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事故はこうだ。
宮城県内の東北自動車道で16日夜、路肩に停車していたバスにトラックが追突する事故があり、バス後方付近の路上にいた男女3人がはねられ死亡しました。
( → 東北道でバスにトラックが追突…男女3人死亡 通行止めは解除 )
現地の場所を特定したい。そこで、条件を調べると、動画と記事から次のことがわかる。
・ 金成パーキングエリアからよそ2キロ南の下り車線。(ANN)
・ 現場の先には、右曲がりのカーブが続く。(ANN)
・ 反対車線の外側には、池がある。(ANN)
・ 現場のすぐ後方には、ガードレールがある。(NTV)
以上の4点を満たす場所は、下記しかない。
では、この場所は、道路の構造上、事故を起こしやすい場所だと言えるか?
私なりに調べてみたが、特に危険だと言える状況にはなかった。
・ 右曲がりの場所なので、見通しはよい。後続車からも見える。
・ 路肩のラインも、連続線が引かれて、特に問題ない。
(この場所の先では、わかりにくい破線なので、危険だが。)
というわけで、道路の構造上では、特に問題ないと判定した。
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では、何が問題だったか? 私が思いついたのは、次のことだ。
「赤い三角表示板を置くべきだった。現場の 50メートル前に1個。できれば、100メートル前にも1個。(計2個)」
「さらに、できれば発炎筒も置くべきだった。赤い三角表示板のかわりに使ってもいい」
同趣旨のことは、次の記事にも見られる。
→ 高速道路で車が故障、どうする? JAF「発炎筒置き、身の安全を」:朝日新聞
今回はどうだったか? 報道では「ハザードランプを点灯していた」とだけ示されているので、赤い三角表示板は設置していなかったようだ。
そこで調べてみると、赤い三角表示板は保有していることがもともと義務づけられていないので、たいていの自動車は保有していないそうだ。これまでの事例でも、赤い三角表示板は保有していない場合が多数だという。
いわゆる「三角表示板」は、緊急時に停車した際、後続車に自車への注意を促すうえで重要な器材。高速道路での停車中は、これを設置しないと違反になるというものなのですが、この器材、メーカー標準装備になっていないことがあるのはなぜでしょうか。
発炎筒は、保安基準でクルマに装備することが義務付けられており、新車でも標準的に搭載されていますが、三角表示板などの停止表示器材については、装備義務はありません。
高速道路で停車中のクルマに留まっていた、あるいは下車して道路上に立っていた人に後続車が衝突したことによる死亡事故が、2012年には49件発生しましたが、そのなかで三角表示板を設置していたケースはたった1件しかなかったというデータも。
( → 緊急停車時の重要アイテム「三角表示板」、設置しないとリスク高? なぜ標準装備ではないのか | くるまのニュース )
記事によれば、(緊急停車時には)「三角表示板」または「紫色の回転灯」を道路上に設置することが義務づけられているのだが、自動車への搭載義務はないそうだ。
発炎筒については、自動車への搭載義務はあるが、(緊急停車時には)使用義務は規定されていないようだ¶。また、仮に使用義務が規定されていたとしても、発炎筒は時間がたつと消えてしまうので、あまり意味がないようだ。
¶ 規定は下記にある。
【道路交通法第75条の11】
自動車の運転者は、故障その他の理由により本線車道若しくはこれに接する加速車線、減速車線若しくは登坂車線(以下「本線車道等」という。)又はこれらに接する路肩若しくは路側帯において当該自動車を運転することができなくなつたときは、政令で定めるところにより、当該自動車が故障その他の理由により停止しているものであることを表示しなければならない。
( → 故障車両表示義務違反 | 交通違反ドットコム )
この条文だけを読むと、ハザードランプだけでも済みそうに読める。
結局、「赤い三角表示板の、搭載義務と使用義務」をともに法的に規定しておくべきだったのだが、そうなっていないから、現実には赤い三角表示板が使われない。そのせいで、何度も何度も事故が起こる。
そのことは、前からずっと指摘されていた。今回初めて指摘されたわけではなく、2018.11.05 の時点ですでに指摘されていた。
→ 緊急停車時の重要アイテム「三角表示板」、設置しないとリスク高? なぜ標準装備ではないのか | くるまのニュース (再掲)
以前からずっと指摘されていたのに、政府は何もしないでほったらかしている。だから、今回の事故は起こったのだ。
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提言。
・ 赤い三角表示板の搭載を義務づけよ。(回転灯で代用してもいい。)
・ バスやトラックでは、それを2〜3個 搭載することを義務づけよ。
【 関連項目 】
(1) 赤い三角表示板
赤い三角表示板については、本サイト内で何度か言及したことがある。ただし、話のついでに言及しただけであって、特にこれについてテーマにしたわけではない。だから、特に紹介するような話もない。
(2) 自動ブレーキ
実を言えば、自動ブレーキが搭載されていれば、この手の追突事故は自動的に防げる。トラックに自動ブレーキが搭載されていないのが、困りものだ。……この件は、自動ブレーキの話題として、何度か言及したことがあるが、ここで紹介するようなことではない。
【 購入案内 】
→ Amazon「赤い三角表示板」(折りたたみ式)
( 550〜2800円 )
※ 「三角表示板」「三角停止板」「三角停止表示板」という用語の揺らぎが見られる。
[ 付記 ]
三角表示板は、折りたたみ式なので、場所を取らない。定規と同程度のスペースがあれば足りるので、グローブボックスに入る。搭載を義務づけることに支障はない。だから、法律を改正して、搭載を義務づけるべきだ。550円で買えるんだし。
今回の事故は、550円を惜しんだから起こった、とも言える。それで死者 3人なんだから、一文惜しみの百失い、だね。
【 追記 】
画像を見て、新たに気づいたことがある。
衝突後のバスもトラックも、ほぼ全面が変形している。バスは右側9割ぐらい。トラックは左側9割ぐらい。ほぼ正面衝突に近かった、とわかる。事故後の両車は、ほぼ前後に並んでいて、左右にずれていないことからも、そうだとわかる。
これはどうしてか? 次のことを意味する。
「バスが路肩に停車していたとすれば、トラックは路肩を走行していた」
つまり、常識的にありえないことをしていたことになる。
普通ならば、バスが路肩に走行しているとき、トラックは車線を走行しているので、たとえ衝突したとしても、隅で部分的に衝突するだけで済んだはずだ。なのに、そうならなかった。
今回の事故の主因は、「バスが三角表示板を設置しなかった道路交通法違反」だと思えていたが、そうではなかったようだ。トラックの方の路肩走行が主因だったようだ。
※ 居眠り運転をしていた可能性が高い、と私は見る。主観だが。
この理由は、路肩に停車しているクルマが走行中であると認識(誤認)し、先行車に追従するつもりで徐々にハンドルをそちらに切って、結果的に左側にはみ出して追突してしまうから、と一般に言われています。「路肩、停車、突っ込まれる」などでググってみてください。
筆者も本文で書かれている三角表示板を手前に何個か置いたり、発煙灯を焚くという対策は、前方に故障車があることを知らせる意味合いもありますが、それよりも、走行車線と路肩の区切りを明確に示して、後続車を左側に来させないという役割のほうが大きいのです。なので、明確にそれが分かるように機材を置くことが大事で、そういうことも運転免許の更新の講習などで教えるべきですね。
確かにそういう例があると、よく言われていますね。思い出しました。情報ありがとうございます。
だけど、本当にそうであったなら、トラックの方は、前車に接近した時点でブレーキをかけていたはずだ。
また、前車は赤色の夜間表示ランプでなく、黄色のハザードランプの点滅なので、違いに気づいたはずだ。
その違いにも気づかなかったとすると、頭がボケていたので、居眠りしていたという可能性が高いですね。
> 国土交通省は17日、バスを運行していた仙台市の会社とトラックを運行していた青森県八戸市にある運送会社に特別監査に入りました。 また、社会的影響が大きいとして「事業用自動車事故調査委員会」に調査を要請しました。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000299697.html