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ツイッターの認証バッジが有償化されたが、その金を払わない人の認証バッジがいっせいに削除された。これにともなって混乱が生じている。
朝日新聞は紙面で報道した。
→ ツイッター、著名人らの認証バッジ削除 一部で「特別扱い」?:朝日新聞
しかし、(けしからんことに)紙面でないネット上では、もっと詳細に報じている。
米ツイッターが20日、利用者が本人であることを示す「認証済みバッジ」について、著名人らのアカウントから一斉に削除した。有料サービス「ツイッターブルー」に加入すればバッジが維持できるが、お金を出せば「認証」されるしくみとなり、なりすましが増えるとの懸念が広がっている。
米ワシントン・ポスト紙は、数千の著名人のアカウントが認証バッジを失ったとしている。
起業家イーロン・マスク氏は昨年10月のツイッター買収後、収入源を主力の広告から、ツイッターブルー(日本はウェブサイト版で月980円)などの定額制サービスに転換する方針を打ち出した。マスク氏は今月、有料サービスの利用者以外の認証バッジを20日に削除すると予告していた。
( → ツイッター、一部著名人を「特別扱い」? 認証バッジついに一斉削除:朝日新聞 )
これにともなって混乱が生じた。
米ツイッターが20日、利用者が本人であることを示す青い「認証済みバッジ」を無料の利用者から削除したことについて、米ニューヨーク市の公式アカウントの偽者が複数現れるなど混乱が広がっている。
ニューヨーク市の公式アカウント(@nycgov)は20日午後、「このアカウントがニューヨーク市政府の公式アカウントです」と投稿したが、「こっちが本物だ」と市アカウントと同じプロフィル画像を使った複数の偽アカウントから返信が続いた。偽アカウントの一部はすでに凍結されている。
( → ツイッターの偽アカウント「こっちが本物だ」 認証バッジ削除で混乱 [マスク氏とツイッターの動向]:朝日新聞 )
まったく馬鹿げた騒動だ。あきれるばかり。
この是非を社会的にとらえるのなら、もちろん「ダメだ」という評価になる。では、経営的にはどうか? これで Twitter 社は経営状態が改善されるだろうか?
「もちろん。収入が増える分、経営状態は改善される」とマスクは思ったのだろう。しかし、本当にそうか?
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私の見解はこうだ。
認証バッジを有料化すれば、 Twitter 社は認証バッジの料金の分だけ、増収になる。それは事実だ。しかしその額は、あまりにも微々たる額だ。
一方で、 Twitter で多数のフォロワーをもつアカウントには、莫大な宣伝効果がある。記事で言えば、
米ワシントン・ポスト紙は、数千の著名人のアカウントが認証バッジを失ったとしている。20日時点で、約8700万人のフォロワーを持つトランプ米前大統領のほか、ジャスティン・ビーバーさん(フォロワー約1・1億人)やレディー・ガガさん(同約8400万人)ら著名アーティストのアカウントからもバッジが消えている。日本でも政治家や著名人、ジャーナリストらのアカウントからバッジが消えた。
( → ツイッター、一部著名人を「特別扱い」? 認証バッジついに一斉削除:朝日新聞 )
とのことだが、これほど多数のフォロワーをもつアカウントには、莫大な宣伝効果がある。そして、そのアカウントのフォロワーに Twitter 社が CM を流すことによる利益は莫大なものだ。
ところが、認証を省略すると、そのアカウントが本物であるという信頼性が失われる。すると、そこに出てくる CM の信頼性もいっしょに失われる。その分、広告主にとっては、ツイッターの広告媒体としての価値が減じる。
・ 本物のアカウントであることが保証されたツイッター
・ 偽物のアカウントが混じってることが多いツイッター
このどちらに、広告媒体としての価値があるか? もちろん、前者だ。後者では、価値が大幅に損なわれる。その分、払う広告料は少なくなる。 Twitter 社が広告料金を値下げしないのであれば、出稿回数を大幅に減らすことになる。
かくて、広告主にとって魅力の減じた Twitter は、広告収入の大幅減少という被害に巻き込まれる。そして、その原因は、「認証バッジをなくしたことによる信頼性の低下」なのである。
ここまで見ればわかるだろう。認証バッジを無料にしていたのは、アカウントに対して無料サービスをしていたのではない。 Twitter の信頼性を高めることで広告収入を増やすという、 Twitter 社自社のためにやっていたのだ。 Twitter 社が金儲けをするために、認証バッジを無料にしていたのだ。(無料にすることが一番儲かるからだ。)
ところが、マスクにはそれが理解できなかった。「認証バッジを無料にしているのは、アカウントに対して無料サービスをしていることだ。だからそれを有料化することで、金儲けができる」と思い込んだ。あげく、有料化したが、そのせいで、信頼性の低下を招いて、広告主の離反を招くことになった。
目先の損得にとらわれると、最終的にはかえって損をするものだ。その教訓は、昔話には多い。「朝三暮四」の猿もそうだ。マスクの頭脳は、「朝三暮四」の猿と同程度だと言っていいだろう。(小学生並みだ、とも言える。)
【 関連項目 】
→ E.マスクの壮大な勘違い: Open ブログ
ここには、次の記述がある。
ツイッターの大手広告主100社のうち、72社がツイッターへの広告出稿を見合わせている。
広告の大幅減少は、すでに具現化しているのだ。(今回の措置のせいだけではないが。)