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1回と2回は4三振を奪うなど、好投していた。
アスレチックスのマーク・コッツェー監督は「藤浪は初回、二回は素晴らしかった」と言及。
( → スポニチ Sponichi Annex 野球 )
なのに3回になって突然、大崩れした。アウトを1つしか取れないまま、8失点を食らった。( 2回1/3、5安打8失点3四球 )
なぜこうなった?
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その理由は、動画をじっくり見ればわかる。
→ Shintaro Fujinami strikes out four | 04/01/2023 | MLB.com
→ Angels' massive 11-run inning | 04/01/2023 | Los Angeles Angels
上の動画は、1、2回だ。
下の動画は、3回だ。
投球フォームがはっきりと違うのがわかる。おわかりだろうか?
上の動画では、フォームは割と普通である。
下の動画では、フォームが異常である。どこが異常かというと、投球を終えたとき(フィニッシュをしたとき)の、首の動きを見ればわかる。首の振りがものすごく大きくなっている。首を左下に大きく振ってから、その反動で元に戻している。首をピョコンという感じで、瞬間的に大きく振っている。
そのことは、次の画像でもわかる。

この画像は、下の動画でフィニッシュの瞬間の画像だ。首が胴体よりも左に大きく振れているのがわかる。その次の瞬間には反動で右側に振られる。結局、フィニッシュの瞬間に首が大きく左右に振れるので、頭の動きがものすごく大きい。これでは、視線が定まらないので、コントロールが滅茶苦茶になるのは当然だ。
一方、上の動画では、首の振りが小さい。頭の動きも小さい。だから、視線がおおむね定まる。当然、コントロールも安定する。藤浪の調子がいいときには、たいてい、こういうフォームで投げている。リラックスして投げいるときには、こうなる。
一方、全力投球しようとすると、力が入りすぎて、りきむ。すると、モーションが大きくなり、下の動画のようになって、コントロールが滅茶苦茶になる。ボールはストライクゾーンから大きくはみ出したり、ど真ん中に入ったりする。頭が固定されないのだから、コントロールが滅茶苦茶になるのも当然だ。
ちなみに、コントロールがいいと評判だった(往時の)田中将大は、首の振りがほとんどゼロに近い。頭の動きがすごく安定している。だから、視線が定まる。おかげで、コントロールも安定する。
コントロールが安定する投手というと、指先や腕の動きが安定していることだと思う人が多いが、違う。「頭を動かさない」「頭を安定させる」というフォームを取ることで、視線の動きを最小限にするのが、コントロールを安定させるためのコツだ。
特に、そのためには、上半身をなるべく動かさないことが大切だ。上半身はなるべく立てたままにしておくのがいい。こうすれば、頭も安定する。一方、上半身を大きく動かすフォームもある。最初は振りかぶってから、最後は大きく前傾させる、というフォームだ。これは、すごくダイナミックなフォームだが、コントロールは滅茶苦茶になりがちだ。藤浪のフォームは、そういうフォームだ。
藤浪は、(粗悪な)フォームを根本的に改めない限り、素質を生かせないまま野球生命を終わることになりそうだ。一方、逆に、フォームを根本的に改めれば、このたびの1、2回のような投球をすべての回で実行できるようになるだろう。
【 関連サイト 】
試合の動画。
→ 【大谷翔平VS藤浪晋太郎 メジャー初対決】4.2 エンゼルス VS アスレチックス 日本語ハイライト #MLB - YouTube
[ 余談 ]
昔、阪神に工藤一彦という投手がいた。一軍に定着した年には、先発してものすごく好投したのだが、5回ぐらい投げると、バテてしまって、そのあとで崩れることが多かった。5回まではほとんど打たれないのに、6回以後に打たれてしまうことが多かった。
どうしてバテるかというと、上半身を大きく振りかぶってから前傾させるという、今の藤浪みたいなフォームだった。ただし藤浪よりはずっとゆるやかな動きだったので、コントロールは悪くなかった。単に疲れやすいだけだった。
これを見咎めた投手コーチが、「フォームを変えろ」と命令して、上半身をほとんど動かさないフォームに変えた。ところがそれは彼の本来のフォームとは違っているせいで、あまりにもぎこちない不自然なフォームとなった。そのせいで、ボールに威力はなくなり、コントロールも悪くなり、成績は急激に悪化した。試合後半まで長持ちするようになったが、失点はずっと増えてしまった。
結局、「5回までなら圧倒的に優秀な投手」が、ただの「長持ちするだけの二流投手」に成り下がってしまったわけだ。馬鹿な投手コーチのせいで。可哀想に。
角を矯めて牛を殺す、というやつだね。
※ 阪神には馬鹿な投手コーチが多い。「投手コーチの仕事は酒を飲むことだ」と思っているNコーチみたいなのがいる。理論派のコーチなどはいない。どうしてこうなるかというと、球団OBばかりをコーチにしているからだ。情実人事。
※ ついでだが、理論派のコーチというと、以前は長谷川滋利、最近では吉井理人などがいる。斎藤隆もけっこうよさそうだ。ただ、吉井理人が抜群に優秀だね。他を大きく引き離す。(ただし性格に頑固さがあって、首脳部と衝突して辞めたたこともある。それでも優秀だから、今では監督になっている。ただし監督としては開幕三連敗。)
藤浪本人が試合後言っていた「微妙な修正点」はそこを指していたのですかね。
それにしても管理人さんは野球も詳しいのですか。博識ですね。