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再生エネ発電の供給と需要には、偏りがある。
・ 九州では太陽光発電が過剰である。
・ 北海道では風力発電が過剰である。(特に将来的に。)
・ 関東や関西では供給不足である。
このように需給には偏りがある。
そこで、需給の偏りを緩和するために、送電線で電力を運ぶ、という案がある。
・ 九州 → 中国地方 → 関西
・ 北海道 → 東北 → 関東
という具合だ。
この二つのうち、前者はとくに問題ない。関門海峡を送電線で渡ることには困難は少ないからだ。(関門連系線という。)
一方、後者には大きな問題がある。津軽海峡はとても深いので、ここに新たに送電線を敷設するのには途轍もない巨額の金がかかるからだ。(北本連系線という。)
この問題については、これまで本サイトで何度か批判した。
→ https://x.gd/kRy7q
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この件で調べ直したところ、政府は本年2月に、新たな報告を出している。そこでは、さまざまな送電線(上記)についての評価を示している。
→ 電力広域的運営推進機関ホームページ
→ 経産省|広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)(案)について
ここには、次の記述がある。

この図では、それぞれの送電線の規模と費用が記してある。
関門連系線の方は、費用と効果とが、ほぼ見合っている。
北本連系線の方は、費用と効果とが、見合っていない。費用があまりにも巨額すぎる。特にひどいのは、その数値を隠蔽して、記載していないことだ。他地域については金額を掲載しているのに、北本連系線だけは単独の費用を掲載していない。(掲載するとあまりにも巨額なのがバレてしまうので、わざと隠している。)
まあ、隠してはいるが、他地域との合計額で「3.4兆円」という数値は掲載している。だから、その巨額さは、歴然としている。
さらに、次の記述もある。

コスパを示す B/C 比(Benefit / Cost )について、「他の地域については 1 以上になって黒字になる」と示しているのに、北本連系線の分だけは数値を示していない。先の記述からしても、北本連系線の B/C 比は、ものすごく悪くなるに決まっている。出した費用に対して、便益の割合は 0.5 にも満たないだろう。私の概算では 0.2 ぐらいにしかならない。かけた費用の2割ぐらいの便益しか得られない。まあ、ドブに金を捨てるのも同然である。(現実には、津軽海峡に金を捨てるわけだが。)
というわけで、「津軽海峡に2兆円を捨てる」というのが、北本連系線の効果だ。
これを(隠すことなく)そのまま表示すると、各界からとんでもない非難がごうごうと押しよせる。だから、それが怖くて、わざと数字を隠しているわけだ。それが経産省の報告である。
しかも、これをこっそりと公開して、「国民の声を聞きました」(パブリックコメントを募集しました)という体裁で、ゴマ化してしまう。あきれたものだ。
→ <募集終了> 意見募集
ともあれ、ここには詐欺的なインチキがある。
政府はこうやって国民をだましている、という見本だね。
※ ちなみに、本件については、朝日新聞の記事では報じられていない。朝日の記事検索をしても、かすりもしない。
※ 本件は、前項までの電力シリーズのついでに調査して、そこでたまたま発見したものだ。
[ 付記 ]
政府が北本連系線にこだわるのは、次の理由だ。
・ 北海道で地震があると、電力不足になる。(前にあった。)
・ 北海道の風力発電の電力が余る。
この二つの問題を解決するには、北本連系線を使えばいい。一度に二つが解決する……というのが、政府の見解だ。
そこで、これに反対すると、「じゃあ、かわりにどうするんだよ」という反論が出るだろう。それには、こう答える。
・ 地震対策には、新規に LNG 発電所を設置すればいい。
・ 北海道では、風力発電は特に必要ない。(高コストなので。)
前者( LNG発電)は、費用対効果が普通にある(特に悪くない)ので、普通に設置すればいい。費用対効果が滅茶苦茶に悪い北本連系線に比べれば、はるかにマシである。特に大事なのは、日常的に稼働しているので、採算に乗る(黒字になる)ということだ。その点、稼働するのが数年にいっぺんあるかないかという北本連系線よりも、はるかに採算性がいい。
費用対効果を考えれば、何が正しくて何が間違いか、すぐにわかる。ただし、自分の金でなく他人(国民)の金を浪費するだけの政府には、どれほど金を浪費しようが、少しも問題ではないのだ。だから2兆円を、津軽海峡に捨てようとする。
【 関連項目 】
(1) 北本連系線
→ 北本連系(線)は無駄だ: Open ブログ
北本連系線について、本項の論拠となる説明は、上記項目似ある。
(2) ブラックアウト
→ 停電したらペナルティ: Open ブログ
北海道のブラックアウト対策は、どうすればいいか? それは、上記項目にある。つまり、こうだ。
・ 新規の LNG発電所を設置する。(採算ベース)
・ 旧式の石炭発電所を、バックアップとして維持する。
後者のためには、維持管理費として若干の金額が必要となるが、必要なのはそれだけだ。特に新規の設備を導入する必要はない。古い設備を廃棄しないで維持するだけだ。その額は小額で済む。
※ 突発的に増える一時的需要のための設備は、効率が悪い(限界コストが高い)ものでもいい。固定費[導入費]が安いことが最優先される。……これは、「ザ・ゴール」という本で教えていることだ。前にも説明したとおり。上記項目を参照。

北本連携線増強は北海道のブラックアウト防止の為ではありません。いつの間にかそんな説明が出てきていますが理屈が合わない。ブラックアウトの原因は連携線容量の不足ではないのですから。
また天然ガス火力発電所は地震の前から建設を始めていて地震直後に当初の計画を前倒しして稼働を始めました。増設工事も実施中です(ただし2・3号機はCO2対策とやらで稼働予定を延期とのこと)。サハリンのガス依存が前提だったためロシア情勢如何で困ることになるかも。
風力が余る・けど送電網が貧弱。だから送電をあきらめて、その場で水素でも作って活用するかという発想も出てきます。もちろんコストの課題はあります。
遠距離送電なんてやめて、大需要地で発電したらいいんじゃないですかねぇ。それこそ東京湾岸に原発でも造るとか(ただの皮肉です)。
そう言っているのは、私ではありません。政府です。
→ https://www.sankei.com/article/20181127-HQVVV4ZIGBJW3B7BBMT3ZZZFJ4/
私はそれを批判している側です。正反対に誤読しないよう、お願いします。
> ブラックアウトの原因は連携線容量の不足ではないのですから。
それはそうだけど、原因をなくす対策ではなく、補填を足す対策です。対策の理屈としては間違っていない。
仮に、きわめて低コストで実現できるのなら、やった方がいい。問題はコストだけです。
関門連系線は、低コストで実現できるらしいので、やった方がいいようだ。(ただし便益計算が本当かどうかは、信頼性が疑問だけどね。政府は公共事業では、たいてい、上げ底計算する。工事完成後に、嘘がばれるのが通例だ。)