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朝日新聞が報じている。
書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村が、全国で 26.2%に上ることが、書店や取次、出版業者らで作る出版文化産業振興財団(JPIC)の調査で明らかになった。5年前の別の調査と比べても、空白地帯が拡大している。衰退を食い止めようと、ネット書店の送料無料の規制などの検討も始まった。
具体策の一つが、アマゾンなどのネット書店との競争環境の整備だ。本は、定価販売の根拠になる「再販制度」があるが、ネット書店では送料無料やポイント還元で実質的に値引きが行われているとし、一定の制限やルールを設けることを検討する、とした。
( → 書店空白地帯、広がる ネット販売規制案、疑問も:朝日新聞 )
なるほど。書店が町から消えつつあるのは困る。
問題は、その対策だ。
(1) ネット書店
ネット書店を規制する、というのは、わけがわからなくもない。送料無料は、実質的にサービス分の値引きだ。これは再販制に反すると言える。
ならば、値引きを排除するために、150円程度の送料を義務づけてもいいだろう。(1冊ごとでなく1回ごとなので、まとめ買いをすれば、負担減となる。)
(2) コンビニ
記事には記していないが、街中の小規模書店の最大のライバルは、コンビニだろう。コンビニに小規模の雑誌スタンドがあることで、書店の雑誌売上げが激減してしまった。書店の売上げの相当多くが雑誌の売上げで成り立っていたので、それが激減すると、書店経営は成り立たなくなってしまう。街中の小規模書店が消えた最大の理由は、コンビニの乱立だろう。
そもそも、コンビニですら、雑誌で利益を出しているとは思えない。コンビのの数はものすごく多いが、そのすべてに雑誌を置くと、かなり多くの部数がコンビニに並べられていることになる。それがきちんと売れているとは思えない。たぶん、赤字覚悟で、客寄せのために並べているのだろう。そして、そのあおりをうけて、街中の小規模書店がつぶれてしまうわけだ。共存共栄ならぬ、「足の引っ張り合いによる集団自殺」みたいなものだ。
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この「コンビニの雑誌販売」というのを規制するのが、効果的な方法だと思える。とはいえ、変に行政が介入するのもまずい。また、単に小規模販売店を規制すると、駅のスタンド(キオスク)における雑誌販売までも規制されてしまいそうだが、それを規制すると、雑誌の売上げ総数が減ってしまって、ヤブヘビだ。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「コンビニのような少部数の販売店のみ、規制する。小規模であっても大量の販売数が見込めるキオスクは、規制しない。それをうまく案配するには、次のようにする。
取次が1日1回配送するとして、配送の1回ごとに配送手数料として千円を徴収する。これだと、販売数の少ない店では、配送手数料の負担が大きくなりすぎるので、書籍の販売をやめるようになる。一方、販売数の多い店では、配送手数料の負担が気にならないので、書籍の販売をやめない」
さらに、次のことを組み合わせる。
「雑誌販売のほかに、一般書籍の販売をする本屋さんでは、一般書籍の配送といっしょに配送する分の雑誌については、配送手数料を徴収しない。たとえば、週に1回、一般書籍の配送があれば、週に1回、雑誌の配送手数料である千円を徴収しない」
このことで、一般書籍を扱う本屋さんは、配送手数料を値引きしてもらえることになり、有利となる。
※ なお、新たに配送手数料を徴収するので、その分、取次には超過利益が入ることになる。だから、その分、別のところで手数料を値引きして、全体としては損得が発生しないように調整するといい。(たとえば、書籍の卸売価格を引き下げて、書店の利幅を増やす。)
以上のようにすれば、コンビニの雑誌販売が減って、かわりに、本屋さんの雑誌販売が増える。このことで、本屋さんの経営が成立するようになり、街中の本屋さんが消えることを免れるようになる。
※ しかもこれは、経済原理に即している。単に「コストをきちんと負担する」という当たり前のことをするだけだ。
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これで物事は解決する……というふうに思えるのだが、この案には、一つ、難点がある。次のことだ。
「街中のコンビニに大量の雑誌が並べられることがなくなると、雑誌の入手がやや難しくなるので、雑誌の販売部数そのものが減ってしまう。本屋さんとしてはありがたいだろうが、雑誌を売る出版社としては販売部数減になるので、出版社としては困る」
だが、この問題は、次のことで解決できそうだ。
「そもそもコンビニに、売れない雑誌を大量に並べると、返本率が高くなる。売れもしない雑誌を大量に印刷して並べるのは、無駄だらけだし、コストアップになる。そこで、大量出荷で大量返本という現行制度を改めて、売れる店だけに本を並べるようにすれば、コストを大幅に減らすことができる。雑誌の価格を今よりも2〜3割ぐらい下げることができそうだ。そうなれば、価格低下の分、雑誌の売上総数は増えるだろう」
今の週刊誌は価格が高すぎる。週刊文春は 550円だ。こんなに高いと、売れないのが当然だ。コンビニで売るのをやめて、本屋さんとキオスクだけに並べるようにして、返本率を大幅に引き下げたなら、550円から 380円に引き下げることができるだろう。そうなれば、販売部数も大幅に増えるはずだ。
これがうまい解決策だろう。
[ 付記 ]
だが、より根源的には、書店の数が減っている原因は、書籍の販売部数が減っていることだ。そのまた原因は、少子化だ。
そもそも、書籍の購入者の年齢分布では、大学生以下の若者が大半だ。少なくとも、 40年ぐらい前にはそうだった。中年や高齢者は書籍をあまり買わなくて、大学生以下の若者が本屋さんの主な購買層だった。
ところが現在、若者の人口が極端に減っている。こうなると、必然的に、書籍業界の売上げ減と結びつくはずだ。少子化の影響が最も強く出るのが書籍業界だと言えるだろう。
この意味では、書籍販売の減少は、先行指標となる。少子化の影響は、まずは書籍業界に現れて、やがては他の産業にも波及していく。かくて、書店が町から消えるだけでなく、日本の産業のすべてが町から消えていく。
そして誰もいなくなった。……というふうになりかねない。
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