2023年06月02日

◆ 散弾銃発射事件は規制緩和のせい

 長野で散弾銃発射事件があったが、この犯人は精神病の疑いが強い。精神病者に銃免許が出たのは、なぜか? 規制緩和のせいだ。

 ──

 長野で散弾銃発射事件があった。この件は、先に述べたとおり。
  → 二つの散弾銃発射事件: Open ブログ

 この犯人は、精神病の疑いが強い。次のような報道がある。
 「大学で『ぼっち』とばかにされている」と正道氏に訴えたばかりか、住んでいたアパートについても「ここは盗聴されているから気をつけて」「部屋の隅に監視カメラがある」などと主張するようになった。両親はカメラがあるようには見えず「これは幻覚だよ」と告げると「何で俺のことを信じてくれないんだ」と反論した。
両親は政憲容疑者を実家に連れて帰り、結局大学は中退した。病院の受診も進めたが政憲容疑者は「俺は正常だ」と拒否したという。
( → 集英社オンライン

 もっと詳しい話は、下記にある。
  → 青木政憲統合失調症か「無罪で逃げ切り成功?」長野立てこもり事件

 では、このような精神病者に、どうして銃免許が出たのか? それを調べてみた。

 まず、法律上は、精神病者には銃免許を出せないことになっている。上記記事には、こうある。
 猟銃の所持許可を得るには医師の診断書が必要になります。

医師の診断書 ………1枚
統合失調症や そううつ病、てんかん、麻薬や覚せい剤の中毒者でないことの証明

 今回も、このようにして、医師の診断書が出ていたはずだ。ここ数年に、いくつかの銃種で、新たな免許を得ているので、そのたびに医師の診断を受けて、「精神病ではない」という診断書を得ているはずだ。

 ではなぜ、医師は精神病者に「問題なし」という診断書を出したのか? それは、「規制緩和」という名目で、診断書の出し方が変更されたからだ。従来の厳しい診断が、大甘の診断に変更された。
今までは、狩猟免許試験申し込みや猟銃所持許可の申請に必要とされた診断書は、精神保健指定医に限るという比較的厳しい制限がありました。

平成27年に銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)の改正があり『かかりつけ医師から診断書を書いてもらっても良いですよ』という規制緩和になりました。
( → 狩猟免許・猟銃所持の診断書は、かかりつけ医師から受け取ることができます | 自然と共に生きていく

  ・ 平成27年以前 …… 精神保健指定医に限る
  ・ 平成27年以後 …… かかりつけ医師で OK


 こういうふうに変更された。前者では、精神科の専門医の診断が必要だったが、後者では、精神科の専門医の診断は不要となった。精神科の患者に慣れていない、非専門の医師(内科医)が診断することになった。だから、精神科の患者(の症状)を見過ごして、「問題なし」という診断書を出したのだ。

  ※ 平成27年 = 2015年

 結論。

 今回の銃撃事件を起こしたのは、精神病者である。
 精神病者が銃免許を取ったのは、政府の規制緩和のせいである。

 以上のことから、次のように裁決できる。
 「精神病者には銃免許を与えない」という法律を、形骸化させた政府にこそ、今回の事件の責任がある。今回の事件を反省して、銃刀法の形骸化を改めるべきだ。つまり、規制緩和を取り消すべきだ。精神科医の診断を必須とするべきだ。

 ──

 なお、場合によっては、「問題なし」という診断書を出した内科医をとっちめる必要がある。特に、今回の犯人が精神鑑定を受けて、「精神病者なので刑事責任はない」というふうになったなら(無罪になったなら)、かかりつけ医の責任はきわめて大きい。
 医師本人と、欠陥制度の、双方を問題視する必要がある。犯人そのものよりも、こっちの方が重要だ。

 ※ 「気違いに刃物」の状態になったなら、気違いを処罰するより、刃物を与えた愚か者の方を処罰するべきだ。それは、かかりつけ医と政府である。政府というより、国会(立法府)かな。
 


 [ 付記 ]
 文中で「精神保健指定医」という言葉が出てくるが、これは、「上級の精神科医」というぐらいの意味である。正確には「精神科医のうちで特に資格と権限を有するもの」であるが、一般人から見れば、「精神科医」とほぼ同等のものだと考えていい。紅鮭と銀鮭ぐらいの違いだ。たいして差はない。
 


 【 関連項目 】

 自民党政権になってから、やたらと規制緩和がなされている。特に、安全面での規制がどんどん緩和されてきている。その一例が、下記だ。
 1カ月前の4月23日に、知床遊覧船事故から1周年を迎えた。この事故が起こったのは、規制緩和のせいだろう。

( → 知床遊覧船事故と規制緩和: Open ブログ




 【 追記 】
 本記事の翌日に出た朝日新聞の記事に、次の話がある。
 (銃を)持つ理由も狩猟や有害鳥獣の駆除、クレー射撃などの「標的射撃」に限定される。
( → 【そもそも解説】銃の所持、どう規制されている?3年ごと講習あるが:朝日新聞

 では、今回の犯人はどうだったか?
 所持目的は「狩猟」やクレー射撃などの「標的射撃」と届け出ていた。
 容疑者は、広域の猟友会には所属していたが、有害鳥獣駆除を担う市町村単位の猟友会には所属しておらず、駆除をする立場にはなかった。
  所属をしていた広域の猟友会でも、あまり存在は知られていない。猟友会幹部の男性は、事件によって青木容疑者が所属していたことを知った。
 橋本さんは、銃の使い方や狩猟に対する考え方は、地元の先輩との交流のなかで学ぶべきものだと考えているという。「猟友会内でも人間関係を作れない人が、銃を扱うのは危ない」
( → (時時刻刻)見逃された銃4丁 危険性、県警も周囲も把握せず 長野4人殺害、地元猟友会に非所属:朝日新聞
 
 所持目的は「狩猟」やクレー射撃などの「標的射撃」と届け出ていた。なのに実際には、有害鳥獣の駆除はしていなかった。また、猟友会に入っていないので、狩猟をしていたわけでもなかった。また、クレー射撃をしていたわけでもないようだ。
 つまり、銃を所有すること自体が目的となっており、その意味は「いざとなったら人を銃撃してやる」という心理的な優越感だろう。
 こういう人物だからこそ、「猟友会内でも人間関係を作れない」わけで、そういう人が、「銃を扱うのは危ない」という判断になる。

 とすれば、銃の使用免許には、精神科医の診断だけでなく、「猟友会の知人の推薦5人分」を条件とするべきだ。これによって、「猟友会内でも人間関係を作れない」というコミュ障の人間を排除できる。
 精神科医の診断よりも、こちらの方が有効だろう。

 ※ 猟友会の会費や、銃所持の免許料を上げる、という手もある。先に述べたとおり。
   → 二つの散弾銃発射事件: Open ブログ

 
posted by 管理人 at 23:15 | Comment(5) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 銃の規制緩和については、本日の朝日新聞朝刊でも報じている。

> 銃所持者の負担軽減のため、15年から規制は緩和され、診断は精神科医だけでなく、かかりつけ医も可能になった。
https://digital.asahi.com/articles/ASR626T21R62UTIL039.html

 このことが大きな要因になったとは指摘していないが、事実関係だけはちゃんと報じている。偉いね。

 私の方が書くのが半日早かった。かろうじて半日先んじることができたわけだ。出遅れにならずに、ほっとした。ほっ。

Posted by 管理人 at 2023年06月03日 11:05
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2023年06月03日 13:48
 また細かい話ですが、筆者のコメントで紹介された朝日の記事だと、規制緩和前は精神科医師の診断書が〜、と書いてありますが、正しくは精神保健指定医の診断書、です。
 これは、追加の資格みたいなものです。まあ、精神科の専門医師だと、半分以上は取得してるかもしれませんが。ちなみに、本項には、ちゃんと精神保健指定医と書いてありますね。

https://www.mhlw.go.jp/content/000412951.pdf
Posted by かわっこだっこ at 2023年06月03日 18:29
>私の方が書くのが半日早かった。かろうじて半日先んじることができたわけだ。出遅れにならずに、ほっとした。ほっ。

Yahooニュース:「銃所持、8年前に規制緩和 精神科医に限らず診断書 猟友会などの要望受け・長野立てこもり」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f62a84316ff2fd4a41c974b67be9585061e05464

5月29日(月)の記事です。
上記記事では、法律の改正されたのが2015年3月、容疑者が銃の所持許可を受けたのが同年1月から、とあります。
そのため診断書の作成や許可の申請を行ったのは、法改正以前であると思われます。
Posted by 通りがかり at 2023年06月04日 12:32
 情報ありがとうございました。

 なるほど。私よりも早い記事があったのか。負けた。(だけど、規制緩和のせいと明示したのは、私だけだ。)

 1月と3月の違いは、懸念していたのですが、調べるのをはしょっていました。どっちみち、最初の銃だけです。あとの3つの銃は、それよりも後なので、そっちはかかりつけ医です。
 細かく言えば、違いに着目するべきだが、大勢には影響がない。

 ──

 それより、上記記事にはこうある。

> 3年に1回、近くにいない精神科医を受診するのは負担が大きいとして改善を要望。大日本猟友会の佐々木洋平会長は、「数週間、入院して検査することもあり負担は大きかった」と話す。

 これが改正の理由だったようだが、話を盛っているね。嘘をついている。
 精神科医によるチェックというのを、別のネットサイトで確認したが、1時間の話し合いぐらいで済むそうだ。「数週間、入院して検査する」というが、そもそも、精神科医によるチェックには、検査は含まれない。検査をするとしたら、「精神病以外の内科的な要因で症状が出ていることを否定するため」だ。それは、銃免許の可否とは関係のない、本人のための健康診断だ。話をごちゃ混ぜにしている。
 こういうデタラメの虚偽の理由で、圧力をかけて、規制緩和がなされたわけだね。ひどいものだ。

> 有害鳥獣駆除をする農村部の中には、精神科医がいない地域もある。

 という話もあるが、3年にいっぺんぐらい、精神科医のいる都会に出ることはあるだろうに。3年間ずっと、農村部に引きこもりで、都会には出てこない……というような人は、引きこもりの症状があるから、それだけで免許取り消しの要因となる。
 農村部であっても、銃免許のある人なら、自動車を運転するのだから、1〜2時間もかければ、そこそこの都会に出てこられるはずだ。精神科で受診できない理由にはならない。

 p.s.
 あとで確認したが、精神科の病院は地方都市にもかなり配置されている。どんなに山奥の農村であっても、地方都市までは自動車で1時間ぐらいで到達できることが多いから、受診できない理由にはならない。

 ──

 あとでまた調べ直すと、1時間では精神科に到達できない、ど田舎の奥地も少しはある。青森県などだ。
 だが、そういう土地では、例外的にかかりつけ医でもOK、にすればいい。全国すべてで、かかりつけ医にする理由にはならない。また、かかりつけ医で代替するなら、猟友会員の推薦状など、代替措置を義務づけるべきだ。
Posted by 管理人 at 2023年06月04日 13:11
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