2023年04月02日

◆ 藤浪が突然崩れたわけ

 アスレチックスの藤浪晋太郎(元・阪神)は、好投していたのに突然乱調になって崩れた。そのわけは? 

 ──

 1回と2回は4三振を奪うなど、好投していた。
 アスレチックスのマーク・コッツェー監督は「藤浪は初回、二回は素晴らしかった」と言及。
( → スポニチ Sponichi Annex 野球

 なのに3回になって突然、大崩れした。アウトを1つしか取れないまま、8失点を食らった。( 2回1/3、5安打8失点3四球 )
 なぜこうなった? 

 ──

 その理由は、動画をじっくり見ればわかる。

  → Shintaro Fujinami strikes out four | 04/01/2023 | MLB.com
  → Angels' massive 11-run inning | 04/01/2023 | Los Angeles Angels

 上の動画は、1、2回だ。
 下の動画は、3回だ。
 投球フォームがはっきりと違うのがわかる。おわかりだろうか? 

 上の動画では、フォームは割と普通である。
 下の動画では、フォームが異常である。どこが異常かというと、投球を終えたとき(フィニッシュをしたとき)の、首の動きを見ればわかる。首の振りがものすごく大きくなっている。首を左下に大きく振ってから、その反動で元に戻している。首をピョコンという感じで、瞬間的に大きく振っている。
 そのことは、次の画像でもわかる。


fujinami2b.jpg


 この画像は、下の動画でフィニッシュの瞬間の画像だ。首が胴体よりも左に大きく振れているのがわかる。その次の瞬間には反動で右側に振られる。結局、フィニッシュの瞬間に首が大きく左右に振れるので、頭の動きがものすごく大きい。これでは、視線が定まらないので、コントロールが滅茶苦茶になるのは当然だ。

 一方、上の動画では、首の振りが小さい。頭の動きも小さい。だから、視線がおおむね定まる。当然、コントロールも安定する。藤浪の調子がいいときには、たいてい、こういうフォームで投げている。リラックスして投げいるときには、こうなる。

 一方、全力投球しようとすると、力が入りすぎて、りきむ。すると、モーションが大きくなり、下の動画のようになって、コントロールが滅茶苦茶になる。ボールはストライクゾーンから大きくはみ出したり、ど真ん中に入ったりする。頭が固定されないのだから、コントロールが滅茶苦茶になるのも当然だ。

 ちなみに、コントロールがいいと評判だった(往時の)田中将大は、首の振りがほとんどゼロに近い。頭の動きがすごく安定している。だから、視線が定まる。おかげで、コントロールも安定する。

 コントロールが安定する投手というと、指先や腕の動きが安定していることだと思う人が多いが、違う。「頭を動かさない」「頭を安定させる」というフォームを取ることで、視線の動きを最小限にするのが、コントロールを安定させるためのコツだ。
 特に、そのためには、上半身をなるべく動かさないことが大切だ。上半身はなるべく立てたままにしておくのがいい。こうすれば、頭も安定する。一方、上半身を大きく動かすフォームもある。最初は振りかぶってから、最後は大きく前傾させる、というフォームだ。これは、すごくダイナミックなフォームだが、コントロールは滅茶苦茶になりがちだ。藤浪のフォームは、そういうフォームだ。

 藤浪は、(粗悪な)フォームを根本的に改めない限り、素質を生かせないまま野球生命を終わることになりそうだ。一方、逆に、フォームを根本的に改めれば、このたびの1、2回のような投球をすべての回で実行できるようになるだろう。



 【 関連サイト 】
 
 試合の動画。
  → 【大谷翔平VS藤浪晋太郎 メジャー初対決】4.2 エンゼルス VS アスレチックス 日本語ハイライト #MLB - YouTube



 [ 余談 ]
 昔、阪神に工藤一彦という投手がいた。一軍に定着した年には、先発してものすごく好投したのだが、5回ぐらい投げると、バテてしまって、そのあとで崩れることが多かった。5回まではほとんど打たれないのに、6回以後に打たれてしまうことが多かった。
 どうしてバテるかというと、上半身を大きく振りかぶってから前傾させるという、今の藤浪みたいなフォームだった。ただし藤浪よりはずっとゆるやかな動きだったので、コントロールは悪くなかった。単に疲れやすいだけだった。
 これを見咎めた投手コーチが、「フォームを変えろ」と命令して、上半身をほとんど動かさないフォームに変えた。ところがそれは彼の本来のフォームとは違っているせいで、あまりにもぎこちない不自然なフォームとなった。そのせいで、ボールに威力はなくなり、コントロールも悪くなり、成績は急激に悪化した。試合後半まで長持ちするようになったが、失点はずっと増えてしまった。
 結局、「5回までなら圧倒的に優秀な投手」が、ただの「長持ちするだけの二流投手」に成り下がってしまったわけだ。馬鹿な投手コーチのせいで。可哀想に。

 角を矯めて牛を殺す、というやつだね。

  ※ 阪神には馬鹿な投手コーチが多い。「投手コーチの仕事は酒を飲むことだ」と思っているNコーチみたいなのがいる。理論派のコーチなどはいない。どうしてこうなるかというと、球団OBばかりをコーチにしているからだ。情実人事。

 ※ ついでだが、理論派のコーチというと、以前は長谷川滋利、最近では吉井理人などがいる。斎藤隆もけっこうよさそうだ。ただ、吉井理人が抜群に優秀だね。他を大きく引き離す。(ただし性格に頑固さがあって、首脳部と衝突して辞めたたこともある。それでも優秀だから、今では監督になっている。ただし監督としては開幕三連敗。)


posted by 管理人 at 23:57 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かに視線が良いときと悪い時で全然違いますね。
藤浪本人が試合後言っていた「微妙な修正点」はそこを指していたのですかね。

それにしても管理人さんは野球も詳しいのですか。博識ですね。
Posted by 通りすがり at 2023年04月03日 02:21
小脳に体感イメージを記憶させることに失敗しているように感じます。重心の取り方とバランスが一定になっていません。体の重心点を決めて無意識に投げられるように、シャドウ投球の繰り返しで獲得することをサボっていますかね。
Posted by 32年前は現役 at 2023年04月09日 23:48
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