030年なら、6倍増は無理だろうが、この目標値は、2040年だ。あまりにも遠すぎる未来だ。こんなに遠い先ならば、実現は可能だろう。どんなに遠い目標でも、達成時期が遠い先ならば、いつかは可能になるものだ。
「6倍増」と聞くと、すごい伸びに思えるが、達成時期が遠い先ならば、たいした伸びではない。ほとんどペテンだね。
比喩。
「お金を預けてくれれば、あとで、利子を付けて倍額をお返しします」
「本当に? それは いつ?」
「千年後です」
で、本項では、何が言いたいか? 「6倍増は実現可能だ」ということか? いや、「政府の方針は(見せかけだけの)ペテンだ」ということだ。すごいことをやる、と見せかけて、実は、全然たいしたことではない。「だまされるな」というのが、本項で言いたいことだ。
※ 2040年に6倍増なら、2030年には2倍増程度だろう。7年かけても2倍増だけだとは、少なすぎて、涙が出そうだ。水素生産が2倍増の間に、EV の普及率は 20倍以上になっていそうだが。(現状は 1.4% だ。)
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さて。もう一つ。
水素生産が低コストになるかどうかは、水素生産の技術開発に依存すると思いがちだが、そうではない。水素生産の技術などは、どうでもいい。電力の発電コストが大事だ。(これしだいだ。)
では、その発電コストは、どうなるか? 太陽光発電の改良で、劇的な低下が見込める。
この 10年ほどで、太陽光発電の発電ストはほぼ半減した。このあと 2040年までには、おおむね 4分の1にまで低下しそうだ。メガソーラーなら 2.5円/kWh ぐらいだ。さらに、需要のピーク時における余剰電力の販売となると、1円/kWh ぐらいになりそうだ。これが、毎日のように起これば、工場の稼働率もかなり上がるので、商売になる。
2040年ごろには、1円/kWh ぐらいの電力を使って、1日2〜4時間ぐらい設備を稼働させるという方式で、水素生産は事業化できるだろう。その場合は、化石燃料に由来する LNG にもコスト的に勝てそうだ。(炭素を使わないので、炭素税を払わないで済む、という効用もある。)
※ なお、別方式の太陽電池で、さらに劇的なコストダウンも見込まれている。
→ ペロブスカイト型太陽電池: Open ブログ
※ 洋上風力発電による深夜電力も、そこそこ低価格になることが見込まれる。以前の深夜電力並みだろう。
[ 付記1 ]
水素生産の設備の稼働率が低いのが問題となりそうだが、水の電気分解の装置自体は簡単なので、電気分解の装置はたいしてコスト高になるまい。コストがかかりそうなのは、水素の貯蔵施設の方だが、これは、電気分解の装置の稼働率には依存しない。稼働率が低ければ、貯蔵施設の量も少なくて済むので、貯蔵施設が無駄に余ることもない。だから、稼働率が低いのは、あまり問題とならないだろう。
[ 付記2 ]
太陽光発電の余剰時の価格が 1円/kWh ぐらいと見込んだが、これを「低すぎるぞ」と思う人もいるかもしれない。「そんなに安すぎると、発電事業者がペイしないだろ」と思う人もいるかもしれない。
しかし、大丈夫。そもそも現状では、九州で「太陽光発電の受け入れ停止」という事態が発生している。「余剰電力を地域外に送電線で送る。そのために政府が数兆円の負担をする」という方針もある。いずれも、電力の価格はゼロまたはマイナスとなる。それに比べれば、1円/kWh というのは、はるかに有利な価格だ。1円/kWh だと、「低すぎるので文句を言う」どころか、「ゼロやマイナスでないので大喜び」というふうになるだろう。
「それで事業が成立するのか?」と心配する人もいるだろうが、大丈夫。1円/kWh ぐらいになるのは、あくまで「電力が余ったとき」だけである。現実には、電力が余ることはなく、大量の EV のバッテリーに収容されるから、いくらかの価格下落が起こるだけで、ゼロにはならない。そして、その時間も、かなり限られた時間帯だけのことだ。(正午ごろだけだ。)
他の時間帯ではどうか? ライバルは火力発電や原子力発電だ。そのライバルよりも安い価格であれば、売電できる。とすれば、火力発電や原子力発電と同程度の価格( 10円/kWh ぐらい)で売電できる。正午以外の時間帯では、そのくらいの価格で売電できるのだから、事業としてはしっかりペイできるのだ。
そして、他の時間帯ではかなり高い売電価格で儲かる分、正午ごろの時間帯では劇的に安い価格で売電しても大丈夫だ、となる。かくて、正午ごろには、1円/kWh ぐらいの電力が供給されるので、その安価な電力を使って、水素生産ができるようになる。そうすれば、6倍増と言わず、10倍も 30倍も可能になりそうだ。(現状がほとんどゼロに近いので、30倍増ぐらいは容易である。)
http://openblog.seesaa.net/article/499493530.html
水素のレシピを考えると
1.太陽光の電力で水を電気分解して水素を得る。
2.天然ガス改質で、CO2排出と共に水素を得る。
現時点では2の方がらくちんです。
実際に、現状で生産されている水素は圧倒的に2だそうです。
100倍らくちんかどうか?は、おいといて、2の方法で水素供給量を6倍にしても、それを再生可エネルギーと呼ぶのは違和感があると思います。
管理人さんはどう思いますか?。私は1の割合を増やさなきゃ意味がないなって思います。
この分はやってもナンセンスなので、もともと計数に入れていないはずです。カウントしていないのも同然。
こんなので水素を増やしても、それこそナンセンス。
実際には、現状は副産物として自然に発生する分をカウントしているだけです。
> 水素は石油化学プラントや製鉄所、苛性ソーダなどの生産工程において副産物として発生する
https://car.motor-fan.jp/tech/10004154
これだと、余り物なので、コストは非常に安い。ただし量は増やせない。