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このことは、前項の「同性婚の報道」で明らかだ。新聞やテレビは誤報だらけだった。朝日、NHK、読売、毎日、日経、産経が、同様の誤報をしていた。
誤報の内容は、「判決の要旨」だ。判決を短くまとめて要旨にするとき、とんでもない間違いを犯した。ほぼ正反対の内容にまとめてしまった。
一方、ChatGPT ならば、そんな馬鹿げた間違いは犯さないはずだ。そう思った。そこで前項では、こう記した。
(記事は)ChatGPT でも可能なことだ。ここには、間違いはない……と思えたが、よく読むと、違う。間違った要旨を書いている。ChatGPT よりもひどい、とすら言える。
これは皮肉だが、本当に ChatGPT の方が優秀なのか、実際に確認してみた。使ったのは、GPT4 を使う BingAI だ。元の原文を 「…………」というふうに示したあとで、それを要約するように頼んだ。
「この規定が、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないから、その限度で、憲法24条2項に違反すると同時に、憲法14条1項にも違反する」という文章を、40字以内で要約せよ。
その回答文は、下記だ。
この文章は、同性カップルに対して、国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないと述べています。そのため、憲法24条2項と14条1項に違反すると主張しています。
該当部分だけを取り出せば、こうだ。
同性カップルに対して、国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていない。そのため、憲法24条2項と14条1項に違反する。
文字数が 83字なのはご愛敬だが、これでちゃんと要約になっている。その点で、ChatGPT は記者よりもずっと優秀だ。
なお、ここでは、「同性婚を認めないこと」が違憲なのではない。「同性カップルに対して……公証し、保護する枠組みを与えていないこと」が違憲なのだ。
このような要約は、正しい要約だと言える。「公証し、保護する枠組み」というのは、同性婚制度そのものでなくてもいい(同性家族制度でもいい)からだ。
ともあれ、次の結果が判明した。
・ 記者が判決を要約すると、誤報だらけだ。
・ GPT4 が判決を要約すると、誤報ではない。
こういう結果が出たのだから、「記者よりも ChatGPT が記事を書いた方がいい」と言えるわけだ。少なくとも、「文章の要約」という能力に関しては、そのように言える。
※ ちなみに「100字以内で」と要求したら、119字で回答した。冗長なので、本項では紹介しない。
※ 以下は、前項の補足となる話。特に読まなくてもいい。
[ 補足 ]
前項では、朝日新聞の「骨子」を紹介した。再掲しよう。
・社会情勢の変化を考慮しても、憲法が同性婚を求めるに至ったとはいえず、同24条1項に反しない
・重大な人格的利益を享受する法律婚から同性カップルを排除していることは疑問だ。放置することは合理性を欠き、憲法24条2項に違反する
・現状は、自ら選べない性的指向を理由として婚姻に制約を課しており、憲法14条1項に違反する
・伝統的な家族観は失われておらず、国会が正当な理由なく立法措置を怠ったとは言えない
( → 同性婚認めぬは違憲、2例目 「個人の尊厳」でも認定 国の賠償は認めず 名古屋地裁判決:朝日新聞 )
これについて、次のように評価した。
1番目では、現行制度が合憲だと言っている。つまり、同性婚を認めないことは合憲である。「違憲だ」というマスコミとは正反対のことを言っている。(これは正しい要旨だ。)
2番目では、「放置することは違憲だ」と言っている。何もしない無為無策が違憲なのであって、放置しないで何らかの措置(少なくとも代替策)を取るべきだと言っている。(これは正しい要旨だ。)
3番目では、「現状は違憲だ」と言っているね。(これは正しい要旨ではない。)
すると、次の疑問が出そうだ。
「3番目は誤報だとしても、1番目と2番目は誤報ではないよね? 別に問題ないよね?」
と。そこで、「いや、問題がある」というふうに解説しよう。
たしかに、1番目と2番目は誤報ではない。しかしそれは、1番目と2番目が「違憲ではない」と言っているからだ。
1番目と2番目を読めばわかるとおり、いずれにしても、「同性婚を認めないこと」を違憲だとは言っていない。1番目では「違憲」どころか「合憲」だと言っている。2番目では「放置していることが違憲だ」と言っているのであり、「同性婚を認めないこと」を違憲だとは言っていない。
そして、新聞はそのことを正しく報道している。だから、その意味では、誤報ではない。(「違憲判決だ」というふうに簡単に要約した記事や見出しの方は、誤報だが。)
それより、別の問題がある。
1番目と2番目では、「代替措置がない場合には違憲である」ということをきちんと伝えているのに、3番目ではそのことをはしょっている、ということだ。1番目と2番目では誤報していないのに、3番目では誤報している。そのせいで、「代替措置がない場合には違憲である」という共通点を見失っている。……つまり、話の趣旨に食い違いが生じている。1番目と2番目では「△(または ◯ )」という評価が出たのだから、3番目でもその趣旨で解釈すればいいのに、いきなり「×」という評価に転じてしまっている。つまり、「 △ △ ×」だ。首尾一貫していない。
これはもう、頭の論理がイカレているとしか言いようがない。前半と後半で食い違った論理を通している。頭が論理的な思考をできていない。
首尾一貫していないという点で、非論理的思考というしかないね。
ChatGPT ならば、こんな馬鹿げた解釈はしないものだ。