高校生に児童手当を出すのにともなって、扶養控除を廃止する方針が出た。すると年収 850万円以上の子育て家庭では、かえって損をしてしまう。これはまずい。どうすればいい?
──
この問題については、前項でも扱った。そこでは、こう述べた。
これをどう評価するべきか?
単純に見ると、850万円で若干の損だが、それ以下の年収では得になるので、全体としては低所得者が得になる。だから、やった方がよさそうに見える。
だが、「高所得者が損をする」というのが、子育て世帯だけに限られるという点は、よろしくない。どうせならば、子育て世代意外にも、負担を強いるべきだ。そうすれば、子育て中の家庭ばかりが負担増になる、ということはないので、子育て中の家庭の負担増は緩和される。
( → 社会保険料よりも消費税を上げよ: Open ブログ )
こう述べたあとで、次の二点を提案した。
・ もっと一般的な増税(累進課税)をする
・ 児童手当の給付額をもっと増やす
その上で、前者の増税策としては、次の三点を提案した。
・ 消費税のアップ。(軽減税率の廃止)
・ 分離課税の廃止。
・ 中小企業の法人税アップ
しかし、この三点は、どうも歯切れが悪い。「核心を突いた」という感じがしない。「場当たり的な弥縫策・対症療法」という感じがする。 Openブログに期待される水準に達していない、と言えるだろう。
「困ったときの Openブログ。うまい案を出そう」
と言えばいいのに、そう言うこともできずにいる。まったく、歯切れが悪い。特に、「中高所得者をもっと優遇していい」という点について、まともな見解を出せていない。核心を突いていない感じがする。
──
そこで、改めて考えてみた。
まず、ヒントとなることがある。はてなブックマーク似ある、次の二つのコメントだ。
kurokawada 日本の世帯年収の中央値は400万円台なので、850万円を富裕世帯としても、相対的には間違いではない。
take-it kurokawada氏のブコメ見て「世帯年収ならもう少し高いだろ」とググったら、「日本全体の平均世帯年収は552.3万円、中央値は437万円」らしくて泣いてる。世帯で500万行かないのか。https://www.navinavi-hoken.com/articles/household-income
sqrt 注目コメの552.3万は高齢者世帯を含む平均値で、同調査で児童のいる世帯の平均所得は745.9万だから、850万はせいぜい「中の上」くらいでは
「児童のいる世帯の平均所得は745.9万」とある。その原典は、下記だ。
→ 2019年 国民生活基礎調査の概況
このページには、年齢別の所得状況も記してある。

「日本全体の平均世帯年収は552.3万円」であるとしても、中高年の所得は平均よりも高めだ、とわかる。
ここで、次のことに気づく。
「子供が高校生である家庭は、親はもう若くはなくて、中高年であるから、その所得は平均所得よりも多い」
親が年を食っていれば、所得は多くなって当然なのだ。
具体的に年齢を考えよう。子は高校生であり、 15〜18歳だ。親は、第一子または第二子が高校生である時期だから、15+27 〜 18+35 で、42歳から 53 歳ぐらいだと見込まれる。この年齢の平均世帯所得は(上のグラフから) 720万円ぐらいだろう。つまり、552.3万円よりも 30% も多い。平均値に比べて、高校生の子をもつような年齢層の親は、平均より 30%も所得が多いのだ。
しかも、これに加えて、「高齢者世帯を含む平均値と違って、勤労世帯では 745.9万」という数値がある。これは 平均値よりも 35% も多い。
30%と 35% の双方を取り込むと、
1.30×1.35 = 1.755
となり、75.5%も多くなる。これを当てはめると、
552.3万円 × 1.755 = 969万円
となる。つまり、
「高校生の子をもつ世帯の平均所得は 969万円」
と言えるのだ。これは、児童手当の損得の分け目となる 850万円よりもずっと多い。
さて。平均値に比べて、中央値はいくらか低い。すると、平均所得が 969万円なら、中央値は 850万円ぐらいとなりそうだ。
とすれば、今回の制度改正では、
「高校生の子をもつ世帯の5割ぐらいは、得をするどころか損をしてしまう」
ことになる。半分の世帯が損をしてしまうのだ。ひどい制度改悪!
- ※ 「所得再配分」という意味では成功しているが、「少子化の解消」という意味では、半分の民衆には逆効果のだから、本来の狙いをまったく達成していないことになる。目的と結果とが食い違っている。見当違い。まさしく「異次元の少子化対策」だ。( → 次項 )
──
では、どうすればいいのか? それは、先に着目した点に留意すればいい。
「子供が高校生である家庭は、親はもう若くはなくて、中高年であるから、その所得は平均所得よりも多い」
このことがあるから、「所得の多い人を優遇しない」という方針は、根本的に間違っているのだ。
子供が幼児や小学生である場合には、ライフステージにおいて、親はまだ低所得だ。こういう状況では、「親が高所得である」という世帯を、児童手当の給付対象から除外してもいいし、あるいは、扶養控除の廃止で冷遇してもいい。親が若いときには、親は高所得になりにくいからだ。
しかし、子供が高校生である場合には、事情がまったく異なる。ライフステージにおいて、親は高所得の段階になっている。こういう状況では、「親が高所得である」という世帯を、冷遇するべきではないのだ。なぜなら、子供が高校生の時期には、学費や食費や教育費などで、やたらと高額の出費が必要となるからだ。この時期に、「若い親よりも所得が多い」という理由で、子育てに関して冷遇するのは、正しくないのだ。
──
繰り返そう。
「子供が高校生である家庭は、親はもう若くはなくて、中高年であるから、その所得は平均所得よりも多い」
という事実がある。このことに着目することが必要だ。平均所得は 969万円もあるのだ。中央値でも、850万円ぐらいになるのだ。とすれば、損得の分け目となる額は、850万円では不適切であり、1100万円ぐらいにするのが妥当だろう。
・ 1100万円以上では損
・ 1100万円以下では得
このくらいならば、損得計算で納得できそうだ。
そして、そのためには、どういう制度改革をするべきか?
「所得控除の廃止は、全額でなく半額だけに留める」
というぐらいが、妥当だろう。
※ 別案として、1人目だけ廃止、という案もある。
2人目以上では、控除を廃止しないわけだ。
なお、その場合には、「児童手当の支出額に比べて、扶養控除の廃止による増収額が、全然足りない」というふうになる。つまり、財源をまかなえない。
しかし、それは仕方ないのだ。ライフステージのことを考えると、高校生に児童手当を払うというのは、どうしても、「金持ち冷遇」をできない分、「国による持ち出し」が多くなってしまうのだ。
では、その財源をまかなうには? 前項でも、二つの案を出したが、新たに次の案も出しておこう。
「防衛費の倍増という愚劣な案を引っ込める」
これによって、年間で6兆円もの歳出増をなくすことができる。そこから金をもってくれば、何とかなるだろう。(そして、そのための具体策として、前項で述べたことなどを採用すればいい。)
[ 余談 ]
本項を読めば、「物事の本質を見抜いた」「真実に到達した」という感じがするだろう。これならば、読者は満足できるだろう。「 Openブログの水準に達しているな」とも感じられるだろう。
【 追記 】
「今回の政府案では、児童手当の所得制限※が撤廃されることになっているので、(所得制限に引っかかるような)高所得者はむしろ大幅に得する」
という指摘が、コメント欄に寄せられた。
なるほど。ごもっとも。この件は頭に入れていたのだが、別件扱いしていたので、特に言及しなかった。言われてみれたば、確かにその通り。
ただ、別件だと考えて、話は別だと見なす、という考え方も成立する。
総合的にどう評価するかは、話が具体的に決まったあとで、改めて評価するといいだろう。
( 所得制限が撤廃されるかどうかは、まだ未確定なので。)
【 訂正 】
30%と 35% の双方を取り込むと、
1.30×1.35 = 1.755
となり、75.5%も多くなる。
と書いたが、これは間違いだった。二つの属性は独立していると見なして、掛け算したが、実は、二つの属性は独立していなかった。「高齢者と勤労者」という区別をした時点で、すでに年齢要因を含んでいた。だから、二つも属性はともに年齢の影響を含んでいるので、同じ属性が二重にカウントされていたことになる。
だから、「中高年の勤労世帯の平均年収が 969万円」(平均年収の 1.755倍)ということはありえず、もっと少ない値が正しいことになる。大雑把に言って、
1.18×1.35 = 1.59
ぐらいだと思える。この場合には、「中高年の勤労世帯の平均年収は 969万円(1.755倍)でなく、882万円(1.59倍)」となる。
従って、前出の 969万円(1.755倍)を 882万円(1.59倍)に是正した値が、正しい数値だ、と言えそうだ。
とはいえ、あんまり違いはないですね。正確さにこだわらなければ、先の過大な値も、「当たらずと言えども遠からず」となりそうだ。
※ なお、具体的な数値はともかく、話の趣旨には、変更はない。
「子供が高校生である家庭は、親はもう若くはなくて、中高年であるから、その所得は平均所得よりも多い」
という事実は、もちろん成立する。
[ 補足 ]
すぐ上で 1.18 という数値を出したが、その根拠は次の通り。
35% という数字を出したのは、「高齢者世帯を含む平均値と違って、勤労世帯では 745.9万」という数値(前者よりも 35% も多い)ということから来た。ここでは、勤労者世帯が全体から抜き出されているので、勤労者世帯と高齢者世帯が区別されている。
そこで、勤労者世帯の分を得るために、高齢者世帯を分離すると、65歳未満と65歳以上に区別するといい。そのことは前出グラフからわかる。(次に再掲)

このグラフで、右端に 65歳以上の値がある。その値は 425.4万円であり、全体平均 552.3万円 の77%である。(23%も低い。)とすれば、その分、勤労者世帯の平均値は全体平均よりも高い。
勤労者の数と、高齢者の数を比較すると、高齢者の平均値が 23%減なら、勤労者の平均値は(概算で)15%増ぐらいだと見込まれる。(勤労者の方が多いので、23%増にはならない。)
552.3万円×1.15=635万円
これが、勤労者世帯の平均値だ。この数値に対して、720万円の比率は
720万円÷635万円=1.13
であるから、中高年の勤労者の年収は、勤労者全体の平均値よりも、13%高いことになる。
ここまで見ると、先の
1.30×1.35 = 1.755
という式は
1.13×1.35 = 1.5255
というのが妥当だということになる。
※ 1.18 でなく、1.13 という値が得られた。
──
さて。ここで注意。ここにおける「中高年の勤労者の年収」には、既婚世帯と独身世帯の双方が含まれる。子育て世帯はもちろん独身世帯ではない。そして、独身者は(収入が少ないせいで結婚できない人が多いので)、「独身者の年収は既婚者の年収よりも少ない」と見込まれる。その分を分離すると、1.13 という数値は、次のように分離される。(既婚者の方が独身者よりも多いことを勘案する)
・ 既婚 …… 1.18
・ 独身 …… 1.00
これはあくまで概算だが、既婚と独身には、このくらいの格差があると見込まれる。
以上のようにして、1.18という数値を得た。
ここから、「中高年の勤労世帯(既婚者)の平均年収は 969万円(1.755倍)でなく、882万円(1.59倍)」となる。(概算で)……これが、「高校生の子供を持つ親の平均年収」だろう。(平均値なので、中央値はもっと下がる。)
※ 子育て世帯は、既婚世帯とほぼ等価であると考えていい。(例外はごく一部の不妊世帯だけだからだ。)
[ p.s. ]
いろいろと推定したが、どこかで論拠が狂っている可能性もある。ただし、大雑把には、だいたい合っているだろう。
【 再訂正 】
なお、さらに考え直すと、次の要因もある。
「既婚世帯は、共働き(2馬力)なので、世帯所得が高まる」
(独身世帯は、自分の所得だけなので、世帯所得が下がる)
この要因を考慮すると、1.18 と 1.00 という格差は、小さすぎたかもしれない。実際には、1.3 と 0.9 ぐらいの格差が付くかもしれない。
この場合には、1.18 でなく 1.3 という数値が得られる。すると、最初の 30 % という数値に戻ってしまう。
つまり、本項の最後で「訂正」として記した話は(結果的には)不要であったことになる。論拠はまったく違うのだが、結果だけは「元の木阿弥」ふうになる。ぐるっと一周して、元の場所に戻った、というふうな。
※ 元の木阿弥ということは、つまり、1.3 の場合の数値である。そのときの数値は、「高校生の子をもつ世帯の平均所得は 969万円」となる。中央値では、850万円ぐらい。
【 再々訂正 】
実は、上の [ 補足 ] の説明では、勘違いがあった。 1.18 という数値を出したが、その数値自体は正しい。しかしそのとき、 1.35 という数値を出す過程を含んでいたので、1.18 という数値を出した時点で、 1.35 という数値は排除されるべきだった。
※ なぜかというと、 1.35 という数値は、「高齢者世帯を含む平均値と違って、勤労世帯では 745.9万」ということの比率だが、その数値は、1.18 という数値に含まれるからだ。さらに言えば、 1.35 という数値そのものが誤認である。それは正しくは、先に推定した通り、1.13 ぐらいが正しい。
ともあれ、1.35 という数値は排除されるので、この倍率を掛け算する必要はない。単に 1.18 という数値だけを取ればいい。その場合の年収は
552.3×1.18=652
なので、652万円となる。また、共稼ぎ(2馬力)であることを勘案して、1.30 という数値を取るなら、
552.3×1.30=718
なので、718万円となる。このくらいが、「高校生の子をもつ世帯の平均所得」となるだろう。中央値では、670万円ぐらいだろうか。
このくらいが、現実的な金額だと思える。
──
なお、5月31日の項目では、こう記した。
「所得分布では、年収 900万円以上は約 15% だ」とわかる。
( → 低所得者はお荷物か?: Open ブログ )
このことからしても、年収900万円以上は、かなり限定的だとわかる。だから、先に試算した「平均が 969万円」というのは、金額的には高額すぎると判明する。そんなに高い額が平均値になるはずがない。
結局、「高校生の子をもつ世帯の平均所得は、ただの平均よりも、かなり高めになる」という基本原理自体は正しいのだが、具体的な数値は、平均値で 718万円というのが、妥当であるわけだ。平均値で 969万円と試算したのは、過大な額であり、誤りであったと言える。
なお、このことからすると、850万円という数値は、「平均よりもいくらか高めではあるが、金持ちというほどではなく、中の上ぐらいの位置だ」と見なせるだろう。
( ※ 「そんなことは初めからわかっていたよ」と言われそうだが。 (^^); )
【 最終訂正 】
以上では大雑把な推定を記してきたが、推定ではなく直接の統計データが見つかった。これが正解だ。下記に引用する。
・ 世帯年収の中央値:437万円
・ 2009〜18年の世帯平均年収:500万円〜
・ 平均所得以下:約61%の世帯
・ 20代:362.6万円
・ 30代:614.8万円
・ 40代:694.8万円
・ 50代:756万円
・ 60代:566万円
・ 子あり世帯:745.9万円
・ 共働き世帯:729.6万円
・ 母子家庭世帯:348万円
・ 高齢者世帯:312.6万円
・ 1,000万円以上世帯割合:約12%
( → 世帯年収の平均は約552万円!30代〜40代や共働きの金額・中央値も紹介 | Career-Picks )
「50代」「子あり」「共働き」は、いずれも 730〜750万円前後だ。また、この三つの条件をすべて兼ねている家庭では、800〜850万円ぐらいになりそうだ。
《 加筆 》
先の 718万円という数値は、低すぎた。どうしてかというと、「勤労世代」(65歳以下)と「勤労者」とを混同していたからだ。「勤労世代」には、「勤労していない者」(無職の人や生活保護者)が含まれるので、「勤労者」よりも数値が下がるのだ。
実は、この分を考慮して計算し直さないといけないな、と思って、資料を改めて探すことで、すぐ上の新たな統計データを見出した。
今回の政府案では、児童手当の所得制限※が撤廃されることになっているので、(所得制限に引っかかるような)高所得者はむしろ大幅に得するからです。
※https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html#seigen
所得の変動など細かいことを抜きにして考えれば、(所得制限以下の)一般世帯は改正により支給額が36万円(年12万×高校生3年間)増えるだけですが、高所得者は最大で234万円(中学生まで198万円+高校生36万円)増えることになります。
一方、扶養控除が廃止された場合、所得税の最高税率が適用されような人でも、税負担の増加は年22万程度なので※、十分にプラスになります。
つまり、損をする人は基本的にいないはずです。
※所得税の扶養控除38万×税率45%+住民税の扶養控除33万×税率10%
扶養控除の廃止で問題があるとすれば、所得制限を少し下回るような世帯にとって、改正による恩恵がほとんどなくなるということでしょう。
中学生以下までの支給額は(多子加算を除いて)変わらず、高校生の間の支給額は扶養控除の廃止でほとんど相殺されるためです。
これを避けるためには、管理人様がご提案するとおり、控除額の半減にとどめるのが穏当のように思います。
ついでにいえば、「850万円」という試算は、引用元で注書きがあるとおり、社会保険料控除を除外しているので、ややミスリーディングです。
これを考慮すれば1000万程度になると思われます。
最後の 【 追記 】 で言及しました。
前出の 969万円(1.755倍)を 882万円(1.59倍)に是正した値が、正しい数値だ、という話。
>(1.30×1.35 = 1.755 となり、75.5%も多くなる)と書いたが、これは間違いだった。二つの属性は独立していると見なして、掛け算したが、実は、二つの属性は独立していなかった。(中略)
だから、「中高年の勤労世帯の平均年収が 969万円」(平均年収の 1.755倍)ということはありえず、もっと少ない値が正しいことになる。大雑把に言って、1.18×1.35 = 1.59 ぐらいだと思える。
⇒ この1.18(倍)という数値はいきなり出てきたように思えますが、本項のどこかで言及されていましたか?
例えば、(年齢などの)要因が重複する場合には「相乗平均」をして、
√(1.30×1.35)=√(1.755)=1.3247...
とするやり方もあると思いますが、たぶんこの数値は、低すぎて本論の趣旨に合致しないことになりそうですね。
平均値で 718万円というのを、新たな結論としました。
> 「児童のいる世帯の平均所得は745.9万」とある。その原典は、下記だ。
→ 2019年 国民生活基礎調査の概況
と、しっかり紹介されていますので、少なくとも745.9万円より多くなります。
※ 厚労省調査での「児童」の定義は、18歳未満の未婚の者をいう、となっていますので、これは子どもが産まれたばかりで親が20代というような世帯も含まれますから、高校生の子どもを持つような親が40〜50代の世帯では、その年齢要素だけ(共働きなどの要素を含まない)でも745.9万円を大きく上回るはずです。718万円なんかになるはずはありません。
それと、本項で紹介された「国民生活基礎調査の概況」ですが、これは2019年版(調査自体は2018年時)ですね。また、【最終訂正】であらたに紹介されたデータの出どころの調査も2019年のものです。
いっぽうで、「国民生活基礎調査の概況」の確定している最新版は2021年版(調査自体は2020年時)なので、ここ(下のURL)からポイントを抜き出すと以下のとおりになりますから、「50代」「子あり」「共働き」は、いずれも 730〜750万円前後だ。また、この三つの条件をすべて兼ねている家庭では、800〜850万円ぐらいになりそうだ。≠ニいう最終?結論自体は正しいでしょう。
(1) 2020(令和2)年の1世帯当たり平均所得金額は、
全世帯:564.3万円
(中央値:440万円)
(平均所得金額以下:61.5%)
高齢者世帯:332.9万円
高齢者世帯以外の世帯:685.9万円
世帯主が40代の世帯:721.2万円
世帯主が50代の世帯:782.7万円
児童のいる世帯:813.5万円
(2) 児童のいる世帯は全世帯の20.7%で、児童が1人いる世帯は全世帯の 9.7%(児童のいる世帯の 46.8%)、2人いる世帯は全世帯の 8.2%(児童のいる世帯の 39.7%)。
(3) 児童のいる世帯で、母が「仕事あり」の割合は 75.9%
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa21/dl/12.pdf
ただし、細かいことですが、上に掲げた各所得には、各種の児童手当(児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当等)が含まれています(所得には、国や自治体からの手当も含まれるということらしいです)。つまり、上に示した2021年の調査の、「児童のいる世帯:813.5万円」という金額は、児童手当等の14.7万円(PDFの11ページ目の表8による)も含んだものです。
※児童手当の月額は(子どもの年齢により)1〜1.5万円なので、大体合いますね。
それで、いまは、ある所得金額のしきい値を境に児童手当を出す、出さないという話をしているので、本来は、その児童手当を除いた所得金額で検討しなければいけないでしょうね。
※例えば、今までもらっていた児童手当ぶんを引くと、真水?の所得金額が、全体の状況からみて妥当と考えられるものより少なくなるので、この所得水準の世帯には従来どおりに児童手当を支給しなければならない、云々。