味噌汁を水で薄めると減塩になるか? これに「イエス」と答える馬鹿が、日本政府だ。 (比喩です。)
──
味噌汁を水で薄めても、水が増えるだけで、塩分の量は変わらない。だから、減塩にはならない。そんなことは、馬鹿でもわかりそうなものだ。
ところが、日本政府はそれがわからないらしい。そのことは、前項の話からわかる。以下で説明しよう。
──
日本政府は、石炭発電のときに、アンモニアや水素を混焼することで、炭酸ガスの排出抑制を達成しようとしている。
「炭素だけで燃やすよりも、アンモニアや水素をいっしょに燃やすことで、炭酸ガスの排出を抑制できる」
という理屈だ。
だが、これはおかしい。そのことは、次の図を見ればわかる。

この図では、……
・ 黒色部分 は、炭素による発電量である。
・ 青色部分 は、水素・窒素による発電量である。
石炭単独で発電するときには、黒色部分だけで発電する。
石炭混焼で発電するときには、黒色部分と青色部分で発電する。
後者は、前者よりも、発電量が多いように見える。だが後者では、青色部分で発電するときには、それと同量以上の電力を事前に消費する。(理由は前項 で述べたとおり。)……だから実質的には、青色部分の発電は、やっていないに等しい。実際に発電しているのは、黒色部分だけである。
さて。ここで、後者の全体を見ると、全体の7割程度が石炭発電で、3割程度が窒素・水素の燃焼によるものだ。そこで、日本政府は威張る。
「石炭単独のときには、発電量の 10割が炭酸ガスを排出していたが、石炭混焼のときには、発電量の7割で炭酸ガスを排出しているだけだ。炭酸ガス排出量が、10割から7割に減った! 炭酸ガス排出量の比率は、大幅に減ったのだ!」
なるほど。その主張は正しい。しかし、比率が減ったとしても、炭酸ガスの排出量の絶対量は少しも減っていないのだ。
日本政府の理屈は、「味噌汁を水で薄めると減塩になる」というのと同じである。馬鹿丸出し。
【 追記 】
コメント欄に、下記の話を書いたので、転載する。
──────
モデル的に考えましょう。
再生エネで 100の電力が発生したとします。それを水素生産で 70 にする。さらに水素運搬で 50 にする。さらにアンモニア生産で 30 にする。さらにアンモニア発電で 20 にする。
結局、一周して、100の電力が 20 の電力になっただけです。もとの電力を5分の1に減らしただけです。
ただし、その 20 を石炭発電に加えることで、石炭発電の分が 100 から 80 に減ります。石炭発電の石炭使用量が 100 から 80 に減るので、炭酸ガスの排出量が 2割減になった……というのが、政府の主張です。
しかし実際には、再生エネの 100の電力が 20の再生エネ電力に減り、その分、80の石炭発電が追加されただけです。結局、80の石炭発電の分だけ、炭酸ガスの排出量は増えています。
真実 …… 80の石炭発電の分だけ、炭酸ガスの排出量は増えている。
詭弁 …… 石炭発電の炭酸ガスの排出量は 100 から 80 に2割減になった。炭酸ガスの排出量は2割も削減された。
これをペテンと言うんです。
※ 以下の話は読まなくてもいいです。たいした内容ではないので。
[ 余談 ]
水素貯蔵には、タイムシフトの効果がある。つまり、「電力が余っている時間帯に水素貯蔵して、電力が足りない時間帯に発電する」という手法だ。
しかし、政府はこれを主目的として唱えてはいない。なぜか? それはもともと主目的ではないからだ。タイムシフトの効果は、もともと念頭にないのである。
どうしてかというと、タイムシフトを主目的とすると、大損してしまうからだ。仮にタイムシフトを主目的とすると、電力が余る時間帯はいつか? 春秋の週末の日中と、真夏の正午ごろだけだ。あらゆる季節のあらゆる時間帯のうち、1割にも満たない。それだけの時間帯でしか発電設備を稼働しないとなると、(生産量あたりの)固定費負担が 10倍になるので、コストがべらぼうに高くなる。これでは、変動費(石炭代)がいくら安くても、固定費の負担が高すぎて、総合コストでは大幅アップとなる。
そもそも、石炭発電をする理由は、「炭酸ガスの排出量は多いが、石炭の価格が安いから」ということだった。なのに、変動費の価格を下げても、固定費の価格が大幅アップになるのでは、元も子もない。炭酸ガスの排出量が多い石炭発電をする理由(コスト安)がなくなる。これでは意味がない。
だから、石炭発電をする限り、タイムシフトを主目的とすることはできない。つまり、稼働時間を(太陽光電力の余剰の起こる)1割以下の時間帯に限定することはできない。つまり、ほとんど常時、石炭発電をするしかない。そのせいで、炭酸ガス排出量は大幅に増えてしまう。
これでは、環境には悪い。しかし発電業者(と日本政府)だけは、金儲けをすることができる。環境を汚染することで、自分だけは金儲けができる。ウハウハだ。しかし、それを指弾されると、都合が悪い。そこで、ペテンをする。「実際には炭酸ガス排出量が大幅に増えるのだが、水素貯蔵でカモフラージュすることで、炭酸ガスの排出が少ないと見せかける」というふうに。
そして、このペテンに、世界中の人々は引っかかってしまった。「水素貯蔵を併用することで、石炭発電はクリーンだ」と思い込んでしまった。
そこで、私が指摘するわけだ。「そいつは本当はペテンなのだ」と。
──
……というふうに思ったのだが、よく考えると、この理屈は成立しないようだ。正しくは、下記だ。
「水素生産においては、太陽光発電が余剰である時間帯、つまり、全体の1割以下の時間帯しか稼働しない。一方で、石炭発電の方は、水素を併用しながら、24時間 発電できる。だから、固定費の負担が 10倍になるということはない」
つまり、固定費の負担が 10倍になるのは、水素生産の部門だけであって、石炭発電の部門は 10倍にはならないのだ。その意味では、思ったよりは、石炭発電は高コストにはならない。
とはいえ、水素生産の部門ではとても高コストになるので、総合的にはやはり、この方式はかなり高コストになる。タイムシフトを主目的とした水素生産は困難だろう。太陽光発電の発電量のすべてを水素生産に取り入れるしかあるまい。その場合には、タイムシフトの効果はないも同然となる。
結果的には、やはり、タイムシフトのことはあまり考えなくていいようだ。
※ タイムシフトをやるのは、それ専門の設備、つまり、EV のバッテリーを使うのが正解だろう。これならばコストゼロで済むからだ。他のどんな方法を用いても、コストゼロで実現することはできない。
「自然エネルギーで発電するにしても、電力はためておくのが難しいし、(現状は)あまり遠くには送電できない。例えば、北海道の風力で発電したぶんを本州には送れないし、九州の太陽光で発電したぶんを大阪や首都圏までには送れない。だから、自然エネルギーの一部は、そこで多少は電力量(電気エネルギー)がロスしても、水素やアンモニアのかたちに変えておく。そして、それらを大規模消費地のそばの発電所に輸送して、そこで石炭や天然ガスと混焼して発電電力量を増やす。相対的に、日本全体では化石燃料由来の電力消費は減らせる」
ということだと思います。本稿のように味噌汁で例えると、朝はどうしても味噌汁をタップリ飲みたい旦那さんがいて、奥さんがその習慣を心配して、せめて夕食には減塩メニューをくふうして、一日のトータルでの摂取塩分量を減らした、ということでしょう。
仮に、これが「ごまかしだ。馬鹿丸出しだ」というのなら、例えば、「そんなことしたって奥さん、旦那さん、いつもお昼は社員食堂で、醤油やソースをタップリかけて美味しそうに食べてますよ。奥さんの努力がムダになってますよ」というようなことを言わないと、日本政府は少しも痛痒を感じません(ただし、どんな正論を言っても、日本政府には通じないかもしれませんが)。
そもそも、太陽光によって余る電力は、そのすべてを EV の充電池で収納できるので、石炭発電その他を使う必要はまったくない。先に述べたとおり。
http://openblog.seesaa.net/article/499298677.html
> 電力はためておくのが難しい
スマートメーターを使えば簡単にできます。EV へのタイマー充電なんて、既存技術で簡単にできます。料金設定がそうなっていないから、実現していないだけです。需給を反映しない固定料金だから。
市場原理の成立しない固定価格制では、需給の不均衡が起こるものです。それだけの話。需給を反映させれば、あっという間に解決する。
※ EV の普及が前提だが。
──
そもそも、太陽光発電の電力が余剰になる時間帯は限られている、ということに注意。たいていは火力発電の出力調整で対処できる。対処できない時間帯は、かなり限定されている。(春秋の土日や、夏の正午ごろ。)
その分だけを EV で充電すればいい。他のほとんどの時間帯は、火力発電の出力減で対処できる。
将来、火力発電が減少して、火力発電では対処できなくなったら?
そのときは、単純に「水素発電」をすればいい。これは高効率で発電ができるので、石炭混焼よりも効率がいい。
石炭混焼なんて、手間がかかって、効率が下がるだけで、何もいいことはない。
※ 現実には、水素発電もほとんど必要ない。大部分は EV の充電池で済む。充電の時間帯を変えるだけで、変動を吸収できる。
※ EV が実際に消費する電力量に比べて、その何十倍もの電力を充電池に充電できる。EV の充電能力はそれほどにも大きい。
※ 将来、安い電力を昼間に充電して、高い電力を夕方に放電するようにすれば、EV にかかる電力代は無料も同然になりそうだ。それどころか、金儲けのタネになりそうだ。EV の主目的は、走行よりも、充電になるかもしれない。
しかし、それなら、「日本政府は味噌汁を薄めると減塩になると言っている、馬鹿だ。」ではなくて、「日本政府は味噌汁にこだわってばかりで、現実的な減塩の方法を知らない、不勉強だ。」と言うべきでは?
それと、「日本政府は、水素を経由しての燃料貯蔵が目的だとは主張していない」とのことですが、前から普通に言っていると思います。
例えば、以下の経産省の資料の25ページなど。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/energy_structure/pdf/009_04_00.pdf
また、政府機関ではないですが、準公的機関のものとしては、以下の産総研の資料があります。
https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol14_05/vol14_05_p10_p11.pdf
> 産総研の資料
いずれも、水素に貯蔵できる、と言っているだけ。それなら水素発電をすればいいので、石炭を使う根拠にはなっていない。
本項は「水素を使うことの是非」ではなく、「石炭発電をすることの是非」を論じている。お間違えなく。
それは言えないでしょう。
太陽光発電や洋上風力は推進しているし、それはそれでいい。ちゃんとやっている。
一方で、「太陽光発電の電力を使って、それを石炭発電の形に作り直す」というのは、ただの無駄です。ロスが生じるだけ。ここでは「何もしないのが正解」となります。嘘をついて、「炭酸ガスを減らしています」と言っているのが悪いだけ。嘘つきの罪があるだけ。かわりに、うまいことをやる必要はない。嘘をつかなければいいだけだ。
それが、前項と本項で示したことだ。
産総研の資料、一段落目のところだけでも、ちゃんと読まれましたか? また、経産省の資料も、「火力発電の需給調整に役立つ。自然エネルギーを水素などにして貯蔵しておいて、必要な時に化石燃料に混ぜて燃やせば、化石燃料の使用料を減らせる。(また、発電以外の、製鉄などの脱炭素化にも貢献できる。)」と言っているようにしか読めないのですが。
まあ、「それが分かりにくい、そうは言っていない。」とやはり主張されるなら、もう仕方がないですね。
無駄かもしれませんし、本当に誤魔化しかもしれません。ただし、本稿の記載のように、日本政府が「石炭単独の時に比べて混焼では、10割から7割に減った!」みたいな、その方法をそういう意味で素晴らしい技術だと主張しているような、間違った方向に国民を誘導しているのなら、その証拠を示してほしい、ということです。
その証拠がなければ、「日本政府は、少なくともそこまでの主張はしていないのでは?」というのが、私のコメントの主旨です。
経産省は、水素貯蔵の必要性を論じているだけであって、水素貯蔵のあとで「水素発電よりも石炭混焼の方がいい」と述べてはいません。
> 化石燃料の使用料を減らせる
それが間違いだ、と前項と本項で示しているのだが。まだわからないの?
> その証拠を示してほしい
前項で論理的に証明したでしょ。まだわからないのかな?
1kWh を消費して、0.9kWh を発電しても、化石燃料の使用量は減らないんですよ。右手と左手のトリックがある。あなたはそれに引っかかったままです。
「1kWh を消費して、0.9kWh を発電した。わあい。0.9kWh も発電量が増えたんだ」
と、ぬか喜びしているだけ。
──
もう少し、正確に言いましょう。
> 自然エネルギーを水素などにして貯蔵しておいて、必要な時に化石燃料に混ぜて燃やせば、化石燃料の使用料を減らせる。
ということは、成立しません。
化石燃料の使用量を減らせるということは、再生電力(太陽光電力)が出現した時点でなされています。
その後、この再生電力を、水素に貯蔵しようが、EV のバッテリーに貯蔵しようが、そこではタイムシフトが起こるだけです。それによって化石燃料の使用量を減らせる効果はありません。
石炭混焼をしても、水素貯蔵をしても、それ自体には、化石燃料の使用量を減らせる効果はありません。電力の無駄が生じるのをなくすだけです。
そして、電力の無駄は、バッテリーに充電によって解消するので、もともと電力の無駄などは生じようがないのです。
> 経産省は、水素貯蔵の必要性を論じているだけであって、水素貯蔵のあとで「水素発電よりも石炭混焼の方がいい」と述べてはいません。
⇒ もちろん、私が提示した資料中で、経産省や産総研はそのように述べてはいませんが、述べていないから何だというのでしょうか? 経産省などが(いろんなところで)「混焼」だけを言っている(示している)のなら、将来はともかく、今の設備と技術では「混焼」しかできないからという、それだけのことでは? 私は、経産省(日本政府)については、「それでも混焼をやらないよりはやるほうがいい。化石燃料だけを燃やすのよりはいい。それは〇〇のメリットがあるからだ。」とだけ言っていると理解しています。
> それが間違いだ、と前項と本項で示しているのだが。まだわからないの?
⇒ ああ、すみません。スマホ用のページでは、コメントの最終確認ができないようなので、書き間違えたままでした。ここの部分は、(単に)「化石燃料の使用量を減らせる」ではなくて、正しくは、「その混焼発電のプロセスだけを見れば、化石燃料の使用量を減らせる。その時だけみれば、少ない使用量で同じだけの電力量が発電できる」と書くつもりでした。
> 前項で論理的に説明したでしょ。まだわからないのかな?
⇒ いやいや、ですから、私は「水素燃焼なり水素混焼なりの方法では、エネルギー収支やカーボン終始が理想とはならない」という証拠をあらためて示してください、などと一言もいってはいませんよ。筆者が何度も書かれている、「日本政府はぺてんだ、嘘をついている、ごまかしている」ということの証拠を示してください、と言っているのです。例えば、「これらの方法を使うと、トータルでのエネルギー収支なりカーボン収支なりが、普通の(石炭)火力発電よりも良くなる」などと過去に言ったのですか?
> 1kWh を消費して、0.9kWh を発電しても、化石燃料の使用量は減らないんですよ。右手と左手のトリックがある。あなたはそれに引っかかったままです。
⇒ これについても、日本政府は、0.1kWh の「損失」を隠してはいないと思いますよ。だから、無から有が生じたかのごとく 0.9kWh があたかも空中から得られたようには言っていないと、私には思えるのです。もし、あくまでも、日本政府がそのミスリードを企んでいる(トリックは仕掛けている)と主張されるのなら、その証拠として、関連の発言記録なり資料なりをお示しくださいと、私は筆者にお願いしているだけです。
しかしながら、当然に、日本政府はそういうトリックなどは仕掛けていないのですから、私も、その有りもしないトリックに引っかかってはいません。最初からないのですから、引っかかりようがありませんよ。
> もう少し、正確に言いましょう。
>> 自然エネルギーを水素などにして貯蔵しておいて、必要な時に化石燃料に混ぜて燃やせば、化石燃料の使用料を減らせる。
> ということは、成立しません。
⇒ 一部に私の言葉足らずがあったので申し訳なかったのですが、日本政府も私も、そんな「無から有が生じる」みたいな主張はしていません。日本政府が主張しているのは、例え 1kWh と 0.9kWh の差ぶんの 0.1kWh を捨てても、それで「時間を買っているんだ、機会を買っているんだ」ということでしょう。まさに、筆者の言われる「タイムシフト」に価値を見出している(と主張している)のですよ、日本政府は。ですから、その考え方はおかしい、科学的ではない、論理が破綻していると仰るのなら、それを真っ向から否定してほしいと、私は最初から言っています。それが、最初のほうの私のコメント中の、「減塩方法」についての例えです。
> 電力の無駄が生じるのをなくすだけです。そして、電力の無駄は、バッテリーに充電によって解消するので、もともと電力の無駄などは生じようがないのです。
⇒ 日本の現状から考えると「絵に描いた餅」になる気もしますが、将来的にはそうなる可能性もありますよね。ですから、何度も言いますが、私は、筆者がそう思われるのなら、本項の本文でそれを最初から書かれたほうが良かったのにな、と思うわけです。最初からそのように書いてありましたか? 私の最初のコメントの後で、それをコメント中で補足されたように見えるのですが。
それと最後に、私は当初、筆者の「味噌汁や減塩」の比喩についてコメントしただけです。筆者の比喩には何か違和感を覚えます、とやんわり申し上げただけです。前項の趣旨については、ここで、何も異議を申し立ててはいないでしょう? それなのに、日本政府についても私についても、それぞれが主張してもいないことを主張したようにして、その前提でドンドン話を進めないでもらえるでしょうか。その妙な議論のやり方みたいなのは何と言いましたっけ? 「〇〇誘導」といった言葉があったように思うのですが、思い出せません。「ミスリード」でよかったのかな。
前項の最後に説明しました。35% ぐらいしか回収できないのだから、やればやるほどエネルギーは減る。
水素貯蔵が必要なのは、電力貯蔵ができない場合のみ。具体的には、海外の太陽光エネルギーを日本に運ぶ、という風な。
一方、国内でなら、送電線で運ぶことができるので、EV 充電をすれば、95% でタイムシフトができる。
> 「タイムシフト」に価値を見出している(と主張している)のですよ、日本政府は
そんな記述はないと思いますけどね。あったら、教えてください。
> それを真っ向から否定してほしい
ちゃんと前項で説明済みです。
なお、政府の言い分は、前項のリンク先にあります。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/3-8-4.html
石炭や石油発電を、アンモニア発電に変えると、炭酸ガスの排出が減る、と書いてある。
その分、太陽光発電の電力を食うので、最終的な電力発生量はかえって減ってしまう、とは書いてない。「無から有を生む」というふうに(誤って)書いているのではない。「有を食い潰して無にしてしまう」ということを書いてない。「水素の発生の際には多大な電力を食い潰してしまう」ということを書いてない。「発電する電力よりも、消費する電力の方が、圧倒的に多い」ということを書いてない。(ミスリードしている。)
その見落としを指摘しているのが、前項です。
あなたは前項の基本的な話を、まったく読み取れていない。
※ 「発電する電力よりも、消費する電力の方が、圧倒的に多い」ということを認識しないのでは、永久機関を主張しているのも同然です。それを隠しているのは、ペテン。
(以下コメント本文)
直前の筆者のコメントで、
> あなたは前項の基本的な話を、まったく読み取れていない。
とのご批判を受けましたが、実は私には、その前項の「◆ 石炭混焼の論理ペテン」の記事(やコメント)から、気になっているところがありました。
前項と本項の、本文や筆者のコメントに共通する内容から、筆者はどうも、「エネルギー収支」と「カーボン収支」を等価のものとして論を展開されているように思われます。しかし、それらは、密接に関係していますし置き換えることのできる固有の特性もありますが、「地球温暖化」との関係性において完全に同じではありません。
そもそも、地球温暖化防止に対して直接的に大事なのは、「エネルギー収支をよくする(エネルギーのムダを減らす)」ことではなくて、「二酸化炭素の排出を減らす、将来的には過去に排出されたぶんも回収する(カーボンニュートラル)」のほうです。
※ それが科学的に本当に正しいかどうかはともかく、日本政府も含めた各国が主張しているのはそういうことです。
ですから、極端なはなし、仮にここに自然エネルギーだけで作られた莫大な量の水素やアンモニアがあったとして、それをただ単にムダに燃焼させてしまっても、そのこと自体で地球温暖化は進みません。つまり、自然エネルギーから作った電力量や熱量を100%消費してしまっても、そのかわりに、大気中に放出される二酸化炭素が少しでも削減できれば(あるいは回収できれば)、そのやり方は、エネルギー収支的には赤字でも、カーボン収支的には(カーボンニュートラルの考え方では)当初の目的に合致する意味のあることなんです。
※ ただし、これを行う過程で「排熱」が環境中に放出される、例えば原発の温排水が海洋に放出されることは、直接に地球の大気や水を暖めるからよくないという考え方もありますが、その議論はここでは出ていないので、置いておきます。
もちろん、筆者は従来から、その自然エネルギーから作った電力(量)をそのまま転用すれば、火力発電所から出る二酸化炭素(カーボン)を減らせる、またはゼロにできる場合もある、それが一番直接的で有効なんだ、という主張をされていると思います。
それで、その「理想」は、現在すでに達成されているのですか? 筆者が言われるような、EVやスマートメーターやスマートグリッドを使った方式で、全国的なスケールでそれが達成されているのに、日本政府が火力発電の割合を頑なに減らさない、さらには水素やアンモニアの混焼で二酸化炭素の排出が減らせると主張していたら、それは政府がおかしいでしょう(筆者の言う、ウソ、ぺてん、非化学的でしょう)。
しかしながら、火力発電で化学的な燃焼から熱エネルギーを取り出してそれを電気(電力量)に変換する方式はまだまだ廃止できないようですし、製鉄所でコークスを燃やすことはそれ以上に廃止は無理でしょう(必要でしょう)。
ですから、そこで、筆者のいう「理想」に対して「エネルギー収支」の赤字が大きいとしても、「カーボン収支」が目的に合致していたら、それはそれでひとつの方向なのではないですか? 二酸化炭素の排出が減るのは事実なのですから、それに等価といえなくもないエネルギーのほうは有効活用できていないとしても、それはそれで意味のあることなのではないですか?
※ 私の考えではなく、日本政府の主張がそうだということです。その主張を批判されるのなら、その内容を直接批判してくださいということです。
これを例えていうなら、アマゾンでお店のクーポンを使って1割引で買い物をした人に、「もう少し待てば全体のタイムセールで3割引で買えたのに」と残念がっているようなものです。(実際にはそのセールがいつあるのか、本当にあるのかもわからないのに、それを待てといっている。)
さらに言うと、iPnone を1割引で勝った人に、「同じようなアンドロイドスマホなら3割引で買えたのに」とバカにしているようなものです。(その人は iPhone が欲しいのに、割引率の数字だけを見て、数字が大きいほうを薦めている。)
また、上の筆者のコメントで、
> 石炭や石油発電を、アンモニア発電に変えると、炭酸ガスの排出が減る、と書いてある。
> その分、太陽光発電の電力を食うので、最終的な電力発生量はかえって減ってしまう、とは書いてない。「無から有を生む」というふうに(誤って)書いているのではない。「有を食い潰して無にしてしまう」ということを書いてない。「水素の発生の際には多大な電力を食い潰してしまう」ということを書いてない。「発電する電力よりも、消費する電力の方が、圧倒的に多い」ということを書いてない。(ミスリードしている。)
> その見落としを指摘しているのが、前項です。
と書いていただきましたが、重ねていいますと、日本政府の言い分というのは、それぞれ、
・炭酸ガスの排出が減る ⇒ それ自体は正しいのです。減らすことのほうが目的です。
・その分、太陽光発電の電力を食うので、最終的な電力発生量はかえって減ってしまう ⇒ それは分かっています。分かってやっています。
・「有を食い潰して無にしてしまう」ということを書いてない ⇒ それ前提でやっていますので、いちいち書いていないだけです。
・「水素の発生の際には多大な電力を食い潰してしまう」ということを書いてない ⇒ 同上。
・「発電する電力よりも、消費する電力の方が、圧倒的に多い」ということを書いてない ⇒ 同上。
・(ミスリードしている。)⇒ ミスリードに見える人もいるかもしれませんが、目的は「カーボンニュートラル」ですので、我々の主張には整合性があります。
・その見落としを指摘しているのが、前項です ⇒ 最初から見落としてません。
・「発電する電力よりも、消費する電力の方が、圧倒的に多い」ということを認識しないのでは、永久機関を主張しているのも同然です。それを隠しているのは、ペテン。⇒ 最初から認識しています。エネルギー収支については主張していません、それが赤字になることを隠してもいません。
ということです。
今は達成されていないけれど、アンモニア燃焼方式と石炭複合発電の併用が実現するのは、かなりずっと先の将来(10〜20年後?)のことなので、その時点の話をしています。
政府が遠い先の話をしているので、それに合わせているだけです。
現時点の技術で言うなら、アンモニア燃焼方式と石炭複合発電の併用が実現していないので、効率がとても悪いですね。
> 筆者のいう「理想」に対して「エネルギー収支」の赤字が大きいとしても、「カーボン収支」が目的に合致していたら、それはそれでひとつの方向なのではないですか?
そんなことは現実にはできていません。また、現実にできたとしても、「エネルギー収支」の赤字を補うには、カーボン収支は悪化するので、理論的に無理でしょう。
たとえば、アンモニア発電や水素発電で、エネルギー収支が赤字になるなら、その分、他の発電で補うしかない。ここで、再生エネが余剰ならばそれを使えるが、余剰でなければ、化石燃料発電を使うので、カーボン収支が悪化する。
現状では、再生エネは余剰ではない。だから、カーボン収支は悪化する。
> それを隠しているのは、ペテン。⇒ 最初から認識しています。エネルギー収支については主張していません、それが赤字になることを隠してもいません。
いやいや。隠しているでしょ。そもそも、「主張していない」なら、黙っているんだから、隠していることになる。
「アンモニア発電では大量の再生エネを消費するので、やればやるほど、炭酸ガスの排出はかえって増えてしまう」
というふうに書かないとダメなのに、そう書いていない。
> それ前提でやっていますので、いちいち書いていないだけです。
「本当はわかっているんだけど、言っていないだけさ」
なんていうのは、負け惜しみ。あるいは、強弁。どうみても、「アンモニア発電で炭酸ガス排出が減る」と言っているでしょ。
まあ、システム全体(水素製造過程)を見ないで、一部だけ(発電だけ)を見れば、そう見えるわけだが。これを隠しているんだから、ペテンでしょ。
というか、全体でなく一部だけで論じるというところで、欠陥論理だ。
モデル的に考えましょう。
再生エネで 100の電力が発生したとします。それを水素生産で 70 にする。さらに水素運搬で 50 にする。さらにアンモニア生産で 30 にする。さらにアンモニア発電で 20 にする。
結局、一周して、100の電力が 20 の電力になっただけです。もとの電力を5分の1に減らしただけです。
ただし、その 20 を石炭発電に加えることで、石炭発電の分が 100 から 80 に減ります。石炭発電の石炭使用量が 100 から 80 に減るので、炭酸ガスの排出量が 2割減になった……というのが、政府の主張です。
しかし実際には、再生エネの 100の電力が 20の再生エネ電力に減り、その分、80の石炭発電が追加されただけです。結局、80の石炭発電の分だけ、炭酸ガスの排出量は増えています。
真実 …… 80の石炭発電の分だけ、炭酸ガスの排出量は増えている。
詭弁 …… 石炭発電の炭酸ガスの排出量は 100 から 80 に2割減になった。炭酸ガスの排出量は2割も削減された。
これをペテンと言うんです。あなたはだまされているのだが、それに気づいていない。
しかしその頻度は、現状では九州でわずかな日数だけ起こるだけだ。大部分の日数では設備が遊休するので、無駄になる。(固定費負担)
そもそも、EV が大量普及すれば、コストゼロで高効率で電力を貯蔵できる。だから、水素生産をする必要が最初からない。水素経由の発電は、ただの無駄だ。無意味というより、有害だ。何もしない方がずっとマシだ。
……以上は、前にも述べたことがある。その再掲だ。
このことは、原価計算をすると、いっそうよくわかる。
再生エネ電力を 10円/kWh としよう。それで(アンモニア発電で)最終的に得られる電力は、5分の1になるから、コストは5倍の 50円/kWh となる。最初の 10円に加えて、エネルギー形態の転換のためのコストが、 40円/kWh だけ加算されていることになる。
ともあれ、これで 100の再生エネ電力から、 20のアンモニア発電電力を得た。その分、石炭発電の量を減らせるので、石炭の使用量を2割削減できる。かくて炭酸ガスの排出量を2割削減できる……と政府は標榜する。しかし実際には、石炭発電を8割やる分だけ、炭酸ガス排出量は増えている。
また、石炭発電のコストが 15円/kWh としよう。その8割の量だとすれば、 12円/kWh となる。
アンモニア発電の 50円/kWh と、石炭発電の 12円/kWhとを足し算すると、合計で 62円/kWh となる。これが、アンモニア発電の生産コストだ。
(訂正)
単純な足し算は間違い。構成比率に従って割り振る必要がある。
50円× 0.2 + 15円×0.8=22円
が正しい。62円ではなく。
──
一方、何もしない場合には、10円/kWh となる。アンモニア発電と石炭発電の組み合わせに比べると、コストは大幅に安い。また、炭酸ガス発生量は、再生エネ電力ならばゼロで、アンモニア発電と石炭発電の組み合わせは、石炭生産の8割である。(10割に比べれば少ないが、ゼロに比べれば圧倒的に多い。)
なお、いずれの場合も、発電する電力量は同じである。その点では、等価である。
結局、何もしないこと(再生エネ電力をそのまま使うこと)に比べて、アンモニア発電と石炭発電の組み合わせは、莫大な無駄(高コスト)と、余分の炭酸ガス排出(石炭発電の8割に相当する量)が追加されているだけだ。「せっせと働いて、マイナスを生み出している」という状況である。愚の骨頂。
では、こういう愚の骨頂をするのは、なぜか? そのことの本質は、「水素生産のために再生エネ電力を消費する」という点を、考慮するか否かだ。それを考慮すれば、馬鹿げた徒労をしないはずだ。それを考慮しないと、「水素は何もしなくても空から降ってくる」と思い込んだあげく、水素のコストを考慮しないまま、「得をする」という自分勝手な計算をする。そのあとで、「水素の生産にはコストがかかる」という真実を知って、莫大な請求書に顔を青ざめるのである。
※ 無料で手に入ると思った水素(アンモニア)が、実は 50円/kWh に相当するコストがかかると知って、青ざめるのだ。
なお、「それでも単に石炭発電をするのに比べればマシだろ」と思うかもしれないが、そんなことはない。単に石炭発電をするときには、「再生エネ電力を消費する」という無駄をしない。だから、単に石炭発電をする方がずっとマシである。(再生エネ電力を消費しないので。)
ちなみに、数値で書くと、次のようになる。
・ アンモニア発電 + 石炭発電 …… 20 + 80 = 100
・ 単なる石炭発電 …… 100 + 100 = 200
前者では、アンモニア発電( 20 )のために、再生エネ電力の 100を食い潰してしまうので、最終的には 100の発電量を得られるだけだ。
後者では、再生エネ発電の 100 と石炭発電の 100 で、合計 200の発電量を得られる。
なお、単なる石炭発電を採用したあとで、その設備をすべて稼働停止にしてしまえば、再生エネ発電の 100 だけが残る。これも悪くない。
・ アンモニア発電 + 石炭発電 …… 20 + 80 = 100
・ 単なる石炭発電 …… 100 + 100 = 200
(再生エネの 100 がある。)
と述べたが、後者は前者の2倍の発電量がある。そこで発電量をそろえるために、後者を半分で割ると、
・ 単なる石炭発電 …… 50 + 50 = 100
となる。この場合、(発電量あたりの)石炭使用量は、50であるから、「アンモニア発電 + 石炭発電」のときの石炭使用量 80 よりも少なくて済む。
つまり、「アンモニア発電 + 石炭発電」にすると、「単なる石炭発電」に比べて、炭酸ガス排出量は 60% も増えてしまうのだ。(単位発電量あたりだと。)
なのに、政府の試算では、「100 から 80 に減った」と見せかける。これは、発電量が半分に減ってしまうことを隠しているからだ。論理ペテン。