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連休でネタがないせいか、朝日が旧統一教会について調査を記事にしている。
政府は、教団への解散命令請求も視野に、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を初めて行使し、事実関係の把握や実態の解明をめざしている。この対応や調査のあり方について、
朝日新聞は国内の主な宗教法人を対象にアンケートを実施した。
( → 旧統一教会への質問権行使、宗教法人「妥当」6割 33法人が回答 朝日新聞社調査:朝日新聞 )
まあ、そのアンケート結果はどうでもいい。この記事に関連して、旧統一教会の解散命令の是非について、賛否両論が掲載されている。
賛成(政府は解散命令を出すべき)という意見は、普通だ。問題点を次のように指摘している。
霊感商法や高額献金で多くの家庭を崩壊させ、自殺に追い込まれた事例も報告されている。
( → 「洗脳の実態明らかにして」 信教の自由「慎重な対応を」 宗教法人への朝日新聞社アンケート:朝日新聞 )
反対(政府は解散命令を出すべきでない)という意見は、問題だ。下記のように要約されている。
憲法学者の小林節・慶応大名誉教授の話
岸田文雄首相は国会で、解散命令請求の要件に民法上の不法行為も含まれると答弁した。しかし1995年の東京高裁のオウム真理教解散決定を読む限り、要件は刑法犯のみで、民法の不法行為は含まれないと解釈すべきだ。憲法の政教分離の原則から、犯罪ではない宗教活動は自由だからだ。
宗教は外から見れば異様なものに映ることがある。特に新興宗教は、信じる人には「正義」でも、信じない人には「変なもの」となる。「変なもの」に見えても、多数決で少数派を弾圧してはいけない。国家権力は宗教活動に介入してはならない。
( → 「洗脳の実態明らかにして」 信教の自由「慎重な対応を」 宗教法人への朝日新聞社アンケート:朝日新聞 )
おやおや。これだと、霊感商法も認められてしまうことになる。それでいいのか? 紙面を読んだだけでは疑問だった。そこで朝日のサイトを見ると、より詳しい記事が掲載されていた。(だったら紙面にも明示しておけよ、と思ったが。)
ともあれ、そこから一部抜粋しよう。
慶応大名誉教授で憲法学者の小林節氏は、政府の対応を「憲法違反だ」と主張しています。
――統一教会をめぐる問題をどう見ていますか。
政府の一連の対応は憲法が定める「政教分離の原則」に反します。
たしかに私も、霊感商法や高額献金は悪趣味だと思っています。だからといって、国家権力が教団を狙い撃ちしたような被害者救済新法を作ったり、政権を担う自民党が決別宣言をしたり教団を追い詰めるのは問題です。
――不当寄付勧誘防止法(救済新法)が成立し、自民党は教団との決別を宣言しました。これらの対応を憲法違反と言うのでしょうか。
憲法違反です。政教分離の原則から言えば、宗教団体は犯罪を起こさない限り、「自由」です。自由の結果、民事上の不法行為の責任を負うことはあっても、それだけで罪を犯したとは言えません。
既存の法令に照らし、組織的に詐欺罪や養子縁組あっせん法違反の罪などに該当する行為を犯していないかどうか、精査することが大切ではないでしょうか。旧統一教会の場合、教団幹部が刑事責任を問われたケースはありません。
――宗教団体は犯罪でなければ、何をやっても許されるのですか。
憲法の原則に従えば、そうなります。旧統一教会にかかわらず、宗教は外から見れば異様なものに映ることがあります。特に新興宗教は信じる人には「正義」でも、信じない者には「変なもの」です。
宗教には少数派を迫害してきた歴史があります。その体験と反省から、米国では「信教の自由」と、それを保障する「政教分離」が確立しました。
同じことが日本国憲法にも導入されました。「変なもの」に見えても、多数決で少数派を弾圧してはいけない。要するに犯罪でない限り、宗教活動は自由であり、国家権力は宗教活動に介入してはいけないのです。
――教団による霊感商法や高額献金の被害を訴える人たちがいます。
高額献金は、程度やしつこさの問題です。お布施に限度をかけるのはどの国もありません。自分の意思で全財産をなげうってお布施したという事例はあるはずです。霊感商法も、「先祖の供養」はほかの宗教でも勧誘の文句に使っています。旧統一教会だけダメというのは筋が通っていません。
( → 「解散命令可能」「政府の対応は憲法違反」 旧統一教会めぐり識者は:朝日新聞 )
何ともまあ、大甘なことだ。
霊感商法によって、洗脳して、教団が金を巻き上げる……という商法の被害者は多かった。(安倍首相銃撃犯の母親もそうだった。)そこで、朝日新聞はかつて、大々的なキャンペーンをして、旧統一教会を批判した。すると旧統一教会は反撃のために、朝日新聞の阪神支局で記者を銃撃した。
これの犯人が旧統一教会であることは、警察の調べで判明したのだが、いざ摘発というところで、上層部から天下り的に「捜査中止命令」が出て、旧統一教会を逮捕することはできなくなった。他に犯人がいるわけでもないので、調査は迷宮入りすることになった。
どこから操作中止命令が出たか? そんなことは、考えるまでもない。統一教会と結託している自民党勢力だ。(清和会という。)
詳しい話は下記で。
→ 朝日阪神記者襲撃の謎: Open ブログ
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実は、オウム真理教も、当時は「宗教に国家権力が介入するべからず」という識者の声の強さのせいで、警察権力による調査が進まなかった。その間に、オウム真理教は、サリンを蓄積して、地下鉄サリン事件を引き起こした。宗教団体を擁護する識者の意見が、地下鉄サリン事件を引き起こした遠因だったと言える。(オウムを疑う声は強かったのに、彼らはオウムを擁護した。)
しかるに、彼らは事件の後になっても、当時の自分たちの態度を反省しない。それどころか、いまだに宗教団体の詐欺行為を容認して、弁護している。呆れるばかりだ。
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「詐欺は許しがたい。詐欺師は人の人生を破壊し、人の命を奪う。ただの一時的な激情に駆られた殺人に比べれば、意図的に計画を練って金を奪って命を奪う詐欺は、最も悪質な犯罪だ」
というのが、私の立場だ。
しかし識者は違う。彼らはこう思う。
「詐欺の被害者は、自分の意思で金を払っている。たとえ洗脳されたとしても、最終的には自分の意思で金を払っている。自分の意思で金を払っているのだから、詐欺師はちっとも悪くない。明白にだましているという刑法違反にならない限り、マインドコントロールによって意図的に金を出させる宗教詐欺は、犯罪ではない。いくらでも、金を奪っていいし、命を奪ってもいい」
これはもう、「われわれは悪の味方だ」と語っているのにも等しい。
「お金を上げますよ。さあ、ここにサインをしてください」
こう語りながら、金を与えて命を奪うのが、悪魔だ。その悪魔に加担するのが、上記の憲法学者のような識者だ。
人は頭でっかちになると、悪魔の手先となる。

こういう人々が多い。日本は詐欺師がのさばりがちだ。日本は詐欺師に甘すぎる。
《 加筆 》
「識者が悪い」みたいな書き方になってしまったが、一番悪いのは、これに乗じて、旧統一教会を規制しない自民党である。識者は、旧統一教会や自民党に利用されているだけだろう。(悪魔の手先、と文中に記してある通り。)
[ 付記 ]
参考となる話がある。
勘違いする人が多いのですが、宗教法人法の解散命令は団体を解散させる手続ではありません。法人格を剥奪するだけの手続で団体は残ります。宗教法人法の「解散命令」と言う規定が強すぎることから来る誤解で、法律用語が一般の用語と語感が異なる悪い例の見本です。南野先生の解説もぜひお読みください。
( → 紀藤正樹 MasakiKitoさん / Twitter )
霊感商法で私利を得て他の家族を不幸にするのはよくないこと。一方で、宗教によって心の安定というメリットを享受でき、教団も活動を継続できるという事実もある。前者をどう有罪として定義するのかは難しいのでは?
詐欺師の片棒を担いでいると言われるのはわかっているのですが、管理人さんなら、どう線引きをするのか興味があります。
「罰を科さずに、巨額献金を無効化する」
これによって刑法違反という厳罰を科さずに、詐欺師を「骨折り損のくたびれもうけ」にすることできるので、悪を無効化できる。処罰ではなく、無効化する。
困ったときの Openブログ。
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なお、その一環として、「宗教法人の法人格の取り消し」というのがあります。本文の最後の [ 付記 ] にもある通り。